わかんねいや、ゆるふわじゃないかも。
「ねぇ、お兄さん。」
白いワンピースの少女が可愛らしく笑う。
そんな姿と対局に立つような真っ暗な路地で少女は笑う。
明らかな異常だがお兄さんと呼ばれた男は少女を気にかけるわけでもなく足早に歩いていく。
いや、気にかけていないのではなく気にかける余裕がない、と言った方がいいだろう。
まるで、何かから逃げるように切羽詰まった表情で歩いている。
「ねぇ、ねぇ。」
少女の悲し気な声が聞こえようともその足を止めようとしない男。
少女の声は先ほどよりも切なげになっていく。
「ねぇ……ねぇってば!!」
遂に少女が怒りを表す。
少女らしいといえば少女らしい、そんな声だった。
「……ん…………な……。」
「え?」
そして、遂に—―
「んだよ!!うるせぇなぁっ!!」
――男もキレた。
「大体、なんなんだよお前!!お前みたいなガキが!!早く家に帰れよ!!子供だからって同情するとでも思ったのか?そう思って俺にそうやってすり寄ってんのか?あぁ!?」
「あ……の……。」
困惑する少女をよそに男はまた口を開く。
「お前みたいなガキにすり寄られたって俺はそういう趣味はねぇし、お前みたいな歳なら誰かの臓器になってろよ!!クソガキが!!」
男が捲し立てる。少女は無言でうつむいていた。
「あぁそうか。お前は俺を追ってる組織が雇った演者だな?だからこんなにしつこく付きまとうんだな?なぁ、そうだろう?ガキの格好したイロキチやろうが!!」
そのとき、男は確実に選択を誤った。
何があったとしても言ってはいけない禁句を。
――彼は怒りや焦りとともに吐き出してしまった。
「……おい、若人。」
少女はうつむいたまま先ほどとは似ても似つかない口調で話し始めた。
男はちょっとした恐怖を感じながら少女から一歩離れた。
「我に何と言った?」
男は怖気づきながらまた一歩退いた。
「……臓器になってろよ。」
「違うであろう!!最後だ、最後になんといった?」
怒号に体を震わせながら男は呟いた。
「……イロキチやろう。」
「――そうだ、つまり」
「死ね。」
彼は見た。
最後に、最後に見てしまった。
宙に浮いた、美しい斧の姿に。
自分に振り下ろされる刃の姿に。
まるで、罪人に対する処刑のように。
まるで、彼自身が犯した罪を――洗い流すように。
顔面蒼白で泡を吹く男を上から眺める。
――少し驚かせ過ぎたな。
斧はゆっくりと地面に落ち、そして人の姿になった。
白いワンピースの少女。
都市伝説であり、存在自体が異質な物質。
彼女は――
斧である。
「ねぇ、本丸ちゃん。」
「……その呼び名はやめろと何度も言っておるであろう。」
優しそうな顔の男とそれより一回りほど小さな少女。
傍から見れば親子や兄弟に見えなくもないが、少女が使っている言葉はおおよそ少女が使うようなものに見えず中々奇妙な会話だった。
「じゃあ、妖鬼 シロワンピ ?」
「……なんだそれは。」
「あぁーそうか、本丸ちゃんはゲームしそうにないしね。」
「……なんだか分からぬが何か馬鹿にされている気がする……。」
「はははー。」
和やかな会話を続ける男と少女。
男はそこで本題を語りだした。
「ところで、本丸ちゃん。君、都市伝説になんてなってるけどもなんでなの?」
「目立つような動きを夜な夜な続けていれば噂くらい立つであろう?」
「あー、そうじゃあなくてねー。なんで君は噂になるくらいに目立つ動きをしてるんだ?」
ニコニコと笑いながら男は尋ねる。
確かにそれは妙なのことである。自身が特異であると分かっている彼女は目立つ行動など取らないはずである。
彼女は人一倍冷静だからである。
……ある禁句を除けば。
「……義理を返している。それでよいではないか。」
照れ隠しなのかそっぽを向きながら少女は呟いた。
「あれ~?照れてるの~?」
ニヤニヤしながら語った男の体が悲鳴をあげるのはワンテンポ遅れてからだった。
男って誰だよ。(哲学)
あと、めっちゃ疲れたでござるーゆるふわー。
UNo