艦隊これくしょん~抜錨! 戦艦加賀~ 作:GF-FleGirAnS
着いてしまった。二人の心境はそれが一番的確だった。
「へ、部屋に入られないのかしら? 古鷹さん?」
「同じ言葉をそっくりそのまま返しますよ、加賀さん」
重い艤装を背負ったまま部屋のドアの前で立ち尽くす二人。ドアには『特種兵装研究センター センター長執務室』という看板が掛けられている。ドアは安い貸しオフィスのものそのままのようで、偉い人が働いている雰囲気はない。下手したら加賀や古鷹の私室の方が高官が務めている印象を与えるだろう。
だが、今の二人にとって、この部屋のドアを開けることは市ヶ谷の幕僚長執務室のドアを開けるのに匹敵するプレッシャーを感じている。既に叱責が確定している状況下、だれが晴れ晴れとした気分でその担当者のドアを開けられるというのか。
「久川二佐……知ってます? 小河原一尉も古賀海将補も二佐と対立するのは極力避けてるって話ですよ」
「今からそこに特攻するのにいらない情報ありがとうございます」
古鷹にそう返して加賀は意を決してドアをノックしようとして、腕を止めた。
「……ノックしないんですか?」
「やはりここは先任として古鷹さんがやるべきだと思うわ」
「先任だと言うのなら先任の艦娘として命令します。加賀さんは先に入りなさい」
「拒否します」
結局はどちらが貧乏くじを引くかで揉めているのである。なお、このやり取りは既に3回ほど行われている。
「まったく、戦闘中に貴女が熱くなるからですよ」
「物理的に熱かった焼き鳥製造機さんには言われたくありません。それを言うなら缶を不完全燃焼させて無理矢理発生させた煙幕で演習海域を視えなくしたのは誰ででしたっけ?」
「見えなくなんてしていません」
「見えづらくするだけでも十分演習阻害行為です。おかげでこの古鷹まであの久川二佐に――――」
そこまで古鷹が言ったタイミング、彼女は加賀が固まっているのを知る。古鷹が良く見れば、加賀の瞳孔が収縮しているのがわかる。あんな目をするのは驚いたときか、極度の緊張か――――
「
真後ろから響いた野太い声と共に古鷹の肩にポンと手を置かれた。その瞬間に古鷹の口から絹を裂いたような声が出る。
「声をかけただけで素っ頓狂な叫びをあげられると、さすがにこっちも傷つくのじゃが……」
「ひ、久川二佐……」
「おう。海中に『沈』した艤装が
「お疲れー」
「古鷹さんも加賀さんも大丈夫かにゃぁん?」
部屋に入ると既に夕張と睦月がスタンバイしていて、返事をする間もなく艤装をはぎ取られる。そのまま艤装は作業台に乗せられ、ラック式の馬鹿でかい工具箱などが用意されていく。……既に分解が終わったらしい青葉型の艤装から、古鷹はナチュラルに視線を逸らした。
「えっと……」
「加賀さんも古鷹さんもそのあたりで座って待っててください」
「は、はい……」
そう言いう間にも、夕張は古鷹の艤装を瞬く間に分解していく。加賀や古鷹も手伝いたいところだが、すでに艤装は日ごろ行う簡易分解の域を超えていた。出撃先で簡単な整備が行えるように、加賀も古鷹も自分の艤装の整備の仕方を習ってはいるのだが、電子部品などが詰まったユニット等を引き出すような大規模整備ができるような技術はない。おとなしく部屋の端にあるスツールに腰掛ける。
「あちゃー、やっぱり排気系から水が流入してるわ、電装区画もヤバいかなこれは」
「電装系パッケージを取り出して確認、漏水ありなら純水につけとけよ。海水だから空気に晒すと一気に酸化するぞ」
「わかってますって。睦月ちゃんクーラーボックスとってー」
「了解なのですっ!」
「こりゃ外部端子系は全滅じゃな。ストックはまだあったが……、基盤は外注になるのぅ、速達でも明日じゃなこれは」
目の前で自らの艤装が『処理』されていくのをみながら、加賀と古鷹はどうもいたたまれない。自らのミスで壊した艤装が目の前で修理されているのだ。手間をかけさせてしまっている居心地の悪さはどうしてもぬぐえなかった。
「センター長ー。PCUのデュアルサーボバルブってストックの何番でしたっけ?」
「あん? 巡洋艦用は2の4の11じゃが、なんでそんなところがやられとるんね」
「いや、知りませんけど。古鷹さん、舵の部分で何か硬いものを思い切り蹴ったり踏んだりしました?」
「えっと……、した、かも?」
古鷹の答えに夕張が肩を竦める。
「ちなみに何をしました?」
「えっと……」
古鷹が答えに窮しているとその横に座る加賀がさらっと告げる。
「思いっきり青葉さんを蹴って沈めましたよね」
「……へ?」
その答えにきょとんとする睦月の耳に久川の含み笑いが届いた。
「どおりで青葉が『古鷹さぁん』って泣きながら艤装を置いてったわけだ。特調六課にわざわざ詫びに
女の子じゃろうにまったく、と笑いながら加賀の艤装の出力制御バルブを取り外す。こっちも歪みが出とるのぅとぼやく久川に肩を竦める夕張。
「使い方はともかくとして、原因不明の損傷ではなさそうなのでとりあえずはOKですかね」
「まったくだ。ここから原因究明と行かないのはまだ僥倖じゃな。古鷹、お前さん頬の傷はきちっと消毒しとるんじゃろうな?」
加賀の顔も腫れてるが、冷やさんでいいのか。とどこかぶっきらぼうに問いかける久川。
「えっと……」
「……しとらんのか。睦月ちゃん、こっちはいいから応急箱。あと氷が給湯室の冷凍庫にあるから持ってきとくれ。加賀もたんこぶが出来とるじゃろう。しっかり冷やしとけ」
「にゃしぃ!」
睦月がそう言うと手に持っていた古鷹の重そうな肩部装甲を置いた。
「これぐらいの傷問題ありません」
加賀がそう言うも、久川はにらみを利かせた。
「問題あるかないかは自分じゃわからん。少なくともそんな傷をこさえたままお世辞にもキレイとは言えん横須賀の海に潜ったんだ。手当てぐらいしていけ」
そう言われるとぐうの音も出ない。加賀の様子を見て古鷹がどこかニヤリとした笑みを浮かべる。
「口に出しとらんくても全くおんなじじゃからな、古鷹」
「……はい」
しゅんとして古鷹が答える。加賀はわざと取り繕ったような無表情を守った。加賀と古鷹の間がどんどん冷え込んでいるが、その均衡が崩れる前にドアが開いた。
「応急箱と氷と滅菌ガーゼ持ってきましたー!」
「おー早いのぅ、自分の手を洗ってから手袋してやれよー」
「はーい」
睦月が使い捨ての手袋をしてから氷を手に取る。それをタオルで包んで加賀に手渡した。
「おでこたんこぶになっているのです。そこに当てておいてください」
「……わかりました」
加賀の返事に満足げな睦月が惜しげもなく消毒液を脱脂綿に振りかけて古鷹の傷を柔らかく叩いていく。
「こんな傷を作って、いったいどうしたのです?」
目一杯滲みる消毒液に僅かに涙を浮かべつつ古鷹が、たんこぶに氷を押し付けながら加賀が、それぞれ相手を指さしながら同時に答えた。
「「この人がやりました」」
「……えっと、演習で、なのか、にゃぁ?」
「はい」
「「演習です」」
二人そろって答えた内容に久川が口を開いた。
「嘘つけ。『あれはただの乱痴気騒ぎ』と古賀海将補から聞いとるが?」
「「演習です」」
「……さよか」
どこかあきらめたようにそう言う久川。
「まぁどちらにしても演習としては問題ありじゃろう。加賀、お前さん、インテークヒーターを切って燃料一気にぶち込むかなんかしたじゃろう。思いっきりシリンダーヘッドが痛んでるんじゃが」
「それは……」
「そう言えば加賀さん無理矢理煙幕作ってましたよね」
古鷹の言葉ににらみを利かせる加賀。そのやり取りを聞いて久川が続ける。
「これからも使う予定があるならスモークチャージャーを用意するから後で言え。こんなことを何度もされたら缶周りの予備部品が底をつくぞ。あと古鷹、お前さんは舵で人を蹴るな。制御用のサーボが歪んで舵が効かなくなるぞ」
「あの時は不可抗力です」
拗ねたように視線をぷいとずらす古鷹。
「お前さんがぶっ壊したパワーコントロールユニットのデュアルサーボバルブがいったいいくらするか知っとるか?」
「知りません、けど……」
「お前さんの給料ひと月分は軽く飛ぶぞ」
「へぁっ!?」
「いかんせん靴に仕込めるサイズに小型化しつつ艤装の重さがかかっても瞬時に正確に動くようにするのは滅茶苦茶な精度が必要でな。どうしても値が張る。最終的には人の手作業じゃないと仕上げもできんしな。人件費で値段が跳ね上がるのさ」
演習中の事故ということにしてくれてよかったのぅと言いながら久川は洗浄する部品をまとめていく。それを聞かされしゅんとした古鷹に加賀が追い打ちをかける。
「まったく、人を蹴るようなガサツなことをするのはいけませんね」
「加賀の言う通りじゃな。ちなみにお前さんが煙幕の中に突っ込ませた艦載機は三桁万円する。あとで修理の見積もり見るか?」
「……いえ、結構です」
見事にブーメランが帰ってきて撃沈する加賀。真水での洗浄が必要な部品を一通りまとめた久川がその様子を見て笑った。
「まぁ、とりあえずは軽いけがで終わって
「「誰がこんな人と!」」
ほぼ同時に反論して、同時に黙り込む古鷹と加賀。
そんな二人を微笑ましく見ながら溜息をつく。
「さて、お説教は古賀の坊主からされるじゃろうし、もうこんな無茶で艤装を壊さんのならそれでえぇ。早くお前さんたちも、それぞれの指揮官に詫びをいれに行きんさい。艤装はこっちで直しておくけぇね」
ほれ、水をかけられたくなかったら出てった出てった、と久川に言われ、部屋から追い出される二人。それを見送った久川の耳に、再発したいがみ合いの言葉がドア越しに届いて、なんとも言えない笑みを浮かべるのだった。
まったく、古鷹も容赦がない。そう思い返すくらいには、先程の演習は互いに大人気のないものだった。まだ鈍痛の続く頭部を擦りつつ、加賀は溜息をつく。結局あの後もどちらが勝ったかで紛糾し、口論ですら痛み分けで終わった。
戦艦加賀。思えば元にあった姿に戻るだけだと言うのに、ふつふつと煮えたぎる様な感情は何だろう。釈然としない。今まで扱ってきたのが、引き金に指をかけない艦載機だったからか。どうも、敵を見据えて射る感覚に違和感を感じる。弓道場で、的を前にして弦を引くのとも違う。
視線を膝上に握っていた拳に落とす。訓練の賜物で皮が厚くなった手の平を開く。果たして、この手で戦ってきた航空母艦加賀とは何だったのだろう。日本の保有する中では、艦載機による絶対的な制空力を誇る艤装。急造的な出来合いから機動力が望ましいとは言えないが、それを補い余る他を追従しない性能であったのは間違いない。
だからこそ、強者であった自分と今の自分とを比較してしまう。戦って死ぬ恐怖より、前線に出られず指を咥えて仲間を見送る方が恐しい。妾の子と蔑まされた五航戦は、こんな気持ちで決戦に行く私たちを見送ったのだろうかと自嘲する。情けない。今では私が足手まといだ。
「たかが重巡相手に滅多打ちされたからって、拗ねてませんよね? 加賀さん」
思考を遮った明朗な声に胸を撫で下ろしたのは、先程思い返した五航戦の姦しい方の口調を思い起こされたからだろうか。そんな考えを否定する。彼女はここにはいないのだ。振り向いた先で手を振るのは横須賀海艤廠で技官を務める陽炎だった。
「……久しぶりに会うけれど、その減らず口も相変わらずかしら」
「何を今さら。生憎ガサツな性格でここまでやってきたから、変えようにも変えられないのよ」
春とはいえ、陽が陰るには良い頃合いだ。水平線の先を眺めていた加賀の隣に腰を下ろすのは、自分達を照らす夕日色に近しい髪を持つ少女だ。二水戦の鬼、神通の右腕として名を馳せた艦。ガ島鼠輸送作戦で縦横無尽に駆け巡り、縁の下の力持ちとして活躍してきたのを耳にしている。
現在の上司である古賀海将補とは、北方戦線で縁あって僚艦の不知火ともども拾われたのだと言う。その時の損傷が原因で退役し暫く経っているが、今もなお元艦娘として横須賀で試験航海につきあっているという話だ。
歴戦の駆逐艦。二桁の妹たちを束ねるネームシップ。黎明期から深海棲艦との戦いで活躍し続けたことから、後続の駆逐艦にとって憧憬と畏怖の対象である陽炎。隣に座る彼女は役目を終えた枯木のようではなく、今でも燃えるような瞳で加賀に嗤うのだった。
「しっかしまぁ。天下の一航戦様だって、いきなり砲撃戦やれって言われればあぁなりますって」
「……冷やかしなら後にしてくれるかしら。明日にもまた試験があります。心身を休めるのも、重要な仕事です」
「内心は穏やかじゃないからのその台詞でしょ。さっきの演習がお得意の艦載機が使えないから勝負にならなかった……なんて言い訳で、自分から逃げようとしてないですよね?」
「……砲撃戦の練度は明らかに古鷹の方が上です。付け焼刃の私が勝てる
「それで本番に沈んじゃ元も子もないわね」
持てるカードで最大のパフォーマンスを発揮できなければ負けるのは当然である。それが分かっていても、加賀には先の演習に意味を見いだせなかった。そんな加賀を見て、先程とは声色を変えた陽炎の声が冷たく響く。
「今まで一方的に嬲り殺してきた側の身になるのは、どういう気持ちかしら? 加賀さん」
その発言に対して、怒りと共に振り向いた加賀の視線を真っ向から受け止める陽炎。冗談でもからかいでもない。陽炎自身から立ち上る迫力に、気を荒立てた加賀が面を喰らったぐらいだ。
「……かの大戦だって機動部隊が壊滅したあと、戦線を支え続けたのは他ならぬ水雷屋だったの忘れてないでしょうね。駆逐艦は菊花紋章を背負えないその程度の格式と扱われ、身を磨り潰されそれでもお国のために戦い続けた」
各地に飛ばされ、休む間もなく作戦に従事し。その果てに僚艦を喪い続ける。形は人それぞれであるが、どの駆逐隊も悲劇的な結末しか迎えていない。その
「ミッドウェーで南雲機動部隊が壊滅したせいとは言わないわ。ただ、そういう因果なのかもしれないわね。今こうやって艦娘として、艤装として誕生した加賀であっても、理解してない物がある。航空母艦として先制攻撃を優先するがあまり、歯ぁ喰いしばって戦闘距離まで耐える水雷屋の気持ちがね」
遠射程の攻撃で落伍した艦艇は叩き潰される。艦娘にとっての戦いでは至って基本的なものだろう。まず先に沈んでいくのが装甲の薄い駆逐艦や軽巡洋艦だ。
航空母艦の役割は艦上攻撃機、爆撃機による敵戦力の早期漸減と撃滅。倒しきれなかった相手に止めを刺すのが砲撃戦、雷撃戦だ。戦艦による大口径主砲による遠距離射撃を鑑みれば、火力の低い駆逐艦と軽巡洋艦の活躍は戦闘終盤にしか発揮されないといってもいい。
加賀は今まで何体もの深海棲艦を屠ってきている。強敵との戦いに心が震えることもあった。だが水雷戦隊に至ってはただの寄せ集めとしか思っていない節はある。確かに雷撃は脅威であるが、それまでにこちらが敵艦を沈め終わっていることも多く砲火を交わした回数も少ないくらいだ。否、一方的に殲滅しているの間違えである。
――――アンタは心の何処かで、水雷屋を馬鹿にしている。陽炎の目にはそう書かれているに違いない。
「古鷹もそう思っているはずよ。先制攻撃という仕事を終えたアンタは、他の艦が戦闘を
陽炎の凍結された艤装がどれだけの出力制限がかかるのは、加賀にとっては預かり知らぬ話だ。だが、陽炎の言う通り、今まで傍観してきた近距離戦闘においてはド素人だ。たかが駆逐艦と侮っては負けるに決まっている。古鷹のような火力のある重巡洋艦なら尚更だ。
「いつも赤城さんが言ってるじゃない。慢心しては駄目と。でもアンタは、水雷屋なんかとマトモな戦闘になるはずがないと考えてる。それを改めないと、そっから先は荊の道よ」
戦艦加賀の名を背負うと言うことは、今までに航空戦に近い距離で戦闘を続けるということだ。反動云々の話を除けば、問題はさしたものではない。
だが戦艦に中口径副砲が装備される理由は、確実に巡洋艦や駆逐艦を仕留める為の物だ。今までとは勝手が違う世界だ。陽炎は目線を変えろと言う。今まで思考を放棄してきた戦闘に目を向けろと言う。航空戦ではない砲撃戦とは、一時も気の抜くことが許されない凌ぎの削り合いなのだと。
「私はさ。『何で私は駆逐艦なんだろう』って思った事は一度や二度じゃないわ。だってそうでしょ? 華々しい戦果を上げていくのはいつだって空母や戦艦だったんだから。それでも駆逐艦であることを後悔はしなかった。駆逐艦陽炎としての自分が、自分の限界だというならそれも受け入れるわ」
「……けれど、貴方は只の
「それもそうね」
陽が陰り始め、日没が近づく。光量が減った訳ではなく、朱色の髪を揺らす彼女が顔を曇らせたのを加賀が見逃しはしなかった。
「最初の内はさ。やれることをやろうって奮起したのよ。でも戦ってるうちにどんどん実力が想いに追いつかなくなったわ。案の定と言うか、そんな状態で続けてたら時間の問題よね。そして心身共に疲弊した私は、不知火と一緒に北の海で力尽きた」
自分の失態を語る顔であるが、陽炎の表情はいたって穏やかだった。
「死にかけて、拾われて思ったわ。結局私は何も成し得なかった、今までやってきた事が無駄だったんだってね。ただ……それでもあの人は手を差し伸べてくれた。艦娘として役に立たない自分を、戦力としてではなく個として見てくれた」
そう微笑む彼女がまるで恋をする乙女のような口ぶりであると、加賀には聞こえた。にやけていた顔に気が付いたのか、陽炎は口を一文字に結んで引き締めて言葉を続ける。その様がいつも大人ぶっている様と比較して少女らしい一面を見せたことにも、同性とし見ても可愛らしいと思う。
「随分と古賀海将補をかっていますね。優秀なパイロットだったそうですし、無人航空隊管制官としてのキャリアも確かだったと聞いています」
「え”っ……あぁ、違う違う。引き抜いた私たちを指揮してたのは、古賀さんじゃなくて当時着任したてだった新人の司令よ。ちょうど物部三尉くらいのルーキーだったわね。だから加賀さんと物部三尉を見ると、懐かしく思うのかしら」
今では古参の艦娘として、周りから一目置かれる陽炎。そんな彼女の初心な面を見て、加賀もまた彼女が同じ艦娘であったのだと。誰しもが持つ脆い面を抱える少女なのだと思い返す。
「まさか駆逐艦から教授されるものがあるとは思わなかったわ。陽炎先輩には様様ね。他人の恋路に蹴られないように気をつけるわ」
「……良い度胸ね。次の戦闘私が代わってやろうかしら」
自分語りしたのを今さら後悔したのか、視線を逸らす陽炎。照れ隠しのつもりか、口調にぶっきらぼうさが増している。その顔が、沈みかけた陽の明かりに照らされただけで朱色になっているのではないはずだ。
「頑張って下さいね。加賀さん
そう言って立ち上がり、陽炎は走り去っていくのだった。
残された加賀もまた、執務室で書類と格闘する上司を思い浮かべる。
「……頃合いですし、提督のお手伝いに戻りましょうか」
自覚はしていなかったが、憂いていた自分が馬鹿馬鹿しくなる程に気分が晴れたようだ。
その心を映したのだろうか。闇には雲一つない夜空。月の光だけが世界を彩り始めた。
お読みいただき感謝ばかりです。GF-FleGirAnSでは、スケジュール管理とセッティング。編纂会議のストッパー兼文章校正係。おまけに厨二病担当()のエーデリカです(そんな役回りばかりだから委員長と呼ばれるんだよと、皮肉られもしましたが)
五者五様の執筆傾向をいかに一つの文章とするのに凌ぎを削っておりましたが、こうやって投稿出来たことが奇跡と思っていたりします。
案外。参加者の元々の文章を読まれている方には、容易に誰が書いたか分かるかもしれません。ちなみに提海 蓮先生の文章以外には、かなーりお互いにちょっかい出してメルティングポット状態で完成してたりします。ここでは一概に誰が担当したパートと言い切りませんが『あのキャラの出番は誰が書いた!』と含み笑いをして頂ければ、作者冥利に尽きるというものです。
しかし、最初に短篇やろうとか言ってて累計80000字越えました。Googleドライヴが処理落ちしてました本当に……。
ともあれ、次回の更新をお楽しみ頂ければと思います。