愉悦部になのはさんがやって来たようです   作:sT油

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stay night

夢を、見ている。

 

蕩けるようで切ない夢を

 

楽しくて幸せな夢を

 

吹き抜ける蒼い空の夢を

 

――――その空の下に咲く、真っ赤な夢を

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

赤かった。

その橋はとても綺麗な赤色で塗装されていた。

その橋の欄干から私は流れる川を見ていた。いつから見ていたのかはわからない。気付けばこの橋にいたのだ。

 

「――女、そこで何をしている」

 

いつからそこに居たのだろう、私の後ろの柱の支柱に寄りかかっている男がいる。

 

「女、質問に答えよ」

「川を、見てた」

「何か宝物の類いでも落としたか?」

「ううん。ただ、見てただけ」

 

私の返答が余程可笑しかったのか、男は高笑いをする。

 

「クッ……ハハハハハハ!世界め、今度の客もずいぶんと歪よな!フハハハハ!」

 

気が済むまで笑ったのだろう。男は私を尊大な態度で見る。

 

「よいぞ、名乗ることを許す。申してみよ」

 

名乗れ、と言われて初めて自分を意識する。

私は――――

 

「私の名前は高町なのは。それ以外はわからない」

 

自分でもおかしいと思う。

名前以外の記憶が無いなんてこと、普通はあり得ない。

 

「よいぞ、ならば着いてこい、女。右も左もわからぬ状態で放浪したくなければな」

 

なのにさっきあれほど笑った男は何故か納得した顔で歩き出す。

 

「あ、あの!」

「ん?」

「笑わない、の?」

「笑うものか。それともアレか?笑われて性的興奮を得る道化か?」

 

それだけは記憶がなくても違うとわかる。首を横に振る私を見て、口元にニヒルな笑みを浮かべた男は先に行く。

 

「ま、待って!」

 

追いかける私を真っ赤な夕日が照らしていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

男が足を止めた時には、もう辺りは真っ暗になっていた。

 

「ここは………」

「見ての通り、小さな教会よ。アイツが暮らす分には充分すぎるがな」

「アイツ?」

「すぐ会える。――そら」

男が教会の扉を開けると、そこにはひとりの神父がいた。

「戻ったか、ギルガメッシュ。今、お前の存在が露見すると面倒なことになるとあれほど……む。どうしたギルガメッシュ。お前が人を連れて戻るとは珍しい」

「客だ。もてなせ、綺礼」

「客……?まぁいい。飯でも食いながら聞くとしよう。――して、夕飯は何にする?私的には麻「論外だ、アレを食い物とは我は認めん。アレこそこの世全ての悪(アンリマユ)に他ならん」――人類最古の英雄王にも解らんか、あの辛みの素晴らしさは……」

ため息をつく男――ギルガメッシュ。ブツブツ言いながら出前を頼む神父――綺礼。どう考えても普通ではない。いや、教会に住んでいるとか言う時点でかなり珍妙ではあるのだが。

「何を呆けている、女。食事処はここではないぞ。まぁ、神の偶像の前で食したいと言うのなら止めはせんが」

言い放つとさっさと奥に進んでいくギルガメッシュ。

何故ああも皮肉っぽいのか、と思う反面、手をかけてもらっている、と思い出すと少し嬉しかったりと、複雑な気持ちである。

「やはりこっそり麻婆を仕込んで……」

アブナイ神父は無視して私は奥に進んだ。

 

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

奥の部屋――地下室だった――で待つこと20分。

「出前が届いたぞ」

ここに告白すると、私はお腹が減っていた。かなり。

いただきますを言うが早いか、私は目の前のチャーハンを殲滅することに全精力を注いだ。

 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

「――さて、では話して貰おうか、客人。君は何者で、何処から来て、どういう目的でここに来たのかを」

綺礼神父から目線を外し、チラリとギルガメッシュを見るとニヤついた顔を隠そうともしていない。

「えっと、私、高町なのはです。でもそれ以外はわかりません」

「どうだ?綺礼、面白かろう?真顔でこんな台詞を言うのだ。面白くない訳がない」

「…ギルガメッシュ、まさか…マスターでも、はぐれサーヴァントでもない人間を、ただ¨面白い¨という理由で、よりによって、この時期に、連れて、きた、と?」

キレてる。絶対キレてる。

チャーハンの付属スープを飲み干してから体を縮める。

「A!U!O!」

「なんだ?綺礼?申してみよ」

「今は前回の¨戦い ¨から十年!器が満ちたのだ!再び¨戦い¨が起こるのは必然!そんな時期に民間人を養うなど…!」

「?何を言っている、綺礼。コイツが民間人?馬鹿め。……まぁ仕方のないことか。どれ、試してやる」

ギルガメッシュはそう言うと突然指を鳴らした。

と同時に鋭い殺気が私に迫る。

 

『Protection』

 

閃光、そして衝突音。

目が慣れると数秒前となんら変わらない。

いや、違う点が1つある。

テーブルに転がった一振りの剣。

その剣の先端部分にはヒビが走っている。

直感的に、この剣を放ったのがギルガメッシュで、それを私が防いだのだと悟る。

「理解したか?綺礼よ。魔剣グラムですらこの有り様だ。Aランク宝具だぞ?これが民間人に防げる筈がなかろう」

「―――――ギルガメッシュ、この娘の出自に心当たりでも?」

「ない。だからこそ面白いのではないか」

「………いいだろう。ならばこの娘、高町なのはには全てを話すぞ」

「そこはお前の専門だからな。では我は寝る」

するとギルガメッシュはソファに横になり寝息を立て始めた。

「やれやれ―――では、高町。長い話になる。心して聞け」

コクリと頷く。

どうやら長い夜になりそうだ。




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