問題児たちが異世界から来るそうですよ?―振り回される問題児―   作:gjb

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第二十話

紫炎が石化から解けて休んでいると問題児三人が詰め寄ってきた

 

「さあ、紫炎君。話してもらおうかしら」

 

「私も知りたい。」

 

「さっさと話せ。」

 

「話すから威圧すんな。」

 

全員が談話室の椅子に座り、紫炎が話を始めた

 

「まあ、俺の知ってる範囲で説明すると、ある程度の霊格以下の物などを俺自身または俺の周囲にある間自由に作り替えるものだ。」

 

「ある程度の霊格ってどれくらいだ?」

 

「知らん」

 

「周囲ってどれくらいまで大丈夫なの?」

 

「詳しくは分からん」

 

「自由の定義はどれくらい?」

 

「武器とか存在してるものは質量、材質が同じまたはそれ以下の物にしか作り替えれん。」

 

「存在しているものは、ってことは他はどうなの?」

 

「例えば今日、空に浮いたろ。あれは空気を踏めるものに作り替えたんだ。」

 

律儀に全部の質問にできる限りこたえる紫炎。

 

「何か良く分からないギフトね。」

 

飛鳥がそういうと十六夜と耀も頷いた

 

「しょうがないだろ。発現して二日くらいしかたってないんだから」

 

「皆さん。レティシア様が目を覚ましましたよ。」

 

「それじゃあ行くか。」

 

「そうね」

 

「どんな人か楽しみ」

 

「そうだな。俺と耀は見てないしな」

 

全員が黒ウサギの声を聞き、外に出た

 

―――――――――――――

 

「「「「それじゃあこれからよろしく、メイドさん」」」」

 

「「え?」」

 

レティシアが目を覚めているのを確認して四人が言った言葉をジンと黒ウサギは信じられないといった感じで四人を見た

 

「え? じゃないわよ。だって今回のゲームで活躍したのって私達だけじゃない? 貴方達はホントにくっ付いてきただけだったもの」

 

「うん。私なんて力いっぱい殴られたし。石になったし」

 

「つーか挑戦権を持ってきたの俺だろ。」

 

「ということで所有権は2:2:3:2で残り1を黒ウサギということになった」

 

「何を言っちゃってんでございますかこの人達!?」

 

「ギフトゲームで手に入れた賞品の所有権に対する正当な話し合い」

 

スパァン!!といままでで一番いい音をだして紫炎をハリセンで叩いた黒ウサギ

 

「んっ・・・・・・ふ、む。そうだな」

 

黒ウサギもジンも混乱する中、当事者であるレティシアだけが冷静だった。

 

「今回の件で、私は皆に恩義を感じている。コミュニティに帰れた事に、この上なく感動している。だが親しき仲にも礼儀あり、コミュニティの同士にもそれを忘れてはならない。君達が家政婦をしろというのなら、喜んでやろうじゃないか」

 

「れ、レティシア様!?」

 

黒ウサギの声は今までにないくらい焦っていた。

 

だが、彼女が困惑しているうちに、飛鳥が嬉々として服を用意し始めた。

 

「私、ずっと金髪の使用人に憧れていたのよ。私の家の使用人ったらみんな華も無い可愛げの無い人達ばかりだったんだもの。これからよろしく、レティシア」

 

「よろしく・・・・・・いや、主従なのだから『よろしくお願いします』の方がいいかな?」

 

「使い勝手がいいのを使えばいいよ」

 

「そ、そうか。・・・・・・いや、そうですか? んん、そうでございますか?」

 

「黒ウサギの真似はやめとけ」

 

「ところで、飛鳥さん。その服は何処から持ってきたんだ?」

 

「白夜叉が嬉々として持ってきたわよ」

 

「何してんだか?」

 

「あら? 気に入らないかしら?」

 

「はっはっは。・・・・・・超グッジョブに決まってるだろ」

 

意外と和やかな五人の姿に、黒ウサギは力なく肩を落とすのだった。

 

―――――――――――

三日後

 

黒ウサギの提案でパーティが行われることになった。

 

子供達を含めた“ノーネーム”総勢一二七人+一匹は水樹の貯水池付近に集まり、ささやかながら料理が並んだ長机を囲んでいた。

 

「えーそれでは!新たな同士を迎えた“ノーネーム”の歓迎会を始めます!」

 

黒ウサギの音頭に、ワッと子供達が歓声を上げた。

 

人数の九割以上が子供の歓迎会だったが四人は悪い気はしなかった。

 

「だけどどうして屋外の歓迎会なのかしら?」

 

「うん。私も思った」

 

「黒ウサギなりに精一杯のサプライズってところじゃねえか?」

 

「にしても豪勢だな。大丈夫なのか?」

 

実際“ノーネーム”の財政は、あと数日で金蔵が底をつくほどだった。

 

こうして敷地内で騒ぎながらお腹いっぱい飲み食いする、ということがちょっとした贅沢になることを知っている飛鳥は苦笑しながらため息を吐いた。

 

「無理しなくていいって言ったのに・・・・・・馬鹿な娘ね」

 

「そうだね」

 

「そう言うなって。黒ウサギからすれば同士も戻ってきてコミュニティも守られた。それが嬉しいんだろ?」

 

「だろうな。」

 

四人で話していると、黒ウサギが大きな声を上げて注目を促した。

 

「それでは本日の大イベントが始まります!みなさん、箱庭の天幕に注目してください!」

 

十六夜達を含めたコミュニティの全員が、天幕に注目する。

 

その夜も満天の星空だった。

 

空に輝く星々に異変が起きたのは、注目を促してから数秒後だった。

 

一つ星が流れた。

 

それは次第に連続し、すぐに全員が流星群だと気が付いて、歓声を上げた。

 

黒ウサギは全員に聞かせるような口調で語る。

 

「この流星群を起こしたのは他でもありません。我々の新たな同士、異世界からの四人がこの流星群の切っ掛けを作ったのです」

 

「「「「え?」」」」

 

子供達の歓声の裏で、十六夜達は驚きの声を上げる。

 

「箱庭の世界は天動説のように、全てのルールが此処、箱庭の都市を中心に回っております。先日、同士が倒した“ペルセウス”のコミュニティは、敗北の為に“サウザンドアイズ”を追放されたのです。そして彼らは、あの星々からも旗を降ろすことになりました」

 

黒ウサギの説明に、十六夜達は完全に絶句した。

 

「---・・・・・・なっ・・・・・・まさか、あの星空から星座を無くすというの!?」

 

飛鳥の声と同じくして、一際大きな光が星空を満たし、そこにあったはずのペルセウス座が、流星群と共に跡形もなく消滅していた。

 

ここ数日で様々な奇跡を目の当たりにした彼らだが、今度の奇跡は規模が違う。

 

「今夜の流星群は“サウザンドアイズ”から“ノーネーム”への、コミュニティ再出発に対する祝福も兼ねております。星に願いをかけるもよし、皆で鑑賞するもよし、今日は一杯騒ぎましょう♪」

 

進行を続け、嬉々として杯を傾ける黒ウサギと子供達。

 

だが、十六夜達はそれどころではなかった。

 

「星座の存在さえ思うがままにするなんて・・・・・・ではあの星々の彼方まで、その全てが、箱庭を盛り上げる為の舞台装置ということなの?」

 

「そういうこと・・・・・・かな」

 

その絶大ともいえる力を見上げ、飛鳥と耀は呆然としている

 

「なるほど。また目標が出来たな」

 

「だな。」

 

十六夜と紫炎が目を合わせて言った

 

「ふっふーん。驚きました?」

 

黒ウサギがピョンと跳んで十六夜たちの元に来る

 

「やられたと思ってる。まあ、お陰様で新しい目標が出来たからな。なあ、紫炎。」

 

「ああ。」

 

「おや、なんでございましょう?」

 

「あそこに俺たちの旗を飾る。」

 

「それは・・・・とてもロマンがありますね。」

 

黒ウサギが満面の笑みで返したが、道のりは険しい。

 

奪われたものを全て取り戻し、その上でコミュニティを盛り上げなければならないのだから

 

「だから黒ウサギ。これから何があってもコミュニティを抜けるなよ」

 

紫炎の言葉に黒ウサギが罰の悪そうな顔をする

 

「さて、これから大変になるな」

 

そんな呟きをした紫炎だが顔は楽しそうに笑っていた


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