はこちん!   作:輪音

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ⅩLⅢ:お偉いさんと潜入娘

 

 

 

おい、何故お前がここにいる?

お前には函館の提督の監視を命じていた筈だ。

ん?

ウラジオストクにハバロフスク?

あいつは、そんなところまで行っているのか。

それでお前たちは休暇を貰ったと。

はっ、呑気な話だ。

これが今回の報告書か。

読むから、少し待て。

ん?

土産?

これは間宮羊羮じゃないか。

ずいぶん気が効いているな。

ありがたくもらっておこう。

 

 

ふん、あいつは相変わらずだな。

ん?

大本営が、艦娘の函館への大量転属を許す訳など無いだろう。

本式の提督でも、あいつより艦娘の所属数が少ない者もいる。

四大鎮守府の中位提督並の所属数で、批判が来ているんだよ。

あんなに所属させるべきではないとな。

高梁(たかはし)型軽巡洋艦の着任だが、あれは管轄違いだ。

あれは開発部方面からの動きなのだ。

試験艦娘を多種多様な艦娘が所属する鎮守府に配属させて、その心理的影響を知りたいとかなんとか言っていてな。

甘やかし過ぎだよ。

ああ、この資料だ。

今ここで読んでおけ。

まったく、女学生の進学先を選ぶようなことをしおって。

なにがごきげんようだ。

ん?

和気あいあいとした雰囲気が好ましい?

なにを言っているんだ、お前は?

そんなことは関係ない。

我々は戦争をしているのだ。

なかよしごっこをしているのではない。

それはお前も重々承知しているだろう?

ん?

はっ、お前がそんなことを言うとはな。

お前なら堕ちないと思ったんだがなあ。

慌てるな。

安心しろ。

任務からは外さん。

お前のそんな表情を見るとは思わなかったよ。

『艦娘たらし』の威力、恐るべしだな。

なんだ、告白はしないのか?

別にかまわんよ。

何時轟沈するかもしれん、お前たちのそういう感情を規制するつもりは無い。

ただ、溺れるな。

溺れたら、そこで任務終了だ。

で、だ。

メリケン艦娘の所見をお前から受け取り、こちらでも精査した。

当面はドイツ艦娘やイタリア艦娘と同じ処遇ということになる。

未だに連合軍がどうとか言う老害はいるのだが、それはこちらでなんとかする。

若い奴らの中にも、メリケン艦娘を演習の標的艦にしろとかいう馬鹿がいてな。

頭が痛いよ。

大淀?

大淀がどうした。

物理的説得だと?

さてな。

私は函館の大淀に会ったことが無いから知らんが、対応を誤って入院した輩は知っている。

愚かなものだよ。

他の大淀と違いすぎる?

そうか?

多少の差異は出る筈だ。

艦娘は後天的環境に影響されるからな。

毎朝剣を振るっている?

あそこは憲兵の國江がいるし、刀術を遣う艦娘も集まるから、それに影響されているのだろう。

最初から提督にデレデレしていて、甘やかしてばかりいる?

珍しいな。

鎮守府によっては、かなり厳しい大淀になるんだがな。

食い物の話をよくする?

そもそもあいつが食べることを相当重視しているし、間宮も鳳翔も料理上手だ。

影響されるのは容易に想像がつくよ。

 

 

お前から直接報告を受けたお陰で、こちらも方針を固めることが出来た。

礼を言う。

昼はどうする?

食堂か。

うちの間宮も料理上手だ。

食べてから帰投するといい。

ん?

私はいつもここで食べている。

不用意な接触は極力避けるべきだからな。

ふっ、気遣いは嬉しいが、なるべく一緒にいない方がいい。

お前もそうした感覚を徹底しろ。

懐柔されるなよ。

ではな。

ああ、長寿と繁栄を。

 

 

 

 

 

 


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