広島の方からツッコミをいただきましたので、お好み焼き定食を修正しました。
油断大敵なのです。
駆逐艦の子たちから提督の女性関係をなんとかして欲しいとの要請を受け、先輩のいる呉まで遙々来たぜ広島県。
気温が全然違う。
風のよく吹く函館とはなにもかも違う。
でもなんで、わざわざ私が北海道から西日本まで来なければならないのだろう?
へっぽこ且つなんちゃって提督が、なんとかかんとか出来る事案なのだろうか?
……まっ、いっか。
帰りにはしゃもじやにしき堂のもみじ饅頭を買って帰ろう。
あそこの麩饅頭も旨いが日持ちしないのが残念だ。
新青森から東京までが東北新幹線。
東京から広島へ東海道山陽新幹線。
広島から新快速の呉鎮ライナーに乗って、呉まで約一五分。
ちなみに、飛行機は飛んでいない。
駅ビルは岡山県の百貨店の天満屋と地元百貨店の福屋が入った複合商業施設で、熾烈な戦いを繰り広げていた。
どちらもそれほど大きくはないが、それぞれ吟味された品々が置かれていて切磋琢磨しているのは好ましいな。
行き交う人も多く、広島県の経済を担う重要拠点のひとつであることがよくわかる。
広島県は元艦娘を地域社会へ受け入れるのに積極的な都道府県のひとつで、結束力の高い県民性からそれは輪を拡げつつあった。
上記二つの百貨店には元艦娘が何名も働いていて、宣伝面でも実利面でも有効打を与えている。
世の中、露骨なくらいで丁度いいらしい。
元艦娘は特に介護や過疎地での活躍が期待されており、女性の就職率が全国的に高い隣県の岡山県でも注目されている。
鳥取県や島根県からも問い合わせが多く寄せられているそうだ。
先輩のいる呉は四大鎮守府のひとつとして第一から第九までの鎮守府内鎮守府を所有し、相当でかい。
西日本最大級鎮守府だけのことはある。
鎮守府から出ないで生活出来るくらい施設が充実していて、まるでショッピングモールだ。
天満屋と福屋の販売出張所まであるのには驚いた。
贈答品や中元や歳暮など需要がかなりあるらしい。
ゆうちょや中国銀行や広島銀行のATMまである。
先輩は鎮守府内鎮守府の第六鎮守府を担当していて、他の提督との交流が盛んだったり外部との接触が多かったりする。
目端の利く人だから出世頭の筈だが、艦娘の権利を熱く主張し過ぎるきらいがあるらしい。
その分上層部や大本営から疎まれ、艦娘たちから強く支持されている。
そういや、福屋や天満屋の包装紙に包まれた品を貰ったことがあった。
あれらはここで買ったのだろう。
なにかと頭が上がらない提督だ。
二つの百貨店を取り込んだのも、どうやら先輩らしい。
民間を巻き込んで地域社会との関わりを増やしている。
やるなあ。
今回、彼を通じて第五鎮守府内の駆逐艦勢から要望が伝えられた訳だ。
しかし、なんでなんちゃって提督の私が呼ばれたんだ?
私よりも有能な提督は、それこそ綺羅星のように存在する筈なんだが?
土産のマルセイバターサンドを喜んで受け取る先輩は一見気のいい人。
しかし。
先輩が口を開くと、あまりよい話を聞かせてくれないのが難点である。
何故だ!
呉の提督は皆江田島兵学校出身で、『本物』揃いだ。
私のような付け焼き刃の『なんちゃって』提督が付け入る隙など、どこにもない。
横須賀同様の選良集団。
日本の守護者を、自他共に認めている。
加わりたいかと問われたら、答えよう。
だが、断る、と。
政治的理由で配属された半端者で充分。
地域社会と艦娘たちを守ることが出来たら、それだけでいい。
それくらいしか出来ることはないから。
「おう、有名な『艦娘たらし』が来てくれたけえの、これでなんとかなるじゃろう。」
「いきなり酷いですね、先輩。私はたらしなんぞじゃありませんよ。」
「提督候補生時代に教官の長門や加賀や妙高と堂々とデートしておいて、なにをようるんなら。あのお堅い連中を陥落したゆうて、伝説になりかけようるで。」
「事実無根です! 単に外出時に艦娘随伴という規範に則っただけですよ!」
「ようゆうわ。流石じゃ。」
「帰っていいですか?」
「気ぃみじけえのう。ちょっと弄っただけじゃが。取り敢えず食堂へ行こう。」
先輩は相変わらずフリーダムだなあ。
食堂は既に修羅場であった。
いきなり現場かよ。
打ち合わせなしか。
周囲の艦娘を見る。
怯える駆逐艦たち。
呆れた顔の部外者。
狂おしい感じの当事者たち。
あ、これは無理だ。
どねえせえゆうねん。
提督の周囲はギラギラした雰囲気で、駆逐艦から戦艦まで何時でもやったる系仁義なき戦いをしでかしそうな気配が濃厚だ。
何故あの提督は平然としていられるんだ?
「先輩、これ、わしゃ無理じゃわ。」
「コリャ! ワシの口真似をしたらおえんわ!」
「どげんもこげんもありゃせんが。」
「ええから、兎に角突撃してけえ。」
「そげなん、できゃあせんですわ。」
二人でお好み焼き定食を食べながら、様子を窺う。
豚玉ソバ入りお好み焼きにご飯と味噌汁と広島漬。
もやしと三つ葉のサラダは取り放題。
もみじ饅頭はお好みでどうぞと給糧艦の間宮から言われ、ありがたく貰う。
にしき堂のとやまだ屋のと一個ずつ。
カープソースと青海苔と鰹節が載せられたお好み焼き。
鰹節は高知産だとか。
蛋白質と蛋白質がかぶってしまった。
だが周りの人に気にした感じはない。
こういうのでいいんだよ、って感じ。
ならば、私もご当地流に合わせよう。
む。
これは、旨い。
かなり旨いぞ。
駆逐艦の子たちがチラチラこちらを見ている。
顔の赤い子も数名いるが緊張しているのかな?
あれをどう攻略する?
何故、私が呼ばれた?
この広島漬もいいぞ。
もやしと三つ葉のサラダも意外と旨い。
ワカメと油揚げの味噌汁もいりこ出汁でしみじみ旨い。
広島の幸満載艦載機。
なんちゃって。
ご飯をお代わりして、何気なく先輩と会話を続ける。
「幾ら綺麗で可愛いとはいえ、部下たちに手を出すとはとんでもない奴ですね。」
「あんなあ、自分自身の胸に手ぇ当ててみい。」
「えっ? 私は関係ないでしょう?」
「うん、本人の自己評価ゆうんは誰しもこういう傾向があるのう。」
「なにしみじみと言っているんですか、先輩。ありゃ、消火器で初期消火出来る段階じゃないですよ。」
「おえりゃあせんか?」
「おえりゃあせんです。」
「このままじゃあ、あいつとあいつの鎮守府は大火事になって消滅じゃ。」
「困りましたね。」
「他人事じゃのう。」
「他人事ですよ。」
「将来の函館じゃがな、あれは。」
「厭な予言をしないでください。」
御馳走様でした。
旨かった。
この食堂は当たりだ。
意を決して、第五鎮守府の提督に近づく。
一見若くておっとりした感じの好青年だ。
必殺の、マルセイバターサンドを渡した。
なかなかこちらで食べられない北の味覚。
宅配便にて匣単位で送ってもらったから、全弾撃ち尽くして帰ろう。
後で第一から第四、第七から第九までの提督にも挨拶に行かないとな。
この出費は経費で落とそう。
是非とも、落とさなくては!
「初めまして。函館鎮守府に着任したばかりの新人少佐です。この度は挨拶に参りました。」
値踏みする冷たい視線の中を掻い潜って、提督に挨拶する。
「これはご丁寧にありがとうございます。君たち、これを今日のおやつにしなさい。北海道の菓子は貴重な品だ。よく味わって食べるんだよ。僕は彼とお話ししてくる。二階のルピシアにいるから、なにかあったら電話かメールをくれ。」
紅茶専門店にて男二人で茶を喫する。
店主は元艦娘で、明るい娘であった。
「この店を選んだのには理由があります。」
彼が口火を切ってくれた。
「ほう、何故ですか?」
「防諜態勢がしっかりしているのですよ。艦載機も中には入れません。」
「それはいいことですね。」
「今日は函館からわざわざ新人提督がお越しになられた。しかも、『艦娘たらし』と評判の方だ。呉でも伝説になるでしょうね。」
「私はモテない男ですし、嫁も彼女もいません。皆さん、なにか勘違いしているんです。」
「艦娘と人間の女性は似て非なる存在です。別物ですよ。」
「そうなんですか。」
「そうなんですよ。」
「このお茶はおいしいですね。」
「紅茶好きの元艦娘が淹れていますから。」
「成程。」
「第六の提督がここを建てさせたのです。」
「先輩らしい。」
「まったくです。」
「ところで話があります。」
「今日はいい天気ですね。」
「えっ? ええ、私もそう思います。」
「人生、晴れた日ばかりではありません。」
「ええ、仰る通りです。」
「うちの子たちは皆よい子です。」
「異論はありませんね。」
「今日のご用向きは一体なんでしょうか?」
「交流は大事だと考えます。その内に演習は如何でしょうか? こちらの艦娘たちは錬度が高そうですし、我が鎮守府の子たちも勉強になると思います。」
「そうそう、折角お越しいただいたんです。案内役を用意しますから、是非とも見学していってください。」
「それはよい提案ですね。」
「セイロンやインドが安定したら更に良質な紅茶が飲めますので、函館の将来にも期待しています。」
「努力します。そうそう、こちらだと尾道紅茶もありますね。」
「よくご存じですね。ええ、あれの味わいも悪くありません。」
案内役の駆逐艦の子と鎮守府内を歩く。
名前は浜風だそうだ。
大人っぽい子だなあ。
あの提督、外見に反して食わせ者だぞ。
なんか、うやむやにされた感じが強い。
でも実際になにかしら介入したら、命の保証がないかもしれない。
これは、私の手にあまる。
憲兵隊に内部調査してもらった方が確実ではないだろうか?
悶々としていたら、案内役の駆逐艦の子が話しかけてきた。
美形でしかも胸が大きい。
彼女はモテるんだろうな。
「正直に言います。我が鎮守府の駆逐艦たちは非常に不安を抱きながら毎日過ごしています。」
「そんなに酷いのですか?」
「大破の状態で、敵の勢力圏内を長距離航行しなくてはならない破目に陥ったような気持ちです。」
「……それは酷い。」
「なんとかなりますでしょうか?」
「大変難しいですね。機関銃の弾が飛び交う地雷源を無傷で突破しなくてはならない状態です。」
「私の体……いえ、数名の有志の体を自由に出来るという報酬でもダメですか?」
「皆さん、私のことをなんだと思っているんですか。そんなことはしません。」
「魅力はありませんか?」
「ありますよ。でも、それとこれとでは話が違います。」
「このままでは鎮守府が崩壊します。」
「早めに転属願いを出して逃げなさい。それくらいしか助言出来ません。貴女たちの提督は好意を寄せている艦娘たちと共に沈むつもりのように見えます。ならば、その前に手を打つべきです。憲兵隊に内部調査してもらうという手もあります。」
「最初の頃は和気藹々とした、よい雰囲気の鎮守府だったそうです。」
「昔話に引き摺られていると、貴女も破滅の渦に巻き込まれますよ。」
「私が貴方をお呼びしました。」
「光栄ですが、手遅れですね。」
「どうにかなりませんか?」
「どうにもなりませんね。」
「友人が司令官に恋をしているのです。」
「諦めさせるべきですね。彼は危険だ。」
「他の司令官にも相談しましたが、誰も手出し出来ないようです。」
「下手をしたら、鎮守府で内戦ですからね。不祥事どころではなくなるでしょう。だから私が呼ばれた、というところですか。正規の手順を踏んだ本式の提督ではありませんし、同じいなくなるなら、消耗品扱いのなんちゃって提督の方が望ましい。」
「わ、私はそんなことを考えてはいません! 鎮守府が正常化して欲しいだけです!」
「あれは末期です。どんな名医でも治せないでしょう。仲のいい子たちと早く逃げなさい。憲兵隊に相談しなさい。私から言えるのはそれだけです。」
第一から第四、第七から第九までの提督にマルセイバターサンド持参で挨拶回りした。
私に虚名の『艦娘たらし』が引っ付いているのは、どうやらここの提督たちにも既知の話らしい。
酷いものだ。
私は今も童貞だというのに。
呉市内の小料理屋にて夕食。
焼き鳥が特に旨い店らしい。
ここの女将は元艦娘で、艦娘の駆け込み寺も兼ねているそうだ。
先輩の深謀遠慮はどこを向いているのだろうか?
浅学非才の身ではその指先すらよく分からない。
「おえんか?」
焼き鳥を口にして咀嚼した後、先輩はぽつりと言った。
焼き鳥の盛り合わせは軟骨やハツもあり、軟骨入りのつくねはコリコリしておいしい。
「ダメですね。あれは私程度の者では手にあまります。」
「浜風に逃げえてゆうたそうじゃな。」
「それくらいしか助言出来ませんね。」
地酒がおいしい。
雨後の月というそうだ。
帰りに買ってゆこうか。
刺し身も旨い。
魚の目利きで包丁の扱いが上手なのだろう。
「女将、肉じゃがじゃ。」
「わかったわ。今日は知らない人が一緒なのね。」
「函館の提督じゃ。」
「ああ、あの。」
「なにか知っているんですか、女将さん。」
「艦娘たらしがこの店に来てくれたとは光栄ね。」
「何故みんな、こんなに冴えなくて人付き合いが苦手なおっさん童貞をギラギラした美少女ハンターみたいに言うんですかね。」
「自虐もそこまでゆくとてえしたもんじゃの。うん、女将の肉じゃがは最高じゃ。」
「流石に気分が高揚します。」
「先輩の方がたらしですね。」
「失礼じゃのう。わしゃあ、鳳翔一途じゃ。」
「誘惑の仕甲斐がなくてつまらないわ。」
夜は更けてゆく。
肉じゃがも旨い。
翌朝、ご飯、玉子焼き、味噌汁、目刺し、漬け物といった和定食を平らげ、先輩に挨拶して敷地内を歩いた。
門が向こうに見えてくる。
結局なにも出来なかった。
この出張に意味はあったのだろうか?
目の前に重巡洋艦の子が二名見える。
愛宕姫と高雄夫人か。
「ご挨拶が遅れました。愛宕です。」
「高雄です。」
顔は笑っているが、目は笑っていない。
「函館のなんちゃって提督です。」
「あらあら、名うての艦娘たらしと聞いていますよ。」
「そんなことはありません。彼女すらいないんです。」
「彼女にしないで、体だけが目的ということですか?」
「それは失礼ですね。そんな相手すらいない童貞ですから。」
「失礼しました。噂なんて、ホント、あてになりませんね。」
「噂とはそういうものです。自分自身や親しい人に実害がない限り、好き勝手にいじるものですから。」
「私たちは滑稽に見えますか?」
「滑稽ではありませんが、近々沈没しそうには見えますね。」
「愛が欲しいだけなんです。」
「それだけのために鎮守府を潰すのは得策ではありません。」
「もう止まらないんですよ。」
「ではこうしたらどうです。交代で愛しあうんです。共有化するんですよ、提督を。殺しあうよりも建設的です。このままでは破滅しかありません。」
「……考えてみます。」
「占有は不可能ですし、戦友と砲火を交えるのは狂気の沙汰です。嫉妬に狂って仲間を沈めるようになったら、鎮守府そのものの未来はありません。よく話し合うべきです。ねえ、皆さん。」
物陰からぞろぞろと艦娘たちが現れた。
彼女たち全員が提督に恋しているのか。
「流石、艦娘たらしです。感服しました。」
「彼女すらいないのに、妙な虚名ばかり飛んでゆきます。」
浜風もそこにいた。
そして。
彼女はやさしく嗤(わら)った。
【オマケ】
どこかで誰かが……。
「何時から、妖精が人類側だと思っていたのだね?」
「ドイツ艦が本国から、とか、イタリア艦が本国から、とか、君は本気で信じているのかい?」
「勘のいい提督は困りますね。」
「僕らと契約して、提督になってよ! 駆逐艦の子と結婚させてあげるからさ!」
「艦娘が処女ばかりだと思っていたのかね? 甘いな。」
「敵に勝てたのは艦娘の創意工夫とその装備のお陰だ。君の指揮がよかったからではない。」
「神風の実装はまだですか?」
「『解体』された元艦娘が幸せな人生を送っている? 君には想像力の欠片も存在しないようだね。考えてもみたまえ。人の都合で生み出されて戦争に明け暮れていた人造人型兵器が、どうやって人間社会で暮らしていけるのかね? 人間が就職困難で齷齪(あくせく)しているというのに、なんの技能も社会経験もない彼女たちの割り込む余地がどこにある? 握力ひとつ取っても、人間とは全然違うのだ。仮に受け入れられても問題が多発するだろうことは容易に想像がつくよ。それすら思いつかないとは情けない。大湊(おおみなと)や呉第六の提督のように努力している者もいるが、大抵の提督は大本営の公式発表を鵜呑みにしている。疑問を持たない人生は楽しいかね? なにかを考えることは疑問を持つことだよ。空っぽのまま大本営に使い潰されたくないなら、もっと考えることだ。それが、結局は彼女たちの為になる。」
「なあ、提督。俺たちって、オーラ斬りは出来るのかな?」
「ねえ、提督。『ダグラム』とか『イデオン』って面白いの?」
「この大和はまだ最終調整中なんですよ! 実戦に出せる訳ないでしょうが!」
「近代化改修の現場を見たことがない、ってのが今の発言で丸わかりだな。」
「また駆逐艦の子とカケオチする提督が出てきたか。」
「立ち食い蕎麦には月と浪漫があるんですよ。ねえ、『月見の夕張』さん?」
「夕風の実装はまだですか?」
「貴方は戦争を、艦娘を、なんだと思っているんですか?」
「政治抜きに戦争が出来ると思っているならお笑い草だ。艦娘抜きに鎮守府が回せると思っているなら滑稽だ。君はなんのために提督業をしているのかね?」
「彼女たちは道具ではない!」
「そう言って、死んだり殺されたり行方不明になったりした提督が何人もいるよ。」
「私の名前は吹雪です! 八人目になりますが、よろしくお願いしますね、司令官。」
「どうせ……どうせ……みんな沈んじゃうんだ。」
「情けないこと言っていないで、ちゃんと指揮を取りなさい、クズ司令官! このまま進軍させると不味いから、進撃中の第一艦隊を撤退させるわよ!」
「……君の好きにするといい。僕はもう指揮なんて出来ないよ。」
「なに職場放棄しているの! あんたがしっかりしないと、みんなダメになっちゃうじゃない! 責任を持ちなさいよ、クズ司令官!」
「そもそも僕に提督業が務まる筈がなかったんだ。妖精が見えるだけだし、なにをやってもダメなんだ、僕は。」
「みんな、進軍はなしよ! 即時に撤退して! ええ、クズ司令官の許可は出ているわ! クズ司令官! 受け入れ態勢の準備を! ……司令官!? ……あのクズ野郎!」
「俺にまた提督をやれとは、大本営も余程人材不足のようだな。なあ、一航戦。」
「この状況で足踏みして、正規空母としての誇りを失う訳にはいきませんから。」
「最近、艦娘の技術が流出して偽艦娘が大陸沿岸に出没しているという噂がある。」
「駆逐艦を嫁にしやがって! テメエ、憲兵だろ!」
「娘だ。」
「娘とイチャイチャする父親がなにを言うんだ!」
「俺の娘は可愛い。だから問題はなにもないな。」
「出雲と磐手と八雲の実装はまだですか?」
「問いましょう。きのこの山とたけのこの里とどっちがお好きですか?」
「これ、アソートパックだから両方入っていますよ。よかったですね。」
「いえ、マス……提督、そういう話ではなくてですね、どちらがお……。」
「みんなで仲よく分けて食べてくださいね。」
「我々妖精がどこから来たのか、なにを目的にしているか、何故誰も疑問に思わないんですかね?」