「雪風!ゆーきーかーぜー!!!」
…んぅ?
「雪風!雪風!!起きなさい!」
ほぇ?私は…私は……。
確か…確か……。あれ?えっと…?
ド ス ン! ! ! ! !
「ふぇぁあ!?!?!?!?」
激しい衝撃に襲われて私は目を覚ました。
「やっと起きた…。」
そう言って私を撫でる陽炎姉さん。
「なんか激しく魘されてましたけど…大丈夫ですか?」
心配そうな顔をしながら私の顔を覗き込む不知火姉さん。
「凄く怖い夢を見ただけなので雪風は大丈夫です!」
そう。全てが夢だったのだ。
よくよく考えてみれば私の司令官はそもそも身長150㎝代の弱冠ぽっちゃり系のチビでまったくマッチョじゃないし、艦娘に暴力を振るったり暴言をはいたりする人物ではなく、どちらかと言えば自分より上の立場の人に不平を漏らしたり自らの失敗にオロオロしていたりと夢の中で見た〝筋肉達磨〟とは全くの別物であるのだ。
「まぁ、流石は雪風ね…レ級の攻撃を直撃で受けて帰って来て一週間で目を覚ますなんて…あんたのその生命力ちょっと分けてほしいぐらいよ。」
…。
……。
「陽炎、もう少し何かしら言葉はなかったのではないでしょうか?」
「ちょっともう、不知火ったら真面目すぎぃ!」
照れ笑いを浮かべながら不知火姉さんを小突く陽炎姉さん。「幸運艦でも色々あったりするのね。」
そういう陽炎姉さんが魘されているのは見たことないんですけど…。
「幸運艦の私でも魘されることぐらいあるんですよ?」
「え~、本当に?私なんていつも神通さんの訓練が激し過ぎて夢も見ないぐらいに爆睡しちゃってるから悪夢も含めて夢なんて殆ど見ないわ。」
「それは不知火も同じです。夢なんて見る余裕なんてありません。」そう言いながらうんうんと頷く不知火姉さん。
神通さん…どんだけスパルタなんですか!?いや、陽炎姉さんはともかく不知火姉さんまでやっつけちゃうって…まぁ、確かにこの鎮守府の最高練度を持つ戦艦の山城さんが焦って逃げ出すような人だからあり得るのかな…。
「ねぇ…雪風?もっと私達を頼って良いんだからね?」
そう言って私を抱く陽炎姉さんと不知火姉さん。
確かな温もりがここにある。
幸運艦、幸運艦と呼ばれ続けて自覚もないのに幸せだと皆に言われて…その裏で私は雪風は独りぼっちになることを恐れて生きてきた。それはまるで寒くて狭い牢獄のようで、閉じ込められたかのような閉塞感が私の心を蝕んでいた。
でも、私は気付いたのだ。私…雪風にはたくさんの姉妹がいてこんなにも優しくて暖かくて…。絶対に雪風を独りぼっちにしたりなんてしない。
それに気付いた私は凄い〝幸福者〟だ。