「冬木」という町の「新都」にある「言峰教会」の「屋根裏部屋」
そこの寝台に横になって考え込んでいるのは「高町なのは」という名の少女。
彼女は先程終わった「綺礼神父」の説明を頭の中で噛み砕いている最中だった。
「聖杯…戦争……望みを叶える願望器……それを手に入れるために七人の『魔術師』が殺し合う……」
魔術師は自身の使い魔たるサーヴァントを使役し、戦う。そのサーヴァントは過去の偉人、英雄、魔物と様々らしい。
しかし綺礼神父の言葉はそこで終わりではなかった。
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「まぁその聖杯戦争も、正しく機能していたのは第二次聖杯戦争までだがな」
「正しく機能していた…ってことは今は機能してないの?」
「機能はしている。英霊を喚ぶことも勝者の願いを叶えることもできる」
そこで神父は何かを思い出すかのように笑みを浮かべる。
「勝者の願いを叶える、そうだな。フッ………」
「それはどういう…」
「例えば…そうだな…」
神父の笑みはより一層深くなる。
「例えば、ある“正義の味方を志す男”が聖杯戦争の勝者になったとする。その時、男はどう願ったと思う?」
「例え話にしてはずいぶん具体的だね……そうだなぁ」
自分が正義の味方を目指すなら何を望むか
何もない私だがその答えはあっさりと出てきた。
「世界の恒久的平和、かな」
「悪の根絶、ではなく?」
「うん。理由は自分でもよくわからないけどね」
「驚いたことにその男の願いも世界の恒久的平和だった。だが」
「だが…?」
「その願いは叶わなかった」
「どうして!」
「男が願いを叶えることを放棄したからだ」
その男の真意は神父も知らないらしい。そう語る神父の顔は少し苛立ちが混ざっているように見えた。
「大方、聖杯にナニカを見たのだろう。……結果として男は己がサーヴァントに令呪を使い、聖杯を破壊した」
「……………」
それが前回の聖杯戦争の顛末だと知らされ、語ることは語ったと言われ、屋根裏の寝室を与えられ、今に至る。
「私は……なんのためにここに来たんだろうね……」
知らず胸元の赤い宝石に尋ねるように独り言を吐く。
次第に押し寄せてくる微睡みに身を任せながら自分の行く末を案じた。
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「これが私の出した答え。全人類の救済だよ」
「え?……にゃはは、それは仕方ないよ。それだけのことをしたんだもの」
「じゃあ、またね。●●●●ちゃん」
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朝の食事はギルガメッシュと二人きりだった。
この金髪の男のことは神父以上によく解らない。そう、例えるならば「天気」だろうか。気分の変わり方が予想しづらい、そんな感じだ。
「どうした?パンでは不服か?」
「いや別に……朝から凄いね」
自分の前には一枚のパンとバターが置かれている。それはいいのだ。問題は…
「なんださっきからチラチラと。不快だ、止めよ」
「ご、ごめんなさい」
果物が大量に乗った皿とギルガメッシュの手の中で揺らされているワイングラス。
そう、ワインなのだ。
「い、いただきます…」
もしかすると自分が忘れているだけで、あの朝食のスタイルは普通なのかもしれない。と、どうでもいいことを考えるのはそこそこに、ギルガメッシュに質問する。
「綺礼さんはどこに?」
「マスターの一人に会ってくると言っていたな。恐らくランサーのマスターだろう」
何故かニヤケているギルガメッシュは、グラスを傾けて中の葡萄色の液体を口に含む。
「よい酒だ。目覚めの後にはこのくらいの刺激がちょうどよい」
「マスターの一人って……何のために?」
「コトミネは聖杯戦争の監督官だからな。マスターがサーヴァントを召喚すれば一度顔を合わせる必要があるらしい。……まぁ奴の目的は別だろうがな。ハハハッ!」
ギルガメッシュの言葉の響きに嫌なものを感じた私は更に追及する。
「綺礼さんの目的って?」
「体のいい手駒を手に入れに行ったのだろう」
「手駒って……でも、そんなのできないんじゃ…」
「可能だから行ったんだろうさ。どれ、今ならまだ間に合うかも知れんぞ?」
言われるや否や教会を飛び出す。
赤い印のついた地図を寄越してきたギルガメッシュにはこの展開が始めから読めていたのだろうか。
「人殺しなんて………させない………っ!」
明朝、人気の薄い冬木市を走る。
目的地は……橋の向こうだ。
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