沢山の星々が煌めく宇宙空間。その上も下も右も左もない空間に一隻の青く美しい帆船が星屑をかき分けながらゆったりと進んでいた。
その帆船は嘗て全宇宙を統べていた古代文明の遺産。持ち主の意思を汲んで様々な形態に変化できる超科学の塊ーーその名をローア。
ローアは今、一人の主人の持ち物となり色んな星を巡っている。
主人は少し前に全宇宙を支配しようとしたものの、その計画のために利用した「星の戦士」により懲らしめられた。そして同時に魂を救われた。忌まわしき王冠「マスタークラウン」によって囚われた魂をその星の戦士により解放されたのだ。
そして今はその贖罪の為に、テーマパークのオーナーとしてローアと共に旅をしている。
「・・・ふう。コレでミルキーウェイの主な星全部ニマホロアランドを作レソウダネエ」
青いローブに包まれた人物、今のローアの主人であるマホロアはコーヒーを啜りながら呟いた。
白い机の上には数々の書類や設計、テーマパークの見取り図が置かれていて、時折その書類に目を通している。
「マホロアランド・・・フフフ、アンナ王冠使わなくテモ、ある意味宇宙全部を征服デキルジャないカ」
嘗ての自分の行いを自嘲するように小さく笑うとその書類を机の上へと放った。
ふと机の前に広がるホログラム画面を眺める。もう直ぐに自分の第二の故郷、全ての始まりであるポップスターへ到着する。そこで新しく計画しているアトラクションを試験的に運用する為にだ。
彼は心中にてそのアトラクションを夢想する。アトラクションを一番最初に遊ぶのはもちろん、自分を懲らしめ、そして救ってくれたあのピンク色の勇者。
新しいアトラクションを楽しむ勇者の顔を思い浮かべて自然と柔らかな笑みを浮かべていると、ホログラムに映し出されたレーダーに巨大な反応を示して警告音が響いた。マホロアの夢想はそこで消える。
「・・・ローア、レーダーに反応してイル物体を映し出しテ」
机の上に広がる操縦用のキーボードを軽快に叩きながらそう指示を出すと直ぐに画面へとその姿は現れた。
五つの巨大な脚を持った巨大な球体。彼はその宇宙船と思しき球体に見覚えがあった。
自分の第一の故郷を喰らい尽くし、星を殺した組織へと鋭い視線を向けて口を開く。
「ーーーハルトマンワークス社・・・ッ!」
星から星へと渡り歩き、文明開化を促しながらその星に眠るエネルギーを食い潰してゆく「星喰らい」「星の殺し屋」「死の商社」と裏の界隈で名高い巨大なカンパニー。
マホロアの第一の故郷にて起業したと思えばあっと言う間に星を使い物にならなくした組織だ。今でも悠々と去って行くカンパニーの母船が目に浮かぶ。
「ナンで彼奴らがこんなトコロに・・・マサカッ!」
マホロアは自分の嫌な予感が当たらぬよう祈りながらキーボードにて計算を始める。然し現実は残酷で、その予感が当たってしまった。
「彼奴ら、ポップスターに向かッテいル!?」
彼らの母船の航路から計算すれば、間違いなくーーー自分の第二の故郷にしてあのピンク色の勇者が住んでいる、宇宙で最も美しい星へと向かっている。
マホロアはギリ、と上下の歯を擦り合わせた。今度はあの星を食い潰すつもりなのだ、と。
彼の心の中で彼らへの怒りが煮えたぎった。然し今の自分はあまりにも無力、どうにも出来ることではない。
然し・・・自分には力以外の才能がある。
科学にて他人を欺き、他人を踊らせる才能。今度は宇宙征服の為にではなく、自分の愛する故郷の為にこの才能を使おう。彼はそう考えた。
「・・・ローア、君ハ「彼奴」ニ恩返し出来たダロウケド、ボクはマダナンダヨネ・・・力を貸してクレルカイ?」
彼はローアへと問いかける。ローアは機械だが、彼には分かる。ローアには心があると。だからこそ持ち主の意思に反映しているのだと。
ローアはその問い掛けに応えるようにその画面に「OK→」の文字を浮かべてから大量の文字を自分で打ち始めた。
「ハルトマンワークス社のネットワークに侵入シテ。チョッートだけ細工をサセテ貰うヨォ・・・」
彼がニヤリ、とした途端に画面の動きが静止する。彼らのネットワークへの侵入に成功したのだ。マホロアは遠慮なく極秘資料を数々と読み始める。
ローアは古く、そして強大な科学力によって制御されているから逆探知の恐れはない。寧ろ少しデータを弄ってもバレはしないだろう。
そしてマホロアはその極秘資料からとある機械の設計書へと視線を向けた。
持ち主によってその形態を変えて星を侵略する兵器、「インベードアーマー」の設計書だった。
「・・・ヘエ、結構面白いのヲ作ロウとしてルンダネエ・・・」
その設計書を細かく読み取ってからキーボードに手を置くと内容を書き換え始めた。
設計書を使い物にならなくするのではない。とある人物が搭乗するとその性能の限界値を超える設計にコッソリと変えるのだ。
「彼奴ナラ・・・カービィナラキッと使い熟セルハズダヨォ」
対象物のデータを読み取り、その能力を模倣するコピーシステム。
ハルトマンワークスの幹部連中を倒す為に、その両腕を工作機械へと変形させる設計。エトセトラ、エトセトラ・・・。
一通りデータを書き換えてからネットワークへの接続を切る。彼は再び椅子へと凭れて溜息を吐いた。
「後は任せたヨォ、星のカービィ。君なら上手くヤレル。ボクは精々高みの見物をサセテ貰う事にするヨォ。・・・マ、頑張ってネ」
後は彼を信じよう。あの宇宙一能天気で、宇宙一考え無しで、宇宙一バカ正直で、宇宙一食いしん坊で・・・宇宙一強くて優しいピンク色の勇者に。
そしてマホロアはゆっくりとアトラクションを夢想しながら昼寝をし始めた。