問題児たちが異世界から来るそうですよ?―振り回される問題児― 作:gjb
「ぶはー死ぬかと思った。」
上空に呼び出されたと思ったら湖に落とされた
俺の他にも呼び出されてたらしく俺より少し遅れて出てきた
「し、信じられないわ! まさか問答無用で引き摺りこんだ挙句、空に放り出すなんて!」
「右に同じだクソッタレ。場合によっちゃその場でゲームオーバーだぜコレ。石の中に呼び出された方がまだ親切だ」
「・・・・・・。いえ、石の中に呼び出されては動けないでしょう?」
「俺は問題ない」
「そう。身勝手ね」
ロングヘアーの少女とヘッドホンの少年はフン、と互いに鼻を鳴らして服の端を絞る。
「此処・・・・・・どこだろう?」
「さあな。まあ、世界の果てっぽいものが見えたし、どこぞの大亀の背中じゃねえか?」
「よくあの状況で確認できたな」
素直に感心する
「まず間違いないだろうけど、一応確認しとくぞ。もしかしてお前たちのも変な手紙が?」
「そうだけど、まずは“オマエ”って呼び方を訂正して。私は久遠飛鳥よ。以後は気をつけて。それで、そこの猫を抱きかかえている貴女は?」
「・・・・・・春日部耀。以下同文」
黒髪ロングの娘、ショートカットの娘と自己紹介が続く。
「そう。よろしく春日部さん。そこの赤い髪の貴方は?」
俺が焚き火用の木を集めようとしたらいきなり聞かれた
「おれか?俺は赤羽紫炎。よろしくな。」
「こちらこそ。それで、最後に、野蛮で凶悪そうなそこの貴方は?」
「高圧的な自己紹介をありがとよ。見たまんま野蛮で凶悪な逆廻十六夜です。粗野で凶悪で快楽主義と三拍子そろった駄目人間なので、用法と用量を守った上で適切な態度で接してくれよお嬢様」
「そう。取扱説明書をくれたら考えてあげるわ、十六夜君」
「ハハ、マジかよ。今度作っとくから覚悟しとけ、お嬢様」
心からケラケラと笑う逆廻十六夜。
傲慢そうに顔を背ける久遠飛鳥。
我関せず無関心を装う春日部耀。
木を集めようとするのを止め寝転がる赤羽紫炎。
そんな彼らを物陰から見ていた影があった。
名を黒ウサギという彼女は、とある事情で彼らを召還した張本人なのだが、
(うわぁ・・・・・・なんか問題児ばっかりみたいですねえ・・・・・・)
召還しておいてアレだが・・・・・・彼らが協力する姿は、客観的に想像できそうにない。
黒ウサギは陰鬱そうにため息をついた。
「で、呼び出されたはいいけどなんで誰もいねえんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とかいうものの説明をする人間が現れるもんじゃねえのか?」
「そうね。なんの説明もないままでは動きようがないもの」
「・・・・・・。この状況に対して落ち着きすぎているのもどうかと思うけど」
「春日部もな。」
(全くです)
黒ウサギはこっそりツッコミを入れた。
もっとパニックになってくれれば飛び出しやすいのだが、場が落ち着きすぎているので出るタイミン
グを計れないでいた。
そのとき、ふと十六夜がため息交じりに呟いた。
「仕方がねえな。こうなったら、そこに隠れている奴にでも話を聞くか?」
物陰に隠れていた黒ウサギは心臓を捕まれたように飛び跳ねた。
「なんだ、あなたも気づいていたの?」
「当然。かくれんぼじゃ負けなしだぜ?そっちの二人も気づいてたんだろ?」
「風上に立たれたら嫌でもわかる」
「あんなもん隠れている内に入らないだろ。」
「・・・・・・へえ? 面白いなお前ら」
軽薄そうに笑う十六夜の目は笑っていない。理不尽な召集を受けた四人は腹いせに殺気の籠もった冷ややかな視線を出てきた黒ウサギに向ける。
「や、やだなあ皆様。そんな狼みたいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ? ええ、ええ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは一つ穏便に御話を聞いていただけたらうれしいでございますヨ?」
「断る」
「却下」
「お断りします」
「寝たいからパス」
「あっは、取りつくシマもないですね♪」
バンザーイ、と降参のポーズをとる黒ウサギ。
しかし、その目は冷静に四人を値踏みしていた。
と、耀が不思議そうに黒ウサギの隣に立ち、黒いウサ耳を根っこから鷲掴み、
「えい」
「フギャ!」
力いっぱい引っ張った。
「ちょ、ちょっとお待ちを! 触るまでなら黙って受け入れますが、まさか初対面で遠慮無用に黒ウサギの素敵耳を引き抜きに掛かるとは、どういう了見ですか!?」
「好奇心の為せる業」
「自由にも程があります!」
「へえ? このウサ耳って本物なのか?」
今度は十六夜が右から掴む。
飛鳥は左から。
「ちょ、ちょっと待―――」
紫炎は興味無さそうに寝始めた