問題児たちが異世界から来るそうですよ?―振り回される問題児―   作:gjb

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第六十五話

紫炎と耀は朝食を食べ終わった後、レティシアの部屋に行った

 

着いた瞬間、紫炎は十六夜から「遅い」と言われ、殴られて気を失い、耀に膝枕されている状態である

 

「紫炎もレティシアも寝顔可愛いな」

 

耀が紫炎の頬をつつきながら呟く

 

お昼ごろまで紫炎の頬をつついていると、レティシアが起きた

 

「ここは・・・」

 

「あ、気が付いた?二日も寝てたんだよ」

 

レティシアは耀の声が聞こえると、そちらに視線を向ける

 

そして紫炎と耀の今の状態を見て優しく微笑む

 

「ようやく恋人同士になれたのか?」

 

「うん」

 

耀が心底、嬉しそうに言うとレティシアが少し気になったことを聞いた

 

「ところでずっと、二人で待ってくれてたのか?」

 

「ううん。交代で付き添ってたの。起きた時にだれかいなかったらさびしいでしょ?」

 

「交代?」

 

レティシアが疑問に思ってると、扉が勢いよく開いた

 

「赤羽さん、耀さん。交代に・・・ってレティシア様!!いつ起きられたんですか?」

 

「黒ウサギか。先ほど起きたところだ」

 

「良かったのです。それでは皆さんにお伝えしてきます」

 

そういって黒ウサギは部屋を飛び出して行った

 

「ったく、落ち着きがない奴め」

 

「あれ、紫炎?いつ起きてたの?」

 

「黒ウサギが騒々しく入って来た時だ」

 

紫炎は不機嫌そうに言いながらのそりと起き上る

 

「しかし、わが主達には驚かされる。まさか巨龍を倒すとは。おかげでこうして生きていられる」

 

「おう、当たり前だ。お前にはこれから俺達のメイドとして働いてもらうんだからな」

 

「うん」

 

紫炎が笑いながら言うと、耀も微笑みながら同意する

 

「そういや、収穫祭はもう一度やり直すことになったそうだぞ」

 

「地下都市はボロボロになっちゃったけど、大樹を使ったギフトゲームをするみたい」

 

「ふふ、それは楽しみだな」

 

耀と紫炎の言葉にレティシアが笑いながら答える

 

「ヒッポカンプの騎手とかのエントリーもあるしちょっと席を外させてもらうぞ」

 

「後で皆と一緒に来るね」

 

紫炎と耀は微笑みながら二人で部屋を後にした

 

二人が出て行った扉を見ながら、レティシアは涙を流しながら呟いた

 

「私の太陽は空にあるものだけじゃなかったんだな」

 

――――――――――――――――

 

紫炎と耀がレティシアの部屋から出た頃、飛鳥は昼食を食べようと食堂の席についた

 

「あ、良かった。お久しぶりです、飛鳥さん」

 

すると、扉が開いて碓氷が入ってきた

 

「え、碓氷君!?どうして・・・」

 

「この前の魔王討伐の功績の授与を行うのでノーネームの皆さんに聞いて回ってるのです」

 

「あ、そうなの・・・」

 

飛鳥は『皆さん』という言葉を聞いて少し表情を暗くする

 

「それで飛鳥さんは何か欲しいものはありますか?」

 

「うーん。特にはないわね」

 

「そうですか。・・・ところでもう昼食は食べましたか?」

 

「え?ま、まだだけど・・・」

 

いきなりの話題転換に頭がついていかない飛鳥

 

「それじゃあ少し待っててくださいね」

 

碓氷がそういってキッチンの方に消えた

 

少し経つと、碓氷が皿を二つ持って戻ってきた

 

「お口に合うかどうかわかりませんが、どうぞ」

 

「えっと、それじゃあいただきます」

 

そういって飛鳥は料理を口に運ぶ

 

「・・・おいしい」

 

「それは良かったです」

 

碓氷が飛鳥に微笑みながら返すと、飛鳥は顔を真っ赤にする

 

「どうしたんですか?」

 

「な、なんでもないわよ」

 

「?そうですか。それならいいんですが・・・。何か心配なことがあったら言ってくださいね。貴方の力になりたいんですよ」

 

碓氷がそう言った瞬間、飛鳥は頭から湯気が出そうなほど顔を真っ赤にする

 

「本当に大丈夫ですか?風邪でもひいているんじゃあ・・・」

 

碓氷はそう言って、飛鳥の額に手を当てる

 

「な、な、な・・・・・・」

 

「うーん、熱は無いようですね。気を付けてくださいよ」

 

「・・・」

 

碓氷の言葉に飛鳥は無言で頷く

 

すると、碓氷が席を立った

 

「それでは僕は紫炎達にも聞きに行くので・・・」

 

「その必要はないぞ」

 

碓氷が最後まで言い切る前に扉から声が聞こえてきた

 

「よっ、碓氷」

 

そこには耀と手を繋いで立っている紫炎がいた

 

「・・・ねえ、紫炎君、春日部さん」

 

「なんだ?」

 

「何?飛鳥」

 

「いつからいたの?」

 

少し怒りが籠って二人に聞く飛鳥

 

「ついさっきだよな、耀」

 

「そうだよね、紫炎」

 

明らかな棒読みで顔を見合わせる二人を見て更に飛鳥は怒る

 

「本当はどこから聞いてたのよ」

 

「まあまあ、いいじゃないですか、飛鳥さん。どこから聞いていようと関係ないじゃないじゃないですか」

 

碓氷が無責任にそう言うと、紫炎は口を開いた

 

「そうそう、どこから聞いててもいいじゃないか。しかし碓氷も料理作れたんだな」

 

「全然ついさっきじゃないじゃない」

 

「まあまあ、飛鳥」

 

紫炎の言葉に怒りが頂点に達した飛鳥を耀が宥めていると、碓氷が飛鳥の前に立ち、口を開いた

 

「落ち着いてください、飛鳥さん。そんなに怒ると綺麗な顔が台無しですよ」

 

碓氷が真顔で言うと、飛鳥は顔を真っ赤にして走り去っていった

 

「ストレートに言うなぁ」

 

「何か意外」

 

二人がそう言うと、碓氷は何の事かさっぱりわかってない様子だった

 

「何の事を言ってるかわかりませんが、一つお聞きしたいことが・・・」

 

「功績の授与の事ならここに来る前にもう答えたぞ」

 

「うん。今は特に欲しいものはないって」

 

「そうなんですか。それの他にもう一つ頼みたいことがあるのですが・・・」

 

碓氷はそう言って手紙を出した

 

「これは?」

 

「白夜叉様からレティシアさんに起きたら渡してくれと頼まれてるものです」

 

「あっ!飛鳥にレティシアが起きたって言うの忘れてた」

 

碓氷の言葉に耀が思い出したように言うと、紫炎がニヤリと笑いながら碓氷に話しかけた

 

「碓氷、悪いが飛鳥にレティシアが起きたって伝えに行ってくれ」

 

「分かりました」

 

碓氷はそういってお辞儀をして飛鳥を追いかけて行った

 

「それじゃあ耀。何が食べたい?」

 

「紫炎の作ってくれるものなら何でもいい。おいしいから」

 

「OK。期待に応えれるようなもの作るよ」

 

紫炎はそういって調理を始めた

 

――――――――――――――――――

 

飛鳥は食堂を出た後、ペストと力試しをした場所まで来ていた

 

(なんで彼はあんな事を恥ずかしがらずに言えるのかしら)

 

先ほどの事を思い出し、飛鳥はさらに顔を真っ赤にする

 

「あすかー?」

 

「大丈夫よ、メルン」

 

顔を真っ赤にした飛鳥が心配でメルンが顔をのぞかせた

 

「飛鳥さーん。どこにいますかー?」

 

「えっ、碓氷君!?」

 

碓氷の声が聞こえると、飛鳥は反射的に物陰に隠れてしまう

 

「あれ?声が聞こえた気がするんだけどな?」

 

碓氷が周りを見回しながら入るが飛鳥は隠れている為見つからない

 

「あすかー?」

 

「あっ、こら!」

 

「ん?そこに誰かいるんですか?」

 

メルンが飛鳥が何故隠れたか分からず、声をあげると碓氷が飛鳥の隠れている場所に近づいた

 

「だれ?」

 

すると、飛鳥を見つける前にめるんが飛び出した

 

「僕は青川碓氷ですよ、精霊さん」

 

「めるん!」

 

「?・・・ああ、名前ですか。よろしくね、メルン」

 

「よろしく!」

 

一瞬何のことか分からなかった碓氷だがすぐに気が付いた

 

「しかし、群体精霊が一人でいるなんて珍しいですね」

 

碓氷はそう言いながらメルンを肩に乗せる

 

「うすい!」

 

メルンは肩に乗ると碓氷の頬を引っ張り楽しんでる

 

「痛たた。それにしても飛鳥さんはどこに居るんでしょうか?」

 

「あすか!」

 

メルンは飛鳥の名前を聞いた瞬間、碓氷の肩を飛び降りて飛鳥のところに戻った

 

「メルン。どうしたんですか?」

 

「うすい!あすか!あすか!」

 

メルンがそういって碓氷に飛鳥の場所を教える

 

すると、飛鳥は物陰から出てきた

 

「う、碓氷君。どうしたの?」

 

「飛鳥さん。こんなとこにいたんですね。紫炎から聞いたんですが、レティシアさんが目を覚ましたらしいですよ」

 

「そうなの?わざわざ伝えに来てくれてありがとう」

 

飛鳥が礼を言ってその場を後にしようとしたが、メルンが碓氷の肩に乗る

 

「うすいも!」

 

「こら、メルン!ごめんなさいね、碓氷君。忙しいんでしょ?」

 

「いえ、まだ余裕がありますから大丈夫ですよ。一緒に行きましょうか?」

 

碓氷はそういって、飛鳥に手を差し伸べる

 

飛鳥もそれを見てその手を取った

 

「本当にごめんなさいね碓氷君」

 

「いえいえ、好きでやってることですから」

 

「すき?」

 

「ええ、そうですよ、メルン」

 

メルンの言葉に碓氷が微笑みながら返すと、その笑顔を見て飛鳥は顔を赤くする

 

「うすい、あすか、すき?」

 

「「えっ!?」」

 

碓氷の言葉をどう理解したのか、メルンがとんでもないことを言う

 

すると、二人は顔を真っ赤にする

 

「ご、ごめんなさいね。メルンが変なこと言っちゃって・・・」

 

「い、いえ・・・」

 

二人の間に微妙な空気が流れ、黙ってしまう

 

「あすか?うすい?」

 

メルンは二人が何故黙ってしまったのか分からないようだ

 

少しすると、碓氷が口を開いた

 

「・・・行きましょうか」

 

「・・・ええそうね」

 

「いこー!」

 

メルンは嬉しそうに声を出して、二人は歩き出した


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