艦隊これくしょん~抜錨! 戦艦加賀~   作:GF-FleGirAnS

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燈火を渡す黒鉄の


鍵を託す

 

《京急田浦〜京急田浦〜》

 

 

 電車のドアが開き人が降りて改札へと流れ分かれそれぞれがそれぞれの場所へと向かっていく。そんな、人の流れから離れた所で立っている男は鞄から封筒を取り出す。封筒の端には通称海軍工廠……正式名称特種兵装研究センターのロゴと連絡先が印刷されていた。

 

 中から『加賀二次改装計画』と題が打ってある紙束が少しだけ見え、男は名札と別の紙を取り出す。名札には平河 京太と印刷されていた。

 

「出撃管理プログラムを作った以来か……見知らぬ人と話したくないな……」

 

 一度紙に目を下ろしてから再び顔あげる。

 

「工廠……こっちか」

 

 平河は人の流れにまた紛れ込んで行く。

 

 暫く平河は歩き、とある建物の前に到着する。警備の軍人に紙を渡し、名札を見せる。

 すると一人の軍服を着た男が廊下の向こうから現れる。

 

「お待ちしておりました。私を覚えていらっしゃいますかね? 平河さんが出撃プログラムを組んでくださった時の担当です」

 

 

 銀髪の男は軽く笑う。

 

「……確か防衛部運用支援課」

 

 平河はほんの少し思索した後に答える。

 

「おや、そんなに事細かく覚えてくださいましたか。今は再編され私も異動となり、特種兵装開発実験団の官民共同推進課です。では、ご案内しましょう。今回は前回と違い特種兵装研究センターでの作業となります」

 

 士官は歩きながら説明する。

 

「平河さんのことでしょう。内容は全て頭に入れてあるので大分省きます。まず、センター長に挨拶を致しましょう」

 

 後ろを歩いていた平河の顔がそれを聞いた瞬間少し引き攣る。

 

「平河さん?」

 

 士官は、平河が緊張したのを感じ取ったのか振り向いて気遣う。

 

「わ、わかってます……前回の様には……対策は」

 

 少し俯きながら平河は答える。

 暫く彼らは無言で特種兵装開発実験団司令部からセンターまで歩いていた。そして一つの建物が見えて来る。

 

 横須賀センターは自衛海軍において一番大規模かつ最新の施設が揃っており、特種艤装の3分の1はここで研究されている……と平河は頭の中に入れていた知識を引き出す。

 

「平河さんこちらです」

 

 士官は先導しドアを開ける。

 

 また簡単なセキュリティチェックを済ませ階段を上がり、2人の男はセンター長執務室と印字されたプレートが嵌め込まれたドアの前に立つ。

 

「平河さん、腹は決まりましたか?」

 

 黙ってうなづく。それを確認し彼はノックする。

 

 

「失礼します。平河さんをお連れしました」

 

 すると部屋から少しくぐもった嗄れた声が帰ってくる。

 

「来たか。入れ」

 

 

 ドアを開ける。

 

「失礼します」

「失礼、します」

 

 案内役の白銀髪の彼の声は流石内勤と言えども自衛海軍の軍人。声が響く。対照的に平河の声は消え入りそうな、呟くような声であった。

 

 平河は少し背を丸めながらもセンター長の前へと向かう。

 

「初めまして……八重コンピュータシステムズ、の平河 京太……です……今日から、八重の作業チームに加わることになりました……」

 

 どんどんと消え細る声になっていく。

 

「よろしくお願いします」

 

 

 流石に自分自身でもダメかと思ったのか最後は声量を何とか振り絞ってはっきりと言い、お辞儀をする。実はこれだけのことに出向が決まってから彼は同僚からの熱血ビジネスマナー指導を受けていた。効果覿面とは言えないがなんとか形にはなった。センター長と書かれた机に座っていた男は口を開ける。

 

「自衛海軍特種兵装開発実験団隷下、特種兵装研究センター、センター長の久川隆三二等海佐じゃ。八重の皆さんをわしは信頼しておる。頼むぞ」

 

 

 そう久川は穏やかな口調で応じる。

 

 

「ご期待に添えるよう……頑張ります」

 

 

 ボソボソと平河は言いまたお辞儀をする。そこに後ろに控えていた士官がすかさず助け舟を出す。

 

「それでは、センター長。これで失礼いたします」

「うむ」

 

 久川はうなづく。

 

「失礼しました」

「失礼……しました」

 

 二人は退室する。

 

「平河さんお次の所へと案内してもよろしいでしょうか?」

 

 廊下を歩きながら士官が気遣う。

 

「あ、はい………」

 

 平河はまだボソボソと返す。

 

「とりあえず大体の施設案内をいたしましょう。まずは加賀の艤装が保管されている、第3研究室へとご案内いたします」

 

 ふと、白銀髪の海軍士官が持っているディバイスから、着信音が流れ出す。

 

「すいません、平河さん。失礼します」

 

 彼は一度断りを入れ、耳に引っ掛けていたヘッドセットで通話を始める。

 

「はい。はい…えっ? アッハイ。失礼します」

 

 通話終了を押し、平河に向き直る。心なしか彼の額には汗が見えた。

 

「平河さんすいません。この後、私に予定が入ってしまって、代替要員も確保できず、申し訳ありませんが、予定していた予定を変更し、すぐに八重のセンター内オフィスまでご案内します」

「えっと……いきなりどうしたんですか?」

 

 オドオドしながら平河は聞く。

 

「申し訳ありませんが、今ここで説明する時間もございません。後ほどをお話いたします。では、こちらへどうぞ」

 

 白銀髪の海軍士官は手で示す。

 

「わかりました」

 

 平河も理由は飲み込めないままうなづき、二人で階段を登り小走りで移動し、曲がり角で走ってきた職員とぶつかりそうになりつつも進み、八重のセンター内オフィスに辿り着く。

 

「ここが八重のセンター内のオフィスです。後は八重の方々から指示を得られると思います。では、私はここで失礼します」

「あっ……はい」

 

 そう言い士官は敬礼してから、駆け足で廊下を抜けていく。一人残された平河は一度息を吐いてから、人の気配がするセンター内にある八重のオフィスの扉を叩く。

 

「あ……失礼……します。八重コンピュータシステムズの……平河です」

 

 ドアの近くの八重の社員がぼそぼそと言っている平河に気付き班長を呼ぶ。

 

「チーフ! 平河さんがいらっしゃいました!」

 

 奥に座っているスーツの男に話しかける

 

「なんだこれ? 変なエラーが出てるぞ? うん? 誰か私を呼んだか?」

「平河さんがいらっしゃれました!」

「あ、予定より早いな。どうぞ、来てくれ」

 

 相も変わらず猫背で平河はチーフと呼ばれた男の元へ向かう。

 

「この度、加賀改二計画と……内燃機関問題に参加する事になりました……八重コンピュータシステムズの平河です……よろしくお願いします」

 

 つっかえながらも挨拶をする。

 

「君が平河君ですか、結構色々なものに関わってるらしいですね。是非ここでも君の手腕に期してますよ」

 

 チーフはニコニコしながら平河に接する。

 

「ご期待に応えるよう、微力ながらもお力添え致します……ところでどうされたのですか?」

 

 平河はチーフが持っている画面が固まったままのディバイスに目を落とす。

 

「いや、先程、急に動かなくなってしまって困っていたんです」

 

 平河はおずおずとしながら切り出す。

 

「私が見ましょうか?」

 

 すると、チーフは軽く笑う。

 

「おぉ、助かるよ。平河君に見てもらえるなら、確実だ」

 

 差し出されたディバイスを平河は受け取る。チーフは辺りを一度見回してから、平河に向き直る。

 

「ちょっと今、手空いてる奴がいないので、少し待っててください」

「分かりました……その間こちらを直しておきます」

 

 そう言って、平河は用意されていた机に座り、仕事用のPCを開きディバイスと接続した瞬間……白銀髪の海軍士官が八重の作業チームの部屋の扉を叩く。

 

「失礼します。1500……午後三時より、第二演習海域にて、試験艦隊と実働艦隊で、急遽演習を行うことになりました。加賀改ニ計画に参加している研究員は第二演習海域監視塔までご集合下さい。質問はございませんか?」

 

 早口で彼は説明する。

 

 よく見てみると彼の額には汗が滲んでおり、少々息が荒く、どうやら走り回っている様であった。そこにすかさず八重の一人が質問する。

 

「すいません。今日は演習はなかったと記憶してますが……」

「いえ、どうやら()()()あった様です」

「元からあった……?」

 

 八重の面々首を傾げる。

 

「えぇ、()()()特種兵装開発実験団司令権限で行われる予定だったそうです。他に質問はございませんか?」

 

 八重の面々不可解な事態に押し黙ることしか出来なかった。

 

「では、私はここで失礼します」

 

 そして、また彼は駆け出していった。あまり時間がない。

 

「急いで準備しろ!」

 

 平河も手早く机上の荷物を纏めて班員達とともに部屋を飛び出していく。今もし、ここが八重の社内であったら愚痴やら暴言やらが飛び交うところであるが、ここはあくまでも取引先様のところである。彼等は少し顔に不満を滲ませながらも演習監視塔へと走る。

 

 平河は他の班員と比べ、ゼェゼェ言いながら目的地の演習監視塔に辿り着く。監視塔の中では八重の研究員と自衛海軍の職員が入り混じり、大慌てで、セッティングしていく。平河も監視塔の隅にある長机にPCを広げ、準備を進める。

 

《最終シークエンス開始。演習海域への進入を許可します》

 

 女性の声がスピーカーから流れ、監視塔の液晶パネルのマップ上に輝点が浮かび上がる。

 

「加賀、艤装装着型カメラ1から3、4、5、6オンライン確認。特種兵装稼働ログ受信、問題なし」

「演習海域上空、監視ドローン1から5まで正常に稼働中」

「周辺海域の安全を確認」

 

 監視塔の至る所に設置されたディスプレイに様々な角度からの映像が送られてくる。演習海域だけでなく、艦隊を指揮する二人の姿までもが映し出されていた。

 

 しかし、平河はPCに食い入る様に見つめ、それには気がついてない様であった。

 

《艦隊は開始位置に移動してください》

「チーフ……終わりました」

 

 平河はやっと顔を上げ上司に報告する。

 

「あ、お疲れ様です。演習の観測をお願いします」

 

 平河はちゃんと送信されたのを確認してからPC上に映像を引っ張り出す。

 

「試験艦隊は加賀を旗艦とし……えっ? 1艦だけ……? 対する……通常艦隊は……二次改装された古鷹型重巡……1番艦古鷹……のみ?」

 

 要するに空母vs重巡のタイマンである。普通ならば空母の圧倒的な航空火力によりワンサイドゲームとなるが、加賀が今つけている艤装には()()()()()()()()()()()()()

 

「つまり……試験的な戦艦艤装で闘うということか……」

 

 今、加賀の艤装は普段背負っている矢筒の代わりに装備された小さな背負い式の艤装を背負っており、それには……20.3cm連装砲が3基装備され、手にも1基の20.3cm連装砲を持っていた。かつて、鉄の塊であった時の加賀に搭載されていた砲と同じである。しかし、今の艤装の大きさからして戦艦と言えるほどの大口径砲及び砲数を積めるは不可能と見えた。

 

《演習開始!》

 

 その声とともに2人の艦娘は動き出す。今回の演習は海域が狭いため目視範囲内で闘う他はない。

 

 因みにここにいる研究員達の間では古鷹の勝利が演習前から囁かれていた。もちろん研究者や技術者(かれら)にとって勝敗は関係ないものだが演習(イベント)とはちょっとした娯楽である。

 

 理由は簡単である。今の加賀を表すなら、装甲は戦艦。火力は巡洋艦並。しかし、砲撃戦の経験はあまりないだろう。

 

 対する古鷹はパラメーター的に重巡ではあるが、通常艦隊での多くの戦闘経験、なにより激戦区と名高い南方海域での勤務経験があり、圧倒的な練度の差があった。そのため加賀は初めから劣勢であると最初から見られていた。

 

 しかし、平河は古鷹が一筋縄で勝てると思えなかった。

 

 時間がなく加賀の指揮官について詳しく調べる事は叶わなかったが、かなり、変わり者であるらしい。数少ない空母艦娘との適性を持ち、艦娘を第一、戦果は二の次と考えて動く艦娘指揮官であり。その為、試験艦隊送りになったと風の噂で平河の耳に入っていた。無碍に除隊されなかったり窓際へ追いやれないのはその類い稀なる適性と戦術立案・遂行能力がある為とも聞いている。

 

 対照的に小河原一尉のデータは平河は既に収集済みであった。彼は自衛海軍の前身である海上自衛隊の人間だ。ハンモックナンバーも若く、彼の能力に疑いの余地はない。実際、深海棲艦出現時には対策室のメンバーとして活躍し、艦娘開発にも関わったのではと噂されるほどだ。

 

 とそこまで考えた平河は、逸れかけた思考を元に戻す。

 

 ここで考慮すべき点は艦娘は、『鉄の塊』でもなければ『人』でもない、そのあらゆる可能性を秘めたのが『艦娘』である。運用方法によればカタログ以上の能力を発揮できる。

 

 そしてもう一つ考慮すべき事は、ここにいる誰もが彼の指揮能力について知らない。これが何よりも予測不可能となりうる要素である。一直線に突っ込んでいった古鷹はお互いの有効射程距離ギリギリのところで転舵し、加賀もそれに合わせで転舵し、お互いに様子を見る様に演習海域を並走する状態になる。所謂同航戦である。

 

《加賀さん、自分が指示を出したら間合いに入って砲撃戦を開始してください。なるべく相対距離は離してください。小河原一尉も誘っているでしょう。敢えてそれに乗っかります!》

《古鷹、相手が仕掛けてくるのを待て。多分あの二人ならば積極的にかかってくる筈だ》

 

 二人の軍人の指示が部屋のスピーカーからも流れる。剣道に関わらず武道を嗜んだことがある方は分かると思うが、初心者であるならば余計に失敗を恐れず、積極的に攻めるように教えられる。それが上達へと近道であるからだ。

 

《今!》

 

 その声ともに加賀は距離を詰め、有効射程距離から背負った艤装の4基8門20.3cm連装砲が火を吹く。轟音と共に運動エネルギーを溜めた鉄の雨が古鷹へと迫る……と言いたいところであるが、実際はそううまくいかないものである。

 

「遠、遠、遠、極遠」

 

 監視ドローンや艤装から送られてくる情報から弾着地点がマップに示される。尚、この情報は演習中の艦娘と指揮官には送られていない。

 

「艤装側の所為じゃないな、練度の問題か」

 

 艤装担当の技術者は腕組みしながら呟く。

 

「ん……?」

 

 ふと、平河は小さな違和感に気付く。

 

「被弾判定……?」

 

 平河はPC上に表示された加賀の情報に、通称カスダメと呼ばれる微々たるダメージが入っていることに気付く。

 

「ただの誤作動か、誤差の範囲か?」

 

 彼の小さな呟きは監視塔の喧騒に掻き消された。

 

《加賀さん、落ち着いて次弾装填を!》

《じゃあ、こちらも撃ち返そう……《撃てぇ!》》

 

 古鷹も小河原と息ぴったりに砲撃する

 

《加賀さん! 回避!》

《わかってるわ》

 

 小刻みに転舵しながら加賀は砲弾を間を駆け抜ける

 

「機動性はまぁまぁか」

「出力にも異常なし」

 

 そこでふと平河はある違和感に気付く。

 

 それは()()()()()()()()()()()。つまりは弾着観測を両方とも行っていないということだ。

 加賀は今航空艤装がない為、仕方ないが、古鷹に関しては航空艤装はあるため行える筈だがそれを使ってこない。それがあればアウトレンジからの攻撃が出来るが、それでは意味がないと彼女の指揮官はそう判断したのであろうか。

 

「遠、近、近……夾叉だ」

 

 夾叉……簡単に言えば、次撃てば当たる確率が高い状態を指す。

 

「やはり、練度だな」

《加賀さん今直ぐ離れて!》

 

 物部は素早く指示を出す。それを受けた加賀は転舵し有効射程距離外へと向おうするが……古鷹と小河原はそれを許さなかった。

 

《そうはさせません!》

 

 加賀に追従し同航戦を維持したまま距離を詰めてくる。もちろん、古鷹の方が優速であるため直ぐに追いつかれてしまう。

 

《来いよ、特務。逃げを捨ててかかって来い》

 

 わざわざ、小河原は全体チャンネルで呼び掛ける。

 

《銃は捨てませんよ? いいでしょう! 加賀さん迎え撃ちます!》

《鎧袖一触よ、心配いらないわ》

 

 加賀さん思いっきり外しましたけどね。そんな事をふと誰もが頭に浮かんだが誰もわざわざ言わない。

 

 加賀は古鷹へと振り向き、砲を構える。同じように古鷹も加速しながら砲を向ける。

 

《《撃てぇ!》》

 

 両者同時に発砲し、爆音ともに硝煙が2人を覆う。

 

《加賀! 被弾判定! 中破……!》

 

 その声ともに表示されたデータに素っ頓狂な声が上がる。

 

「はっ? 飛行甲板に被弾判定?」

 

 監視塔に詰めている研究者や技術者達が騒めき始める。ディスプレイに表示されたデータには本来ならば存在しない箇所が被弾を示す黄色の色で塗られていた。

 

「着弾地点を出せ!」

「予想着弾地点全弾至近弾! ()()()()()!」

「はぁ!?」

 

 加賀は今、飛行甲板をつけてはいない。なのに被弾判定が出た。それも命中なし。

 

《クリティカルヒットだな……古鷹! 次で決めるぞ》

 

 被弾判定を聞いた小河原は軽く勢い付き指示を出す。

 

《えっ? あっ、はい》

 

 しかしその古鷹の返答は要領を得ないものだった。

 

《加賀さん! 大丈夫ですか?!》

 

 物部も被弾判定を聞き慌てて安否を問う。

 

《あの、提督。私は()()()()()()()()

 

 その彼女の声からは全く息の乱れがなかった。

 

《えっ?》

「うん? どういう事だ?!」

 

 その言葉に余計監視塔は混乱する。

 

「早くドローンのデータ回せ!」

「角度が悪くて硝煙に覆われてます! 赤外線カメラじゃ無理です!」

 

 その喧騒を何となく蚊帳の外で見ていた様な気分になっていた平河は一つの仮定に辿り着く。

 

《どうした、古鷹?》

 

 古鷹の表情が晴れない事に小河原は気付く。

 

《いや、なんか手応えが無くて……》

《実際被弾判定は出ているぞ?》

《まぁ、そうですけど……取り敢えず次弾装填完了です》

《よし、発砲タイミングは古鷹に任せる。同航戦を維持したまま接近だ。撃ち方始め》

 

 古鷹は再び増速し加賀を捉えようと動く。

 

《まだ、演習は続いてる……取り敢えずベストを尽くさなきゃいけない。加賀さん……》

《 わかりました》

 

 何かを物部は囁き加賀は訳を聞かずに動き始める。しかし、その間にも古鷹は迫ってる。

 

――――遅い?

 

 距離を詰めてきた古鷹は加賀の速力が予想以上に遅い事に気付く。

 

――――下げないと

 

 古鷹が速度を緩めた途端、事態は急転する。

 

《最大戦速! 目標、古鷹前方。第4砲塔撃ち方始め! 撃ぇ!》

 

 正にそれを待ってましたと言わんばかりに物部は指示を出す。

 

《そういうことか! 古鷹! 増速!》

《えっ?》

 

 いきなり小河原(ていとく)から弾着地点に飛び込めと言うような指示に虚が生まれる。

 

《急g》

 

 その途端古鷹の目の前に大きな水柱が立つ。

 

《きゃっ!》

 

 しかしすぐに古鷹は体勢を立て直し加賀の姿を探す。

 

《何処?》

《古鷹、後ろだ!》

 

 空母時代から変わらない青の袴を履いた加賀が古鷹の()()()に立っていた。

 

「あの状態から丁字戦に持っていったぞ……」

「おい、あれもしかして」

 

 加賀の後ろには大きな楕円を描く白い航跡が浮かび上がっており。演習開始直後には艤装からぶら下がっていたアンカーが消えていた。

 

 古鷹は顔の端に焦りを浮かべ。

 対照的に加賀はほんの少し口角が釣り上がっていた。

 

「まさか……戦艦ドリフト?」

「秋津洲流戦闘航海術か!?」

 

 小河原と物部は同時に叫ぶ。

 

《転舵!》

《撃てぇ!》

 

――――速い!

 

 平河は加賀の発砲の際に見えた古鷹の振り向き速度に驚く。加賀が砲撃に耐えるため少し腰を落とすその動作の間に古鷹は180度ターンし加賀に向かい合う……ガードの体勢を取らずに、発砲の体勢を取ったのである。

 

 両者同時に爆炎と硝煙に包まれた。そして、監視塔のディスプレイに表示されたのは……。

 

《加賀、大破。演習終了》

 

 小河原艦隊、古鷹の勝利である。

 

「ちょっと待て! ()()飛行甲板に被弾判定だ!」

「またか、司令部に連絡! 演習中断! 勝敗判定に異議あり!」

「整備班は直ぐに第二演習海域出撃ドックへ集合! 原因究明を急げ」

「データ解析班も原因究明を急げ!」

「艤装班から実験艦隊司令へ加賀の安否を確認後、加賀を出撃ドックへ帰還せよ」

 

 八重と自衛海軍それぞれの技術者、研究者が慌てて散っていく。出向初日、特に仕事の割り振りが与えられてない平河だけが動き回らずにパイプ椅子に座ったままであった。

 

 しかし、彼の指は高速でキーボードを叩き、平河のその眼は画面をじっと見つめていた。

 

《実験艦隊司令の物部です。加賀は被弾なしと自己申告しています》

「えっ? あ、了解いたしました」

 

 そこに小河原は割り込む。

 

《どういう事だ? 加賀が強がり言ってるだけじゃないのか?》

「いえ、違います。本来ならば存在しない飛行甲板に被弾判定が発生しているのです」

《なんだそりゃ?》

 

 呆れたように小河原は言う。

 

《で?原因は?》

「只今、原因究明を進めています」

 

 汗を拭きながら技術班長の彼は受け答えする。

 

「と、取り敢えず早期復旧が出来る様、誠意努力致します!」

 

 彼は通信を切り、ソワソワしながら監視塔内をぐるぐると回る。

 

「整備班は未だか?」

「加賀の帰還は3分後です」

「そうか、早期究明を整備班に再三伝えておいてくれ」

 

 平河はキーボードを叩くのやめ、挙手する。

 

「八重コンピュータシステムズの平河です。まだ……仮定の段階ですが……原因を発見しました」

 

 それを聞いた男は身を乗り出す。

 

「えっ?! 貴方が平河さんですか! ぜひ我々に教えて頂けないでしょうか?」

 

 平河は眼鏡を光らせ、眼鏡を縁をクイっと上げる。

 

「まだ、これは仮定の話という事に留意してください」

 

 平河の口調が滑らかになる。

 

「私は説明下手なので、逐次質問をして貰って結構です。先程、演習用のプログラムのソースを見させてもらいました」

 

 平河はノートPCを引き寄せ英数字の文字列を表示する。スクールしある所で止める。

 

「原因は簡単です。演習用プログラムに加賀の改装データが反映されてなれてなかったからです」

「いや、しかし、艤装の方にはちゃんとプログラムを組み直して入れた筈です。演習プログラムと艤装プログラムに乖離が起きているならばエラーが発生する筈です」

 

 海軍士官も疑問を口にする。

 

「えぇ、しかし……」

 

 平河が言うには、艤装内のデータは通常なら中央の艤装データと同期し、演習プログラムのデータも中央と初期設定で同期するよう設定されている。しかし、今回は中央と艤装内データは同期せずに演習プログラムに放り込まれた。それで艤装内データと演習プログラムとの間で通信が行われ、データが乖離していることを検出されるが、これまた初期設定で、演習プログラムを通して艤装内データと同期が始まるが、今回は加賀の艤装内データにはプロテクトを掛けており、削除できず、二重登録状態となっていた、それでそのまま演習が始まり、加賀はプロテクトデータの方を使って、艤装を動かしていた為、加賀自身も気付かなかった。その、二重登録の時点で警告文が出るが……。

 

「……ここは実験艦隊なので予め設定は変えてあるはずです。しかしこれが今回起きたのは多分新しい特種兵装アクセス装置を使ったからでしょう。整備班か、艤装班の担当者に連絡して確認してみてください。新しい装置があるかどうかと誰かしらがその警告文を確認している筈です」

 

 その場に居た半数以上の人達は驚いた顔をする。

 

「そんな、設定初めて聞いたぞ」

「俺も聞いたことないな」

「あっ、もしかして出撃管理プログラムの開発主任だった……」

 

 自衛海軍技官の彼はふと、思い出したのか声を上げる。

 

「えぇ、以前に出撃管理プログラムなどに噛ませてもらいました」

 

 更に騒めく現場。

 

「特種兵装用出撃管理システムの構築の立役者じゃないか?!」

「あんなに若いのに、特種兵装のプログラムに半分以上手掛けたあの、平河さんなのか?」

 

 平河は少し頬を赤らめ、主任をしたのはほんのちょっとだけですがと呟き、咳払いをする。

 

「私が最初、自衛海軍…まだあの時は海上自衛隊でしたね。その頃にそう設定しろと指示があったのでそういう仕様になっています」

 

 また、平河はPCに向かって何かを打ち込んでからまた、振り向く。

 

「このエラーの処理方法ですが、加賀が帰還しなくても、修正プログラムを流し込むことができます」

 

 また、面々が騒めく。

 

「特種兵装一括管理プログラムを利用して、加賀、艤装内のシステムに修正プログラムをインストール出来ます。演習プログラムと中央との同期設定も切って、演習プログラムにも修正プログラムを直ぐさま落とせば時間がかかりません」

 

 簡単そうに平河は解決案を提示するが……。

 

「平河さん、今から修正プログラムを組むと言っても時間が掛かります。演習プログラムはオフメンテできますが特種兵装はオンメンテということですよね? かなり難易度が高いかと……」

 

 最も簡単に言う平河に恐る恐ると言った感じで艤装班の班長は言う。

 

「いや、大丈夫です。既に加賀の修正プログラムは完成しました。後、艤装班と整備班からの返答はどうでしたか?」

「え?」

 

 さらっと平河が言った言葉に全員がフリーズする。

 

 問題が最初に確認されてたから30分程しか経ってないが彼は既にプログラムを組み終わったと言っている。ここまで来ると変態(褒め言葉)か怪物(褒め言葉)レベルである。

 

 分かりやすく言うとベテランでも1時間半ほどほどかかる作業を30分で終わらせたのだ。

 

「アッハイ、艤装班からその警告文があったと連絡がありました。とりあえず承認を押したそうです」

 

 暫くの沈黙後、白銀髪の海軍士官(先程まで平河の案内役をしていた男)は思い出したように報告する。

 

「では……問題はほぼ特定されたと言っても過言でないでしょう……直ぐにデータを送信します……演習プログラムの方も直ぐに書き終えます……30分程お待ちください」

 

 

 急に平河の口調がつっかえつっかえになり、八重も自衛海軍も開いた口が塞がらずただ頷くばかりであった。

 




1話に引き続き提海が後書きを書かせてもらいます

さて、この作品はGF-FleGirAnSという名義で投稿させて頂いております。
名義の由来を今回書せてもらいます

GF→連合艦隊という意味で、元々私の案で連合艦隊という団体名(?)を提案した過去があります。
FleGir→fleet girl collection 艦これのことです
An→anniversary 意味そのままです。
S→Story 意味その(ry

訳は艦隊これくしょん記念日話ぐらいの意味ですね(来年もやるのか?いや、やらないだろう)

話は戻りまして本文を読んでくださった皆様は、それぞれの担当部分がわかりますか?(私のは文章力ない文なのですぐわかると思います!)
そんなところに注意して読んで頂けたら、より楽しく読めると思います

では、最終話まで、短い期間ですがお付き合い頂けたら幸いです。(デジャビュ感)

次回(第3話)は4月25日投稿予定です。
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