愉悦部になのはさんがやって来たようです   作:sT油

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らっきょコラボの復刻が来たんで、これはもうなのはコラボも来ることは確定では?????


始まりの夜

「この階は二年の教室があるとこ。下が一年で、上が三年ね」

 ふんふんふーん♪と鼻歌を歌いながら私の前を先行するのは、この学校の英語科教師、藤村大河。

「私が編入されるのは…二年、でしたよね」

「うん! 授業は明日からだけど、ちょっと覗いてみよっか」

 二年A組と書かれた札のある教室を、藤村先生に勧められるがままに覗くと、そこでは先程の葛木先生が何かの授業を行っていた。

「今は倫理の時間みたいだね。高町さんは何か興味のある教科とかってある?」

「……特にはないです。ただ…」

「ん~?」

「……いえ、やっぱりなんでもないです」

「そう?」

 するとチャイムが鳴った。

「あ、授業はこれで終わりだね。私はこれから終礼があるんだけど、どうする? 部活動の見学とかするなら後で案内するけど」

「大丈夫です。ここの設備はわかりましたから、あとは自分で回ります。それに、迎えも来るらしいので」

「そっかー、うん。高町さんはしっかりしてるし、大丈夫そうだね。それじゃ」

「はい。今日はありがとうございました」

 二年C組の教室に入っていく藤村先生を見送ると、私は踵を返して歩き出す。

 ここの雰囲気は割と気に入った。通えることに喜びも感じている。

 だが、何故かここは自分がいるはずのない場所だという思いも感じていた。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

人気のない屋上からグラウンドを見下ろす。あれは陸上部だろうか?仲が良さそうな三人の女生徒が談笑しながらハードルや長い棒を運んでいる。部活に所属するつもりはないが、記憶を失う前の自分はああいったことをしたのだろうかと思うと興味は湧く。

『今時の槍ってのはあんなにも撓んでんのか』

「ホントに迎えに来てくれたんだ」

『そりゃ勿論。サーヴァントってのはそういうもんだろ? まぁあの男の言いなりになるってのはどうも気に入らねぇが』

 あの男というのがどちらを指したものなのかという疑問はさておき、迎えに来たランサーに念話で話す。

『校門で待ってくれてるのかな。今行くね』

『いんや。俺はマスターのすぐ後ろにいるぜ。すぐに帰るわけにはいかねぇからな』

 はぁ、と背後でため息を吐く気配がする。どうやら本当に後ろにいるらしい。

『まだ帰らないって…どういうこと?』

『神父サマからのご命令だ。今晩ここにマスターが現れるかもしれないから見張れ。そんで本当に現れた場合には戦闘して敵方のサーヴァントの情報を集めろ…とさ。それと…ほらよ』

 足元に何かが投げられる。見るとそれは何枚かの枯れ葉と一枚の布だった。

『キャスターからだ。なんでも、誰も巻き込みたくないならそれを上手く使え…だとよ』

「何なの、これ?」

『人払いの札と身隠しの布だろうよ。ほら行くぞ、日が暮れるまでそう時間は無い』

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

 布を羽織って校内を歩き回る。放課後とはいえ幾人かの教師や生徒の横を通り過ぎるが、特に意識されることはない。この布は纏った対象の行為に違和感を持たせない効果があるらしい。決して透明人間になっているわけではなく、魔術師には効果が無いということにさえ気をつければいいらしい。枯れ葉の方は、それを四方に貼ることでその内側の領域から人を追い出し、寄せ付けない効果があるという。これも魔術の心得があるものには効かないらしいが、今回はそれが幸いするだろう。

 校庭の隅の壁に最後の枯れ葉を貼り付ける頃にはもう空は暗くなり始めていた。生徒達は部活を終わらせぞろぞろと校門から出ていく。校舎内も全ての明かりが消えて教師たちが出てくる。

 藤村先生がバイクに乗って帰っていくと、穂群原学園は静けさに満ちた。

「人払いってあんなに自然なものなんだね…もっと激しいものだと…」

「違和感を抱かせる結界造りなんてのは三流のやることだ。無意識に働きかける…今回みたいなのが一流の結界と呼べるんだよ。陣地作成と道具作成の二つのスキルを持ったキャスターとはいえ凄いもんだ」

 キャスターにあまりいい印象を抱いてなさそうなランサーが、素直に彼女を称えるのを不思議に思ったのが分かったのだろうか。実体化していたランサーは続けて話す。

「その気になりゃ俺も魔術を使えるからな。まぁルーン魔術くらいだが…ドルイドの真似事も出来る。場合によっちゃ、キャスターのクラスで現界することもあんのかもな。そういう理由もあって純粋に能力を評価しただけだ」

 気怠そうにそう語るランサーと共に校舎へと歩く。向かう先は屋上。見張るならばやはり高所がいいだろうと相談して決めた場所だ。

「能力だけじゃなくて人格的にもいい人だと思うけどな。私は」

「そりゃあれだ、お前さんがお人好しすぎるんだよ」

「そうかもしれないけど、悪い人が余計な人を巻き込まないようにって普通言う? きっと根は善良なんだよ」

「信じすぎて背後から刺されても知らね――待て」

 屋上への扉の前で突然立ち止まり声を低くするランサーを見て、さすがの私も察する。

『外に誰かいるの?』

『あぁ。一夜目からアタリだ』

 アタリ…つまりマスターがその扉の先にいるということだ。

『どうするの?』

『もともと戦闘が目的だからと気配を消してなかったからな。おそらく奴さん、こっちに気付いてやがる』

『一旦退く?』

『マスターの判断に任せる』

「じゃあ…霊体化して、ランサー」

『…? まぁいいが』

 ランサーが姿を消したのを確認して、扉を開ける。気圧の差で吹き込んでくる風に逆らいながら外へ出ると、前方に赤い外套を纏った女生徒がいた。

「……? 見ない顔ね。あなた名前は?」

 綺麗な黒髪の赤い少女は私の名前を問う。それは記憶のない私が持っているただ一つの“私”なのだから、それだけは答えなければいけない。

 

――――――あぁ、でもその声を聴くとすごく切なくなるのは何故だろう――――――

 

「私の名前は高町なのは。今日この学校に来たばかりの…転校生」

「…確かに“高町”なんて苗字ここらでは聞いたことないわね。でも、転校生さんがこんな誰もいない学校に何の用かしら?」

「え、ええっと…それは」

「それとも」

 私の言葉を遮るように喋る彼女は、ちらっと校庭の方を見てこちらに向き直り微笑む。

「あなたが誰もいないようにしたのかしら?」

 ゴクリ、と生唾を飲み込む。どうやら全部お見通しらしい。

『ランサー…実体化して』

「おう」

 フッ、と音も無く私の横にランサーが現れても彼女が驚く様子はない。それどころか、彼女の隣にも同じように男が現れる。彼女と同じ赤色の外套を羽織った白髪の男――サーヴァントで間違いないだろう。

「余所者がマスターってことは…教会か、協会から派遣されてきた魔術師かしら。こんな分かりやすい結界をサーヴァントに作らせるから、どんな三流かと思ったけど…。油断させる罠かしらね、アーチャー」

 彼女がアーチャーと呼んだ男はため息を吐き、どこからか生み出した剣を二振り両手に握る。それを見てランサーも槍を構える。それを見たアーチャーは独り言のように呟く。

「マスターの方はともかく、相手のサーヴァントは一流のようだが。さてこの弓兵に相手が務まるか…」

 ハ、とランサーが応じる。

「言うじゃねぇか。なら弓兵は弓兵らしく弓を出したらどうだい。それまでは待ってやる」

 アーチャーは無言で彼のマスターを見る。それに気づいた彼女は頷く。

「いいわ。アーチャー、あなたの全力、ここで見せて!」

「了解した。…向こうのマスターはどうする」

 かなり距離がある筈なのに、向けられた殺気の恐ろしさに思わずたじろぐ。

「あの子は私がやる。大丈夫よ、もしもの時は令呪があるんだし」

「いいだろう」

 アーチャーのマスターがこっちを見据える。その左腕が淡く光っているのは目の錯覚だろうか。

『逃げな、マスター。高慢な態度だがあの嬢ちゃんの実力はおそらく本物だ。まだ戦い慣れてないマスターの勝ち目は薄い』

『逃げるって一体どこに…』

『校舎内をぐるぐる逃げ回ればいいさ。体力には自信あるだろ? アーチャーの実力を確かめたら助けに行くからよ』

 そうこうしているうちにアーチャーのマスターは、こちらへ左腕を向けて何かをしようとしている。迷っている暇はない。

「っ!」

 踵を返して一目散に階段を降りる。

「に、逃げた!? このっ!」

 頭の上を何かが掠めたかと思うと階段の天井に穴が開く。それが彼女の左腕から発射されたものによる現象であろうことは疑いようがなかった。

 私はそれが当たらないように祈りながら数段飛ばしで降りていく。

「待ちなさい! 魔術師なら正々堂々と戦いなさいよ!」

 暗く人気の無い学校で、呪詛を吐きながら追いかけてくる魔術師との鬼ごっこが始まった。




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