宇宙刑事ギャバン 居場所をなくした二人   作:赤バンブル

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魔空空間までもっていくつもりが・・・・・


急げ一夏!千冬を救え!

スカイミューゼル社 司令室

 

「では司令、少しの間行ってきます。」

 

「せっかくの家族との再会なんだから別にこっちのことは気にしないで会って来なさい。」

 

「わかりました。では。」

 

一夏は頭を下げながら司令室を後にしていく。部屋の外ではすでに箒とマドカが待っていた。

 

「待たせたな、それじゃあ行こうか。」

 

「ああ。」

 

「早く行こうよ!」

 

マドカは急かすように言う。一夏たちは急いで待ち合わせ場所にしている五反田食堂へと向かうのであった。一方のスコールは一夏が去った後、バード星本部への提出するための書類をまとめていた。そこへ通信が入る。

 

「私よ。」

 

『司令、先ほど本部に奇妙な暗号メッセージが送られてきました。』

 

「暗号?」

 

『解析が途中なのですが途中まで解読できたので。』

 

「内容は何なの?」

 

『ベム計画ニ注意セヨ。織斑千冬ガ狙ワレテイル。』

 

「ベム計画?狙われている?それもギャバンの実のお姉さんである織斑千冬を?」

 

『まだ解析の途中なので断言はできませんがこのことをギャバンに知らせておきますか?』

 

「・・・・・・・・・いえ、まだいいわ。あなたたちは残りの部分の解読を急いでちょうだい。」

 

『わかりました。』

 

通信を切るとスコールは不安そうに窓の外の方を見る。外では準備を整えて車に乗って出かける一夏たちの姿があった。

 

「これは大変な一日になりそうね・・・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、蘭に店に来るように頼まれた千冬は自分に会いたい人物が何者なのかと考えながら五反田食堂を目指して歩いていた。マクーに狙われているとも知らずに・・・・・。

 

 

「・・・・・・・・まさか、束が私を訪ねに来るはずがないしな・・・・・。」

 

千冬は唯一心当たりがあるのは束ぐらいだった。しかし、自分や妹である箒以外の人間には全くと言うほど興味を持たない彼女がわざわざ亡き弟である一夏の友人を通じて自分に会いに来るように言うのだろうか?でも、弾が何か言いたいのなら直接自分の家に来るはずだし、他に思いあたる者がいない。

 

(まさか・・・・・・・いや、それはない。確かにあの現場にはアイツの遺体は愚か血痕すら見つからなかったがもうあれから三年も経つんだ。生きているとはとても・・・・・)

 

「千冬さんー!」

 

その時自分を呼ぶ声が聞こえ千冬は目の前を見る。気がつけば蘭が走ってきていた。

 

「五反田。」

 

「なんか中々来ないもんだから迎えに来ました。さあ、早く家に行きましょう!」

 

彼女に手を引っ張られながら千冬は足を速めた。

 

「まっ、待ってくれ五反田。お前たちのうちに行く前に一つ聞きたいことがあるんだがいいか?」

 

「聞きたいこと?」

 

蘭は足を止めて千冬の方を見る。

 

「この際だからはっきりと言ってくれ。いったい誰が私に会いたいと言ったんだ?考えてみたが私にはそんな輩はいないし、お前たちを通じてまで会おうという者もいない。いったい誰が・・・・・」

 

「あ~!もう!こんなところで言っても信じてもらえないと思って言わなかったのに!いいですか!あなたに会いたいと言った人は・・・・・」

 

「五反田、後ろ!」

 

「え?」

 

千冬に言われて蘭は前を向きなおすとそこには虫網を持った奇妙な老人が近づいてきていた。

 

「あれって確か最近の誘拐事件とかの現場の証言にあった老人の特徴と・・・・・・・」

 

「はあっ!」

 

「きゃあ!?」

 

二人は突然広がった虫網に捕まってしまった!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

蘭たちが襲われるちょっと前の五反田食堂

 

「・・・・・・遅いな。」

 

弾は店の中をぐるぐる歩き回りながら待っていた。その様子を蓮と厳は不思議そうに見ている。

 

「弾、あなた誰を待っているの?蘭は千冬さんを呼びに行くって出かけて行ったし・・・・・」

 

「おめえ、まさか変な奴らとつるんだりとかしてんじゃねえだろうな?」

 

「ひでえな!母さんもじいちゃんもきっと会えばびっくりするって!」

 

「じゃあ、誰なのか教えてくれてもいいんじゃないの?」

 

そんな会話を親子でしている中、店の戸が開いた。

 

「あら、誰かしら?まだ準備中にしてあるのに。すみませんけどまだお店は・・・・・・」

 

蓮が言いかけたとき思わず言葉が止まった。厳も思わず口が開いてしまった。無理もない、目の前に死んだとばかり思っていた一夏が店に入ってきたのだから。

 

「・・・・・・。」

 

「・・・・い、一夏君!?」

 

「わ、儂らは亡霊でも見てるのか!?」

 

「母さんもじいちゃんも落ち着けって!コイツは正真正銘の一夏だよ!」

 

「・・・・・・お久ぶりです。蓮さん、厳さん。」

 

一夏は頭を下げながら挨拶をする。蓮は思わず何度を顔を見る。

 

「今までどこに行っていたの!?千冬さんも私たち家族もみんなあなたのことを心配していたのよ?」

 

「心配させてしまって本当にすみませんでした。」

 

「弾!おめえはこんな大事なことを儂や母さんに伝えずに隠しておったのか!」

 

「こ、これには深いわけが・・・・・・」

 

弾は必死に説明しようとする。そのとき、外から蘭の悲鳴が聞こえた。

 

「今のは蘭の!?」

 

「確か、千冬さんを迎えに行くって・・・・・まさか!」

 

二人は慌てて店から出る。

 

「一夏君!弾!」

 

「すみません蓮さん!でも、蘭と千冬姉が危ないんです!説明は後でします。」

 

そういうと二人は急いで声がした方に走って行った。現場には既に箒とマドカが来ていた。

 

「箒!」

 

「すまない一夏。一歩遅かった。」

 

箒は落ちていた携帯と写真を見せる。

 

「こ、これは蘭の携帯!」

 

「くそ!マクーの奴、千冬姉と蘭をいったいどうしようってんだ!」

 

一夏は悔しそうに写真を見る。写真にはまだ幼かった頃の一夏と千冬が一緒に写っていた。そこへ箒の通信機がアラームを鳴らした。

 

「はい、こちら箒です。」

 

『私よ。』

 

「スコール司令。」

 

『ギャバンはそこにいる?』

 

一夏は箒から通信機を受け取る。

 

「はい、変わりました。」

 

『あなたのお姉さんが連れていかれたと思う場所が分かったわ。改造される前に急いで。』

 

「改造!?それはどういうことですか!?」

 

『今朝、匿名であなたのお姉さんがマクーの実験対象にされるという情報が届いたのよ。信憑性に欠けているから伝えなかったのだけれども先ほど解読が終わってマクーが密かに地球の人間を改造して他の星へと送り込む「ベム計画」が全貌が分かったのよ。』

 

「ベム計画・・・・」

 

「奴らが考えそうなことだ。」

 

『マップはそちらにインプットしておいたわ。急いでちょうだい。』

 

スコールの通信が終えると通信機に目的地点のマップが表示された。

 

「一夏、頼む!俺も一緒に連れて行ってくれ!蘭にもしものことがあったら俺は・・・・・」

 

「弾、気持ちはわかるが今のお前ではまだマクーとは戦えない。ここは俺と箒に任せて蓮さんと厳さんを守っててくれ。」

 

「・・・・・・わかった。頼む。」

 

「箒、マドカ。急ぐぞ!」

 

「わかった。」

 

そう言うと三人は車に乗って行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宇宙食開発研究所

 

宇宙食開発研究所。

 

そこはかつて宇宙進出のための宇宙食を研究していた施設であったがISの登場による女尊男卑の社会に押され閉鎖され、現在は扱われていない。しかし、それは飽くまでも表向きの事情であって実はマクーの人体実験などを行う施設へとなっていたのだ!

 

そして、ここに千冬と蘭は捕らえられていた。

 

「くそ!ここから出せ!」

 

千冬は檻の中から叫ぶが所員たちは薄気味悪い笑みを浮かべながら何やらの装置を調整していた。黒星博士は笑いながら千冬たちの閉じ込められている檻の方へと行く。

 

「ふふふふふ・・・・・・いくら叫んでも無駄だ。これから貴様たちは宇宙の他の星に行くための兵士に改造されるのだからな。」

 

檻の中には千冬と蘭以外に小さい子供が何人かいた。どの子供も泣きながら助けを求めていた。

 

「帰りたいよー!」

 

「お母さんー!」

 

「大丈夫、きっと正義の味方が助けに来てくれるから。」

 

蘭は泣いている子供たちを励ます。

 

「私はどうなろうが構わない。だが五反田と子供たちは解放しろ!」

 

「ははは!どのみち装置の調整が終わればあなたが最初の対象となるのですよ、ブリュンヒルデ。」

 

「それは昔の話だ。今の私はその辺にいくらでもいるごく普通の人間だ。」

 

「あなたが何を言おうとも世界ではいまだにあなたが最強だと信じているのです。未だにね。」

 

黒星博士の改造手術が始まろうとしている中、一夏たちは密かに研究所の敷地内へと乗り込んでいた。

 

「マドカ、レーザービジョンだ。」

 

「了解しました箒姉さん。レーザービジョン!」

 

マドカは胸のペンダントを翳すと姿が黄色のインコへと変わる。一夏はインコになったマドカをジャケットの胸ポケットにしまうと敷地内へと侵入して行く。すると仕掛け罠が作動し、あちこちから矢が飛んでくる。

 

「一夏、避けろ!」

 

箒の叫びで一夏は紙一重に矢を避けた。

 

「危ねえ・・・・箒も気をつけろ!連中、どうやら待ち伏せしているようだ!」

 

一夏が言うとどこからともなく戦闘員たちが短剣を持って襲い掛かってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

実験室

 

「博士、装置の調整完了しました。」

 

「よし、織斑千冬を檻から出せ。」

 

黒星博士が言うと同時に所員は檻から千冬を拘束して連れてくる。

 

「千冬さん!」

 

「五反田、どうやら私はここまでみたいだ。」

 

千冬はそう言いながら装置に固定される。

 

「あなたは実に運の言い方だ。これから先あなたはその高い能力を存分に引き出して生きがいのある生き方ができるのですから。」

 

「言い訳はいい。やるならさっさとやれ、覚悟はできている(どうやら私も罰を下される時が来たようだ。何もかも失った私にはふさわしい無様な末路だな。)。」

 

千冬は装置に固定されながら覚悟した。

 

「よし、それでは実験を・・・・・」

 

「待て!」

 

そのとき、扉が何やらの衝撃で吹き飛び戦闘員が倒れこんできた。その勢いに乗じて一夏と箒が所員たちを蹴散らしていく。

 

「い、一夏?」

 

千冬は目を疑いながら拘束を解く一夏を見る。信じられないことだった。

 

「千冬姉、早くここから出るんだ。」

 

「お前は・・・・・・・・お前は本当に一夏なのか!?」

 

「今はそれどころじゃない!」

 

一夏はジャケットの胸ポケットからインコを取り出す。

 

「マドカ、子供たちと蘭を外に誘導してくれ!」

 

一夏がインコを放つとインコはたちまちマドカに姿に戻り、蘭と子供たちが閉じ込められている檻を解く。

 

「さあ、急いで!」

 

「ありがとうマドカ。」

 

蘭たちが逃げた後、倒れていた所員たちは全員戦闘員の姿へと戻っていく。

 

「こ、こいつらは人間じゃなかったのか!?」

 

千冬は戸惑いながら一夏と箒の方を見る。

 

「まさかこんなところで実験をしていたとはな。マクーの考えていることは油断ならないぜ。」

 

「ハハハハハハ!!」

 

黒星博士は笑いながらダブルマンの姿へと変わる。

 

「流石ギャバン!だがここで生きて帰れると思うなよ!」

 

「一夏、ここで戦うのは奴らの思う壺だ。いったん外に出よう。」

 

「そうするしかなさそうだな。」

 

一夏たちは戦闘員たちを撃退しながら外へと向かう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宇宙食開発研究所 敷地外

 

「蘭さんはこのまま子供たちと一緒に逃げてください!私はギャバンたちが出てくるのを待ちます。」

 

「わかったわ!さあ、みんな急いで!」

 

蘭は子供たちを引き連れて逃げて行った。マドカが少し待つと箒が千冬を連れて外に出てきた。

 

「箒姉さん!ギャバンは?」

 

「一夏は今戦っている。私も合流するからマドカは千冬さんを頼む。」

 

箒はそういうと一人戻ろうとする。

 

「待ってくれ篠ノ之!お前といい、一夏といい、いったいどうなっているんだ!?」

 

「詳しい話は後でします。」

 

箒はそういうと構えをとる。

 

「蒸着!」

 

すると光の粒子が箒の体を覆い、全身を銀色の装甲で覆った戦士へと変わった。

 

「あ、あれは・・・・・」

 

「宇宙刑事、レディギャバン!」

 

レディギャバンは急いで研究所の敷地内へと戻って行った。

 

 

 




この作品の裏設定(本編中に書けるかどうかわからないので)

ミミー

本作では一切触れていませんがコム長官の娘で宇宙刑事訓練養成所で後進の育成に携わっている(これはシャイダーの設定から)。ちなみにマドカがレーザービジョンを使えるのはバード星に行ったとき彼女の教えを受けていたため(このときに自分の所持していたものと同型のものをマドカに渡している)。ちなみに原作ではギャバンのパートナーだった。

スコールたち元亡国企業のメンバー

現段階では明確にはしていないが銀河連邦警察に入った経緯は本作オリジナル設定の「D/B計画」が途中で破棄されたこととIS部隊の解散が大きな理由になっている。

・「D/B(ブリュンヒルデ・ドローン)計画」
亡国企業が上層部が考案した千冬のクローン生産計画。偶然入手することができた千冬のDNAを元に彼女の能力を引き継いだクローンを生産し、IS部隊の戦力増強するための計画。スコールは元々この計画には賛同しておらず(もしこの計画が実現すれば彼女の率いている実働部隊「モノクローム・アバター」の立場が危うくなることもあったがそれ以前に非人道的な計画であったことも挙げられる)、オータムでさえも恐怖を感じさせるほどのものだった。結局この計画は亡国企業がマクーの傘下に入ったことによって破棄することが決定され、マドカもこのとき他の失敗作同様に廃棄される予定だった。

・モノクローム・アバター隊
現在スカイミューゼル社で働いているスタッフの一部がこの隊の元メンバー。亡国企業がマクーの一部になった時に解散され、スコールの命令で処分されかけていたマドカを保護するために組織内でクーデターを起こした。このときにベム怪獣の手で数名が死亡、オータムもこのとき「アラクネ」を大破させ、コアも使い物にならなくなってしまった。その後はスコールも組織から離反したこともあって大半のメンバーが去って行ったが残りは彼女と共に銀河連邦警察の元に行くことになった。

・マドカ
千冬のDNAを元に作り上げられた13番目のクローン(設定にあったエムとはこのときに振り分けられていた個体番号)。彼女の前までの個体はIS適合性がなかったことと、テロメアが短いという理由で廃棄されていた。彼女は唯一その条件をクリアした成功体なのだがオリジナルの千冬とは違い、精神面が脆いなどで兵器としての課題が多かった。施設にいた時期は自分を実験体としか見られておらず、自分を一人の人間として扱ってくれたスコールとオータムぐらいにしか心を開いていなかった。計画が破棄されたと同時に記録の抹消のために過去の個体同様処分されそうになったが、オータムたちの手によって救出される。その後はスコールたちと共に銀河連邦警察に保護され、しばらくバード星で暮らすことになったがこのときに訓練生だった一夏と箒に出会う。スコールや彼らとの交流で心を開いていき、現在の性格になるに至る。



次回はやっと魔空空間。

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