問題児たちが異世界から来るそうですよ?―振り回される問題児―   作:gjb

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第五十一話

サラの話が終わった後、紫炎は急いで耀の元に向かっていた

 

すると、三毛猫が何故か打ちひしがれていたのを見つけた

 

「ん?どうしたんだ、三毛猫?」

 

「小僧か。わしは、わしは何てことをぉぉぉおお」

 

三毛猫が紫炎に飛び込んできた

 

「うわ。どうしたんだ?落ち着いて話せ」

 

「小僧、良い奴やな。実はな…」

 

三毛猫の話を要約すると、十六夜のヘッドホンは自分が耀のカバンに隠し、それが壊れてしまい、耀がかなり悲しそうにしていたらしい

 

「それで?耀はどこだ?」

 

「お嬢は宿舎に行ってヘッドホンの残骸を探してどうにかしようとしとる」

 

「それじゃあ俺はそっちに向かうわ。お前は黒ウサギのとこにでも行ってろ」

 

紫炎は三毛猫にそう言うと急いで耀たちのいる宿舎へと向かった

 

 

 

 

 

「耀、飛鳥」

 

紫炎が声をかけると、耀があからさまに驚いた

 

「し、紫炎。あの、その・・・」

 

「大丈夫だ、耀。三毛猫に事情は聴いた。どれくらい残骸集まった?」

 

紫炎がそう言うと耀がそれを見せてくる

 

「そうだ。紫炎君の力なら戻せるんじゃないのかしら?」

 

飛鳥が隣で言うと、耀が期待を持って見てくる

 

「そんな目で見られると言いづらいんだが、俺のギフトだと解決策にならないぞ?」

 

「どういうこと?」

 

「問題点は二つある。一つ目は粉々になってるこのヘッドホン。俺のギフトは物を直そうと思うと対象のものが欠けてないことが前提となる」

 

紫炎がそう言うと、飛鳥と耀はヘッドホンの残骸を見る

 

自分たちが拾った欠片が足りていないことには気づいているのだろう

 

「で、でもがれきの回収が済んだ後、見つけられれば・・・」

 

耀が食い気味で紫炎に聞いてくる

 

それを飛鳥が制す

 

「それで二つ目の問題は?」

 

「それが一番の問題なんだが、直ったとしても俺から一定距離、離れると元の残骸に戻るんだ」

 

それを聞き、耀が落胆する

 

それを見て飛鳥が声をかけた

 

「やっぱりヘッドホンを直すより十六夜君の機嫌を取る方が現実的よ」

 

「でも、何が一番いいだろう」

 

「俺の考えでは、ラビットイーターと黒ウサギのセットを贈」

 

「るわけないでしょう、このお馬鹿様!!!」

 

紫炎のボケにいつの間にか来ていた黒ウサギがハリセンで叩く

 

そして耀が目を見開いて一言

 

「それ名案!」

 

「ボケ倒すのも大概にしてください!」

 

黒ウサギがもう一度ハリセンで叩く

 

ジンも一緒に返ってきたようで、腕には三毛猫が抱かれていた

 

「耀さん。詳しい話は・・・って紫炎さん!なんで黒ウサギのウサ耳を掴むんですか!?」

 

紫炎は黒ウサギの耳を掴んだまま窓の近くまで行くと、ポイッと投げ捨てた

 

そして、後ろにいるジャックに目を向けた

 

「ジャック、話したのか?」

 

「ヤホホホ。道中に話したのですが・・・どうやらまずかったようですね」

 

ジャックがカボチャ頭をかく

 

「まあ、ばれたなら仕方がないか」

 

紫炎が耀と飛鳥を見ながら言う

 

ジンが話を変えるかのように口を開く

 

「ヘッドホンは駄目そうですか?」

 

「・・・うん」

 

「それなら仕方がないですね。僕から代案がありますが、きいてもらえますか?」

 

その言葉に耀と飛鳥が驚く

 

すると紫炎が口を開いた

 

「代案ってのは、やっぱりラビットイーターと黒ウ」

 

「いい加減ボケるのをやめてください、このお馬鹿様ぁぁぁあああ!!!」

 

窓から上がってきた黒ウサギのハリセンで最後まで言い切れなかった紫炎

 

「少しくらいは真面目にしてください!!」

 

黒ウサギが紫炎に突っ込みを入れた瞬間、緊急を知らせる鐘の音がアンダーウッド中に鳴り響いた

 

すると、網目模様の樹の根から樹霊の少女が声を張り上げてこちらに呼びかけた

 

「巨人族がかつてない大軍で強襲してきました!」

 

直後、地鳴りが辺り一帯に響いた

 

―――――――――――――

 

樹の根から出た紫炎たちが見たのは壊滅状態の一本角と五爪のコミュニティが壊滅状態になっていた

 

「おいおい、一体この短時間に何があったんだ?」

 

紫炎は軽い口調で言うが、耀達は面を食らって驚いてる様だ

 

そこに傷だらけのグリーが隣に下りてきた

 

「耀!丁度いい。今すぐ仲間を連れて逃げろ!」

 

「え?」

 

「奴らの主力に先日とは比べ物にならない化け物がいる。お前達だけでも東に逃げて白夜叉様に救援を・・・」

 

グリーが耀に話しかけていると琴線をはじく音が聞こえた

 

それを聞いた瞬間、紫炎たちの意識が飛びかけた

 

「この音色の所為で見張りの意識が飛んだのか!?」

 

「ああ。今は仮面の騎士と龍殿のおかげで戦線を支えているが、何時までもつか・・・」

 

ちなみにグリーの言葉は耀と黒ウサギが周りに翻訳している

 

それを聞き、ウィル・オ・ウィスプの面々が驚きの表情を見せる

 

「仮面の騎士!?まさかフェイス・レスが参戦してるのですか!?」

 

「まずいぜ、ジャックさん。もしあいつに何かあったらクイーン・ハロウィンが黙ってないぜ」

 

「すぐに助けに行きましょう!」

 

ジャックが麻布に火を点け、巨大な業火を纏いアーシャとクリスが上に飛び乗って最前線に向かった

 

「その竪琴を持ってる巨人は仮面の人や紫炎のお父さんでも勝てないの?」

 

耀がグリーに問いかけるが、代わりに紫炎が答える

 

「いや、多分攻めきれないんだろう。恐らくこれは近くで聞けば聞くほど、効力が高いものだと思う。それと、耀。あいつを俺の父親なんて言うな」

 

少し、語調が強くなった紫炎に耀がごめん、と謝る

 

「紫炎の言うとおりだ。それで昨日はサラ様の力が抑えられていたそうだ。となればそれは神格級のギフトと見て間違いない。後、竪琴を持ってるのは巨人族ではなく、お前らと同じ人間だ」

 

「え?」

 

「深めのローブを被っていたが、巨人族が従っていたところを見ると、奴が指揮者なのかもしれん」

 

グリーの言葉を聞いていると、遠くで巨人族の雄叫びと、幻獣の断末魔が聞こえてきた

 

「巨人族の数、大体で良いからわかるか?」

 

「おそらく、五百人を超える大軍隊だ。戦闘を請け負う部隊が壊滅状態ではもう・・・」

 

グリーの言葉を聞き、耀は言葉を失ってしまう

 

そんな耀に代わって黒ウサギが翻訳すると、ジンが自信を持って言葉を紡ぐ

 

「大丈夫です。僕に考えがあります」

 

飛鳥と耀は何の事か分からない表情をしているが、紫炎だけは何か思いついたようだ

 

「なるほど。奴らがケルト神話の巨人の末裔なら、瞬間的にならそのギフトで混乱させれるな」

 

紫炎が先ほどサウザンドアイズから届いたギフトを指さし、言った

 

「しかし、それだけだと足りません。竪琴の術者を捕えなければ同じことの繰り返しです。術者を捕える為にも耀さん、あなたの力が必要です」

 

それを聞き、耀は眉を顰めた

 

「それは私に見せ場を譲るってこと?」

 

その言葉を聞いた紫炎は耀の前に立ち、

 

「ていっ」

 

「あたっ」

 

デコピンを当てる

 

痛かったのかデコをさする耀

 

「別に同情でお前に言ってるんじゃない。お前の力が必要だからお前に頼むんだ」

 

真っ直ぐに耀を見つめて言う紫炎

 

「お前にしかできないことなんだ」

 

「・・・わかった。作戦を教えて」

 

紫炎の言葉に耀が頷きながら答える

 

「それじゃあ、ジン。お前らの方は飛鳥と黒ウサギ、それとグリー頼めるか?」

 

「ああ、任せろ」

 

紫炎の言葉にグリーが頷くが、耀は不思議に思ったことを聞く

 

「紫炎はどうするの?」

 

「俺はとりあえずお前を上空に見つからないように運んだあと、自由行動」

 

それを聞き、全員から呆れた目で見られる

 

「何だよ、その眼は!いいだろ、別に暴れても」

 

「それなら私の方じゃなくて、ジンの方に行けばいい」

 

それを聞き、紫炎が反論をする

 

「あのな、耀。お前の役目はまずは誰にも見つからずに上空に行くことだ。俺のギフトならそれを難なく出来るぜ」

 

紫炎の言葉の後、耀と紫炎に炎が包んだかと思うと、二人の姿が見えなくなった

 

「え?あれ、耀さん?赤羽さん?」

 

「どこ行ったのかしら?」

 

「私は此処にいるよ?」

 

先ほどまで耀がいた場所から声が聞こえた

 

「驚いたか?」

 

紫炎が笑いながら炎を抑える

 

「詳しいギフトの説明は後でいいな。それと、上空着くまでグリフォンのギフトを使うなよ。炎が揺らぐから」

 

「え!?ちょ、ちょっと」

 

紫炎が話し終わると、耀をお姫様抱っこする

 

そして、炎で姿を隠した

 

「先行くぜ」

 

そう言って紫炎は上空に向かった

 


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