ブラコン•ブレット 作:ふんぼぼぼ
「また失敗したみたいだな」
暗闇に、低く嗄れた声が響く。
全身を黒のスーツに覆ったその男は、部屋の一面に取り付けられた大きなモニターを眺めていた睡蓮に向かって続けた。
「これで何度目の失敗だ?もういい加減に諦めようぜ。そろそろ五翔会の連中も勘付き始めてるだろうしな」
モニターの中では恐らくステージ2ほどであろう、馬と鹿の入り混じったような姿形をとるガストレアが暴れ、自身を取り囲む檻を破壊せんとしていた。
「
「もう聞き飽きたぞ、その御託は。
そら、早く行かんとまたガストレアに逃げられるぞ」
ふと画面を見ると、今まさに鉄の檻をぶち破りそのまま扉を破壊して逃げようとするガストレアの姿があった。
「いっそバラニウムの檻に入れて、失敗したら始末したほうが楽かもね」
「馬鹿野郎。ガストレアの生け捕りがどんだけ大変だと思ってやがる」
「ステージ2だし?」
ガストレアのいる部屋を目指し、照明の少ない廊下を走りながら、二人は話を続ける。
「おクスリ代も馬鹿にならなくなってきた。俺たちの他にもトリヒュドラヒジンを買い漁る奴らがいるらしくてな」
「・・・何のために?」
「さあな。もしかしたら俺たちと似たようなことを考えてる変態が他にもいるのかもしれん」
「ただのパーティ目的であると願いたいね」
「今時トランスパーティなんて流行らんだろう」
走り始めて数分経つ頃には、目の前に機械的な扉が見えていた。
恐らくあの奥にガストレアがいるのだろう。時折、爆発にも似た衝撃音が聞こえてくる。
「ここまで来て聞くのも何だけど、いつもの子供は?取り押えるのがあの子の役目でしょ?」
「今日はお休みらしい。なんでも、友達と赤穂浪士物の映画を見に行くらしい。ウキウキしながら出て行ったぞ」
「・・・あの子、友達とかいるのか。しかも渋めの」
「お前とは違って社交的だからな」
「・・・なんか虚しくなってきた。早く終わらせて
「そんなこと言ってるから嫌われるんだぞお前・・・」
その時、ドゴォォン!という轟音を立てて扉が破られた。
立ち昇る煙の中からゆっくり現れる、馬とも鹿とも分からぬ姿のガストレア。
まるで血を求めるかの如く、その双眸は赤く染まっている。
身構える二人の間を何度か視線が行き来したかと思うや否や、狙いを定めたのか、頭を下げ、その獰猛な角を前に向け、今にも突進せんと、そのしなやかな脚部を怒張させていた。
「そういえば、生でお前の戦闘を見るのはこれで2度目か。まだあの恥ずかしい口上は続けてるのか?」
「もちろん我が最愛の弟である蓮太郎に倣って続けてる。あと、巻き込まれないよう気をつけて」
言うが早いか彼おんなの纏う雰囲気が一変した。
身体は相手の斜向かいに、腰を落とし、構えるは百載無窮。攻防一体の型
「天童式戦闘術皆伝」
スッと細められた眼が赤く染まっていく
「ステージI ガストレア モデル”ヒューマン”」
口上は高らかに、己が身体を化外へと変貌させる。
「里見睡蓮、尋常にお相手仕ろう」
斯くして観客は独りごちる。
「やっぱ厨二チックだなそれ」