問題児たちが異世界から来るそうですよ?―振り回される問題児―   作:gjb

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第四十九話

保管庫を後にした紫炎たちは収穫祭を見て回っていた

 

「へえ。色々な苗とかあるな」

 

「こんな毛皮の商品もあるわよ」

 

飛鳥がそれを手に取り、皆にみせる

 

「民族衣装なんてものもあるんですね」

 

「これ可愛いね」

 

黒ウサギが持っている服に耀が感想をのべているとジンが何かに気付いたようだ

 

「その衣装って試着出来るみたいですよ」

 

「どうせなら三人で着てみたらどうだ?」

 

紫炎の言葉に三人は少し戸惑っているようだ

 

「でも試着すると時間かかっちゃうよ。それでもいいの?」

 

「別にいいよ。な、ジン」

 

「はい。お気になさらずに」

 

三人がその言葉を聞き、試着室のほうに向かって行った

 

ジンと二人だけになると紫炎にジンが喋りかけてきた

 

「十六夜さんのヘッドホン見つかったと思いますか?」

 

「多分見つかってないと思うぞ」

 

「どうしてそう思ってるんですか?」

 

「あれだけ探して無かったってことは隠した犯人しか分からない場所にあるってことだ」

 

なるほど、と言った表情で紫炎を見るジン

 

話題が途切れたので紫炎は話題を変える

 

「しかし、サンドラの姉が南にいるとはな」

 

「ええ、驚きましたよ」

 

「ということはサンドラもあんな美人になるってことだ。良かったな、ジン」

 

「な、何を言うんですか。別に僕とサンドラはそんな関係じゃありません」

 

それを聞き、紫炎がニヤリとする

 

「そんな関係ってのはどんな関係なのかな?」

 

紫炎の言葉を聞き、ジンが狼狽える

 

「そ、それは・・・」

 

すると何か思いついたのか紫炎に向き合うジン

 

「それは紫炎さんや耀さんのような関係です」

 

そういった瞬間、ジンは紫炎に殴られた

 

「次、茶化したら燃やす」

 

「先に茶化してきたのは紫炎さんのほうでしょ!!」

 

そんな低レベルな言い合いをしてると

 

「なにしてるのかしら?」

 

飛鳥が試着室から出て二人に言葉をかけた

 

「ちょっとな」

 

少し視線を向け軽く返す紫炎

 

すると後ろから黒ウサギと耀も出てきた

 

「どう・・・かな?」

 

耀が紫炎の前に出て聞いてくる

 

今の三人の格好は上は耀のいつも着ている様なノースリーブのシャツで、下はロングスカートといった姿だ

 

紫炎は普段見られない三人の姿に見惚れてすぐには答えられなかった

 

すると、飛鳥が近寄って紫炎の耳元で囁いてきた

 

「ほら、気の利いた一言を言ってあげたら?」

 

その言葉で我に返った紫炎はもう一度、耀の方を見る

 

なかなか言葉を出さない紫炎を見て耀が悲しそう俯く

 

「やっぱり似合わないか・・・」

 

「い、いや。可愛すぎて言葉が出なかっただけだ」

 

慌ててた紫炎は少し大きめな声で思ってたことを言ってしまった

 

それを聞き、耀は耳まで真っ赤になり、ショートした

 

「あ・・・・う・・・・え・・・っと」

 

「耀さん!?大丈夫ですか!?」

 

「とりあえず私たちは春日部さんを着替えさせるから、貴方達は待ってなさい」

 

そう言って三人は試着室の方に向かった

 

「えっと、・・・紫炎さん?」

 

ジンが紫炎に言葉をかける

 

「今、茶化すなよ」

 

殺気を込めて言う紫炎だったが、顔が真っ赤だった為全然迫力がなかった

 

「あの、紫炎さん。一回外に出ましょうか?皆こっちを見てますから・・・」

 

大声であんなことを言ったのだから当然であろう

 

そうして、三人が出てくるまで外で待っていた二人だった

 

――――――――――――――――

 

その後、ノーネームの面々はヒッポカンプの騎手やその他もろもろのギフトゲームの登録を済ませた後、宿舎に戻り、談話室で談笑していた

 

「しかし、思ったよりギフトゲームの数が少なかったな」

 

「YES!本祭が始まるまではバザーや市場が主体となります。明日は民族舞踏を行うコミュニティも出てくるはずなのです」

 

紫炎の言葉に黒ウサギがいつも以上のテンションで返してきた

 

それを見て不思議に思った耀が疑問をぶつけた

 

「ねえ、黒ウサギ。もしかして前々からアンダーウッドに来たかったの?」

 

「ええと、昔お世話になった同志が、南側の生まれだったので少し・・・」

 

「同志ってことは・・・」

 

「ええ。魔王に連れ去られた一人で、幼かった黒ウサギをコミュニティに招きいれてくれた方でした」

 

その言葉を聞き、紫炎、耀、飛鳥の三人が顔を見合わせる

 

飛鳥が恐る恐る黒ウサギに聞いた

 

「黒ウサギはノーネームの生まれではないの?」

 

日々の黒ウサギの献身ぶりを見ている紫炎たちには驚愕の事実である

 

「はい。黒ウサギの故郷は東の上層の月の兎の区にだったとか。しかし、絶大な力を持つ魔王に滅ぼされてしまって一族は散り散りになり、一人放浪としていたところを招き入れてくれたのが今の“ノーネーム”なのです」

 

それを聞き、三人は悲痛な表情になった

 

「黒ウサギは受け入れてくれた恩を返すために、ノーネームの居場所を守るのです。そして、いつの日か皆様のようなな素敵な同志が出来たと紹介したいんです」

 

黒ウサギの言葉に三人が微笑む

 

「そう。ならその日、とても楽しみにしてる」

 

「俺もだ」

 

「私もよ。ところでその黒ウサギの恩人ってどんな人だったの?」

 

飛鳥がそう言うと、黒ウサギは遠くを見て昔を思い出してる様だ

 

「彼女の名前は金糸雀様。我々のコミュニティの参謀の方でした」


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