問題児たちが異世界から来るそうですよ?―振り回される問題児―   作:gjb

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第三十三話

強烈の揺れが起こり、黒ウサギとサンドラが少し嬉しそうな声を上げる

 

「今の揺れ、かなり大きかった」

 

「YES!十六夜さん達の決着がついたようです」

 

「ちっ、遅すぎるぞ。十六夜の奴。おかげでとっておきを見せちまったじゃないか」

 

ちらっとペストの方を見る紫炎

 

(これでこっちの手札を全部出したと思わせれればいいが・・・。そんなに甘くないかな?)

 

ペストは紫炎の言葉には耳も貸さず黙祷をしている

 

「・・・・・・止めた」

 

「え?」

 

「時間稼ぎは止めた。白夜叉だけ手に入れて――――皆殺しよ」

 

その瞬間、黒い風が天に上り、街に吹き荒れた

 

「今までの余興とは違うわ。触れただけで命に死を運ぶ風よ」

 

「なっ」

 

それを聞いた瞬間、紫炎は炎を鳥にかえ街の風を燃やそうとする

 

「無駄よ」

 

風に触れた瞬間、炎は霧散して消えた

 

「や、やはり“与える側”の力!死の恩恵を与える神霊の御業ですか・・・!」

 

「ま、まずい。このままじゃステンドグラスを探してる参加者が!!」

 

二人が風を避けながら説明してきた

 

「やらせるかよ」

 

そういって紫炎は腕に炎を纏いながら突っ込む

 

「だ、駄目です、赤羽さん。あの風を貫通するには物的なちからでは・・・」

 

紫炎がそのまま殴りかかるが、風に阻まれる

 

しかし、今度は炎は霧散せず、そのまま燃え続ける

 

「死が与えられるより、早く炎を出し続ければ問題ない」

 

「確かにそうね。」

 

すると、ペストは紫炎から離れ、街に風を向けた

 

そこに樹霊の少年が襲われそうになる

 

「くそっ」

 

紫炎が助けようと、飛び出すが間に合いそうもない

 

すると、

 

「DEEEEeeEEEEEN」

 

紅い鋼の巨人が黒い風を阻んだ

 

「今の内に逃げなさい」

 

「は、はい」

 

鋼の巨人の肩には見慣れた少女がいた

 

「飛鳥!」

 

「飛鳥さん!よくぞご無事で」

 

二人が仲間との再会を喜んでると

 

「よそ見なんて余裕ね?」

 

ペストが先ほどの紫炎の言葉を真似る

 

「前見て、前!」

 

飛鳥の言葉で前を見ると紫炎と黒ウサギに黒い風が迫っていた

 

「オイコラ、よそ見してんじゃねえぞ、この駄ウサギ!」

 

「カっ!」

 

黒ウサギは横から来た十六夜がギフトを蹴り砕き、助けられる

 

紫炎は炎を出し、今度は燃やした

 

「私のギフトが効かない?貴方達、」

 

「先に言っとくけど俺は人間だぜ、魔王様」

 

「俺もそうだぜ」

 

そういうと十六夜が左手で魔王に殴りかかった

 

ペストは防御したが、それでも吹っ飛ばされた

 

それをぼうぜんと見ていたサンドラと黒ウサギ

 

「・・・・・・。えっと、さっきギフトを砕きませんでしたか、あの人。」

 

「さ、さて?黒ウサギにも十六夜さんの事はよくわかってないんですよ」

 

この場にいる全員が決まったか?と思うほどの一撃だった

 

「そうね、所詮人間だわ。この程度なら死の風が効かなくても問題ないわ」

 

その言葉が聞こえた瞬間、ペストがいるであろう場所から八千万の怨嗟の声が衝撃となって十六夜と紫炎に襲い掛かる

 

不意打ちだったため二人ともまともに受けて吹っ飛んだが、そこまでの傷ではない

 

「星も砕けない分際では私は倒せないわ」

 

その言葉を聞いた瞬間、二人は同時に動いた

 

「「言ってくれるじゃねえか」」

 

その挑発を受けた十六夜はボロボロの右で構え、紫炎はダーインスレイブを抜こうとした

 

「ま、待ってください、お二人とも。そんな命がけな行動をとるより、作戦を尊重してください」

 

二人は黒ウサギの言葉を聞き、さがる

 

「ちっ、しょうがない。で、どうすればいい?指示を出せ黒ウサギ」

 

「今から魔王を討ち取ります。皆さんは魔王の隙を作ってください」

 

「それはいいが、あの風はどうする?このままじゃ他の奴らがどんどん死ぬぞ」

 

紫炎はその言葉を聞き、無意識に参加者の待機場所に目を向ける

 

「ご安心を。魔王は此処にいる主力ともども月にご案内します」

 

「「は?」」

 

次の瞬間、紫炎たちの視界は一変した

 

石碑のような白い彫像が数多に散乱する月の神殿を見てペストが叫ぶ

 

「チャ…“月界神殿”(チャンドラマハール)!軍神ではなく月神の神格を持つギフト・・・」

 

「YES。このギフトこそ我々月の兎が招かれた神殿。帝釈天様と月神様から譲り受けた月界神殿でございます」

 

「け、けど、ルールではゲーム盤から出ることを禁じられてるはず・・・」

 

「ちゃんと範囲内ですよ。少し高度が高いだけですけど。」

 

「・・・っ!」

 

「これで参加者側の心配はなくなりました。皆さんはしばしの間魔王を押さえつけてください。飛鳥さんはこちらへ」

 

黒ウサギの言葉を聞いた瞬間、三人は一斉にペストに攻撃を仕掛ける

 

まず紫炎がペストの周りの風を焼き払い、十六夜が殴りかかる

 

しかし、今回ペストは十六夜の攻撃を受け止めず、回避した

 

そこ狙ってサンドラが攻撃を当てるが瞬時に傷が癒えてく

 

「ハッ、なるほど!さっきの言葉は比喩でもなんでもなかったんだな」

 

「そうよ、私を倒したいなら星を砕くに値する一撃を用意しなさい!」

 

その瞬間、怨嗟の衝撃を十六夜の腹部に叩きつけるペスト

 

それにカウンターで左を叩きつける十六夜

 

両者は吹き飛び、月面に新たなクレーターを作る

 

「俺の相手もしてくれや、魔王様」

 

紫炎がそういうと炎を球状にして打ち出す

 

「くっ」

 

それをペストが避けるがそこに十六夜が拳を叩きつける

 

だが、いくらやってもペストが倒れる気配がない

 

流石の十六夜も連戦で体力が消耗して本来の力が出せないからである

 

その瞬間、黒ウサギが三人を追い抜きペストに突っ込む

 

「無茶だ、黒ウサギ。何を考えて・・・」

 

「死の風を吹き飛ばします。御三人は援護を」

 

灰色の大地を掛ける黒ウサギ

 

それにペストが死の風で襲い掛かる

 

「貴方さえ倒せば・・・」

 

「太陽に復讐を、ですか?ならこの輝きを乗り越えてごらんなさい」

 

その瞬間、太陽の輝きに似た光が溢れだし、黒ウサギを包み、鎧となった

 

その光を浴びた死の風は霧散して消えた

 

「そ、そんな・・・」

 

「なるほど。寒冷期に猛威を振るった黒死病も太陽の光には弱いんだな」

 

「インドラにチャンドラにスーリア・・・!護法十二天のうち三天も操るなんて、この化け物―――!」

 

ペストは後退し、最低限の守りを取る

 

「おっと。逃がさないぜ」

 

その瞬間、紫炎の炎が鎖状に変わり、ペストを拘束する

 

「今です!飛鳥さん。」

 

黒ウサギの声に王子、右手をかざして命を下す

 

「撃ちなさい、ディーン」

 

「DEEEEeeEEEEN」

 

インドらの槍は飛鳥の言葉に応じ、千の天雷を束ねてペストを襲う

 

「この程度で・・・」

 

「無駄でございますよ。その槍は正真正銘、帝釈天の加護を持つ槍。太陽の鎧と引き換えた、勝利のギフトを宿す槍なのですから」

 

『叙情詩・マハーバーラタ』の大英傑、カルナが手にしたといわれるギフト

 

太陽神の息子であるカルナが生来持っていた太陽の鎧をインドラに捧げた時に得たのが、ただ一度だけ穿てば勝利をもたらす槍

 

「そんな・・・私は、まだ・・・。」

 

「さようなら、黒死斑の魔王」

 

飛鳥が別れの言葉を告げると激しい雷光が月面を満たし、魔王と共に爆ぜた

 

勝利を確認し、紫炎と十六夜は拳を合わせた


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