問題児たちが異世界から来るそうですよ?―振り回される問題児―   作:gjb

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十三番目の太陽をうて
第五十三話


ヘッドホンの代わりを探し終わった夜、紫炎は自室で寝転がっていた

 

「十六夜達が来るまでもうちょっとか」

 

紫炎が誰に言うでもなく呟いた

 

(明日はヒッポカンプの騎手があるし、早めに寝るか)

 

紫炎がそう思いながら目を閉じると琴線のはじく音が聞こえた

 

一瞬、意識が飛びそうになったが聞き覚えのある音に驚愕する

 

「この音、昨日の竪琴か!?」

 

紫炎が飛び起きて状況を確認しようとすると稲妻が落ち、宿舎が地盤ごと倒壊した

 

「あぶねーな」

 

紫炎は炎で体を包み込み、倒壊した岩などから身を守る

 

(耀たちは大丈夫か?)

 

紫炎が炎翼をはばたかせて耀たちの安全を確認しに行こうとした瞬間、後ろから仮面をつけた敵が攻撃を仕掛けて来た

 

「くっ」

 

それを何とか剣で防ぐ

 

「ふざけた仮面付けてる割にはいい攻撃じゃないか」

 

紫炎がそう言って構えると、仮面をつけた敵は目の前から突如として消えた

 

「!?」

 

(紫龍やウィラみたいなことができるのか?)

 

そう思い、紫炎は炎を纏い、迎撃態勢に入る

 

「・・・・・・」

 

数十秒間、沈黙が続くが何も起きない

 

すると、巨人族の襲来を知らせる鐘が響いた

 

それと、同時位に黒い封書の契約書類が降ってきた

 

「ちっ、時間稼ぎが目的か!?」

 

紫炎が焦りで炎が揺らいだ

 

その瞬間、仮面の敵が突っ込んできた

 

それを紫炎は紙一重で避けたはずだった

 

「がはっ」

 

拳が通り過ぎる瞬間、何かに引っ張られるような感触がしたと思ったら攻撃が当たっていた

 

紫炎は反射的に仮面の敵の頭を掴む

 

「面白そうなギフトだが・・・邪魔だ」

 

そしてそのまま燃やす

 

「さて、耀のところまで行くか」

 

「おい、小僧」

 

炎翼を出し、飛び立とうとした時、三毛猫の声が聞こえた

 

「どうした、三毛猫」

 

「お嬢が、お嬢が危ないんや」

 

「!!案内しろ」

 

紫炎が声を荒げて三毛猫に言うと、後ろから先ほど燃やしたはずの敵が襲い掛かってきた

 

「・・・おいおい、何で頭吹き飛ばした奴が動けてんだ?」

 

何とかそれを受け止めた紫炎が誰にいう訳でもなく、呟く

 

(さっき、引っ張られた感じからすると、糸かなんかで操ってんのか?なら、何で俺を操らないんだ?それとも操るのに手順がいるのか、もしくは生きてる人間は完全に操れないのか?)

 

そう思ってると、上空から仮面を付けた敵が三人ほど降ってきた

 

「ちっ」

 

それを見て紫炎が最大出力の炎を出し、目の前の敵を焼き尽くす

 

新しい敵が下りてくる前に三毛猫に伝えた

 

「三毛猫、悪いが新しいお客さんのようだ。ここは危険だから他のやつのとこまで行ってろ」

 

「せやかてお嬢が・・・」

 

「耀なら大丈夫だ!・・・大丈夫のはずだ」

 

紫炎が声を荒げながら願うかのように言う

 

それを見て三毛猫も察したようだ

 

「わかった。わしは本陣の方へ行っとくわ」

 

紫炎はそれを聞き、三体の敵を見据える

 

「悪いがすぐに消えてもらうぜ」

 

紫炎がそう言って空へ飛び、一体を真っ二つにする

 

そして、もう一体の方に手を向け炎を出し全身を燃やす

 

最後の一体に切りかかろうとすると、姿が見えなくなっていた

 

「ちっ、またか」

 

紫炎が焦りながら周りを見渡す

 

すると突如出現した仮面の敵に刺される

 

「ガハッ」

 

仮面の敵が剣を引き抜こうとすると、後ろから手が出てきて頭を掴む

 

「燃え尽きろ」

 

そういって、仮面の敵が灰になる

 

そして、刺されていた紫炎が消え、空中から紫炎が現れた

 

「これであらかた片付いたか」

 

紫炎が刀を鞘に戻しながら言っていると、仮面の敵が紫炎をいきなり囲んだ

 

「何体いやがんだ!!」

 

紫炎が刀に炎を纏わせて構える

 

「行くぜ。・・・あれ?体が動かない」

 

紫炎は何かに縛られている様な感覚に襲われる

 

「くそっ、うぜぇ」

 

紫炎が全身から炎を放出し、縛ってるものを焼き散らそうとする

 

しかし、縛られているであろう場所からは炎が出なかった

 

「ちくしょう、ほどけない」

 

紫炎がほどこうとして抵抗していると周りにいた仮面の敵が迫ってきた

 

「ちっ、動けないだけでやられる俺じゃ・・・」

 

炎をムチ上にして攻撃しようとすると、いきなり意識が飛びかける

 

刹那、紫炎を中心に炎が発せられ、仮面の敵が全て灰になり、紫炎の意識も通常に戻った

 

「危ないとこだったな、紫炎」

 

「うるせー、俺一人でもどうにかできたよ」

 

「意識飛びかけだった奴がよく言うよ」

 

「!?」

 

確かに意識は飛びかけたが、一瞬の事だったのでばれていないと思っていたが紫龍は気づいていたようだ

 

「まあ、手玉に取られてむかつくだろうがあいつは俺がもらうからな」

 

「なにいって・・・」

 

紫炎が反論しようとしたが紫龍の真面目な顔に押し黙ってしまう

 

「まあ、お前は契約書類でも読んでギフトゲームの準備でもしとけ」

 

「あ・・・。そういえば巨人も来てたんだった」

 

紫炎が緊急用の鐘が鳴っていたことを思い出した

 

「ああ、そっちの方なら碓氷とウィル・オ・ウィスプのクリス君が行ったから大丈夫だろ」

 

「そうかもしれんが、かなりの時間が有する筈だ。今からでも加勢に・・・」

 

「そちらなら大丈夫でございます」

 

「うお!黒ウサギか。どうしてそう言えるんだ?」

 

急いで上に向かおうとしていた紫炎に黒ウサギがいきなり声をかけた

 

「え~と、わかりやすく言えば十六夜さんが来ました」

 

その言葉を聞き、紫炎が納得する

 

「それで、お前は何でここにいるんだ?」

 

「あ、そうでした。審判権限が受理されたのでそれを宣言しに来たんでした!」

 

黒ウサギがそう言って高いところに上り、アンダーウッド全域に届くような声でジュリの報告をしに行った

 

「しかし、あの黒ウサギって娘、エロいな」

 

「あんたは自制ってことを知らないのか」

 

紫炎が呆れていると、上空の巨龍がアンダーウッドへと急降下し始めた

 

それだけで暴風が吹き荒れた

 

「おおー。流石最強種の龍の純血。動いただけでこれか」

 

「呑気なこといってんじゃねー。俺ら以外の飛べないやつは大惨事だぞ」

 

「そうだった。そうだった」

 

二人はそう言って炎翼をはばたかせ、飛べない者の救出に向かう

 

紫炎は最初にジンから救出した

 

「あ、ありがとうございます、紫炎さん」

 

「礼は後だ。他の奴のとこに向かうからしっかり捕まってろ」

 

紫炎がそう言って十六夜、クリス、碓氷を助けた

 

「おい、紫炎。お嬢様はどこだ?」

 

「そうだぞ。なんで男ばかりのむさい状況なんだ!?」

 

「貴男たちは少し黙りなさい。・・・まあ、何故同じコミュニティの仲間より私たちを優先したんでしょうか?」

 

十六夜、クリス、碓氷の言葉を聞き、紫炎、ジン、ペストが目を逸らす

 

「どうしたんですか?」

 

「いやな、ジンを助けた後、飛鳥を助けに行こうとしたんだが・・・・・・」

 

 

 

 

 

「お、飛鳥だ」

 

「呑気に言ってないで助けなさいよ」

 

紫炎が飛鳥に近づいて助けようとすると、誰かが横からかっさらっていった

 

「大丈夫かい?飛鳥ちゃん」

 

何時になく真面目な顔をした紫龍だった

 

「あ、ありがとうございます。けど、この格好は・・・」

 

飛鳥が恥ずかしがるのも無理はない

 

なぜなら今、飛鳥は紫龍にお姫様抱っこされている状態なのだから

 

「いいじゃないか。可愛い女の子にしかこういうのは似合わないんだからさ」

 

「答えになってませんけど!紫炎君、助けて」

 

話の通じない紫龍から逃げるため、紫炎に助けを求める飛鳥

 

「よし、飛鳥は無事そうだから次行くか」

 

「えっと、紫炎さん。良いんですか?」

 

「飛鳥の無事が確認されたんだ。良いだろ」

 

そう言って紫炎は他の人物を助けに行くため、その場を離れた

 

「あ、こら。待ちなさい!!」

 

 

 

 

 

 

「―――――――――という事だ」

 

それを聞き、十六夜は大爆笑、碓氷は呆れた顔を、クリスは羨ましそうにしていた

 

「あ、そう言えばアーシャとジャックさんを見なかったか?」

 

「いや?見てないぜ」

 

「とりあえず一旦下りるぜ」

 

紫炎がそう言って地面に下りる

 

「それならどこから探しましょうか」

 

「う~ん」

 

「・・・最初は救護所だな」

 

碓氷と紫炎が悩んでると、十六夜が違う方を向きながら提案する

 

「確かにあそこなら怪我した人が運ばれるからもし見つからなくても情報が得られるな」

 

「ああ、それに治療する奴も出るしな」

 

「「?」」

 

十六夜の言葉の意味が分からない紫炎とクリス

 

すると、碓氷が十六夜の見ていた方を見て紫炎に優しい目で見た

 

「どうか幸あれ」

 

「は?なに・・・」

 

瞬間、紫炎の後ろから飛鳥のシャイニング・ウィザードが決まり紫炎の意識が刈り取られた

 

「あの時はよくも見捨ててくれたわね」

 

意識の失った紫炎の頭を踏み続ける飛鳥

 

右手にはボコボコにされた紫龍が引きずられていた

 

それに気づいた碓氷が飛鳥に近づき謝りながら紫龍を蹴飛ばし、離れて行った

 

「あの人、いい人ね」

 

「ああ。そして、お嬢様。そこまでだ。これ以上はさすがに今後に関わりそうだからストップだ」

 

十六夜の言葉に渋々従う飛鳥

 

「それじゃあこいつを救護所に連れて行って、それから春日部やジャックの所在の情報でも集めようぜ」

 

「そうね」

 

「だね」

 

三人は紫炎を引きづりながら救護所まで向かった


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