ピンポーン
「あ、来たかな」
それは帰宅直後のあれこれから復活しない圭萌を、ソファーに運んで買ってきたものを冷蔵庫にしまい終わった時のことである。そういえばなんか届くとか言ってたのが届いたのかな?普通なら俺が出るべきなのだが、圭萌のほうがインターホンに近かったから圭萌がでた。
『佐〇急便です。お届けに上がりました。開けてもらってもよろしいでしょうか?』
「はーい」
圭萌さんなんで俺の部屋のインターホンの使い方知ってるの?俺教えてないけど。一般的なものだからわかったんだよね。
「お届け物はどこまで運びましょうか?」
「ここに置いといて貰って大丈夫ですよ」
俺が考え事してる間に玄関で圭萌が宅配業者に対応してるよ。
「ハチ君ハンコ持ってきて、ハンコ」
「わかった」
流石にハンコの置き場所まではわからないか。わかったらこわいけどな。
「ほら」
「ありがと。ここでいいんですよね?」
「はい、それではこれで」
宅配業者のお兄さんはいい笑顔で帰って行った。いつも思うけど、なんであんなに爽やかに笑えるんだろう。俺には無理だろうな。
「それで結局教えて貰ってないけど何なんだよこれは?」
「これはね、私の生活用品とか服とかだよ」
「なんでそんなものを、それにこれだけの量で」
そうなんです。ダンボール5箱なんです。いや、これは多いだろ。持ってくる時大変だっただろうな、宅配業者のお兄さん。それにしても俺の部屋で何するつもりなのこの子。
「理由は流石にわかると思うけど、この話は夕ご飯のあとでね」
ごめん、理由わからないんだけど。
***
「なんでそんなに見てるのかな?」
「いや朝飯があまりにも美味しかったからさ、きっと手際がいいんだろうなと思ったから見学させて貰おうかと。ダメだったか?」
「別にいいけど。だけど少し恥ずかしい」
最後の方になんか言ってたようだけど、声が小さくて聞こえなかった。今は圭萌に夕ご飯を作ってもらってるとこである。作ってもらっている間あまりにも暇なので、手伝うと言ったのだが断られてしまい、もう一回言う機会を伺っているのである。
それにしても手際がいい。俺なんか比べるまでも無く、もしかしたら小町よりもいいかもしれない。まさか俺が小町より優れていると思わせる人に出会う日がこようとはな。はい、そこシスコンとか言わない。現に今は一人で暮らしてるから違うからな。それにシスコンだとしても千葉の兄妹だからしょうがないよね。
「あとはこれを煮るだけっと」
どうやら今日は煮込みハンバーグらしい。それにサラダとポタージュもあるみたいだな。
「お皿の準備とかは手伝ってもいいよな?」
とか言いながらもう準備するために食器棚に向かってるんだけどな。これで断れまい。
「うん、そうだね。お願いするよ」
とても可愛らしい笑顔いただきました。その笑顔をくれるなら何だってしちゃいそうな俺が怖いよ。だけどしょうがないよね、笑顔が可愛いからね。
「そういえば今日はポニーテールなんだな。昨日はサイドテールだったような気がしたけど」
「外に出掛ける時はサイドテールが多いけどね。料理する時はサイドテールよりポニーテールのほうが料理しやすいからしてるんだけど似合わないかな」
「いや、そんなことない」
むしろ似合いすぎて困っちゃうぐらい。髪型は基本的に結ばずにそのままがいいけど、結ぶんならポニーテールが一番だと思ってるどうも私が八幡です。
***
「は、ハチ君」
ぼふっと音とともに圭萌が俺に抱きついてきた。突然積極的になって八幡的にポイント高いけどどうしたんだろう。ちょっと待て、涙目になってんじゃねぇか。
「どうした?ゴキでも出たのか?」
おかしいなちゃんと無駄に広くて家具も大きいけど掃 除はしっかりやってるんだけどな。ゴキが一匹でもいると駆除するの大変だからな。俺も人為変態した方がいいかな?
「ゴキブリは出てないけど…」
「じゃあどうしたんだ?」
よくわからないけど、ひとまずできる限り優しい声で言ってみた。てか、もうあとご飯もって食べ始めるだけなんだけど。
「ごめん、ご飯炊くの忘れました」
あー、そういうことね。ひとまず、
「圭萌はかわいいな」
「へぇ?」
抱きついてきてたからそのまま抱きしめて言っちゃいました。だってさー、抱きつき+涙目+上目遣いとかむしろ我慢しちゃダメだと思うんだよ。俺は間違ってない、いいね?
「忘れることなんて誰にでもあるから大丈夫だよ。だから泣くな」
「うん、だけど…」
「それに俺なんてしょっちゅう忘れるし」
「ほんとにごめん。どうしよう」
「俺がコンビニ行ってなんか買ってくる。パンと米どっちがいい?」
「いいよ、私のミスなんだから私が行くよ」
「圭萌は今日授業があってろ。それに夕ご飯まで作ってもらったからな。休んでろよ」
「でも……」
納得してくれそうにないなぁ、この感じは。どうしたものかね。あ、そうだ。
「それじゃあ一緒に行こう」
「そ、そうだね。そうしよう」
本当は休んでて欲しいけどここで言い合って夕ご飯遅れるのもいけないよな。そして、圭萌さんなんで今少し言い淀んだんですかね?
***
「「いただきます」」
あの後、2人ですぐそこのコンビニに行って、フランスパンを買ってきた。俺はどっちでも良かったんだが、圭萌がフランスパンがあうよと言ったので買うことにした。あんまりそこのコンビニ行かないけど、近くにコンビニがあって良かった。なんで行かないかって。そんなの決まってるだろ。だってマッカン売ってないし。マッカンがないコンビニなんてある意味無いって思ってたけど考え直さなくちゃな。
「朝飯食った時も思ったけど圭萌の料理美味しいよな。このハンバーグなんて特にうまいよ」
肉汁が溢れるとかほんとにあるんだな。一緒にでてきたポタージュも美味しい、がっちり胃がつかまれてるよ。別にこのまま一緒にいる予定だから構わないよね。
「良かった。今まで頑張って料理の練習してきて良かったよ。ハチ君を喜ばすためにやってきたからね」
「/////そうか」
ちょっとテレるんで俺の為とか言わないで貰っていいですかね。
***
「「ごちそうさまでした」」
「俺が片付けるから圭萌は今度こそ休んでろよ」
「そうだね、お言葉に甘えさせてもらうよ」
美味しいご飯を作ってくれたので、片付けは俺がやろうと思ってたのですんなり意見が通って良かった。ご飯が美味しかったけど、終始俺の顔をガン見する子のせいで若干食べずらかったのは黙っておこう。
「片付け終わったらソファーにきてね。色々説明するから」
「ああ」
待ってました、この時を。ずっと謎だった荷物とかやっと教えてくれるのね。うーん、長くなるかもだから飲み物持ってくかな。
「温かいものいれるけどなに飲む?」
「ありがと。じゃあ私は紅茶がいいな」
「わかった」
***
「はいよ」
「ありがとう、ハチ君」
「いえいえ。いちおう砂糖とミルクも持ってきたけどいれるか?」
「いや、私はこのままで大丈夫だよ」
片付けが終わり紅茶をいれてソファーに向かうと圭萌がスマホを弄っていたので声をかけた。何をしてたかは不明だけど。俺は2人がけのソファーの圭萌の隣に座った。2人がけだが大きめなので隣に座ってもそこまで密着しないらしい。今まで1人で座ってたから知らなかったが。
「まずはどこから話したらいいかな?」
どうやら荷物の件以外でも話があるみたいでどこから話すべきか決めあぐねているみたいだ。
「ねぇハチ君。ハチ君ってさこの部屋についてなにか思わなかった?」
「?いつも通りの俺の部屋だけど」
1年間住んでるから今更どこか変わったとか言われても気づくと思うけどそんな事なかったよな。
「そういうことじゃなくて、この部屋に住み始めた時1番初めに思ったことだよ」
「初めに思ったことか……。単純に一人暮らしにしては広いってのと家具が大き過ぎると思ったな」
1LDKなんだけど洋室が8畳とLDKが12畳とか広すぎるわ、とか思ったよね。それに食事用のテーブルに椅子が四つもあるけど基本的に俺の部屋とか人来ないから意味無いだろとか思ったね。
「そうなんだ、この部屋は1人で住むには大きすぎるんだよ。そしてそこにはちゃんと理由があるんだよ」
そこで勿体ぶるように紅茶を飲み出した。別にそこまでためなくてもいいけど。
「この部屋は元から私とハチ君が一緒に住むために借りたものなんだよ」
「へぇー」
「あれ?反応薄くない?」
「圭萌が紅茶飲んでる間に俺もそのことに気づいたからだよ」
「察しが良いのは驚かせる方からだとつまらないよ」
「すまんな。だけどおかげでやっと色々なことがわかったよ。この部屋と家具は俺の両親と圭萌の両親がくれたってことだな」
「概ねそうだね」
俺の両親がこんな広い部屋と家具を、突然俺なんかのために用意するなんておかしいと思ったけどこういうことか。当時の俺の感謝の気持ちを返して欲しい。
「てことは、あのダンボールはここでこれから生活する為に持ってきたんだな」
「そうだけど、ハチ君私と一緒に住むのは嫌かな?」
「そんな訳ないだろ。むしろ嬉しすぎて小躍りしそうだよ」
「良かった」
圭萌は安心した様に一息ついてソファーに身を沈めた。俺がOKだすのそんなに心配してたのかよ。ここでダメとか言ったら俺が殺されるしな、主に互いの両親から。
「それじゃあ軽くこれからのルール決めるか」
「その前に…」
「なんだよ」
これ以上なんかあるんかよ。俺だってもうサプライズ的な何か別に求めてないよ。
「一緒にお風呂入ろっか」
それは無理だよ圭萌さん。
次回はお風呂かお風呂とばして寝るところかどっちかでいきたいと思います