問題児たちが異世界から来るそうですよ?―振り回される問題児―   作:gjb

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第六十六話

碓氷が食堂を出た後、紫炎と耀は二人で食事をしていた

 

「ねえ、紫炎」

 

「どうした、耀?」

 

「碓氷って人、飛鳥を見つけられるかな?」

 

「多分、大丈夫だろ」

 

紫炎が昼食を食べながら答えるのを聞き、耀は少し疑問に思う

 

「何でそう思うの?」

 

「勘」

 

紫炎が即答すると、耀は深くため息をつく

 

「何だよ、そのため息。俺の勘って結構当たるんだぜ」

 

「でも、勘じゃん」

 

耀の返しに、紫炎は一瞬詰まるが言い返した

 

「なら、碓氷が飛鳥と会えたかどうかギフトゲームで勝負しようじゃないか」

 

「・・・わかった」

 

紫炎の提案に耀は少し悩んだ後、それを飲んだ

 

「それじゃあ、景品はどうする?」

 

「負けた方が勝った方の言う事を聞く、ってどう?」

 

「・・・OK。後悔するなよ」

 

「それはこっちのセリフ」

 

二人はそういって契約書類にサインをした

 

 

 

『ギフトゲーム名“運命の選択”

 

  ・ルール説明

     ・青川碓氷が久遠飛鳥を見つけられるかどうか

 

  ・勝敗条件

     ・見つけた場合、赤羽紫炎の勝利

     ・見つけなかった場合、春日部耀の勝利

 

  ・勝者は敗者に一度だけ命令を従わせれる

 

 宣誓 上記のルールに則って“春日部耀”“赤羽紫炎”の両名はギフトゲームを行います』

 

 

「それじゃあ、早速確認しに行くか」

 

紫炎のその言葉に耀が首を傾げる

 

「確認って、どうやって?」

 

「それは耀のギフトで見つけてもらうんだよ」

 

耀はそれを聞き、二度目のため息をついた

 

「まあ、いいけど・・・」

 

そういって二人は碓氷と、飛鳥を探し始めた

 

―――――――――――――――

 

「うすい?あすか?」

 

飛鳥と碓氷が歩き出してから全然喋ってないのを不思議に思ったメルンが声を出した

 

それでも一向に喋ろうとしない二人を見て、メルンは碓氷の肩に乗って頬をつねる

 

「あ!こら、メルン!!」

 

「だ、大丈夫です。メルンも寂しかったんですよ」

 

碓氷はそういってメルンを優しく撫でてやると、メルンは嬉しそうにはしゃぐ

 

「うすい!あすかも!」

 

「「え!?」」

 

メルンは余程嬉しかったのか、自分の主人でもある飛鳥にもやってほしいといった

 

「えっと・・・。いいですか、飛鳥さん?」

 

碓氷がそう問いかけると、飛鳥は顔を真っ赤にして首を縦に振る

 

「じゃ、じゃあ・・・」

 

そういって碓氷が飛鳥の頭を撫でる

 

「大分進展してるな」

 

「飛鳥、おめでとう」

 

「え!?・・・紫炎君、春日部さん?」

 

「二人とも。・・・見てましたか?」

 

いきなり現れた紫炎と耀に飛鳥は驚きのあまり言葉が続かず、碓氷は気になったことを聞く

 

「そんなことより飛鳥を見つけれたみたいだな」

 

紫炎はそういって一枚の紙を見せた

 

「何だ、それ?」

 

「さあな。それじゃあ俺らは先に行ってるから、お前らもゆっくりでいいからレティシアのところに来いよ」

 

紫炎はそういうと、耀を抱き寄せ、姿を消した

 

「消えた?」

 

「みたい、ね」

 

急に静かになり、二人は顔を見合わせる

 

「遅れると何言われるかわかりませんし・・・」

 

「紫炎君もああいってたんだし、ゆっくり行きましょう」

 

飛鳥がそういって碓氷の手を握る

 

「ですが・・・」

 

「どうせすぐに帰っちゃうんだし、今ぐらいゆっくりしても大丈夫だと思うけど・・・」

 

「・・・わかりました。一緒にゆっくり行きましょうか」

 

碓氷はそういって飛鳥の手を握り返す

 

「行きましょうか」

 

「そうですね」

 

二人は微笑みあいながら歩き出した

 

――――――――――――――――――――――

 

紫炎と耀は飛鳥達の前から消えて、人気の無い場所にいた

 

「言っただろ。俺の勘は当たるって」

 

紫炎は笑いながら先ほどの紙を見せる

 

 

『勝者 赤羽紫炎

    

    以降はこれを命令を行使するときに使用できます』

 

「しかし、何でまたこんな賞品を提案したんだ?」

 

「そ、それは・・・」

 

紫炎が耀に問いかけると、耀は目を逸らす

 

「俺に何を命令しようとしたんだ?」

 

「べ、別にいいじゃん。命令権は紫炎のものなんだし」

 

「言いたくないと・・・」

 

紫炎がそうつぶやくと、耀は顔を真っ赤にしながら頷く

 

「それより、紫炎の命令って?」

 

「さっき決めたとこだ」

 

紫炎がニヤリと笑いながら言うと、耀は不安になる

 

「そ、それで命令は・・・」

 

「そうかしこまるな。命令は『お前が何を命令しようとしたか、それを俺に教えろ』」

 

紫炎がそう言った瞬間、先ほどの紙が消える

 

すると、耀が先ほどより顔を真っ赤にする

 

そして、勝手に口を開こうとするのを手で押さえようとするが、それでも言葉を紡いでしまう

 

「ま、まだしてない恋人らしいことを・・し、してって。そ、その・・・・キス・・とか」

 

耀が言い終わると、恥ずかしさのあまり、手で顔を隠す

 

紫炎はそれを気にせずに耀を抱き寄せる

 

「あー。なんていうか、悪かった。こういうのは普通俺から言うべきなのにな」

 

「本当にそうだよ。紫炎のへたれ」

 

耀は紫炎の胸に顔をうずめながら返す

 

「耀」

 

紫炎がそういうと、耀のおでこにキスをする

 

「ふえ?」

 

耀は一瞬何をされたかわからずにおでこを触る

 

そして理解した瞬間、耳まで赤くなる

 

「もうちょいしたらレティシアの部屋に行くからな」

 

紫炎は口調こそは普段と変わりがないが、こちらも耳まで真っ赤である

 

「・・・うん」

 

「へー、大分進展してるな」

 

「「!?」」

 

紫炎と耀が声をした方を見ると十六夜が立っていた

 

「どうした?もう終わったと思って出てきたんだが、まだ続くのか?」

 

「続くか!!」

 

十六夜がにやけながら言うのを見て、紫炎は叫ぶ

 

しかし、耀は混乱して紫炎の言葉が耳に入っていないのか見当違いの言葉を放つ

 

「そ、その・・・紫炎がどうしてもっていうなら・・・」

 

「お、落ち着いてくれ、耀。服に手をかけるな!」

 

耀は余程混乱してるのか、紫炎の言葉が聞かずにいつもの上の服を脱いで、更に下の服にまで手をかける

 

「お邪魔になりそうだから俺は先に行ってるぜ」

 

「ちょっと待て!責任もって止めるのを手伝えや!!」

 

もちろん十六夜は紫炎の言葉を無視してその場からいなくなった

 

「紫炎、後もう少しだから・・・」

 

「耀、すまん!」

 

「へ!?」

 

紫炎がそう言うと、耀の顎を軽く持ち、顔を近づけていき・・・

 

「ふん!」

 

頭突きを食らわせる

 

「は!私、なにを・・・」

 

「おおー。正気に戻ったか。いてて」

 

耀は正気に戻る

 

しかし、頭突きをされた耀は大丈夫そうなのだが、した方の紫炎は頭を抑えている

 

「大丈夫?紫炎」

 

耀は脱いだ上の服をはおると、紫炎に近づいて心配の言葉をかける

 

「ああ、大丈夫だ。それじゃあ行くか?」

 

「うん」

 

耀が頷くと心底嬉しそうにくっつく

 

次の瞬間、二人の姿が消えた

 

―――――――――――――――

 

紫炎と耀が次に現れた場所はレティシアの部屋の前だった

 

「あれ?皆まだなのかな?」

 

「みたいだな。・・・っと、言ってたら来たみたいだぜ」

 

紫炎がそういって指さした方向には手を繋いで楽しそうに話しながら来ている飛鳥と碓氷がいた

 

「あ、紫炎君に春日部さん。もう来てたのね」

 

「みたいですね。それでは僕はこれで。また会いましょうね、飛鳥さん」

 

紫炎達を見つけた飛鳥と碓氷は二人に聞こえないくらいの場所で会話をした

 

碓氷が言い終わると、お辞儀をして去っていった

 

「碓氷の奴、もう帰ったのか?」

 

「ええ、東での仕事がまだ少しだけあるんですって。それが終わったら復興の手伝いの為にもう一度来るらしいわ」

 

飛鳥が嬉しそうにしゃべってると耀が口を開いた

 

「余程碓氷を気に入ったんだね、飛鳥」

 

「そ、そんなことないわよ!何を言ってるのかしら、春日部さんは・・・」

 

飛鳥が真っ赤な顔で否定するが全然説得力がない

 

「素直じゃない」

 

「でも割と反応は分かりやすい」

 

「何がよ!」

 

飛鳥が真っ赤に叫んでいると、レティシアの部屋の扉が開いた

 

「あの、耀さん、飛鳥さん、赤羽さん。言い争ってるなら中に入りませんか?」

 

「そうですよ」

 

すると、中から黒ウサギとサウザンドアイズの女性店員が出てきた

 

「何でアンタがここにいるんだ?」

 

「失礼な物言いですね。ちゃんと理由があって来てますよ。それに今日の境界門の起動はもう終わってるので帰ろうにも帰れないんですよ」

 

それを聞いた瞬間、三人は顔を見合わせ、すぐに女性店員の方に向きなおった

 

「碓氷の奴、それ知ってるのか?」

 

「多分・・・知ってると思いますが」

 

「けど、さっき今から帰るって碓氷君が言ってたけど・・・」

 

女性店員はそれを聞いて大きなため息をつく

 

「なら今すぐ呼びもどさなきゃいかんな」

 

紫炎がニヤリとしながら言ったのを耀が気づいて続ける

 

「そうだね。飛鳥、頑張って」

 

言われた瞬間、飛鳥は顔を赤くしたがすぐに元の表情になる

 

「しょ、しょうがないわね。碓氷君は私が呼び戻してくるわ」

 

そういって飛鳥が扉を開けると、碓氷を担いでいる十六夜が立っていた

 

「おお、サンキューなお嬢様」

 

十六夜はそういって飛鳥に碓氷を投げ渡す

 

「え?きゃあ」

 

飛鳥は支えきれずに倒れてしまう

 

「ふふ、やはり賑やかになってきたな」

 

「ええ、そうですね」

 

ジンとレティシアは言い争ってる問題児を笑いながら見守っていた


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