問題児たちが異世界から来るそうですよ?―振り回される問題児―   作:gjb

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第四十八話

後ろを振り返ってみると、二枚の炎翼で空を飛んでいる女性がいた

 

「サ、サラ様!」

 

「久しいな、ジン」

 

燃え盛る炎翼を消失させて幹に下りたサラは、踊り子を思わせるような格好である

 

その挙動を紫炎は、じっと見ていた

 

(なるほど。炎をああいう風に使えば飛べるのか)

 

すると耀がいきなり頬をつねる

 

「痛っ!!」

 

「・・・スケベ」

 

「?」

 

紫炎は何故耀が怒っているか分からない様子

 

それを見て耀が紫炎の腕にくっつく

 

「・・・一体どうしたんだ?」

 

「馬鹿・・・」

 

紫炎の言葉を聞き、さらに力を入れる耀

 

「こんなところで立ち話も何だ。皆、中に入れ。茶の一つくらい出そう」

 

サラが二人のやり取りに気づかず、本陣に入りながら言う

 

二人以外も顔を見合わせながら入って行く

 

「なあ、耀。どうしたんだ?」

 

「だって、さっきサラさんに見惚れてたでしょ・・・」

 

「は?」

 

耀の言葉に紫炎が何の事かわかっていないらしい

 

「じーっと見てたでしょ」

 

「ああ。あれは炎の翼で飛んでるのを見て俺でも出来るかなって思っただけだ」

 

「あっ、そうなんだ」

 

紫炎の言葉を聞いて耀がホッとする

 

「もしかして嫉妬?」

 

紫炎が言った瞬間、耀の顔が真っ赤になった

 

「大丈夫だよ。俺はお前だけを見てるから」

 

そう言って紫炎は耀を抱きしめる

 

「ちょっとくさかったか?」

 

紫炎が片手で頬をかきながら聞く

 

「うん。・・・でも、嬉しい」

 

耀が紫炎の言葉を聞き、顔を赤くしながら言う

 

「どうする?このまま二人だけで祭りを楽しむか?」

 

「うん。そうしようか」

 

二人がそんなことを言ってると黒ウサギが飛鳥とジンを掴んで髪を緋色にし、出てきた

 

「お二人とも、早く行きますよ!!」

 

そういって紫炎の首と耀の首元を掴む黒ウサギ

 

「え、何?」

 

耀が困惑していると飛鳥が説明してくれる

 

「白夜叉がブラックラビットイーターを発注したらしいのよ」

 

「そ、それより黒ウサギ。ちょっとく・・る・・・し・・い」

 

首を掴まれ、息も絶え絶えの紫炎

 

「そんなのはどうでもいいです。行きますよ」

 

怒っている黒ウサギは紫炎の言葉を無視して、展示物の保管庫へと向かった

 

――――――――――――――――――

 

「紫炎。大丈夫?」

 

「何とか。三途の川が見えた時はもうだめだと思った」

 

黒ウサギが猛スピードを出したので、ものの数分で保管庫までついた

 

黒ウサギは紫炎を気にせずヴァジュラ・レプリカで目標を焼きつくした

 

「何の音だ?」

 

「さあ?見に行ってきます」

 

倉庫の奥の方から声が聞こえてきた

 

それを聞き、黒ウサギが慌てだした

 

「ど、ど、どうしましょう・・・」

 

「その前にさっきの声、どっかで聞いたことがある気がするんだが?」

 

そんなこんなしてると声の主が現れた

 

「そこにいるのは誰だ」

 

「ひゃあ!!」

 

「ん?月の兎がなんで一人でこんなとこにいるんですか?」

 

「え?一人?」

 

黒ウサギが周りを見回してみると紫炎たちはいなかった

 

「ふー。どうにか気づかれなかったみたいだ」

 

紫炎は黒ウサギだけ残して物陰に隠れている

 

状態としては紫炎の両脇に飛鳥とジンが抱えられ、耀がおんぶされている感じである

 

「ねえ、なんで外まで出なかったの?」

 

「いや、ちょっと声の主が気になってな」

 

そう言って紫炎が黒ウサギの方を覗き見る

 

すると紫炎と同い年くらいの青髪の少年が黒ウサギと言い合ってる

 

「何であなたは展示物を燃やしたりするんですか!!」

 

「あんな自然の摂理に反した黒ウサギ限定の嫌がらせ植物は燃えて肥やしになるのが一番なのですよ」

 

黒ウサギが手をぶんぶん振りながらもう抗議している

 

「別に知らない人でしょ?」

 

耀が紫炎の隣で顔をひょこ、っとだし言う

 

「ああ、そうだな」

 

(二人分の声が聞こえた気がするんだが・・・。まあいいか)

 

そう思って四人が出て行こうとするともう一度聞き覚えのある声が聞こえた

 

「おおー。黒ウサギちゃんじゃないか。お久しぶり」

 

「え!?紫龍さん!?なんでこんなところに?」

 

紫龍の名前が出た瞬間、紫炎の動きが止まり、殺気が出る

 

「俺たちは白に頼まれてきただけだ」

 

「まさかあの怪植物ですか!?」

 

「ああ、あれの受け取りと、それまで他の展示品の警護も任されてた」

 

「それをあなたが燃やしてしまったんですよ」

 

「あれは燃やされても仕方のないものです」

 

そこからまた二人の言い合いが始まった

 

すると飛鳥がとんでもないことが言う

 

「紫炎君。紫龍さんに春日部さんとの事、言いに行ったら?」

 

飛鳥が笑いながら二人を見る

 

「ふざけんな。なんであいつに言わなきゃならんのだ」

 

「そりゃあ俺がお前の父親だからな」

 

「だまれ。俺は認めん」

 

紫炎が紫龍に向かって大声で怒る

 

「「「え!?」」」

 

突然現れた紫龍にジン、飛鳥、耀が驚く

 

紫炎だけが何事もなかったかのように続ける

 

「八年も放っておいて今更、父親面すんな」

 

「それを言われると反論しづらい」

 

「わかったなら俺らは行くぜ。おい、黒ウサギ。さっさと来い」

 

紫炎の言葉に黒ウサギが反応し、こちらに来る

 

紫炎たちはその後、保管庫から出た

 

「龍さん。いいんですか?」

 

「まあ、白には事情を説明すればわかってもらえるだろうから、問題はない」

 

「いえ、そちらではなく・・」

 

少年が呆れた様子で紫龍を見る

 

「息子さんの方ですよ」

 

「なおさら問題ない」

 

即答する紫龍にさらに呆れた目で見る少年

 

「そんな目でみるなよ。別にあいつがどうなっても良い訳じゃない」

 

「そうとしか聞こえませんが・・・」

 

「あいつも大人になってきてる、ってことだ」

 

それを聞き、少年はため息をつく

 

「わかりましたよ。けど、どうせ過保護に見守るのでしょ」

 

「もちろん」

 

親指を立てていい笑顔で答える紫龍

 

「少しは大人になってください」

 

少年はとても呆れた目で紫龍を見続けた


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