運が良ければ続けるかも。
入学編まで書けると言いな・・・・。
スカイミューゼル社 訓練室
「とぅおー!」
「遅い。」
「いでっ!?」
青いコンバットスーツを着た弾を赤いコンバットスーツの宇宙刑事、シャリバンとなったオータムが跳ね除ける。ここ数日この調子だ。一夏の力になるため宇宙刑事を目指す弾であったが身体能力は悪くないものの動きが素人のため訓練用のスーツでの練習でもオータムに一発も攻撃を当てられない始末だった。当然オータムは手加減をしている。
「いててて・・・・・」
「ほら、立て五反田。」
「オータムさん強すぎっすよ。もう少し手加減してくれたっていいじゃないですか。」
「バカ、そんなこと言っていたらギャバンのような一人前になるまであと十年、いや百年たっても無理だぞ。」
「ひゃ、百年!?」
弾は思わず跪く。そんな弾をオータムはやれやれと言いながらも引っ張っていく。
「次は射撃訓練だ。たまにはど真ん中に当てて見ろ。」
「オータムさん、一夏はこんな訓練を六年も繰り返していたんですか?」
「まあ、私が初めてバード星に行った時には既に訓練生は卒業していたからな。でも、元亡国企業出身の私でさえも訓練に一年以上費やしていたんだ。それも軍の訓練が楽なものに見えるほどにな。」
「うひゃ・・・・・」
「まあ、そんなわけだ。本来ならバード星の訓練学校に行かなくちゃいけねえけどお前に限ってはこの宇宙刑事シャリバンことオータム様が直々に教えてやっているんだ。それに身体能力的にはそこそこいいからすぐにでもなれるさ。」
オータムは笑いながら言う。弾はため息をつきながらも次の訓練へと移るのだった。
とある山の乗馬コース
一方一夏たちは学園に入学するまでの残りの数日間をマドカと一緒に過ごしていた。そして今日は乗馬クラブで乗馬を楽しんでいた。
「ギャバン!箒姉さん待ってよ~!」
マドカはビクビクしながら馬に乗っている。一夏と箒はその姿を見ながら思わず笑っていた。
「怖がるなよマドカ。慣れれば楽しいもんだぞ?」
「こういう体験はあまりないからゆっくり動かせばいい。そうすれば自然に馬だって動いてくれるぞ。」
そういいながら三人は近くの湖で馬を止めて一休みすることにした。一夏は持っていた新聞を見てマクーの事件がないかどうか確認していた。
「ここ数日、羊や馬、子犬や家畜までもが謎の盗難・・・・・・・・・そして子供の誘拐か・・・・・・」
「それも昔一夏が住んでいた地域に近いな。でも、こうも連続で盗難や誘拐が起こるなんて変なものだな。」
「そう言えばギャバン。」
マドカは一夏の方を見ながら言う。
「どうしたマドカ?」
「その・・・・・千冬姉さんには会わなくてもいいの?」
マドカの質問に一夏は思わず黙った。
「そうだな・・・・・」
「もしかして会うのが怖いの?」
「そうかもしれないな。なんせ三年前に勝手にいなくなったんだ。それで帰ってきたところで受け入れてくれるとは考えられないんだ。」
「ギャバン・・・・」
「一夏・・・・私は千冬さんに会うべきだと思う。」
「箒?」
「私はもう母さんと父さんにはもう会えない。でも、一夏にはまだ千冬さんが残っているんだ。千冬さんもきっと一夏が生きていると信じているし、会いたいと思っているはずだ。だから会いに行った方がいい。」
箒に言われると一夏は何も言えなくなってしまった。
「・・・・・・・箒の言うとおりだな。よし、弾たちを通して会えるようにやってみるか。」
一夏はそう言いながらまた馬に乗り、移動を始める。箒たちも後に続いた。その帰りの途中だった。一夏たちが車で帰っていると途中でふと一人の虫網を持った老人の姿を目に捉えた。一夏は読んだ新聞の記事を思い出す。
(確か、盗難にあった一部の証言には盗難に遭う少し前に近辺で虫網を持った奇妙な老人が歩いている姿を見たというのがいくつかあったな・・・・・まさか・・・・)
一夏は一旦車を止めてその老人の後を追うことにした。
「どうしたんだ一夏?急に車を止めて。」
「すまない、ちょっと気になることがあったから少し行ってくる。箒はマドカと一緒にいてくれ。」
そういうと一夏は車から降りる。そして物陰に隠れながら老人を追跡していく。できるだけ感づかれないように移動したが感の鋭い老人なのか一夏の姿を一瞬確認すると老人とは思えぬ素早さで逃げていった。一夏は後を追うが大量の廃車が置かれている場所まで来るとすでに老人の姿はなかった。
「おかしい・・・・・老人がまるで消えるように移動していた・・・・・俺でも追いつけない速さで移動するとは・・・・」
「一夏!」
そこへ箒が駆けつけてきた。
「箒!勝手にこっちに来ちゃダメだろ。」
「すまない、やっぱり心配だったからつい・・・・」
箒が申し訳なさそうに謝っていると前方後方から突然車が走ってきた。二人は慌てて避けようとするが間に合わず車は双方激突し大爆発を起こした。爆破した現場にハンターキラーとマクーの戦闘員たちが来た。
「・・・・・やったか?」
「ハンターキラー!」
「むっ!」
ハンターキラーたちが後ろを見ると積み重ねられた廃車の上にギャバンともう一人コンバットスーツを身に包んだ女性が立っていた。
「ギャバン!そしてそっくりな女が一人・・・・・しいて言うならレディギャバンと言ったところか!」
「そう、私はギャバンのパートナー。宇宙刑事レディギャバン!」
「かかれ!」
ハンターキラーが言うと同時に彼の周りのほかに隠れていた戦闘員たちが一斉に現れ二人に襲い掛かってきた。ギャバンとレディギャバンは、巧みな格闘術で戦闘員たちを蹴散らしていく。
「ギィ!」
「ギィイ!!」
二人の宇宙刑事の攻撃に戦闘員たちは次々と倒れて行った。そこへ鳥の顔をした怪人コンドルモンスターがギャバンの腕をロープのようなもので拘束した。
「ケケケケー!」
「むっ!?」
「ギャバン!」
レディギャバンはすかさずコンドルモンスターに攻撃を加えようとするが目からのレーザー光線で視界を阻まれてしまった。気が付いた時には怪人の姿はなくギャバンのみがいた。
「大丈夫か?一夏。」
「ああ。」
『ギャバン、貴様らの尊敬するボイサーは地獄に堕ちた。我々マクーに逆らえば誰だろうが同じ運命をたどる・・・・・』
「ボイサーさんが!?どういうことだハンターキラー!!」
ギャバンは周囲に叫ぶがハンターキラーから返事が返ってくることはなかった。
スカイミューゼル社 司令室
マクーの攻撃を退けた一夏たちはスカイミューゼル社に戻るとすぐにスコールにそのことを報告した。
「地獄に堕ちたね・・・・・」
「スコール指令、あなたはハンターキラーがなぜ我々銀河連邦警察を裏切ったかわかりますか?」
「私も同じく気になります。」
「わからない所が多いけどハンタ-キラーを地球に派遣要請をしてきたのはボイサーなのよ。」
「ボイサーさんが?」
「ええ、その後どういう理由で裏切ったのかはわからないけど彼が派遣された後ボイサーとの連絡が途絶えたわ。」
「じゃあ、ボイサーさんはまだ生きている可能性があるんですね!?」
「死亡したという確証はないわ。でも生きているとも言い切れない。」
「俺は信じます!ボイサーさんはきっと生きているって!」
一夏は真剣な目で言った。命を助けてもらった理由もあるが両親がいなかった彼にとってボイサーは父親の代わりのような人でもあるのだ。
織斑家
「・・・・・・一夏、お前が私の目の前からいなくなってもう三年か・・・・・」
千冬は写真立てに貼ってある幼い頃の一夏と自分の写真をソファに寝っ転がりながら見ていた。一夏を失ってから彼女の人生は後悔しか残らないものへとなっていた。
三年前の一夏の誘拐発覚後、彼女は表彰式を放り投げてまで犯人の潜伏場所に向かった。しかし、このとき一夏はすでにボイサーに保護されて去った後だったため、すでにもの抜けの殻であり痕跡もほとんど残っていないがために捜査も断念せざる終えなかった。彼女はその後捜査に協力してもらったドイツ軍に恩を返すために一年間軍で教官を務めたのちに帰国。その帰り家の前で待っていた二人に千冬は驚いた。
「五反田・・・・凰。お前たち・・・・」
それは一夏と仲が良かった二人、弾と鈴だった。鈴は千冬に近づいたと思ったら平手で千冬の顔を思いっきりはたいた。
「!?」
千冬は突然の行動に驚いていたが鈴の顔を見たときさらに愕然とした。鈴の顔はすでに涙で濡れていた。
「どうして・・・・・・どうして一夏を助けなかったのよ!!」
鈴はさらに千冬の顔をはたいた。千冬は尻餅をついたが鈴は構わず馬乗り状態になってはたき続ける。
「一夏は何も悪くないのに!ただアンタの応援に行っただけなのに!どうして、どうして死ななくちゃならなかったのよ!!」
「鈴、やめろ!」
弾は鈴を抑える。鈴はそれでも千冬のことを攻撃しようとする。
「離しなさいよ!弾!」
「俺だって千冬さんを殴ってやりたいっていう気持ちは同じだ。でも、殴ったところで一夏は帰ってこないだろ!」
弾に引っ張られながらも鈴はもがき続ける。
「何がブリュンヒルデよ!何が英雄よ!アンタはたった一人の弟を見殺しにするただの人殺しよ!人殺し!!」
鈴は泣きながら叫び続ける。弾も何か言いたそうだったが千冬がすでに生気を感じさせない目をしていたため鈴を引っ張りながら千冬の前から去って行った。鈴の平手で千冬の顔は腫れていたが千冬にとってそれ以上に鈴の言い放った言葉が心に突き刺さった。
この後に彼女は現役を引退、しばらく引きこもった生活をしていたが今年IS学園からの誘いで教師になることにした。
「凰も五反田も私のことを憎んでいるだろうな・・・・」
千冬は写真を置くと再び寝っ転がって天井を見る。後二、三日でこの家を去ってIS学園に行かなければならない。一夏の死をいい加減に受け入れなければならないと思っているのだがどうしてもできない。それが彼女のことを苦しめていた。そんな時玄関のチャイムが鳴った。千冬は居留守をしようと思ったが何度も鳴らしてくるため仕方なくいくことにした。玄関では蘭が立っていた。
「五反田・・・・・」
「あ、あの・・・・・明日にうちの店に来てもらえませんか?」
「え?」
「千冬さんに会わせたい人がいるんです。」
「会わせたい人?誰なんだ?」
「それはちょっと言えないんです。でも、どうしても会ってほしいんです。」
千冬は少し疑問に思っていたが断る理由もなかった。
「・・・・分かった、明日でいいんだな。」
「はい!絶対に来てくださいね!」
蘭はそう言うと頭を下げて去って行った。
魔空城
そのころマクーではハンターキラーと宇宙生物学の権威黒星博士がドン・ホラーにある計画の経過を報告していた。
「動物・子供での実験は大成功、『ベム計画』は間もなく成人での実験を残した最終段階になりました。」
「よくやってくれた黒星博士。次の実験で・・・・それもISを扱うことができる女性を使うがよい。女性ならば他の使い道もあるからな。この実験が成功した後に人間の女、子供を次々と改造して各方面の星へと送り込むのだ。」
「はは・・・・・しかし、一つだけ例外を使ってもよろしいでしょうか?」
「何?」
「ブリュンヒルデという呼び名で有名な織斑千冬を実験対象第一号として加えたいのです。世界最強とまで言われている彼女でしたら『ベム計画』での宇宙に送る兵士としては最適でしょう。」
「ほう。」
ベム計画とは地球の生物をあらゆる環境で生きていける生物へと改造し、他の星へ生物兵器として送り込むという悪魔のような計画である!黒星博士は実験の第一・二段階として動物・子供を縮小させて捕らえ実験、改造に成功したため次の段階として人間の大人を実験対象としたのだ!
一方でその会話を盗聴している人物がいた。自分の研究室に籠っている束だ。
「ちーちゃんを実験対象に!?そうはさせないよ!」
束は黒星博士たちの会話を聞いた瞬間、それまで操作していた画像を切り替えて何やらの作業を始める。
「束様、いったい何をするつもりなのですか?」
彼女のそばで研究資料をまとめている少女は彼女の行動を見ながら言う。彼女が暗号メッセージで銀河連邦警察地球方面支部に匿名で送っているのだ。
「こんなことをしたらドン・ホラーが黙ってはいませんよ。」
「大丈夫、クーちゃんが黙っていればばれないから。いくら協力するからと言って束さんのISまで利用はさせないよ~!」
束はベム計画に関するデータ及び現場のマップを送信する。
「これでちーちゃんは大丈夫・・・・・後は・・・・」
束はハッキングして得た銀河連邦警察の構成員の写真を見る。プライベートのものではあったがそこには一夏と箒が寄り添っている写真があった。
「後はお願いね、いっくん、箒ちゃん・・・・・。」
今回は元ネタ「大変だ!黒星博士のベム計画を阻止せよ」ですが今回登場したレディギャバンは「時空戦士スピルバン」のダイアナレディを元ネタ(発想は)にしました。ベム計画は原作ではまだ小動物まででしたが今回は子供の実験にまで進行しています。
次回はついに一夏と千冬の再会。