問題児たちが異世界から来るそうですよ?―振り回される問題児―   作:gjb

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第五十六話

主賓室で話が終わった後、それぞれが自分の個室に戻っていた

 

紫炎は布団に入らず、窓から外に出ようとしていた

 

「どこに行くつもりだ?紫炎」

 

「・・・十六夜か。何、ちょこっと外へ散歩に・・・」

 

十六夜が窓から入ってきて少し驚く紫炎

 

「嘘をつくな。春日部が心配なのはわかるが一人で勝手に行動するな」

 

その言葉を聞き、紫炎の動きが止まる

 

「何でわかった?」

 

「わかりやすいんだよ。まあ、気づいたのは俺だけだが・・・」

 

そういって十六夜が紫炎の方に歩く

 

「もう一度言うぜ。一人で勝手な行動をするな」

 

「嫌だね」

 

「そうかよ」

 

その瞬間、十六夜が紫炎を殴る

 

「何しやがる」

 

「そんな風に睨んだって行かせねーよ」

 

「うるせー」

 

紫炎が十六夜を殴ろうと拳を振るが、簡単に止められる

 

「頭に血が上り過ぎだ。そんなんで行ったところで何にもできねーよ」

 

「はあ?何を・・・」

 

紫炎が何か言おうとした瞬間、十六夜が腹に拳を入れ眠らせる

 

「ったく、何があったか知らんが今の体力じゃ巨人ですら危ないんじゃないか?」

 

十六夜はそういって紫炎をベットに投げ捨て自分の部屋に戻った

 

――――――――――――――――

 

翌日の朝、地響きにより紫炎が起きる

 

「何だ。いててて」

 

まだ昨日十六夜に殴られた箇所が痛むらしく、その場所を押さえながら音のした場所へ歩いて行った

 

すると、地下水門前で十六夜がバケツを持って歩いていた

 

「ん?紫炎か。腹なんて押さえてどうしたんだ?」

 

「十六夜。一回殴らせてくれ」

 

そういって拳に炎を灯す紫炎を見て十六夜が高らかに笑う

 

「ヤハハハ。ぜってー嫌だね。そんなもん食らっちまうとどうなるか」

 

「ふざけんじゃねえ。俺より数段やばいパンチ力持ってる奴が何言ってやがんだ!」

 

「何やってんだ?お前ら?」

 

紫炎と十六夜が言い争ってると、布団を簀巻きにした状態で二つ背負ってる紫龍が来た

 

「何だっていいだろ。それよりなんだそれ?」

 

「布団」

 

「そういうこと聞いてんじゃねえー」

 

紫龍の言葉に紫炎は声を荒げ、十六夜は先ほどより大きな声で笑う

 

「それより、十六夜君。そのバケツは?」

 

「おっと、そうだった」

 

そういって十六夜が地下水門の方へ大股で歩いて行った

 

「で、お前は何しに来たんだ?布団なんか担いで・・・」

 

「ああ、これは・・・」

 

紫龍がなにか言いかけていると、布団から顔が出た

 

「いきなり何するんですか、紫龍さん」

 

「そうですよ!ほぼ初対面の人間を簀巻きにするってどういう神経の持ち主なんですか!!」

 

「・・・何やってんだよ」

 

布団から出てきた碓氷とクリスを見て、紫炎が紫龍に呆れた目で見る

 

「何って、こいつら強くしないと次に巨人が来た時、死んじまうからな」

 

「は?何言ってんだよ。クリスの実力は知らんが碓氷は巨人なんてどうってことないだろ?」

 

「普通のならな。ほら、小型の少しだけましなのがいただろ?あいつだとぎりなんだよ、こいつ」

 

そういいながら碓氷を指す紫龍

 

すると、少し暗い顔になる碓氷

 

「そうか?実力的には俺と一緒位だと思うんだが?」

 

「水場ならな。こいつ、水場じゃないとギフトの力が著しく落ちるんだ。普段なら気にすることじゃないが今回は念には念を入れて多少なりとも実力をつけさせようと思ってな」

 

それを聞き、紫炎が碓氷を見ると、気まずそうに顔を逸らす

 

「そうか・・・。ならクリスは?」

 

「普通に実力不足」

 

「うるせーー!」

 

普通に力が足りないことを言われ、涙目になるクリス

 

「二日で力がつくものなのか?」

 

「付けなけりゃ死ぬだけだ。あ、お前はギフト使うなよ。体力回復が優先だ」

 

「は?なんで・・・」

 

「ちょ、離してよ」

 

紫龍に理由を問い詰めようとした紫炎だったが、突如聞こえた大声で止められてしまう

 

「おお、おっさん。どうせ此処使うんだろ?」

 

「そうだけど、羨ましいな。美女二人を担げるなんて。俺なんて男なのに」

 

「どうでもいい。使うならさっさと使えよ」

 

「その前にこっちの状態に何かツッコミなさいよ!」

 

担がれている人間を無視して話をしてると、飛鳥からのツッコミが飛ぶ

 

「悪い悪い。てか、何で濡れてんだ?」

 

「十六夜君がバケツでかけてきたのよ」

 

「失礼なことを言うなよ、お嬢様。手が滑ったんだよ」

 

「滑ったならなんで私たちだけじゃなく何で黒ウサギやサラにまで水がかかるのよ」

 

「「何!?」」

 

それを聞いた瞬間、紫龍は布団を投げ捨て水門の方へ走り出した

 

クリスも投げ捨てられた瞬間、器用に抜け出し走って行った

 

「それじゃあ俺は二人を風呂に入れてくるわ」

 

「ああ、わかった」

 

「ちょっと待ちなさい。この状況でのコメントがそれだけなの!?」

 

飛鳥のむなしい叫びが聞こえてきたが紫炎は聞こえないことにした

 

「さて、碓氷はどうするんだ?」

 

「紫龍さんの修行を受けます。あの人、指導だけはピカイチですから」

 

「まあ、指導だけならな・・・」

 

碓氷と紫炎がしゃべっていると、水門のほうから爆音が聞こえた

 

「多分、黒ウサギだろうな」

 

「でしょうね。とりあえず私は紫龍さんを起こしに行きますが、あなたはどうします?」

 

「俺も行くわ。『ギフトを使うな』って言う真意を聞きに行く」

 

そういって二人が水門の方に歩いて行く

 

「赤羽さん!なんなんですか、あなたのお父さんは!?」

 

「よし、黒ウサギ。白夜叉と十六夜、どっちに引き渡されるのがいい?」

 

「なんでですか!?というよりなんですか、その選択肢は!!どっちもほとんど変わりないじゃないですか!!」

 

紫炎が黒ウサギに笑顔を向けながら軽い死刑宣告をする

 

「さっさと選べ。まあ、嫌なら紫龍っていうのもいいが」

 

「だから何でですか!?・・・まさか紫龍さんのことをお父さんって言ったからですか?」

 

「よし、この件が終わったら白夜叉に渡した後、十六夜、紫龍の順番で渡してやる」

 

「ちょっとなんでそうなるんですか!?聞いてるのですか!?」

 

「黒ウサギ、早く風呂に行こう」

 

紫炎に文句を言ってる黒ウサギを見かねて、サラが風呂に連れて行った

 

「さて、紫龍のとこにでも行くか」

 

そういって紫炎は水門の方に歩いて行った

 

――――――――――――――――――――――

 

吸血鬼古城の城下町で耀達はゲームクリアの為、黄道の十二宮を示す代物を探していた

 

ジャックは空から探し、残った耀とアーシャは他にも連れ去られていた子供たちと一緒に地上から探していた

 

「おいオマエラ、高いところには上るなよ。大きながれきは三人以上で退けるように。・・・石をぶつけられた?おい、ぶつけた奴は今すぐ謝らないと、逆さづりの刑だぞ、コラ!!」

 

喧嘩していた子供を見事に仲裁したアーシャに耀が近づく

 

「慣れてるね」

 

「ああ、クリスがね・・・」

 

そういって視線を逸らすアーシャ

 

「なるほど。仲がいいんだね」

 

「まあ、な」

 

アーシャが恥ずかしそうに頬をかく

 

「あ、もしかして・・・」

 

「な、何だよ」

 

「クリスの事好きなの?」

 

そういった瞬間、アーシャの顔がみるみる赤くなる

 

「な、何言ってんだよ!クリスは・・・そう、弟みたいなもんだよ」

 

「ふーん。応援するよ」

 

「だから違うって!・・・ん?」

 

アーシャが耀に向かって怒ってると何かに気づく

 

「どうしたの?」

 

「この結晶、うちのコミュニティのか?でもなんか違うような・・・」

 

「これは紫炎がくれた。あと、昨日自分の意志で蓄えた炎を使えるようにしてくれた」

 

耀がそう言いながらペンダントを愛おしそうに握る

 

それを見てアーシャがニヤリと笑う

 

「私の事より、耀はどうなんだよ。紫炎の事どう思ってんだよ」

 

「・・・大好き」

 

耀はそう言うと、顔が赤くなる

 

二人で話していたので他の子どもたちが不思議そうにこっちに問いかけてきた

 

「お姉ちゃんたち、どうしたの?」

 

「なんでもない。ほら、探しに行こう」

 

そういって耀たちはゲームの攻略の為に歩き出した


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