問題児たちが異世界から来るそうですよ?―振り回される問題児―   作:gjb

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第五十八話

紫炎は自室に戻った後、次の日まで寝ていた

 

起きてから紫龍に会いに来ていた

 

「さてと、ギフトを使えるようにして貰おうか」

 

「もう使えるぞ」

 

「は?」

 

紫炎が気の抜けた声を上げる

 

「お前が寝てる時に返し・・・」

 

紫龍の言葉を最後まで聞かず、殴り飛ばす紫炎

 

「時間の無駄だったか」

 

「待て」

 

立ち去ろうとする紫炎だったが紫龍の言葉を聞き、止まる

 

「お前はあの城に何しに行くんだ?」

 

「耀を・・・迎えに」

 

それを聞き、紫龍が満足そうな顔を浮かべる

 

「そうか。・・・そんなに耀ちゃんの事が好きなのか」

 

「・・・ああ」

 

殴られると思っていた紫龍は少し唖然としている

 

「聞き忘れてたことが一つあったわ」

 

「なんだ?俺に答えられることなら・・・」

 

「八年前の真実」

 

紫炎の言葉に紫龍の動きが止まる

 

「どうしても聞きたいのか?」

 

「ああ」

 

「・・・生きて帰ってきたら教えてやるよ」

 

「分かったよ」

 

そういって紫炎が部屋から出て行った

 

其れを確認した紫龍は誰に言うでもなく、口を開く

 

「おい、出てこいよ。今なら俺一人だぜ」

 

「あれ?気づかれちゃってました?」

 

すると、ノースリーブの黒いワンピースを着た黒髪の少女がいきなり現れた

 

「リンちゃんか。また同じ用件かい?」

 

「ええ。今回は良い返事を期待してますよ」

 

リンと呼ばれた少女がナイフを一本取り出しながら言う

 

「物騒だね~。何回も来てるけど、今回は実力行使かい?」

 

紫龍はそれも気にせず、いつもの調子で返す

 

それをみて、リンは笑顔を浮かべながら口を開いた

 

「ええ。今回こそ私たちの仲間になってくれますよね、紫龍さん?」

 

――――――――――――――

 

紫炎が紫龍の部屋から立ち去ってからしばらくして、救援隊の集合場所に来ていた

 

「おお、紫炎か。ギフトはどうだ?」

 

「ばっちりだぜ」

 

そういって炎を灯しながら答える紫炎

 

「紫炎、準備は良いのか?」

 

「グリーか。もちろんいいぜ」

 

グリーと紫炎が喋っていると、サラが前に出てきた

 

「皆、準備はいいか。これよりあの古城に行き、ゲームクリアを目指す。行くぞ!」

 

それを聞き、全員が飛翔していった

 

少しして、その場所に赤い仮面を被ったナニカが現れた

 

「・・・・・・」

 

それが両手を挙げると、地面から二日前紫炎を襲った仮面の敵が現れた

 

そして、手を振るうと仮面の敵は紫炎たちが飛び立った方へ向かう

 

いくらか空に浮いた後、いきなり燃え出した

 

「久々だな、ジョーカー。三年ぶりか?」

 

「・・・・・・」

 

紫龍がジョーカーと呼ばれる赤い仮面の敵の後ろから現れた

 

「いや、三年前は直接は会ってないか。なら、八年ぶりか」

 

そういった紫龍は殺気が膨れ上がっていった

 

「・・・なるほどな。なら、あの時の小僧はどこだ?」

 

「誰が言うかよ」

 

「残念だな。八年前とおんなじようにしてやろうと思ったのにな」

 

ジョーカーのその言葉に紫龍が炎を全身に纏わせる

 

「黙れ。もうこれ以上あいつを好きにはさせん」

 

そう言いながら紫龍は炎をジョーカーに放つ

 

それを横から出てきた仮面を被った人形で防ぐ

 

「ケケケ、何があったか知らんが八年前から大分ギフトの力が衰えてるな」

 

「てめーだけはちゃんと灰にしてやるよ」

 

そういって紫龍はギフトカードからカプセルを取り出し、それを飲んだ

 

すると、全身から炎が噴き出した

 

「なんだ。いきなり発炎量があがった」

 

「これが三年かけてお前に対抗するために作ったギフトだ」

 

そういって炎から出てきたのは赤い羽織を羽織った十代後半くらいの紫交じりの赤い髪の少年だった

 

「なんだ・・・。神格が・・・。お前、何をした!」

 

「悪いが喋ってる時間がもったいない。行くぞ」

 

―――――――――――――

 

紫龍が現れたくらいの頃、救援隊は上空千メートルの場所まで来ていた

 

「しかし、ここまで来ると絶景だな」

 

「ああ。それにグリフォンのこの疾走感、なんともいい気持ちだぜ」

 

「本気を出せばこんなものじゃないぞ。編隊を崩してもいいならこの五倍は速いぞ」

 

「行くか」

 

「「行くな」」

 

勝手に突っ走ろうとした十六夜をサラと紫炎がダブルでツッコミを入れる

 

「よし、行くか」

 

「「だから、いくな」」

 

二人のツッコミを聞かずに、もう一度言う十六夜に二人は頭を抱えながらもう一度ツッコミを入れる

 

古城まで半分くらいまでになると、急に十六夜が黙った

 

「どうした?」

 

「・・・箱の中に閉ざされた場所なのに地平線が見えやがる」

 

紫炎もそれを聞き、後ろを向きながら飛ぶ

 

「・・・確かに。急ぎじゃなけりゃあゆっくり見ときたいものだわ」

 

「春日部と二人でか?」

 

十六夜がにやけながら茶化す

 

しかし、紫炎は顔を赤くしながら軽く答える

 

「ああ」

 

「け!幸せ者め」

 

それを聞き、十六夜はつまならさそうにいい、もう一度景色に魅入る

 

二人は進みながらも、景色に魅入っていた

 

だから気づけなかった

 

「?」

 

最初に異変に気付いたのはサラだった

 

何やら黒い平面上の何かが現れた

 

「・・・・・・・ぁ」

 

それを目にした瞬間、一斉に血の気が引いた

 

「ぜ、全員にげろぉぉぉぉぉおおおお」

 

サラが退却命令を出すが何もかも遅かった

 

そこから現れたのは魔王・レティシア=ドラクレア

 

彼女はサラを見下したまま無情な一撃を放った

 

「・・・っ!」

 

サラは死を覚悟して目を閉じるが、何も起こらない

 

恐る恐る目を開くと、十六夜がサラを庇い左肩を貫かれていた

 

「お、お前・・・」

 

「サラ!後陣を下げさせろ」

 

紫炎がそういって十六夜達の前に出る

 

レティシアの形をした何かが紫炎を見定め、龍の影を無数の槍に変幻させた

 

「十六夜!長くは持たなさそうだ。早く来い」

 

紫炎はそういって刀に炎を纏わせ、影をはじく

 

(これは本当にレティシアか?威力が桁違いすぎる)

 

「くっ・・・」

 

紫炎が少しづつ捌ききれなくなってくる

 

「紫炎!」

 

十六夜がグリーの手綱を掴みながら、三叉の槍で影を弾く

 

「どう思う?十六夜」

 

「ああ?あれの正体の事か?まずはゲームとは無関係の“何か”ってことは間違いないよな」

 

「それにあの威力、神格の可能性があるぜ」

 

「ああ、となるとだ」

 

紫炎と十六夜は互いに顔を見合わせる

 

「おい、サラ。お前は戻ってろ」

 

「なっ、それは出来ない。飛鳥からも・・・」

 

「足手纏いだ」

 

サラが紫炎に言い返そうとしたのを十六夜がバッサリと断ち切る

 

「しかし・・・」

 

「「「ウオオオオオオォォォォォ」」」

 

サラがさらに言い返そうとすると、下から巨人の叫び声が聞こえた

 

「巨人族!馬鹿なあの距離をどうやって・・・」

 

「さあな。だが、下は誰か指揮を執らなければまずいんじゃないか?」

 

それを聞き、サラは苦い表情をする

 

「・・・分かった。無茶はするなよ、二人とも」

 

「努力する」

 

「出来ればな」

 

それを聞き、サラは急降下する

 

二人はそれを見送りながら喋る

 

「さて、左腕は大丈夫か?」

 

「力は入らないが、手綱くらいは握れる」

 

「それじゃあ、行くか」

 

紫炎の言葉が合図のように影が二人に襲い掛かった

 

 


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