骨ト旅ビト   作:高反発枕

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スマホ変えたらメモの内容も吹っ飛んで困惑。
ねぶる方は話を思い出し次第更新していきます。

深夜にまたもや思いつきを書き連ねるだけの衝動的文章。


プロローグ

「ほんと、ひさしぶりでしたね、ヘロヘロさん」

-トーン

「いや、本当におひさーでした」

「えっと転職して以来でしたっけ?」

「それぐらいぶりですねー。実のところ今もデスマーチ中でして」

「うわー。大変だ。大丈夫なんですか?」

-トーン?

「体ですか? ちょーボロボロですよ」

-トトーン

 

 

 とあるオンラインゲームのサービス終了日。

異形種のみで結成されたギルド、アインズ・ウール・ゴウンの拠点には久方ぶりに会うギルドメンバーと歓談するギルドマスターと、その二人の会話に相づちを打つ者がいた。

 

 

「いやー、それなのに来てもらって悪かったです」

-トーン

「何をおっしゃいます。こっちも久しぶりに皆に会えて嬉しかったですよ」

「そう言ってくれると助かります」

 

 

 相づちといっても言葉が交わされるわけではない。その音は例えるならフルートとパイプオルガンの音色を混ぜたものに近いだろうか。軽やかに響くそれは、とても優しい。

 

 

「まぁ、本当は最後までお付き合いしたいんですが、ちょっと眠すぎて」

「あー。ですよね。落ちていただいて結構ですよ」

-トーン

「ギルド長はどうされるんですか?」

「私は一応最後まで残ります。他に誰かが来るかもしれませんから」

-トントーン

「なるほど。それにしてもビトさんは最後まで喋りませんでしたね!ちょっと期待してたのに」

-トトトン

「ビトさんは私以上にロールプレイに余念がありませんからねー。悪ふざけ組がなにしようとも駄目でしたし」

「あの騒動で喋るに賭けてた私は酷い目にあいましたよ。…今までありがとうございました、モモンガさん。このゲームをこれだけ楽しめたのは貴方がギルド長だったからだと思います。ビトさんも、最後に会えて良かったです」

「そんなことはありません。皆さんがいたからこそです。私なんか特に何かしたわけではないです」

 -トーン

「それこそ、そんなことがないとは思いますが……本当にありがとうございました。では私はこれで」

「ええ。お疲れ様でした」

 -トン

 

 ―― ヘロヘロ さんがログアウトしました

 

 

 そんなアナウンスが鳴ると同時に、モモンガは最後までギルドに残り、支えてくれたギルドメンバーに目線をやる。その目線の先、ビトと呼ばれた人物の姿は、有り体にいってしまえば長いマフラーをしている上品なてるてる坊主である。頭部の布は猫耳のように少し尖っており、顔と呼べる部分は真っ暗で、目の役割を果たしてるのであろう二つの光が瞬いている。腕らしきものは見当たらず、布の下から伸びた足は段々と先細りし、初めてその姿を見る者は風が吹けばそのまま飛んでいってしまいそうな印象を受けるだろう。とはいえそんなひ弱そうな外見とは裏腹に、ビトはギルドでも上位の実力者である。

 

 

「ビトさんはどこで最後を迎えるつもりですか?」

 -トン?

「私ですか?私は玉座の間にしようかと」

 -トーン

「嬉しいなあ。それじゃあ時間も迫ってきてますし、行きますか」

 

 

 金と紫で縁取りされた豪奢な漆黒のローブを翻しつつ立ち上がりながら、思えばこの独特なロールプレイにも慣れたものだ、とモモンガは嘆息する。

 

 

 ビトが演じるのは100年以上前のゲームに登場するキャラクターだ。そのゲームは文字や言葉による直接的な情報やコミュニケーションを排し、美しいビジュアルと演出だけで世界観を表現する。もちろん主人公にも名前は無い。道中共に歩む他のプレイヤーとも言葉を介して交流するのはエンディングまで不可能であり、ギミックを起動するための楽器のような音の羅列が唯一、ゲーム内での意思疎通の手段となる。

 ビトはその設定を忠実に守り、音でしか会話をしない。そのため、音のニュアンスとアイコンの表情から意思を確認するしかないのである。そんなビトとモモンガの付き合いはモモンガがたっち・みーに異形種狩りから助けてもらったときから始まっている。

 

 

(ああ、あのとき、ビトさんがたっちさんのマントから分裂して出てきたときは本当に-

 -トントーン?

 

 

 ふっとモモンガは現実に戻される。目の前には裾をヒラヒラと揺らすビトの姿。

 

 

「!すいませんちょっとぼーっとしてて!うわもうこんな時間だ急がなきゃ」

 -トン

「どうしました何か・・・」

 

 

 モモンガが自分に意識を向けていることが分かると、ビトは室内のある一点を指さす。その先にあるのは1本のスタッフ。ケリュケイオンをモチーフにしたそれは、7匹の蛇が絡み合った姿をしており、口にそれぞれ違った色の宝石を加えている。握りの部分は青白い光を放つ水晶のような透き通った材質で出来上がっていた。誰が見ても一級品であるそれこそ、各ギルドに一つしか認められないギルド武器であり、『アインズ・ウール・ゴウン』の象徴とも言える物である。

 

 

「スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン・・・」

 -トトン

「いいんですかね私が持って行っても・・・」

 -トントーン

「そうですね。残されるのは悲しいことですから・・・一緒に行こうか、ギルドの証よ」

 

 

 スタッフを指さしたまま『悲しみ』アイコンを連打するビトに押され、モモンガはスタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを手におさめる。瞬間、スタッフから揺らめきながら立ち上がるどす黒い赤色のオーラ。時折それは人の苦悶の表情をかたどり、崩れ、消えていく。

 

 

 「作り込み、こだわりすぎ」

 -トン、トン

 「大丈夫です、行きましょう。玉座の間へ」

 

 

 

 道中出会ったNPCを全て引き連れ、二人は玉座の間へと入っていく。NPCをひれ伏させた後、モモンガは押されるようにビトに玉座に着席を強要された。

 

 

「ちょ!?ビトさんはどこに座るつもりですか!」

 -トーーーン

 

 

 モモンガの文句も聞き流し、ビトは音も無く羽ばたくと、モモンガの真上を旋回したのち、天井からつり下げられた旗それぞれを惜しむように触れていく。その様子にモモンガは諦め、ビトが触れるたびに淡く輝く旗に合わせて刻まれた紋章の持ち主の名前を読み上げていく。

全ての名前を読み上げ過去の記憶に思いを馳せて瞳を閉じたギルドマスターのそばに、最後まで残ったギルドメンバーはそっと寄り添った。

 

 

「そうだ、楽しかった。楽しかったんだ・・・。ビトさん、ありがとうございました、本当にありがとうございました。こんなギルドマスターに最後までついてきてくれて」

 -トトトーントトントントトトン

 

 

 珍しく長文を話したビトに、モモンガは笑う。そして来る強制切断に備えて目を閉じた。

 

 

23:59:48、49、50……

 

 

「こちらこそ、ありがとう。モモンガさん」

 

 

 モモンガはばっと目を開け、ビトの方を見る。そこにはいつもと変わりなく飄々とした態度のビトがいた。その姿に身体から力を抜き、また目を閉じる。

 

 

 「最後の最後で・・・ビトさんはやってくれるなあ、もう」

 

 

 23:59:58、59―― 

0:00:00……1、2、3

 

 

 「……ん?」

 




※主人公はこれ以降一切日本語を発しません。
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