問題児たちが異世界から来るそうですよ?―振り回される問題児―   作:gjb

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そう・・・巨龍召喚
第四十話


魔王との戦いから一か月が過ぎ、ノーネームメンバーは今後の活動方針を話し合うため本拠の大広間に集まっていた

 

席は上座からジン、十六夜、紫炎、飛鳥、耀、黒ウサギとメイドのレティシア、年長組からの代表としてリリが座っている

 

このコミュニティでは会議の際、上座からコミュニティへの貢献度が高いものが座っていくらしい

 

リーダーであるジンが一番の上座で次席の十六夜は水樹の獲得を皮切りに、レティシア奪還や魔王とのゲームでの貢献が一番多い

 

十六夜の次の席の紫炎はゲームでの貢献は十六夜に劣るもののほかの二人と比べればかなりのものであり、さらに料理作りにも携わってることもありこの位置である

 

飛鳥は四番手の席で不満はあるようだが異論はないようなのでそのままの席でいるようだ

 

会議が始まると黒ウサギが嬉しそうに声をあげながら報告をあげる

 

「苦節三年・・・。とうとう私たちのコミュニティにも招待状が届くようになりました」

 

そう言って黒ウサギが三枚の招待状を見せる

 

「しかもこの内二枚はジン坊ちゃんの名前で貴賓客として来てほしいそうです」

 

その言葉を聞き、ジンが少し後ろめたい気持ちになる

 

「どうしたんだ御チビ様。俺よりいい席に座ってんのにそんな暗い顔して」

 

「だって、僕の名前で届いたって言いますけど・・・」

 

「おっと、ジン。それ以上の言葉を言うな。」

 

ジンの言葉を遮り、声を出す紫炎

 

「そうだぜ、御チビ様。俺たちはコミュニティ“ノーネーム”でお前がそのリーダーで名刺代わりでもある。俺たちの戦果は全てお前に集約されて広がってるんだ」

 

「それに俺は聞いただけだが、ペストとの交渉の際、大活躍だったそうじゃないか。これも立派な戦果の一つだぜ」

 

「十六夜さん、紫炎さん。ありがとうございます」

 

二人の言葉に少し明るさを取り戻すジン

 

「ところで今日集まった理由はその招待状の事かしら?」

 

三人の話が終わると飛鳥がジンに聞く

 

「それもありますが、その前にコミュニティの現状をお伝えしたいと思っています。・・・黒ウサギ、リリ。報告をお願い」

 

「あ、はい」

 

そう言って先に立ったのはリリであった

 

「えっと、備蓄に関しては問題ありません。最低限の生活を営むだけなら一年は持ちます」

 

「へえー、なんで急に」

 

「黒死斑の魔王が推定五桁の魔王に認定されて規定報酬の桁が跳ね上がったと白夜叉様が言ってました。これでしばらくみんなお腹一杯食べられます」

 

リリが嬉しそうに狐耳と尻尾を振りながら言う

 

「こら、リリ。はしたないぞ」

 

「あう・・・」

 

レティシアがリリを諌める

 

それに紫炎が口をはさむ

 

「別にいいじゃないか。俺たちが来るまでそんなことがなかったんだから嬉しかったんだろう」

 

「だがな、紫炎」

 

「それに俺らは声に出して言ってくれるほど嬉しいってことがわかって頑張って良かったって思える」

 

その言葉を聞き、レティシアがしょうがないといった表情をしながら座った

 

「それで終わりかい、リリ?」

 

「あ、いえ。五桁の魔王を倒す為に依頼以上の成果を上げた十六夜様達には金銭とは別途にギフトを授かることになりました」

 

「あら、それは本当?」

 

「YES!それについては後から通達があるのでワクワクしながら待ちましょう」

 

その言葉を聞き、紫炎たち四人は“面白そうだ”と思いながら顔を合わせる

 

「それではリリ。農園の復興状態を」

 

ジンがリリに話を振ると、目を輝かせ話始めた

 

「は、はい!農園の土壌は紫炎さんの発案とメルンとディーンの働きのおかげで全体の四分の一はすでに使える状態です。これでコミュニティ内のご飯を確保するのに十二分の土地が用意できました。田園に整備するにはもうちょっとかかりそうですけど、根菜類などを植えれば数か月後には期待が出来ると思います」

 

喜びはしゃぐリリを見て、飛鳥が得意そうに言う

 

「メルンとディーンが休まず頑張ってくれたんだから当然よ」

 

ふふんと、笑う飛鳥

 

「特にディーンは働き者で飛鳥さんがゲームに出場しているとき以外はずっと土地の整備をしてくれているんです」

 

「喜んでもらえて何よりだわ」

 

「人使いが荒いともいうけどな」

 

十六夜が茶化したので、黒ウサギが慌てて話を逸らす

 

「そ、そこで今回の本題なんですが農園区に特殊栽培の特区を設けて、霊樹や霊草を栽培しようと思うんです。」

 

その言葉に最初に反応したのは紫炎だった

 

「霊樹や霊草ってことは例えばモーリュとか」

 

「マンドゴラとか」

 

「マンドレイクとか」

 

「マンイーターとか?」

 

「YES♪って最初以外おかしすぎです。そんな超危険即死植物を子供たちに任せるなんて黒ウサギ的にアウトです!!」

 

黒ウサギが紫炎以外の三人に怒りを向けた

 

すると四人が一斉に口を開く

 

「「「「じゃあ妥協してラビットイーターで」」」」

 

「何ですか!その黒ウサギを狙ったダイレクトな嫌がらせは!!」

 

黒ウサギが激怒して四人を怒鳴り散らす

 

それを見ていたレティシアが呆れながら続きを話す

 

「主達には農園に相応しい牧畜や苗を手に入れてきて欲しいのだ」

 

「きて欲しいってことは近々そんな機会があるのか?」

 

紫炎の言葉にレティシアが流石だなと返し、続ける

 

「南の“龍角を持つ鷲獅子”(ドラコ・グライフ)連盟から収穫祭の招待状が届いているのだ。連盟主催ということもあり、種牛や珍しい苗を賭けるものも出るはずだ」

 

なるほど、と頷く問題児たち

 

「しかも今回は前夜祭からの参加を求められ、旅費と宿泊費は主催者が全て請け負うというVIP待遇。場所も境界壁にも負けない美しい河川の舞台“アンダーウッドの大瀑布”。皆さんが喜ぶこと間違いなしです」

 

黒ウサギが自信満々で答える

 

全員が楽しみにしているとジンがわざとらしく咳払いをし、問題児たちの注目を集める

 

「この収穫祭は前夜祭を入れると二十五日間にもなります。最後まで参加したいのですが長期間主力が居なくなるのはよくありません。なのでレティシアさんと共に一人は残って・・・」

 

「「「「嫌だ」」」」

 

途中で言葉を切られたジンだったが予想通り、といった表情でさらに言葉を続けた

 

「なら、せめて前夜祭を三人、オープニングセレモニーから一週間を全員で、残りの日数を三人と人数を絞らせて下さい」

 

その言葉を聞き、四人は顔を見合わせる

 

少しして耀が質問をする

 

「それだと二人が全部参加できるけど、どうやって決めるの?」

 

「それは・・・」

 

ジンが言いよどむ

 

普通は席次順で決まるのだが、異世界から来た問題児たちにはそれが普通ではない

 

どうしたものか、と悩んでいると十六夜から提案が出た

 

「ゲームで決めるってどうだ?」

 

「お!いい案だな」

 

「じゃあ、どんなルールにするのかしら?」

 

その案に全員が乗り気になった

 

「そうだな・・・。期日まで最も多くの戦果を挙げた奴が勝者ってのはどうだ?」

 

「乗った!」

 

「わかったわ」

 

「うん。・・・絶対に負けない」

 

三人が即答し、収穫祭参加を賭けたゲームが始まった


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