問題児たちが異世界から来るそうですよ?―振り回される問題児― 作:gjb
紫炎が目を覚ますと床に雑魚寝をし、両脇には十六夜と飛鳥がいた
「起きたか」
「ああ、なんで気絶したのかはわからんが・・・」
紫炎がそういうと飛鳥が顔を軽く逸らした
「それで、ノーネームの面々でいるのは、ここにいる奴の他に誰がいた?」
それを聞き、飛鳥は顔を俯かせ、十六夜は真剣な表情になる
「それは、黒ウサギが説明します」
すると、黒ウサギがボロボロになって気絶している三毛猫を抱え、ジンと共に暗い表情で現れた
三毛猫の姿を見て、責任を感じた紫炎が頭を抱えながら続きを促す
「それじゃあ、頼む」
「YES。まず、レティシア様ですが敵に連れ去られてしまいました・・・」
黒ウサギのウサ耳が垂れているのを見て紫炎はそれが事実だと瞬時に理解した
「そうか・・・」
「それで、耀さんなのですが魔獣に襲われていた子供を助けようとして・・・」
「魔獣と共に回収された子供を追いかけ、空に上って行ったそうです」
「・・・そうか」
紫炎は話を聞きながら、腕に力が入ってるのに気が付く
「焦るなよ、紫炎。龍角を持つ鷲獅子連盟の要人も連れ去られたようだから早けりゃ明日にも救援隊を組むだろうよ」
「YES!そのことについて今からそのことで会議が行われるそうなので皆さん来てください」
「わかった」
そうして黒ウサギの後ろをついて行って本陣に向かった
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紫炎達が本陣に着いて、会議が始まる時にいたコミュニティは五つ、人数は十一人
一本角の頭首にして、連盟の議長でもあるサラ
六本傷の頭首代行として、キャロロ
ウィル・オ・ウィスプの参謀代行フェイス・レスとクリス
サウザンド・アイズからは紫龍と碓氷
ノーネームからはリーダーのジンと十六夜、飛鳥、紫炎、黒ウサギが来ていた
黒ウサギは会議の進行役として口を開いた
「これよりギフトゲーム“SUN SYNCHRONOUS ORBIT in VAMPIRE KING”の攻略作戦の会議をします。なので皆様は責任のある発言をしてください」
「分かった」
「はいは~い」
「もちろんだよ」
サラは誠実に答えたがキャロロと紫龍の緊張感のない返事に少し、いらっとする紫炎
とりあえず紫龍を殴ろうと思った紫炎だったが、後ろからの十六夜の声に止まった
「アンタもしかして東の外門で喫茶店やってる猫のウェイトレスか?」
「そうですよ、常連さん。いつもごひいきにありがとうございます」
「彼女は六本傷の頭首の二十四番目の娘でな。父親の命令で東側に支店を開いている」
「ふふ、ちょっとした諜報活動です。常連さんたちのいい噂もボスにちゃんと流れてますよ」
その言葉を聞き、悪魔三人が悪い笑みを浮かべた
「一店員であるアンタが南の収穫祭にいるわけか」
「しかし、そんな秘密を聞くとあの店には入れなくなるな」
「あのカフェテラスで立ててた作戦も全部筒抜けだったんでしょうね」
それを聞き、キャロロの顔から汗がだらだら流れ落ちる
「ここは一つ地域支配者として地域に呼びかける義務があるな」
「ああ。『六本傷の旗本に、間諜の影あり!!』。チラシの見出しはこんなもんか」
嬉々として話し合ってる紫炎と十六夜を見てさすがに焦りだしたキャロロ
「ちょ、ちょっと待ってください!!そんなことされたらうちの店はやっていけなくなります」
「あら、そんなこと知ったことじゃないわ。さっき紫炎君が言ったとおり私たちは地域に呼びかける義務があるわ」
「まあ、それが嫌なら・・・」
わざわざ言い切らずに途中で止め、キャロロの次の言葉を待つ悪魔三人
キャロロは半泣きになりながら断腸の思いで言葉を紡ぐ
「こ、これからは皆様に限り、当店のメニューを一割引きに・・・」
「「「三割だ」」」
「うにゃああああ!!サラ様~」
耐えられなくなったキャロロが泣きながらサラに近づいた
「よしよし。これからは自分の役割をばらすようなことは止めような」
サラが辛辣な言葉を投げかける
問題児たちはというと、ハイタッチをして喜んでいた
そんな同志のあくどいやり口を見て、恥ずかしそうに俯くジンと黒ウサギ
すると、しばらく見つめていたフェイス・レスがゆっくりと挙手をして黒ウサギに問いかけた
「あの、話を進めませんか?」
「あ・・・了解なのですよ」
それを聞き、黒ウサギは会議を再開させた
「まずはゲームの方針を・・・と言いたいところですが、その前にサラ様からお話があるそうです」
その言葉に全員が首を傾げる
それを気にせずサラが口を開いた
「まずは最初に言っておくが、今から話すことは秘匿で頼む」
「?はい、わかりました」
ジンが代表として返事をし、その場にいる全員が頷いた
「まずは一つ目。黄金の竪琴が奪い返された際、バロールの死眼も盗み出された」
「本当なのですか!?」
「まあ、あれぐらいのレベルの巨人なら対して使いこなせないだろうよ」
紫龍が少し呆れたように言う
「ああ。だが、一応対策を練らなければならないとな」
「それで、二つ目は?」
巨人の方はもう興味がないのか、すぐに次の話を促す紫龍
「・・・。ゲーム休戦前に北と南から緊急連絡が入った。魔王の襲来は此処だけではないらしい」
「それは本当か?」
紫龍の眼に何か秘めたようなものが見えた気がした
「ああ。北の階層支配者サラマンドラと鬼姫連盟、そして東の階層支配者サウザンドアイズの幹部、白夜叉。以上3つのコミュニティが同時に急襲されている」
それを聞き、紫龍以外は一斉に息を呑む
箱庭に来て日の浅い三人もそれは異常事態だと気づいたようだ
すると、飛鳥が小声で紫炎と十六夜に話しかけた
「偶然じゃ、無いわよね」
「だろうな。階層支配者を倒すために強大な魔王が複数の魔王を統率してるってところか」
「だろうな。だが、それなら逆に納得した部分もある」
「納得?」
「どいうことだ!」
十六夜が『理解した』ではなく、『納得した』と言ったのが気になった紫炎とサラ
「ああ。その前にサラマンドラが魔王に襲われたってことは知ってるな?」
「当たり前だ」
十六夜の言葉に、サラはバカにされたと思い、少し怒った口調で返す
「それなら、その魔王はサラマンドラ自身が手引きしたというのは知ってるか?」
「なんですって!!」
飛鳥が声を荒げて十六夜に詰め寄る
「やめとけ、飛鳥」
「なんでよ、紫炎君。というよりあなたは何でそんなに冷静なのよ!?」
「だって俺、知ってたし」
紫炎がそう言った瞬間、飛鳥が頭突きを食らわせる
「まあ、確かに父上ならそれくらいはしかねないな」
紫炎の事を普通にスルーし、サラが続ける
「で、ではお父様は何故そのようなことを・・・」
「大方、サンドラが一人前だと周囲に認めさせるためだろうが・・・その辺はそこにいる少年たちの方が詳しいだろう」
それを聞いていた紫炎が頭を押さえながら椅子に戻る
「俺は詳しく知らんが、十六夜からそう聞いてる」
「ああ、俺もここで話を聞くまではそう思っていたが、どうやらそんな簡単なものじゃないらしい」
「というと?」
十六夜の言葉に首とウサ耳を傾け、聞く
「あの時のペストの狙いを思い返してみろ」
それを聞き、紫炎が何かに気づいたようだ
「そうか。確かにペストの狙いはサンドラじゃなく、白夜叉だったな」
その言葉を聞き、あの場にいた者全員が驚愕の表情をした
「なるほど。確かに南の階層支配者が討たれたのもその時期でしたね」
「う~ん。そうだったけ?」
紫龍の気の抜けた返事に碓氷と紫炎がキレて、扉の外に蹴飛ばし入れないようにした
「ちょっと、二人とも。結構痛かったんだけど。というか開けてほしいんだけど」
「さて、話を続けましょうか」
先ほどの事がなかったように碓氷がいい笑顔で続きを促す
「碓氷!この頃俺の扱いひどくないか!?」
「うるさい!!」
雑音が気になった紫炎が扉ごと蹴飛ばし、静かにさせる
「雑音も消えたことだし、続けましょうか」
「だな」
「いや、紫炎。流石にあれは・・・」
何事もなく進めようとする碓氷と紫炎にクリスが心配そうに扉を見ながら言う
「「大丈夫。あいつ(あの人)は殺しても死なないから」」
二人が声を揃えて行ったのを聞き、十六夜は爆笑で、他は呆れた眼差しで返す
そんな空気をぶち壊すかのようにフェイス・レスが手を挙げ、発言をした
「すいませんが、現階層支配者は今襲われている三組と、休眠中のラプラスの悪魔でよろしいでしょうか?」
「ああ、その通りだ」
「もし、今襲われている階層支配者が全て討たれますと、全階層支配者を決める必要があります。敵の狙いはそれではないでしょうか?」
『全階層支配者』という聞き慣れない単語にフェイス・レス以外の全員が首を傾げる
「以前クイーン・ハロウィンからお聞きしたのですが階層支配者が壊滅、もしくは一人になった場合、暫定四ケタの地位とそれ相応のギフト、そして太陽の主権の一つを与えられ、さらに東西南北から他の階層支配者を選ぶ権限が与えられると」
フェイス・レスの説明を聞き、黒ウサギとサラが声を荒げる
「太陽の主権一つに、暫定四ケタの地位だと!」
「そんな制度があるなんて・・・」
「驚きだねー。そう思わないかい?飛鳥ちゃん」
いつの間にか戻って来た紫龍が飛鳥の横に座って呟いた
それを見て二人以外が驚くが、碓氷と紫炎は確認した瞬間、紫炎がドアまで蹴飛ばし碓氷が殴り廊下の奥の方まで飛ばす
「それで、その制度には前例があるんですか?」
また、何事もなかったかのように続きを促す碓氷
廊下の奥の方を見て、うわぁ、と呟いているクリスは放っておくことにする
「クイーンの話では白夜叉様と初代階層支配者のレティシア=ドラクレアの二名だけらしいです」
「レ、レティシア様が全階層支配者・・・。」
黒ウサギの驚いた表情を見て呆れ顔を浮かべるフェイス・レスと紫龍
「おいおい、箱庭の貴族の割に箱庭の騎士の由来も知らないんだな」
「黒ウサギは一族的にぶっちぎりで若輩なので。って紫龍さんなんでいるんですか!?」
「いやー、何とか戻って来れたよ」
紫龍の言葉の後、碓氷が紫炎の方へ蹴飛ばし、紫炎が扉絵殴り飛ばした後、最後は十六夜が殴り飛ばした
そして全員が席に戻るとフェイス・レスが何事もなかったかのように口を開く
「箱庭の貴族ともあろうお人が箱庭の騎士の由来も知らないのですか?」
「え!?それはさっき紫龍さんにも言われましたよね!もしかしてさっきの流れ全部無かったことにするつもりですか!?」
何やらわめいている黒ウサギに十六夜が助け船を出してやる
「ぶっちゃけ黒ウサギは箱庭の貴族(笑)だからな」
「その渾名を定着させようとするのは止めてください!」
流石に十六夜の言葉にキレた黒ウサギは先ほどの事を忘れているようだ
するとフェイス・レスが顎に手を当てて何か思案してる様だ
「なるほど箱庭の貴族(笑)でしたか」
「真面目な顔で返さないでください!」
フェイス・レスの言動に飛鳥がムッとして反論する
「ちょっと、二人とも。話の流れ的に箱庭の貴族(恥)でしょ!」
「それだ!」
「それだ!じゃないでしょう、このお馬鹿様!!」
久々に冴えわたる黒ウサギの突っ込み
すると今まで静観していた紫炎が口を開いた
「箱庭の貴族(恥)、少しは真面目になろうぜ」
「それはこっちのセリフなのですよ、このお馬鹿様!!」
これから数分黒ウサギ弄りが続くのであった