問題児たちが異世界から来るそうですよ?―振り回される問題児―   作:gjb

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第四十六話

ノーネーム一同はジャックとアーシャに連れられて貴賓客が泊まる為の宿舎に入った

 

その中は半分が土で作られていたが、水樹の根のおかげか、空気が乾燥していなかった

 

「・・・凄いところだね」

 

耀がところどころ出ている根に座って感想を述べた

 

「確かにそうね」

 

「北側は建造物が多かったがこっちは自然に適して過ごしているって感じだな」

 

耀の言葉に飛鳥と紫炎が自分の思ったことを口にする

 

「YES!南側は箱庭の都市が建設された時、多くの豊穣神や地母神が訪れたらしいのでその名残かと」

 

「そうなのね。でも水路の結晶は北側の技術でしょう?」

 

飛鳥の言葉に黒ウサギが首とウサ耳を傾ける

 

「なんだ?気づいてなかったのかよ。似たようなのが誕生祭にあっただろ?」

 

紫炎の言葉にジャックが感心したように答えた

 

「良く分かりましたね。確かにあれは北側の技術ですよ。十年前の魔王襲撃からここまで復興できたのは、その技術を持ち込んだ御方の功績だとか」

 

「そ、それは初耳でございます」

 

誰なんだろうか?と言った表情でノーネーム一同が顔を見合わせる

 

ジャックは顎っぽいところに手を当てて説明を続ける

 

「実はアンダーウッドに宿る大精霊なんですが・・・十年前の傷跡が原因でいまだ休眠中だとか。そこで龍角を持つ鷲獅子のコミュニティは共存を条件に、復興と守護を担っているんです」

 

「という事はその復興を主導しているのが元北側出身者ってことでいいのか?」

 

「ええ、その通りですよ」

 

その言葉を聞き、紫炎はニヤリと笑い、黒ウサギはジャックの言葉に現在のノーネームの状況を重ねあわせている

 

(十年でコミュニティのトップに立つってことは、かなりの実力者って事か)

 

紫炎がそんなことを考えていると扉が一つ開いた

 

「ジャックさん、アーシャ。何してるんですか?早く主催者にあいさつしにいかないと」

 

すると、十五歳くらいの黒髪の男の子がいた

 

「そうですね。けど、まずはこの方たちに自己紹介しなさい」

 

「クリス=イグニファトゥスといいます。以後お見知りおきを」

 

クリスが丁寧にお辞儀をして自己紹介をする

 

「私は久遠飛鳥。こちらこそよろしく」

 

「春日部耀」

 

「私は黒ウサギと申します」

 

「で、俺は・・・」

 

「三人ともお綺麗ですね」

 

三人が自己紹介をした後、紫炎が名前を言おうとした瞬間、クリスが三人の手を握る

 

そのまま手の甲にキスをしようとする

 

「赤羽紫炎だ。以後よろしく」

 

それを紫炎が蹴って阻止した後、名前を言う

 

「ありがとう、紫炎」

 

「私もよ。いきなりで対処できなかったわ」

 

「黒ウサギもです」

 

紫炎が三人から礼を言われているとジャックが謝って来た

 

「皆さん、すいません。クリスは基本的にはいい子なんですが、美少女を見ると暴走してしまうんです」

 

ジャックが言い終わると、クリスが立ち上がった

 

「何してくれてんですか?」

 

顔は笑顔のクリスだったが、口調は少し崩れ、目は笑ってなかった

 

「おやめなさい、クリス。貴方が戦っても多分、勝てませんよ」

 

「そんなものやってみなければ分からないじゃないですか」

 

クリスの周りに火の玉が現れる

 

「くら・・・」

 

「オラッ」

 

火の玉が襲う前にクリスを蹴って、もう一度壁まで飛ばす紫炎

 

「あいつは一体なんなんだ?」

 

「火龍誕生祭の時にあなたと戦うはずだった者ですよ」

 

紫炎の言葉にジャックが答える

 

その間にアーシャが壁に突き刺さっているクリスを引き抜いている

 

「そういえばまだ主催者にあいさつに行ってないんだろ?一緒に同行していいか?」

 

「私はよろしいですが・・・」

 

紫炎の言葉にジャックが言葉を詰まらせ、クリスの方を見る

 

「ジャックさんなら手綱をとれるんだろ?」

 

「まあそうですけど・・・。皆さんはどうでしょうか?」

 

ジャックが黒ウサギ、飛鳥、耀の三人を見る

 

「ジャックさんが止めてくれるなら・・・」

 

「私もそれならいいわ」

 

「うん。私も」

 

三人が了承する

 

「じゃあ俺らは荷物を置いてくるから待っててくれ」

 

「ヤホホホ、同志の無礼な振る舞いのお詫びとして受け取っておきましょうか」

 

ノーネーム一同が部屋から出て行くときに、アーシャの叫び声が聞こえた

 

「ジャックさん!笑ってるなら手伝ってください!全然引き抜けないんですけど!!」

 

それを聞き、飛鳥が紫炎に喋りかけてくる

 

「紫炎君、少し強く蹴り過ぎじゃない?」

 

「そうか?」

 

まったく悪びれずに言う紫炎に飛鳥が呆れる

 

そうしていると、黒ウサギ、飛鳥、ジンがそれぞれの部屋に入った

 

そして耀の部屋の前まで来た

 

「じゃあ俺の部屋は少し離れてるとこにあるから少しかかるかも」

 

「うん」

 

紫炎の言葉を耀が返すと耳元で囁いた

 

「さっきはありがとう」

 

そう言って耀は部屋に入って行った

 

少し、照れくさくなった紫炎はそれを打ち消すかのようにダッシュで自分の部屋へと向かった

 


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