この作品は以下の要素を含みます。
◎おっさんはヒロイン(函館、小笠原)
◎無双は基本的になし
◎添い寝でおっさん毎晩生殺し
◎殆どの憲兵が艦娘に全身全霊を捧げていて悪・即・斬
◎職業別死亡率では提督がぶっちぎりの断トツ一位
◎駆逐艦は鎮守府泊地の基幹戦力だから大切にしよう
◎ここの世界観はチャンポン・デ・チャンプルー
◎生ける意思持て海を往け、とある駆逐艦は言った
◎諦めるなきっと活路はある、とある戦艦は言った
◎ご贈答にトラピストクッキーをどうぞ
◎おっさんは常に貞操の危機に晒されている
※人によっては気分の悪くなる記述が複数あります。
また、中学生でも容易に入手し得る商業作品よりは甘めにしていますが、不快になり得る表現もあります。
ご注意ください。
艦娘を逆上させ暴走させてはいけない。
それは、提督候補生時代に叩き込まれる教訓のひとつだ。
叱責(しっせき)しなければならない時は、きちんと理非をもって説諭する。
当たり前のことだ。
しかし、人間は感情の生き物である。
故に、かっとなって劇薬を口から迸(ほとばし)らせることがあったりする。
それが艦娘の許容範囲ならば問題ない。
『常識』の範疇に入る怒りは問題なく受け入れられる。
しかしながら、感情的になると人はかなりキツい言葉を使ってしまう。
意図的に使う者もいる。
それが最期の言葉になる者もいる。
艦娘が出現した当初。
自衛隊と政府による第三セクター的な大本営が立ち上げられ、急遽任命された提督たちも手探り状態だった。
経験も手引き書もない中、艦艇の魂を持つならば旧軍式だろうと有言実行した提督が最初の殉職者になった。
加害者は駆逐艦で、半ば無意識に殺ってしまったらしい。
そして、それは日本人の大好きな隠蔽で経緯が密閉されてしまった。
その後、 連続殺人事件の如く提督や関係者やエロいお偉いさんたちが続々と鬼籍に入るようになり、ようやく大本営や自衛隊や政府は事態の重さに気づいた。
この時期に、艦娘保護の観点から憲兵隊が設立されるようになる。
隊長は元特機隊隊員だった彦江氏。
自衛官や警官や腕に覚えのある者たちが、是非是非自分を任命して欲しいと大本営に殺到したらしい。
憲兵は今も大人気の職業だ。
艦娘と仲よくなれる、正に正義の味方。
場合によっては艦娘とケッコン出来る。
最高じゃないか。
訓練は最低だが。
頚が胴体と離れたり心臓を握り潰される提督が何人も現れてやっと、大本営は対策に本腰を入れるようになった。
不祥事を名誉の戦死にすり替える手法は日本人のお家芸たる隠蔽に他ならなかったが、刑事事件として艦娘を裁く法は未だに制定されていないし、印象商法的に売り出し中の彼女たちに汚点を付ける訳にもいかない。
精々現役の提督や提督候補生たちに実例集を見せ、各々に対策を取らせるくらいしかなかった。
また、青葉が撮影した映像は数々の提督や提督候補生たちを青ざめさせた。
それでも、年に数人は蘇生出来ない状況になってしまうのは悲しいことだ。
大抵の下手人は駆逐艦である。
その殆どが中学生に見える艦種の彼女たちは一見提督の意のままになりそうな者が大半であるけれども、実は最も喧嘩っ早い艦種だ。
血の気に溢れているともいう。
必殺の魚雷を手に深海棲艦の戦艦にさえ肉薄する彼女たちが、勇猛でない訳がない。
読み違えた提督たちの末路の詳細な写真と報告書を読んで、提督候補生たちは慄然とする。
寝込みを襲われた者。
戦艦や正規空母に囲まれていたのに、針の穴を通すような攻撃を受けた者。
地下から発見された者。
引き裂かれた者。
高く吊るされた籠の中で干からびた者。
縛られた上で水をたらふく飲まされた者。
胃の中から重油が見つかった者。
暴動が起きた泊地の写真と報告書は、あらゆる提督候補生たちの声を奪った。
そこは量産型艦娘を捨て艦戦法で日常的に幾名も使い潰し、着任する艦娘よりも轟沈する艦娘の方が多いと揶揄される死地だった。
現場では『提督だった部分』が丁寧に並べられていて、それが逆に憎悪の深さを感じさせた。
彼は無能な提督ではなく寧ろ優秀で、生き残れたなら英雄になれたかもしれない青年だった。
狡猾で慎重で、時に大胆果断。
戦国武将のような、巧みな采配と判断が出来る稀有の存在だった。
故に南方に配属され、鉄底海峡攻略戦後は横須賀鎮守府への栄転が決まっていた。
それだけ優れた資質を持って才能を遺憾なく発揮した彼だが、最大の誤算は艦娘を使い捨ての道具扱いしたことだ。
当時は艦娘の研究がまださほど進んでおらず、提督の艦娘への支配力が万能或いはそれに近いと誤解されていた時代に起きた悲劇的殺人とも言えた。
この件については、守秘案件として特一級が課せられており、部外者には絶対誰にも話してはいけないことになっている。
提督を退役した後も漏らしてはいけない。
量産型艦娘が禁止になった遠因のひとつ。
提督で無事に退役出来た者がまだいないのは、突っ込んではならないお約束だ。
そもそも彼らは無事に退役出来るのだろうか?
提督に相応しくないとされる者は以下の通り。
◎己の正当化と他者批判に終始する者
◎奉仕の心無き者
◎有言不実行な者
◎他者を思いやれぬ者
◎人を騙して悩まぬ者
◎束縛の強すぎる者
◎お人好し過ぎる者
◎簡単に差別する者
◎簡単に侮蔑する者
◎手伝いを好まぬ者
◎妄執や嫉妬に囚われやすい者
◎理非立たぬことを多く言う者
◎使い捨てをなんとも思わぬ者
◎すぐ他人に責任押し付ける者
◎否定しか口に出来ない者
◎遅刻をなんとも思わぬ者
◎寛容の精神なく狭量な者
◎告げ口密告当たり前の者
◎暴言を容易に口にする者
◎暴力を日常的に振るう者
◎女子供の癖に、と言う者
◎安易な嘘を平然と吐く者
◎客観的な発言行動少なき者
◎周囲の人を大切にしない者
◎賭け事に溺れ、煙草を一日二箱以上吸い、アルコール依存症の者
◎よくキレてすぐ怒鳴りしばしば物を投げる者
◎逆恨みや責任転嫁を当たり前とする者
◎他人に負担をかけてなんとも思わぬ者
◎卑怯者
函館から彼女が戻ってきて、ホッとする。
我が鎮守府第一艦隊旗艦である彼女がいるのといないのとでは、やはり雲泥の差だ。
改めて、彼女の存在感を痛感する。
あちらに行ったままでなくて、よかった。
彼女が我々の基幹戦力だ。
帰還後、彼女は私に多く甘えてくるようになった。
それまでは素っ気ない態度が散見されたのだが、方針を変えたらしい。
下着もエッチなのになった。
意外な側面にドギマギする。
こういう変化はありがたい。
強力わかもとと亜鉛とマカを日々服用するようにせがまれ、そうする。
確かに精力が増大するのだ。
普段無表情に近い彼女の気持ちを汲み取るべく、私は努力してゆこう。
閨(ねや)の回数も増やす。
もっと、話し合いをしよう。
よりよい鎮守府を目指して。