問題児たちが異世界から来るそうですよ?―振り回される問題児―   作:gjb

68 / 114
第五十九話

「「「ウオオオオオォォォォォ」」」

 

巨人が来襲する声がアンダーウッド全域に響き渡った

 

「お。巨人が来たのか。なら、こっちもさっさと終わらせなきゃな」

 

そういった紫龍から三つの黒い影が現れた

 

「・・・ククク。ようやく出したが、一匹足りないんじゃないか?」

 

ジョーカーが瓦礫の中から出てきながら言う

 

紫龍の方は頬などに少しだけ切り傷がある程度だ

 

「さて、八年前のけりつけさせてもらうぜ」

 

それを聞き、ジョーカーが笑い出した

 

「あの女の仇なら、あの小僧も殺すのか?殺したのはあいつの手だもんなぁ」

 

「黙れ!」

 

紫龍が叫んだ瞬間、一つの影がジョーカーに襲い掛かる

 

「GYAAAAAA」

 

「忘れたのか?俺の使役しているこの悪魔たちを」

 

「忘れるわけないさ。三年前、四体の悪魔とアンタの炎でうちのコミュニティを殆ど潰したもんな」

 

ケタケタとふざけるように笑うジョーカーを見て紫龍の怒りは頂点に達した

 

「ふざけんな!焼き殺せ、“憤怒のサタン”!」

 

「GYAAAAAAAAAAAA」

 

紫龍の言葉を合図に襲っていた悪魔が一度離れたと思うと、ジョーカーを覆うほどの炎を出しもう一度襲い掛かった

 

「はあ、はあ、はあ。戻れ」

 

紫龍がそういった瞬間、三体の悪魔は紫龍の体に戻って行った

 

「グッ・・・。カハッ」

 

その時、紫龍は吐血する

 

「もうか・・・。だが、ジョーカーも倒したんだ。これで・・・」

 

「何がだ」

 

いきなり聞こえた声に紫龍が反応して振り返ろうとすると、左腕を切り落とされた

 

そこから、何か黒い影が二つ出て行った

 

「く・・・。確かに手ごたえは・・・。グァァァアアア」

 

叫びと同時に紫龍が炎に包まれる

 

すると、少年の姿だった紫龍が元の姿に戻る

 

「ケケケケ。元に戻って力が弱くなったんじゃないか?」

 

そういったジョーカーは仮面が黒くなっていた

 

「確かに倒したはず・・・。グ、ガハッ」

 

「死にぞこないが。・・・まあ、確かにあいつは死んださ」

 

「あいつ?」

 

「ああ。だが、何もジョーカーは一枚じゃないんだぜ」

 

それを聞き、紫龍が何かに気づいたようだ

 

「・・・トランプ」

 

「ああ。あくまで呼び名だけど、な!」

 

「グアッ」

 

ジョーカーに蹴られ、壁まで吹っ飛ぶ紫龍

 

その後、ジョーカーは紫龍を無視し上空を見る

 

「あの小僧は上か」

 

「!・・・行か・・・せる・・か」

 

紫龍がよろよろと立ち上がり、ジョーカーに向かおうとする

 

「ケッ」

 

「グゥ・・・」

 

ジョーカーが指を軽く振ると、紫龍の右足が切り離された

 

「さっきの薬の副作用かどうか知らんが、ギフトを使えん奴に負けるわけないよ」

 

そういって紫龍を残し、ジョーカーは上空へと飛び立った

 

「紫・・・・炎・・・・・・」

 

――――――――――――――――――――

 

「「「ウオオオオオォォォォォ」」」

 

巨人は高原から一気に平野の先の丘に移動した

 

ただし、先日のように濃霧にまぎれて奇襲したわけではなく、突如として現れた

 

巨人が押し寄せたころ、碓氷はのーネームメンバーと一緒にいた

 

「やはり、このタイミングでしたか」

 

「呑気なこと言ってないで行くわよ」

 

巨人が大河を越え、堤防を壊そうとする

 

「遠いけど少しは持つかな?」

 

「え?」

 

碓氷の呟きに飛鳥が疑問で返す

 

すると、堤防の前に氷の壁が現れた

 

「前に川があって助かりました。この間にバロールの死眼対策を立てましょう」

 

「え、ええ。此処は『バロール退治』の伝承をなぞろうかな、って思います」

 

「ということは黒ウサギの出番だったりします?」

 

ケルト神話では必勝の加護を帯びた槍を撃ったことでバロールを倒したとある

 

『マハーバーラタの紙片』のインドラの槍も必勝の加護を帯びているのでそれに倣おうという事だ

 

「それなら巨人族の主な撃退はまかせましたよ、ペストさん」

 

「ふん」

 

ペストは碓氷が気に入らないのか少し機嫌が悪い

 

「あなた、何したの?」

 

「いえ、何も・・・」

 

その言葉にペストが反応した

 

「ええ、何にもしてないわよ。白夜叉や紫龍に着せ替えられてる時もね」

 

それを聞き、碓氷が目を逸らす

 

「まあ、それで彼を恨むのはお門違いよ」

 

「ええ、わかってるわよ。けど一言、言いたかっただけよ」

 

「・・・すいませんでした」

 

碓氷が罪悪感に負け、土下座をする

 

それを見て、機嫌を直したのか口角をあげてニヤリとするペスト

 

「もういいわ。巨人の方に行ってくる」

 

そういってペストは最前線へと向かって行った

 

「す、すいません」

 

「いえ。止めれなかった僕にも責任がありますので・・・」

 

ジンと碓氷の腰の低いもの同士が謝る

 

「それより巨人族の侵攻を食い止めましょう」

 

飛鳥がそういうと前線ではなく、地下都市の防衛線の方へと向かって行った

 

「それじゃあ僕も防衛線の方へ」

 

「前線じゃないんですか?」

 

「守りの方が性に合ってるんですよ。それに前線には・・・」

 

碓氷の言葉の途中、堤防の方で爆発音が聞こえた

 

「まさか巨人が・・・」

 

「いえ、多分クリスでしょう」

 

「クリスさんですか!?でも明らかに威力が違うと思いますが・・・」

 

「紫龍さんの下で修業したんですよ。そしたらああなったんですよ」

 

それを聞き、ジンと黒ウサギは唖然とする

 

「それでは僕は防衛線の方に向かいます」

 

そういって碓氷が飛び降りて地面に着くと、前線のほうで氷が突き出た

 

「碓氷さんも紫龍さんに修行をつけてもらったんですよね」

 

「多分そうですよね」

 

あまりの成長ぶりにジンと黒ウサギは顔を見合わせる

 

「「紫龍さんって何者!?」」

 

―――――――――――――――

 

紫龍の腕が切り落とされたころ上空では紫炎と十六夜がレティシアもどきと対峙していた

 

「この、野郎」

 

紫炎は弾ききれなかったのか影に切り裂かれた傷口がある

 

「大丈夫か、紫炎」

 

「ああ、何とか」

 

「一定距離離れると攻撃してこないが、それが逆に厄介だ」

 

「だな。・・・ん?」

 

紫炎が何か違和感を感じ、下を見ると黒い影が迫ってきた

 

「な、何だ?うわ!!」

 

影が紫炎にぶつかったかと思うと、紫炎を包んだ

 

「どうした、紫炎」

 

「いや、何か変なのがぶつかったような」

 

自分の体の状態を確かめ、異変が無いので気のせいだろうという結論に至った

 

「何にもないならもう一回いくぞ」

 

「ああ・・・」

 

紫炎が刀を構えて突っ込もうとすると、頭に何か声が響く

 

≪下だ≫

 

「え?うわ!」

 

頭に響いた声の通り、下を向くと黒い仮面のジョーカーが攻撃してきた

 

「ちっ、外したか」

 

「危な!」

 

避けた紫炎は炎で攻撃をするが、何かに切り裂かれたかのように炎が消える

 

「紫炎!」

 

グリーがそれを見て助けに来ようとする

 

「死にたがりが」

 

ジョーカーがグリーに向き直り、腕を振ろうとする

 

「やらせるかよ」

 

「ケ、お見通しだよ」

 

紫炎が切りかかろうとした瞬間、ジョーカーが顔だけ紫炎の方に向けると紫炎の皮膚が裂ける

 

グリーの方は何かに縛られてるように動けなくなっていた

 

「ふむ。弱いな」

 

「「誰がだ」」

 

十六夜が槍を振るうとグリーを縛っていた何かが切れ、紫炎も炎を纏い傷を焼いて塞ぐ

 

「なかなかやるようだな。さて、どっちから死にたい?」

 

「は!誰が・・・」

 

「下のおやじより楽しませてほしいものだ。私が行ったときには力を使い切っていたからね」

 

それを聞き、三人とも黙ってしまう

 

「来ないんだったら・・・こちらから」

 

ジョーカーがそういってグリーに襲い掛かろうとする

 

「・・・待てよ」

 

「うぐ!!なに!?」

 

すると紫炎の手から鎖が現れ、ジョーカーを拘束する

 

「・・・これ以上、好きにはさせねえ」

 

そういって鎖を引き寄せ、そのまま殴る

 

少し距離が開いた瞬間、殴った箇所から炎が噴き出る

 

「十六夜。すぐ戻るから、さっさとあのレティシアもどきを倒しとけよ」

 

紫炎はそう言うとさらに追撃を加える為、ジョーカーの飛んだ方へ向かった

 

「ケケケケ。死ね」

 

ジョーカーが追ってきた紫炎に向かって腕を向ける

 

≪掴め≫

 

また頭に響いた声の通りに動く紫炎

 

すると、ジョーカーに繋がってる糸のようなものを掴む

 

「掴まえたぜ」

 

紫炎がそれに火を点け、そのまま燃やす

 

しかし、全然効いていないのかそのまま喋り続けるジョーカー

 

「ケケケケ。効かねえよ。けど、どこかで見た気が・・・」

 

≪待たずに攻撃しろ≫

 

「グッ・・・」

 

また頭に響く声が聞こえ、頭を抑える紫炎

 

(なんだ、お前は?)

 

≪俺は元からお前の中にいるぜ。ただ、喋れるきっかけができたから喋ってるだけだ≫

 

(きっかけ?)

 

「油断大敵だ」

 

「ゴハッ・・・」

 

頭の中での会話に夢中になっていてジョーカーの接近に気づかず、攻撃をモロに食らってしまう

 

「死んだか?なら、上の奴を殺しに行くか」

 

「待てよ」

 

土煙の中から鎖が出て来てジョーカーの動きを止める

 

「またか?こんなもの・・・」

 

「待て、つってんだろうが!!」

 

紫炎が土煙から飛び出し、ジョーカーを殴り飛ばす

 

「その眼・・・。そうか、八年前のあの小僧か。それならあのおやじもお前の手で殺してやればよかったよ」

 

「あ?どういうことだ!?」

 

「言葉通りだ。八年前、あの時・・・」

 

ジョーカーが言葉を発しようとした瞬間、平野の方で強烈な光が発せられた

 

「な、なんだ!?」

 

「時間切れか。これで終わらせてやるよ」

 

そういったジョーカーから黒い影が出てきた

 

「何か知らんがそんなので・・・」

 

「GRAAAAAAAA」

 

紫炎の言葉の途中、黒い影から雷が放たれ紫炎を襲う

 

「な・・ん・・・だ。そ・・・・れ」

 

「簡単に言えば悪魔の思念体を自分の能力で具現化したものだ。唯の悪魔じゃないがな」

 

「ぐああああああ」

 

一旦やんだ雷が更に紫炎を襲う

 

≪見てられん。“色欲”如きに負けてもらわれても困る≫

 

紫炎の頭に声が響いたと思うと紫炎を包んでいた雷が消えた

 

「はあ、はあ、はあ。助かったとは思わないぜ」

 

「何を・・・」

 

いきなり独り言を言い出した紫炎に疑問を投げかけようとしたジョーカーだったが紫炎の左目が白くなり、その目のに紋章がうつり言葉を失う

 

≪あんな奴に負けるわけにはいかないからな。今回は特別だ、力を貸してやる≫

 

(上から目線なのが気になるが、ありがたく使わせてもらうぜ)

 

「・・・・ケケ。いくらスペックが高かろうが使い方次第なんだよ」

 

そういったジョーカーの右手に紋章が浮き出て、光だす

 

すると、黒い影がジョーカーを包みだす

 

「ケケケケ。“色欲のアスモデウス”は電気を操る。細胞を電気で刺激してやれば・・・」

 

包んでいた影が出てきた人物の中に消えていく

 

「こうなるわけだ」

 

ジョーカーは先ほどまでの姿ではなく、ピンクのふんわりとした髪の女性になった

 

「母・・さん・・・」

 

「ケケケケ。八年ぶりの再会だろう?また、こいつを殺したいなら俺に攻撃して来てみな。出来れば・・・」

 

喋っていたジョーカーだったが、いきなり腕が肩から焦げ落ちた

 

「母さんは死んだんだ。テメーを攻撃すること=母さんを攻撃することにはならねえ」

 

「・・・・この、ガキが!」

 

ジョーカーの肩から赤い腕が生える

 

「テメーのギフトは血ってところか」

 

「黙れ、クソガキ。八年前の事実を知りたくはないか?知りたければ・・・」

 

「そんな手には乗らねえよ」

 

紫炎が周りに炎を撒く

 

「血の糸で動きを止めようとしても無駄だぜ」

 

「うるせえぞ、クソガキ!!八年前と同じようにテメーは俺に使われとけばいいんだよ!!」

 

ジョーカーが血の糸と雷で紫炎に攻撃を仕掛ける

 

「無駄だ」

 

撒いた炎が自動で雷と血の糸を燃やし尽くす

 

「俺の前にその姿で戦いを挑んだことを懺悔しな」

 

紫炎がそう言うと周りに七つの黒い炎が現れる

 

「・・・“傲慢のルシファー”。段違いだぜ」

 

「死・・・」

 

「GYEEEAAAAAAAaaaaa」

 

攻撃しようとした紫炎だったが、いきなりの雄叫びに隙が出来てしまった

 

「ケケ」

 

「グッ・・・」

 

一瞬のすきを突かれ、モロに雷を受けてしまう

 

「くそ・・・。どこだ、どこに居やがる」

 

紫炎が目を開けると、ジョーカーの姿がなくなっていた

 

≪逃がしたみたいだな。それじゃあ俺は戻るぜ≫

 

頭の声が聞こえ終わった瞬間、左目が元の赤い瞳に戻り今までの痛みが返ってきた

 

「ぐぅぅぅ・・・。何が起こってやがるんだ?なんでゲームが再開を・・・。まさか上で何かあったのか!?」

 

そこまで思案すると紫炎は傷ついた体に鞭打って上空の古城へと急いだ


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。