問題児たちが異世界から来るそうですよ?―振り回される問題児―   作:gjb

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第四十七話

紫炎たちは螺旋状に掘り進められた階段を上って、主催者の元へ向かっている

 

直線的には20mほどだが、螺旋状に進んでいる為、距離が少しある

 

しかし、ノーネーム一同は初めて来た都市に目を輝かせ楽しんでいる

 

すると、出店からいい匂いが漂って来た

 

「ねえ。あそこの店で売ってる“白牛の焼きたてチーズ”って」

 

「食べ歩きは主催者へのあいさつが終わってから・・・」

 

「美味しいね」

 

「いつの間に買ってきたんですか!?」

 

黒ウサギが耀の自由な行動に突っ込みを入れる

 

しかし、耀はそれを意を介さずに食べ続ける

 

飛鳥とアーシャがそれを羨ましそうに見ているのに耀が気付き、一言

 

「・・・匂う?」

 

「「匂う!!」」

 

「だって食べちゃったし・・・」

 

「「しかも空っぽ!!」」

 

耀が包み紙を開けていると飛鳥とアーシャが声を揃えて突っ込みを入れる

 

ジャックがその光景を見ながら笑っている

 

「ヤホホホ。賑やかな同志をお持ちで羨ましい限りですよ、ジン殿、紫炎殿」

 

「ええ。でもウィル・オ・ウィスプも賑やかさでは負けてませんよ」

 

紫炎の声が聞こえず、ジンが違う方を見ながら言う

 

ジャックもそっちの方を見ると紫炎とクリスが少し離れたところで店を楽しんでいた

 

「金魚すくいは俺の勝ちだぜ、クリス」

 

「うるさい。その前の輪投げじゃあ俺の勝ちだったからイーブンだ、紫炎」

 

「おっしゃー。次はあの射的で勝負だ」

 

「望むところだ。返り討ちにしてやる」

 

二人は友達同士で遊んでるかのようにはしゃいでいる

 

「どうしましょうか?」

 

ジンが困惑の表情でジャックに言う

 

「それは止めたほうが良いですけど・・・」

 

「いいじゃないですか、ジャックさん。クリスのあんな顔は初めて見ますし、何より嬉しそうですし」

 

アーシャが嬉しそうに言った

 

アーシャ達は子供の時に死んで地縛霊となったものを、ウィラが地霊として箱庭に連れてきている

 

なので遊びたい盛りで死んでしまったという事だ

 

「けど、いい加減止めないと・・・」

 

ジンが心配そうに紫炎たちの方を指さす

 

「あ、ふざけんじゃねえ。それは俺の綿菓子だろ」

 

「さっき、俺のチョコバナナを食べたのを忘れたとは言わせないぜ、紫炎」

 

「それとこれとは別だ!!」

 

「一緒だボケ!!」

 

二人が炎を放出する

 

すると、いつの間にか耀が紫炎に近づいていた

 

「喧嘩は駄目」

 

と言って頭にチョップを当てる

 

「ああ、悪かった」

 

すると紫炎はすぐに炎を収めて戦闘態勢を解く

 

それを見てクリスは涙目になりながら少し怒りながら言葉を発する

 

「俺が二対一で勝ったのを忘れんじゃねーぞ」

 

「別にいいぜ。それ以外で勝てばいいんだから」

 

紫炎がそう言って耀の肩を抱き寄せる

 

耀も特に抵抗せず顔を赤らめているのをクリスが見て

 

「ちくしょーーー」

 

泣きながら走り去って・・・

 

「待ちなさい、クリス」

 

「ぐへ」

 

行けなかった

 

ジャックに走り去ろうとした瞬間、殴られ気絶した

 

「へえー。紫炎君と春日部さんって」

 

「みたいですね」

 

一連の流れを見ていた飛鳥と黒ウサギがニヤニヤしながら二人を見る

 

「「っ・・・」」

 

二人はその言葉を聞き、急いで離れたが顔は真っ赤だった

 

「え?何が?」

 

アーシャ一人だけが何が何だかわからないといった表情をしている

 

それでも飛鳥と黒ウサギの二人は見てくる

 

「・・・先に行く」

 

空気に耐えられなくなった耀が飛んで行こうとするが紫炎が止める

 

「待て。どこに行けばいいか分からないだろ」

 

それを聞き、耀が渋々降りる

 

「ということでどこに行けばいいか教えろ」

 

紫炎が黒ウサギに問い詰めようとするがジャックが言葉を発する

 

「ヤホホホ。お気持ちは分かりますが、団体行動を乱すものではありませんよ?本陣までエレベーターがありますから時間はあまりかかりませんよ?」

 

「え?」

 

紫炎はそれを聞かず、喋りそうになかった黒ウサギの口をガムテープで塞いだ

 

「自由ですね」

 

「そんなことはどうでもいい。さっさと本陣まで行こうぜ、ジャック」

 

紫炎がジャックを急かすと、笑いながら進む

 

太い幹の麓に木造のボックスがあり、ジャックが手招きをする

 

「皆さん、乗ってください。全員乗ったら扉を閉めてベルを二回鳴らしてください」

 

「わかった」

 

耀がそう言って二回引っ張ると、上空の水樹の瘤から水がながれ、ボックスに繋がってる空き箱に水が注がれ、滑車が周り徐々に上がって行った

 

「原始的だが、確かに早いな」

 

「ヤホホホ。そうでしょう。っともう着きましたね」

 

本陣までついたボックスを金具で固定し、木造の通路に降り立った

 

少し幹を進むと龍角を持つ鷲獅子の旗が見えた

 

「旗が七枚あるわ。七つのコミュニティ主催してるのかしら?」

 

飛鳥が聞いてくる

 

「いえ、違いますよ、お嬢さん。主催しているコミュニティは六つ、真ん中にあるのは連盟旗と呼ばれるものです」

 

するといつの間にか起きたクリスが飛鳥の手を握り、説明してくる

 

それを振り払い、飛鳥がジャックにさらに疑問をぶつける

 

「連盟って何のために組むのかしら?」

 

「用途はさまざまですが、一番は魔王に対抗する為でしょうかね」

 

「「「魔王に?」」」

 

ジャックの言葉に三人が不思議そうに聞く

 

すると黒ウサギが答える

 

「YES!連盟加入コミュニティが魔王に襲われた時、助太刀のため、ギフトゲームに参加できるのでございます」

 

「へえー、そりゃ便利だ」

 

「まあ、絶対に可能かと言われればそうでもありません。あまりにも分が悪いと助けに来てくれないことも多いです」

 

黒ウサギの話を聞いていると、二人の代表が受付で入場届を出している

 

すると、受付をしていた樹霊の女の子が飛鳥に視線を向ける

 

「もしかして久遠飛鳥様でございましょうか?」

 

「ええそうだけど、貴女は?」

 

「私は火龍誕生祭に参加していた樹霊の一人です。飛鳥様には弟を助けてもらったとお聞きしたので・・・」

 

そこまで聞くと、飛鳥と紫炎は思い出し、頷く

 

それを見て受付の少女は深く頭を下げる

 

「ありがとうございます。おかげでコミュニティ一同、誰も欠けることなく帰ってこられました」

 

「それは良かったわ。それじゃあ貴方達が私たちに招待状を送ってくれたのかしら?」

 

「はい。大精霊は今、眠っていますので・・・。他には“一本角”の新党首にして龍角を持つ鷲獅子の議長、サラ=ドルトレイク様からの招待状と明記しております」

 

その名前を聞き、三人が首を傾げる

 

「ドルトレイクって確か・・」

 

「ええ、覚え違いじゃなければサラマンドラの・・・」

 

そこまで言って全員がジンの方を見る

 

「サンドラの姉である長女のサラ様の名前です。・・・もしかしたら北側の技術を流出させたのも―――」

 

「流出とは人聞きが悪いな、ジン=ラッセル殿」

 

ジンの言葉を遮った聞き覚えのない声の方に全員が振り返った


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