なので後半駆け足になっているけど堪忍してください。
圭萌side
白い天井だ。昨日寝起きに見たから2度目だけど、やっぱりまだ目新しかったりする。それと昨日とは状況が違かったりする。
「いつもはかっこいいけど、寝顔はかわいいな」
そうなのだ、今朝はハチ君と一緒なのだ。目を閉じてるからかな、普段よりも可愛く見えるんだよね。可愛いっていうか幼い感じだ。普段でも、いつもはめんどくさそうな目でいることが多いけど、たまに見せるキリッとした目がかっこいいんだけどね。
「いつまでも見てたいし、見てられるけどそろそろ朝食の準備しなくちゃ」
名残惜しいけどハチ君を起こさないように気をつけてベットから抜け出して向かうのは洗面所だ。そこから台所に向かい、朝食の準備をする。台所にある電波時計に目を向けると、予定していた時間を30分ぐらい過ぎていた。
「ハチ君の寝顔を眺めてたら時間がだいぶ経っていたってことかな」
少し急がなくちゃね。メインは昨日買ってきた卵とベーコンでベーコンエッグでいいかな。あとは昨日の残りのポタージュとフランスパンで準備は完了だ。
「思ったより早くできちゃったな」
自身の手際の良さを褒めるとしてハチ君起こしてもいいけど、昨日の夜は迷惑かけちゃったからもう少し寝させてあげようかな。
ハチ君は昔とやっぱり変わってなかった。私が困ってる時には絶対に助けてくれる。そういう所を好きになったんだろうな。
あとは気が利くんだよね。昨日だって夕ご飯作るの手伝ってくれるって言ってくれたし、家事もやってくれるって言ってくれたしね。
私の方で反省点があるとすれば、夕ご飯の手伝いを断っちゃったことだよね。だけど、想像したら夫婦みたいで恥ずかしかったからしょうがない。ワタシワルクナイ。なんか思い出したら顔が熱くなってきた。こんな所ハチ君に見られたら...
ガチャ
「おはよう、圭萌」
マジですか。
***
八幡side
「眠い」
眠いなら寝ろよとか言われるかもしれないけど、今日は圭萌とのデートである。おちおち寝てる訳にはいけない。少しでも長い時間デートを楽しみたいってのは普通なことだろ。きっとそれは隣りに寝ているはずの圭萌も思ってる事だと思う。
て......あれ?
「いない…だと……」
嘘だろ、もしかして全て夢。これが有名な夢オチってやつか。圭萌を拾ったところから一緒に寝たところまで全部夢だったのか。それにしてもえらく現実味のある夢だな。いや、許嫁がいたことやそれを拾うなんて冷静に考えると現実味がないな。
「そんな訳ないよな」
はい、流石に気づいてます。起き抜けでボーとした頭でもこのベットに残っている俺とは別の匂いとか、ドアの向こうの部屋から感じる人の気配とか。もしかして先に起きて朝飯の準備してくれてるのかな。もしかしてじゃなくて絶対にそうだよな。それでこの静けさだともう全部終わったのかな。あんまり圭萌ばっかりにやらせるのは悪いよな。後片付けぐらいはやらせてもらおう。
さて、このままベットの中にいても二度寝の危険が増すだけだしそろそろ起きるかな。
「おはよう、圭萌」
「お、おひゃようハチ君」
なんか今噛まなかったか。それに顔が赤いような......まさか。
「大丈夫か圭萌、顔が赤いけど。もし具合が悪いようならちゃんと言ってくれよ」
「大丈夫大丈夫、そんなんじゃないから。顔だっていつも通りだって。ハチ君が寝起きだからそう見えるだけだよ。ほら、洗面所に行って顔洗ってきたら」
「お、おう」
なんか凄い早口で言われたから、驚いて頷いたけど本当に大丈夫かな。だけど、本人が大丈夫だと言ってるなら大丈夫なんだろう。もしなんかあったらその時はその時で助けよう。
***
その後洗面所から俺が帰ってくると、普段通りの顔をした圭萌が朝飯の準備を全て終わらせて待っていたので、俺の勘違いだと先程の件は片付けて一緒に朝飯を食べた。食べ終えたら俺が後片付けをして、そこから互いに身支度をして(ラッキースケベはない模様)ひとまず駅に向かうことになった。
「駅に向かってるってことはららぽーとに行くのか?」
「今日は違うよ。今回は電車に乗って隣町に行こうと思ってるんだ」
俺は駅に向かう道すがら、昨日は具体的な場所までは教えてくれなかった今日の目的地について聞いてみた。そしたら少しだけ答えてくれた。何この子、どこでこんな焦らしプレイを覚えてきたのよ。たぶん無意識な、いうならば天然でやってるんだろうけどな。
一昨日から過ごしていて改めて思ったこと、ていうか思い出したことだけど、圭萌は少し天然だということだ。悪くいうと少し抜けているのである。そこがまた可愛いんだけどね。
「隣町ってことはもしかして駅前のショッピングモールか?」
「よく分かったね」
「まあな」
だけどそれなら駅前のららぽーとでもいいと思うんだけどな。別に圭萌と行くならどこでもいいけどさ。
「ちゃんと理由があるんだよ。隣町のショッピングモールにはloftが入ってるんだよ」
なるほどな。駅前のららぽーとにはloftが入ってないから、わざわざ電車に乗って隣町のショッピングモールまで行くのね。
「それにハチ君と少し遠くに行ってみたかったんだ」
「なんか言ったか」
「な、なんでもないよ」
小声で何か言っていたようだけど、まさか俺の服装が変だったか?確かに流行とかには疎いけど俺なりに頑張ってみたんだが。あっ、そういえば服装か。
「なあ、圭萌」
「どうしたの、ハチ君」
「いや...なに...」
「本当にどうしたの?」
意外と意識したら緊張するな。だけど、これから嫌と言うほど言うことになるんだし、こんなことじゃダメだよな。
「今日の服とっても似合ってると思うぞ」
「もう...全然言ってくれなくて自信をなくすところだったよ」
嬉しそうな表情を見て、俺の予想は合ってたみたいだと思った。代償として俺の顔が真っ赤だけど、圭萌も真っ赤だから大丈夫だよね。
***
「すげぇ混んでるな」
「そうだね。3駅先だからそれまで我慢するしかないね」
ところ変わって満員電車の中である。どうやら休日を使って俺らと同じく買い物に行く客と、なにかのスポーツ観戦に行く客とで電車が満員なのである。俺らは3駅先で降りるが、それまでこの人口密度の中にいるのは辛いものがある。3月も半ばなのだがこの人の量のおかげで電車の中はサウナ状態だ。
「おい、圭萌。俺と場所を変われ」
「え、うん」
なんとか圭萌をドア側に逃がすことに成功した。あのまま、後ろのおっさんと密着させとくとか俺には耐えられなかった。おっさんが悪い訳では無いが念には念をである。
そんな事を考えていると圭萌が近くに寄ってきて、
「ハチ君ありがとう」
と言った。それだけならまだしも上目遣いに笑顔で言ってきたのである。あ、勘違いしないでね。顔が赤いのは車内が暑いからですから。
***
「無事についたな」
「そうだね。だけどこれからが本番だよ」
無事に俺と圭萌は満員電車から脱出し、目的地である駅前のショッピングモールに訪れていた。ここはららぽーとよりも大きく店舗数もららぽーとの倍あるので、正直1日では全ての店を回ることが困難だ。
「ひとまずloftに向かうのか?」
「そうだね、だけどloftに向かう途中で良さそうなお店を見つけたら入ってもいいかな?」
「別にいいぞ」
それからの時間の流れは早かった。楽しい時間はあっという間に過ぎるとはよく言うけど、本当にすぐに昼ご飯の時間になった。
「そろそろお昼時だけどどこで食べよっか」
「そうだな〜」
ここでどこでもいいとか言うと圭萌を困らせるよな。ここですぐに意見が言えるようにならないと。
「じゃあサイゼでいいかな?」
「むしろサイゼでいいのかよ」
「私はサイゼよく行くし、大好きなだから全然大丈夫だけど」
「俺もサイゼ好きだから全然いいぞ」
サイゼ好きすぎて店の方から来ないで下さいとか言われちゃうくらい好きである。流石にそこまで言われたことないけどな。
***
昼ご飯もつつがなく終了して、午後になってやっとお目当てのloftに辿り着き、そこで雑貨を買うことができた後のことである。
「ここら辺で休憩にしないか」
「そうだね。あ、ありがとう」
買うものも買えたし近くにベンチと自動販売機があったのでそこで飲み物を買って休むことにした。別に俺はそこまで疲れていないが、圭萌が疲れてしまうのはとても嫌だったので休憩することにした。
「すまん、少しトイレに行ってくるからここで待っててくれるか」
「早く帰ってきてね」
「了解」
それにここで少し時間が欲しかったのも理由の一つだ。
***
「良かった、買うことできて」
さっき見た時は残り一つだったので、正直ないだろうなと思って行ったけどまだ残っててよかった。買えたことが嬉しく心の中でスキップして(心の中だけってとこが重要な)圭萌が待っている場所に向かうと、全く知らない男3人が圭萌に話しかけていた。そこからの俺は俺が言うのもあれだが、たぶん電光石火だったと思う。
「おい、俺の連れになんか用かよ」
圭萌の肩を掴んでいた男の手を、折るつもりで握りながら言ったら思ったよりも低い声が出てしまった。
「痛てぇな、てめえ何しやがる」
だが、悲しいかな。俺の顔でこんな事言っても効果はないらしく、むしろ怒りながら殴りかかってきた。なので、俺はそのままぶん投げることにした。投げられたのを見て他の奴らが騒ぎだした。
「なっ、てめえよくもやりやがったな。おい、同時に襲いかかるぞ」
「やべっ」
先に攻撃してきたのそこで倒れてるクソ野郎だし、それにそもそも圭萌に手を出してる時点で簡単に返す気はないんだよな。だけどここでひとつ問題がある。俺は1対1の戦い方は習ったけど2対1は習ってないんだど。そんな時少し後ろの方から声がした。
「比企谷君は右を、私が左をやるから」
「はい」
その声に反応して俺は右から迫っていた男を投げ飛ばしたのとほぼ同時に、左側にした男も投げ飛ばされていた。
「まだやるのかな、少年達?」
「ちっ、行くぞ」
左側の男を投げ飛ばした人が男達に言うと男達は逃げるように帰っていった。
「大丈夫だったか、圭萌。ごめんな1人にさせちまって」
「大丈夫だよ。それに話しかけられた時に私がちゃんと対応してたらこんな事にならなかったし」
そもそも俺がここを離れなかったらこんなことにならなかったはずだから俺が悪いのに。
「2人とも無事なんだから良かったじゃんか」
「ありがとうございました、陽乃さん」
「いやいや、たまたま通りかかったら比企谷君が凄い形相で走っていくのが見えてね」
俺を助けてくれたのは、俺の合気道の師匠でもある陽乃さんその人である。
「本当に助かりました。俺1人じゃ流石に二人同時は無理だったので」
「いいんだよ。比企谷君には凄い恩があるからね」
「そんなだいそれたことはしてませんよ。あれは雪ノ下と陽乃さんがそれぞれ歩み寄ったからですし」
「それでもだよ。比企谷君が雪乃ちゃんや私の背中を押してくれなかったらそもそも仲直りできてなかったよ」
大学に入学して少しした頃、雪ノ下と陽乃さんは和解した。俺もたまたまその場面に居合わせたので少しばかり手を貸す形となった。その後、俺は陽乃さんからお礼として俺がお願いした合気道を教えてもらったのである。良かったあの時、陽乃さんからのお礼を合気道を習うことに使って。あの時の俺グッジョブ。
「それに比企谷君。ダメだよ、大事な女の子をひとりにさせるなんて」
「すいません...てなんで知ってるんですか?」
「いや、さっき私にお礼言う前にその子と喋ってたよね。その時に比企谷君にしては、めずらしく名前で呼んでいたからそうなのかなって思ってね」
相変わらずよく見ている人だな。油断ならないよ、まじで。
「えっと...ハチ君この人は」
「紹介しなくちゃな。この人は俺の合気道の師匠である雪ノ下陽乃さんだ」
「よろしくね」
「よろしくお願いします。私は今井圭萌っていいます。先程はありがとうございました」
「いいっていいって」
「雪ノ下さんって、もしかして雪ノ下さんのお姉さんですか?」
「そうだな」
「もしかしてあなたがあの圭萌ちゃん?」
「あの?」
「いやー、雪乃ちゃんがね最近よくあなたの話するのよ。それと私のことは陽乃でいいよ」
「わかりました、陽乃さん」
「ありがとうね、雪乃ちゃんと仲良くなってくれて」
***
あの後、陽乃さんと圭萌が仲良くお喋りしていつの間にかいい時間になったので、帰ることになった。
「ねぇ、ハチ君。本当に何も無いんだよね雪ノ下姉妹とは?」
「だから何も無いって」
陽乃さんと別れて電車を降りてから、ずっとこの質問ばかりをしてくるのである。なんでだろう、俺ってそんなに信用ないのかね。
「そこの公園に寄ってかねえか」
「いいよ」
家に帰ってからでもいいのだが、せっかく外に出てきているので少しでも長く居たいと思った俺は自然とそんな事を言っていた。そしてベンチに2人で座ってから俺はさっき買ったものを圭萌に渡すことにした。
「ほら、これやるよ」
「えっ」
「もしいらなかったら捨ててくれても構わないけど、出来ることなら俺のいない所で捨ててくれるとありがたいな」
「まだ見てもいないのに捨てる訳ないじゃん。見てもいい?」
「ああ」
「わぁ、可愛いネックレス」
俺が圭萌に贈ったのは、ハートの形に縁取られたネックレスだ。ハートの中には桜の花があるヤツである。
「ありがとう、ハチ君。ねぇハチ君がつけてよ」
「別にいいけど」
言ったはいいものの、緊張してしまってつけるのに結構手間取ってしまった。だけど我ながらいい買い物をしたと思えるぐらいに似合っていた。
「どうかな?」
「似合ってるよ」
「本当にありがとう」
「お、おいなんで泣くんだよ」
「初めて贈り物を貰って嬉しいのもあるんだけど、さっき助けてくれたのを思い出したらちょっとね」
俺がこのネックレスを買いに行ったせいで圭萌をあんなめに合わせてしまったので、凄く反省しているんだけど喜んでくれてるようで良かった。
「だけどやっぱり怖かった。このままハチ君が来なかったらと思ったら本当に怖かった」
「なぁ圭萌こっち向いてくれ」
「うん?」
そこで俺はキスをした。初めてなのでうまくできてるか心配だったのですぐに離した。
「安心しろ圭萌。俺はここにいるし、これから先もずっと一緒にいるから」
「うん、ありがとう。私もハチ君から離れないからね」
そんな事を言ったのだろうが、俺の口により圭萌の言葉は最後まで聞くことは叶わなかった。
これでもがんばって急いで書き上げたんだよ。
だから感想などよろしくです。