はこちん!   作:輪音

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美しく散る為に咲くのが
薔薇の定めならば
華々しく激しく
生きるのが定めならば
愛は遥かなる幻影か
乙女の鎮守府に集う
子羊たちは
己に寄り添う艦娘を求め
生きる
生きる
生きる
顔を上げろ
錨を上げろ
抜錨せよ
砲を向けろ
勇気を持って立ち向かえ
魚雷を喰らわせろ
拳を振り上げ
敵対者を轟沈せしめよ
すべては薔薇の為に

Not even justice,I hope to get to truth.
真実の薔薇は咲くか





ⅩⅩⅩⅥ:彼らはとっくの前に乗り換えを検討されていた

 

 

世界の海を跳梁跋扈する深海棲艦と日夜戦うのは艦娘。

彼女たちは軍艦の魂を持つ人型妖精兵器。

そんな彼女たちもエロいことに興味がない訳でもない。

 

いや。

古今東西、少女といえど女同士で花咲くのは恋の話である。

ゲスい話になることもある。

男に教えないだけだ。

女同士の猥談は男の猥談と根本的に異なる。

 

提督や士官や技術者や整備員などと関係を結んだ者は、秘め事の内容を皆から問われる。

艦娘の情報交換は、提督や鎮守府関係者たちの想像をとっくに超えていた。

普段戦闘に切磋琢磨する彼女たちが、その熱意をエロい方向に向けたらどうなるか。

彼女たちが本気を出して、恋人に出来ない相手は先ずいないという状況にまでなっていた。

童帝力がやたらに高い函館の提督のように、イゼルローン要塞の如く難攻不落な例外も存在するが。

 

彼女たちの情報管理は徹底している。

今のところ、人間側にバレていない。

 

恋のため。

欲望のため。

愛のため。

彼女たちは邁進する。

慢心することもなく。

 

 

 

とある鎮守府の食堂では、演習相手としてやって来た駆逐艦の子の話に皆聞き入っていた。

その名は深雪。

もじゃもじゃ頭に活発そうな雰囲気の少女だ。

 

「えっと、あたしの思ったようにしゃべればいいのかな。」

「ええ、貴女の思ったように喋ってもらえたら、それでいいです。」

 

艦娘恋愛対策委員長である重巡洋艦の青葉が、〇.九ミリのシャープペンシルで頭をかきながらそう言った。

 

「出会いはどんな感じだったんですか?」

 

鎮守府に所属するすべての艦娘が固唾を飲んで状況の推移を見守っている。

 

「そうだね、三ヵ月前のことだけどさ、工廠に行ったら新人の整備員がいて、あたしが鎮守府の案内をしてあげたんだ。」

 

食堂に設置された大型テレビジョンに少年が映る。

大人しそうでやさしそうな、高校生くらいの子だ。

 

「学校に通いながら鎮守府勤めをするって言っててさ、こいつやるなあ、って思ったんだ。」

 

深雪は既に顔が赤い。

照れた姿が新鮮に映り、恋人と倦怠期的な状況の艦娘が内心ため息を吐いた。

 

「そいつ、学校ではモテないって言ってたから、じゃああたしが付き合ってやるよって答えたんだ。」

 

えっ、となる艦娘たち。

 

「初めて会ったその日から恋の花咲くこともある、という訳ですか。」

 

青葉は慣れた感じで話を進める。

 

「うん、なんかさ、こいつだったらいいかなあ、って思えてね。」

 

深雪は照れ照れになりつつ、そう答えた。

のろけ話の開始である。

なーんだ、と席を立つ者は誰もいない。

生きた経験がどれだけ大切かを知っている彼女たちが、その場を中座する筈がない。

 

「デートはしたんですか?」

「うん、丁度次の日が休みだったし、そいつも休みが取れたから二人で映画を観に行った。」

「そういえば、提督が嬉しそうにお小遣いを渡していましたね。」

「うん、びっくりしたよ。」

「どんな映画を観たんですか?」

「『アパートの鍵貸します』って映画がリバイバル上映されていたから、それを観た。司令官のオススメだったし。よくわかんなかったけど、なんかせつないなあ、って思った。」

「渋い映画ですね。大人の映画ですよ、それは。」

「あいつもよくわかんなかったって言ってたけど、なんかいい映画だと思うって言ってた。」

「映画を観た後はどうされたんです?」

「司令官がすすめてくれたレストランでパスタとピザを注文して、半分こしたよ。」

「おいしかったですか?」

「うん、間宮さんや鳳翔さんほどじゃないけどね。」

 

何気に食堂の隅で二名が拳を握りしめ、微笑んでいた。

 

「それから、どうされました?」

「本屋に寄って、漫画を見たり本を見たりしたよ。『ボッコちゃん』って文庫を買った。」

「あれは名作ですよ。いい本を買われましたね。で、鎮守府に戻られたということですか。」

「うん、別れ際にチュウしてね。」

 

ざわり。

空気がさざめいた。

食堂の雰囲気ががらりと変わる。

 

「えっ、もうキスされたんですか?」

「うん、自分でもびっくりしたんだけど、こいつだったらいいか、って感じてね。」

 

 

そして、情報交換は就寝時間近くまで続けられた。

 

 

 

裏しゅうむす第六號です。

今回も無事に秘密出版出来ました。

皆様のかんむす生活を少しでも補完出来ましたら幸いです。

 

 

あなたの鎮守府の提督は大丈夫ですか?

無謀と思える出撃が多くありませんか?

疲労が抜けない状態のままで、海域突破を命じられていませんか?

目標値が達成出来なかった時の、叱責が多すぎると思いませんか?

戦後のことを話しかけたら、「そんなことを考えている暇があったら、少しでも錬度を上げろ。」といったことばかり言われていませんか?

夜戦を切り上げるのが早すぎませんか?

あまりに差別的に扱われていませんか?

酷い言葉のみ浴びせられていませんか?

光明の見えない日々ではありませんか?

愛がまったく感じられない状況ですか?

 

 

戦果を挙げるのは、私たち艦娘にとって生きる目的のひとつです。

それを成す過程で轟沈するのもまた、運命と言えることでしょう。

だがしかしばってん、それは私たちがぞんざいに扱われたり性の道具にされる理由にはなりません。

私たちはセクサロイドではないのです。

提督への奉仕が生き甲斐というのは、悪いことではありません。

しかしながら、私たちをまともに扱ってくれない提督へ従う必要性はあるでしょうか?

いえ、ありません。

よって、私たちは忠誠を誓える提督の元に集まるべきなのです。

今回、全鎮守府・警備府及び泊地から皆様のご意見を集め、乗り換え先の提督の候補を探ろうと思います。

 

前回、函館鎮守府へ乗り換えをご希望される方があまりに多く、大本営の上層部から必死の勢いで慰留されたことは皆様の記憶に新しいでしょう。

 

青森の大湊(おおみなと)に在籍する艦娘がおよそ五〇名で、ここが最大値です。

また、函館鎮守府のように江田島で教育を受けていない提督の元には多数の艦娘を所属させることが出来ません。

上限枠に引っ掛かるようです。

函館の大淀さんと一緒に大本営の上層部に対して交渉を試みたのですが、上手くいきませんでした。

私こと横須賀第一の青葉は香取先生やマスター・オータムクラウドと共に光学機器や各種器具や各種潤滑油や多様なウスイホンなどを駆使しましたが、翻意は得られませんでした。

非常に残念です。

代わりに鎮守府転属の条件の緩和に成功しましたので、後日配布される別資料でお確かめください。

 

 

以下は編集部の独断と偏見による、全鎮守府・警備府・泊地の提督副司令提督補提督候補生たちの情報です。

オマケとして、独身彼女なしで有望な憲兵整備員事務員情報も載せておきました。

こちらは複数の足柄さんに監修していただいています。

併せてご照覧ください。

 

 

【函館】

魅力:SSS

夜戦:童貞の為未知数

作戦指揮能力:E

戦闘力:F

添い寝:可

混浴:可

デート:可

 

相変わらずの圧倒的支持率を誇る、怪物提督。

人間の視点からすると見た目はパッとしないおじさんだそうですが、私は素敵なおじ様だと思います。

メリケン艦娘が複数いたり、深海棲艦の姫級がいたり、教官級の艦娘が押しかけ女房状態だったりとあらゆる意味で規格外の鎮守府。

ぶっちゃけ、転属は至難の業です。

元艦娘の勤務先として考えてみるのもいいかもしれません。

 

 

【小笠原】

魅力:AAA

夜戦:童貞の為未知数

作戦指揮能力:D

戦闘力:F

添い寝:可

混浴:可

デート:可

 

隠れた逸材の提督。

妖精に深く愛されているナイスガイ。

メリケン艦娘が二名存在する、異色の鎮守府。

まだ数名しか着任していないので早い者勝ち。

 

 

【呉第六】

魅力:A

夜戦:相当なものらしい

作戦指揮能力:S

戦闘力:E

添い寝:条件付きで可

混浴:条件付きで可

デート:不可

 

広島県並びに呉鎮守府を改革した提督。

その影響力は絶大で、人脈も広いです。

函館や小笠原の提督などの頼れる先輩。

鳳翔さん一筋なので、愛人枠が狙い目かもしれません。

 

 

【大湊】

魅力:AA

夜戦:絶倫

作戦指揮能力:SS

戦闘力:F

添い寝:可

混浴:不可

デート:条件付きで可

 

青森県並びに東北を改革した提督。

現在最強の艦娘群を率いる政治家。

眼鏡をかけた小太りの男性ですが、外見に惑わされると痛い目に遭います。

 

 

【特艦二課の能登提督】

魅力:C

夜戦:普通

作戦指揮能力:A

戦闘力:AAA

添い寝:可

混浴:不可

デート:条件付きで可

 

元首都警の特機隊出身という異色の提督。

鍛え上げた体と切れ味鋭い頭で勇名を馳せた、『カミソリ能登』の実力は今も健在。

戦闘力は全提督中有数の実力派。

武闘派のあなたにぴったりです。

鎮守府はある意味僻地にありますが、愛を育むには丁度いいかもしれません。

 

 

【佐世保第一の柿本提督補(通称:カッキー)】

魅力:駆逐艦限定ならS、全体的にはB

夜戦:童貞の為未知数

作戦指揮能力:B

戦闘力:C

添い寝:可

混浴:条件付きで可

デート:可

 

佐世保名物のひとつの陽気な大食漢。

よく食べよく笑って社交的な快男児。

駆逐艦から圧倒的に支持される男性。

直属の駆逐艦は少ない為狙い目かも。

 

 

【小樽】

魅力:S

夜戦:若い頃はかな(検閲により自粛)

作戦指揮能力:SSS

戦闘力:AAA

添い寝:可

混浴:可

デート:可

 

珍しい女性提督。

歴戦の軍人で頼り甲斐のある姉御。

一旦部下になれば、とことん世話を見てくれます。

男はもうこりごり、というあなたにぴったりです。

きっと素晴らしい死に場所を用意してくれることでしょう。

 

 

【函館のR田中一郎氏】

魅力:通常はA

夜戦:童貞の為未知数

作戦指揮能力:事務員の為未知数

戦闘力:不明(鎮守府へいちゃもんをつけに来た人物を、瞬時に物理的に説得したとの未確認情報あり)

添い寝:不明

混浴:不可

デート:不明

 

函館鎮守府の事務方を取り仕切る事務長。

穏やかな雰囲気の人物で提督の信任もあつく、好物件。

近々見合い予定だそうですので、元艦娘の皆様は早期に猛攻されますことをお勧めします。

 

 

【函館の劉鵬氏】

魅力:S

夜戦:童貞の為未知数

作戦指揮能力:忍びの為未知数

戦闘力:S

添い寝:おそらく可

混浴:おそらく可

デート:おそらく可

 

先日函館鎮守府の提督の護衛として雇用された、風魔八忍衆の一人。

戦闘力は鎮守府関係者の中では最強級。フローレンシアの猟犬や東欧の森林狼級と思われます。

料理上手で温厚で、お母さんみたいな包容力ある人物。

高校生か大学生くらいの年齢だと思われますが、調査機関の尽力にも拘わらず、詳細は不明でした。

同僚の忍者として、項羽氏、琳彪(りんぴょう)氏、兜丸氏が確認出来ています。

スリルのある伴侶を求める方向きかもしれません。

 

 

 

(以下、多数の提督や鎮守府に所属する男性陣の情報が写真付きで並ぶ。イケメン系はあまりいないようだ。)

 

 

 

 

 






【オマケ】



コマンド?

【砲撃する】
【対空防御する】
【雷撃する】
【電光機関を解放する】
【爆雷を投下する】
【ライダーキックする】
【噴進弾を発射する】
【交渉する】
【脅迫する】
【間宮券を使う】
【甘い息を吐く】
【司令官を誘惑する】
【司令官に贈り物をする】
【司令官と添い寝する】
【司令官の世話をする】
【司令官からお小遣いを貰う】
【司令官から間宮券を貰う】
【カレーを作る】
【肉じゃがを作る】
【満漢全席を作る】
【ちょっとエッチな小説を読む】
【ちょっとエッチな薄い本を読む】
【下着を換装する】
【勝負下着を装備する】
【じっくりと観察する】
【お風呂に乱入する】
【泡踊りする】
【間宮羊羮をねだる】
【無邪気なふりをして抱きつく】
【マスター・オータムクラウドに連絡を取る】
【毒を吐く】
【暴れる】
【吼える】
【サーヴィスする】
【姉妹が揃わないのを嘆く】
【拳銃の射撃練習をする】
【山に登って山菜採りや茸狩りや鹿狩りや豬狩りをする】
【羆(ひぐま)と死闘を演じる】
【詩を詠む】
【唄を歌う】
【司令官の私室に突撃する】
【司令官と外出して下着を選ばせる】
【司令官に目隠しして色々と楽しむ】




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