とある量産型艦娘は乙女のように夢を見る
巡り逢ったご主人様のため
愛の巣を確立するため
彼女は暗躍する
別れの言葉はいらない
もう引き返さないと
誓ったのだから
提督のために
ご主人様のために
流されたオイルのために
戦わなければならない
撃たなければならない
駆逐艦の震える指先が
引き金に触れる
Not even justice,I hope to get to truth.
真実の灯りは見えるか
〇六〇〇。
隣で寝ている司令官もといご主人様をゆさゆさ揺らす。
起きない。
耳たぶを噛んだり舐めたり、舌をレロレロとしてみた。
起きない。
ご主人様はブルーリボンがどうとかマカニトがどうとか寝言を言いながら魘(うな)されているが、構わず愛のフライングボディプレスをかます。
ミル・マスカラス!
ぐえっ、という声が聞こえた。
起きない。
一部もこっとなっていたので観察する。
これが……アレだ!
これはよいものだ、ウラガン!
キタコレ!
キタコレ!
ごくり、と唾を飲み込む。
……ちょ……ちょっとくらい……。
ダ、ダメ!
まだ早い!
時期尚早!
知らぬ間に、指がご主人様のパジャマのズボンに食い込んでいた。
いけない、いけない。
まだ早いのだから。
ゆっくり、ゆっくり。
焦っては水の泡だ。
じっくり、じっくり。
じわりじわりやろう。
二人きりなのだから。
指をなんとか剥がす。
ちょろっと撫でつつ。
この感触を私は忘れない!
けして忘れてなるものか!
苦戦しながら、ご主人様をようやく起こした。
〇七〇〇。
ご主人様の着替えを手伝い、その後一緒に台所で食事を作る。
このトランクスは古いから、新しいものに取り替えておこう。
近くの八百屋で買った自家製漬け物を刻んで、玉子焼きを拵えた。
私が第七駆逐隊の面々を揃えて貰えないだろうかと伝えたら、よっしゃなんとかしたると言われた。
ちなみにご主人様は、おっぱいが大きくてふくよかな子が好みらしい。牛乳をもっと飲まなくては!
東京牛乳でも飲んでみるか。
〇八〇〇。
執務開始。
ご主人様の秘書艦として手伝う。
ご主人様は新人だし、慣れないことだらけでいろいろ苦戦している。
私が経験を活かして補佐しなくては。
そして、私の絶対的地位を確立する。
前回のような失敗はもう許されない。
あんな経過と結末はもうこりごりだ。
〇九〇〇。
大本営からの電話に、ぺこぺこ謝りながら通話するご主人様。
許さん!
函館の大淀さんに通報しました。
物理的に交渉説得してもらおう。
一〇〇〇。
ご主人様の耳掻きと手の爪切りを敢行。
足の爪切りは一緒にお風呂から出た後でやろう。
だいぶ溜まりつつある。
フィルムのケースをからから鳴らし、ニヤリと嗤(わら)ってみた。
一一〇〇。
昼食の準備に入る。
今日は台湾式のりたまスープと青菜の辛味炒めとそぼろご飯にしよう。
殿方を攻略するには胃袋よ!
握り締め握り締め握り潰す!
一二〇〇。
昼食。
ご主人様が喜んで食べている姿を見て、ポカポカしてじゅんとなる。
この手でご主人様の胃袋を支配して握り潰すその日まで、私はうまかもんを作るのをやめはしない! 絶対にだ!
その後ガランとした艦娘寮へ行き、荷物だけ置いた部屋の引き出しにご主人様の使用済みのトランクスを仕舞う。
一三〇〇。
ご主人様があちこちの鎮守府に電話をかけている。
第七駆逐隊の艦娘情報を得る為。
今の相手は函館鎮守府の提督だ。
『艦娘たらし』と評判の人物だ。
私のご主人様の方がずっといい。
ご主人様。
ご主人様。
ご主人様は私を見捨てないでね。
一四〇〇。
ご主人様の顔を時折ちらちら眺めながら執務の手伝い。
ドキドキする。
ムラムラする。
合間に、私室付属の手洗いで苺のパンツを穿き替えた。
うん、さすが、ご主人様だ。
この権利は誰にも渡さない!
渡しはしないぞ、渡しはっ!
一五〇〇。
小休止。
ご主人様の膝の上で高崎市名菓のラスクを食べる。
最高!
一六〇〇。
近海の哨戒任務に出る。
イ級二隻を撃沈したぜ!
鹿島灘はこの私が守る!
一七〇〇。
ご主人様が電話をかけている。
結果は芳しくないみたい。
仕方ない。
ここには建造設備すら存在しないのだし、大本営は四大鎮守府ばかり優遇している。
私たちの、あの南方での戦いはなんだったのだろう?
なんちゃって鎮守府に艦娘を増やすのは困難の道だ。
…………。
今は、素敵なご主人様に出会えたことに感謝しよう。
さて、夕飯の準備をちゃっちゃとやっちゃいましょ!
一八〇〇。
夕食夕飯ほいさっさ~♪
刺身煮付け定食で風神雷神揃い踏み。
大盤振る舞いで四種の刺身よ。
漁師の皆さんに感謝感激雨霰。
ご主人様は旨味を噛み締め黙って喰うべし!
マグロのカマの煮付けにカンパチのあら汁。
コトコトと煮込まれた愛の証を召し上がれ。
厚揚げ煮と小松菜のおひたしも召し上がれ。
とどめは鰹のなめろう冷茶漬。
おいしいよ。
明日は鰹のなめろうのメンチコロッケだお。
嗚呼、ご主人様の幸せな顔を見ているとムラムラするっ!
……後で穿き替えよう。
一九〇〇。
食後の休憩。
ご主人様の膝の上でゴロゴロする。
嗚呼、素晴らしきまったりタイム。
二〇〇〇。
残りの書類作業。
ご主人様に艦娘が当分増えないことを謝られる。
うっ……くっ……なんも言えねえ。
二一〇〇。
書類作業終了。
ご主人様と一緒に、おっさんが延々食事するだけのドラマを見た。
その内に千葉の大原へ行って、いずみ豚のスモークハムを買おう。
二二〇〇。
ご主人様と入浴。
はにゃ~っ!
ビッグボーイ!
ビッグボーイ!
二三〇〇。
ご主人様と一緒に寝る。
おっさんだった時には感じなかったときめき。
薄れつつあるは、昔の記憶。
ご主人様のにおいを嗅いでいると、とても安心出来る。
高まりつつある、今の記憶。
このセカイで彼と二人きり。
女は一度決めた男を変えてはいけない。
私からは逃げられませんよ、ご主人様。
私はとてもしつこいですから。
徹底的に、やっちゃうのねっ!
ふふふ。