はこちん!   作:輪音

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LⅩⅩⅧ:研究員

 

 

 

ここからの話はすべてオフレコでお願いしますよ、先生。

何故、ケッコンカッコカリなんてシステムを組んだのか、その理由から話しましょうか。

これはね、呪いなんですよ、先生。

あの人間モドキな人形を従える、人形遣いどもを鎮守府に縛りつける鎖なんですよ。

おや、怒っていらっしゃる?

おやおや、おやさしいことで。

私だったら、幾ら資質があろうと提督なんざ御免こうむりますがねえ。

だって、考えてみてもくださいよ。

人間でもないのに、人間の真似をして泣いたり笑ったりするんですよ、あいつらは。

こわいこわい。

剣呑剣呑。

そのこわい人間モドキを、鎮守府いや提督に縛りつける技術を我々は開発しました。

それが、この指輪です。

限界錬度突破機能はあくまでも偶然の副産物ですね。

まあ、こちらとしても都合がよかったので結果オーライですな。

え?

ええ、これは人間が作ったモノではありません。

現在の人間の技術では開発不能ですね、これは。

はい?

心のつながり、ですか?

そんなことが本当に出来るのなら、それはとてもおそろしいことですよ、先生。

感情が逐一相手に伝わるなんて、それは大変こわいことだと思いますよ、先生。

確かに、歯車がかっちり噛み合っている時は問題ないでしょう。

しかし、少しでも行き違いがあったら?

不測の事態で指輪を装備したどちらかが死んでしまったら?

いや、艦娘は『死にません』な。

まあ、兎に角、どちらかがこの世からいなくなったらどうなると思います?

下手をすると、おかしくなりますよ。

えっ?

ふっ、先生はロマンティストですな。

そういう提督も発生するかもしれませんが、それは可能性の範疇だと思いますよ、先生。

こんな禍々しいモノをよく装備出来るものだと、嵌めたモノを見かける度に内心苦笑していますよ。

まあ、我々が提督や艦娘を嵌めた訳ですがね。

はは、別に冗談のつもりじゃありません。

で、先生。

どうされます?

私を処断されますか?

私はただの技術屋だ。

コレを開発した一員ではありますが、コレをどうにか出来る立場でもありません。

ええ、既に呪われていると思いますよ。

それくらいの覚悟はとうにしています。

このことをすっぱ抜くような硬派の記者など、日本には滅多にいませんよ、先生。

日本のジャーナリズムなんて、芸能人の惚れた腫れたを延々追いかけ回しているくらいが関の山です。

抵抗出来ない弱きモノを散々打ち据え、権力ある強きモノに媚びへつらうくらいしか出来ませんから。

そんな連中を過度に信用されない方がいいですよ、先生。

あいつらは、他人を利用することしか考えちゃいないんですから。

私としては、お世話になっている先生の顔が拝めなくなるのは御免こうむりたいところですね。

さて、こんなところですか。

他に質問はありますか?

……わかりました。

それではまたご連絡ください。

歓迎しますよ。

……いえいえ、そんなつもりはありません。

ここは基本的に閑職ですから、暇をもて余しているんですよ、先生。

アハハ、それは勘弁してください。

私にはそんな度量も度胸もありません。

このままここで朽ち果てたいものです。

お元気でお過ごしください。

誰か来てくれ。

飛鷹か。

助かる。

先生を車まで送ってあげてくれ。

頼むぞ。

 

 

ふう。

入れ。

白露と深雪か。

なんだ?

この間宮羊羮か?

そういうところは目ざといな、お前ら。

飛鷹たちと一緒に食えばいい。

私?

私は甘いものが苦手でな。お前らに全部やるよ。

ああ、持っていけ。

 

 

入れ。

磯波か。

どうした?

手伝い?

今のところはないな。

……あー、いや……掃除でもしてくれたらありがたい。

ああ、頼むよ。

……。

何故私ごときにあんな笑顔を向けるんだ?

ふん、あれはまやかしに過ぎん。

 

 

はい。

ええ、それはかまいませんが、他の鎮守府や警備府や泊地で引き取ればいいのではありませんか?

ここは鎮守府でも警備府でも泊地でもないのですよ。

引く手数多でしょう?

足りない基地は沢山あるんですから。

函館からもせっつかれているんです。

一名でも二名でもいいから回してくれって。

えっ?

艦娘が望んだ?

はて。

私はただの一般人ですよ。

提督でも憲兵でもありませんし、妖精眼も持ってはいません。

同調率もさほど……。

はい、はい。

わかりました。

こちらから受領に行けば……失礼、引き取りに行けばよろしいのでしょうか?

……それはありがたいですね。

はい、はい、ではお待ちしております。

 

 

おい。

望月に初雪。

何故男風呂にいる?

さっさと出ていけ。

私が困るんだよ。

その手付きはやめろ。

まったく、どこで覚えるんだ?

 

 

誰だ?

なんだ、お前ら。

添い寝?

かまわんが、触るなよ。

ふん、寝ぼけたフリで触ったことは覚えているんだよ。

そんなに見たいのか?

フン、冗談だ。

なにを赤くなっている?

さっさと寝ろ。

 

 

 

 


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