問題児たちが異世界から来るそうですよ?―振り回される問題児―   作:gjb

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第六十八話

紫炎は風呂から上がると、文句をいまだに言っていた碓氷を気絶させて担ぎ、耀と飛鳥のいる部屋に向かった

 

「おーい。紫炎だけど開けてもいいか?」

 

「ええ、大丈夫よ」

 

飛鳥が返事をしたの聞き、紫炎はドアを開ける

 

「いらっしゃい、紫炎」

 

「それより碓氷君はまだ起きてないの?」

 

「・・・ああ」

 

本当の事は言わない方がいいと思った紫炎は咄嗟に嘘をつく

 

「じゃあ行こっか、紫炎」

 

「だな」

 

耀の言葉に紫炎が頷くと、空いてるベッドに碓氷を投げ捨て二人で外に出ようとドアに手をかける

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい、紫炎君。その前になんで碓氷君が気絶したか教えなさい」

 

「碓氷が起きた時に聞いてくれ。どうせ明日の朝まで一緒の部屋なんだから」

 

紫炎がさらっと言うと、飛鳥の顔がだんだん赤くなる

 

「え?部屋割りは私と春日部さんが一緒なんじゃ・・・」

 

「耀と喋って待ってるようには言ったが、部屋割りまでは一緒とは言ってないぜ?」

 

「そうだよ。私たちも飛鳥と十六夜の好意を受け取ったんだから、飛鳥も私と紫炎の好意を受け取ってね」

 

耀はそう言いながら紫炎の腕に抱き着く

 

「そう言うことだ。文句なら碓氷が起きた後、十六夜にでも言ってくれ」

 

紫炎がそういうと、二人は飛鳥の目の前から一瞬で消えた

 

「そうよね、気絶してる間くらいは寝かせてあげててもいいわよね」

 

飛鳥はそういって碓氷が気絶しているベッドの横に移動する

 

「うすい~」

 

すると、メルンが飛鳥から離れて碓氷の布団に入る

 

「ふふっ。一日で随分懐いたわね。紫炎君には一週間くらいかかったのに」

 

飛鳥はメルンを撫でながら、碓氷のそばで目を覚ますのを待つのであった

 

―――――――――――――――――――

 

耀と紫炎はとりあえず自分の部屋に戻った後、耀が十六夜にヘッドホンの事を謝りたいと言い出したので十六夜とジンの部屋の前に移動していた

 

「や、やっぱり明日にしよう、紫炎」

 

「今から行こうって言い出したのは耀の方だろ。大丈夫、あいつならすぐに許してくれるさ」

 

「そ、そうだけど・・・。でもあんなに大事にしてたものを壊しちゃったんだから少しは怒ってるかも」

 

紫炎は耀のその言葉を聞くと、軽くため息をつく

 

「あのな、その理由だと今日じゃなくても謝れないだろ。だったら謝ろうと思った日に謝るべきだと思うぜ」

 

「・・・うん。そうだね」

 

「全部聞こえてるぞ」

 

耀が決意を固めた瞬間、扉が勢いよく開き、十六夜が立っていた

 

「い、十六夜・・・」

 

「それなら話が早い。ほら、耀」

 

紫炎はそういって耀の背中を押す

 

「そ、そのごめんなさい」

 

「別にいいってことよ。どうせ知り合いの素人が作ったスクラップだからな」

 

十六夜が笑いながら気にしてないように言うが、紫炎と耀はある一言が気になった

 

「し、知り合いが作ったものなんだ」

 

「そうだが、さっきも言った通りスクラップだから髪留めがわりに使ってただけだ。気に病む必要はねーよ」

 

十六夜はいつもの口調で言ってくれているが、耀は少しだけ暗い表情になる

 

「耀、俺はまだ十六夜とかと話すことがあるから先に部屋に戻っておいてくれ」

 

「・・・うん。ありがとう、紫炎」

 

そういって耀は一人で部屋に戻って行った

 

「それで?春日部をわざわざ帰して俺に話ってのはなんだ?」

 

「耀を帰したのは特に意味はないよ。話ってのは同盟相手をどうするかってことだ」

 

「それならもう考えてあります」

 

紫炎の言葉に部屋にいたジンがはっきりと答える

 

「へえー、自信ありって顔だな。それじゃあ頑張ってくれよな」

 

そう言った瞬間、紫炎が十六夜とジンの視界から消えた

 

「き、消えた?」

 

「ふーん。面白そうなギフトを手に入れたみたいだな、紫炎の奴」

 

消えた紫炎に付いて二人は各々感想を述べた

 

―――――――――――――――――――

 

レティシアは黒ウサギが寝てるのを確認した後、碓氷が持ってきた手紙を持って一人で食堂まで来ていた

 

「ふん。何が白夜叉からの手紙だ。あの男め」

 

口調こそ怒ってるものの、レティシアは少し嬉しそうである

 

「嬉しそうですね、レティシアさん」

 

「!?・・・貴女でしたか」

 

レティシアが後ろを振り向くと、サウザンドアイズの女性店員が立っていた

 

「起きたばかりですし、今日はもう寝たらどうですか?」

 

「そ、その前にこの手紙の内容、本当か?」

 

レティシアがそういって先ほどまで読んでいた手紙を女性店員に見せる

 

「ええ、本当ですよ」

 

「そ、そうか。そうと決まれば早めに休もう」

 

女性店員の言葉を聞き、レティシアはとても嬉しそうに自室に戻って行った

 

「本当に嬉しそうですね。あんな人のどこが良いのか」

 

女性店員はため息をつきながら自室に戻るのであった

 

―――――――――――――――

 

(僕は此処にきて何回気絶するんでしょうか)

 

碓氷は目を覚ますと見慣れない天井を見ながらため息をついた

 

「ん?」

 

身体を起こそうとした碓氷だったが何か和漢を感じ周りを確認してみると、メルンが自分の布団に入っていたり、飛鳥がそばで寝息を立てていた

 

「うすい?」

 

「すいません、メルン。起こしちゃいましたか?まだ寝てても大丈夫ですよ」

 

「わかったー」

 

メルンはそういって目をこすりながらもう一度寝始めた

 

「さて、飛鳥さんをこのままにしておくと風邪をひいてしまいますから・・・」

 

碓氷はそう言うと、ベッドから降り、飛鳥をお嬢様抱っこしてもう一つのベッドに寝かした

 

「さすがに同じ部屋で寝るわけには行きませんよね」

 

碓氷がそういって扉に手をかけ外に出ようとする

 

しかし、何故か扉がびくとも動かず、ドンドンと叩く

 

「うすい?」

 

「あ、すいません、メルン。うるさかったですか」

 

「だいじょうぶ」

 

目をこすりながら眠そうにメルンが答える

 

「どうしたの?」

 

「いえ、外に出ようと思ったんですが、扉が・・・」

 

「どうして?」

 

「どうしてって言われても・・・」

 

メルンが興味津津に聞いて来て、どう答えるべきか悩む碓氷

 

すると、メルンが碓氷に飛びつく

 

「ねよー」

 

「え?それはちょっと・・・」

 

「なんで?」

 

「なんでってそれは・・・。はあ、わかりました。この部屋で寝ますよ」

 

メルンは子供と同じだから何を言っても無駄だろうと悟った碓氷は観念して飛鳥と同じ部屋で寝る決心をするのであった

 

――――――――――――――――

 

東にいる白夜叉と紫龍は白夜叉の私室で飯を食べながら話していた

 

「しかし、おんしがあのコミュニティと関わりがあったとはな」

 

「関わりがあるってほどじゃない。ただ、ボスと他数人が友達ってだけだ」

 

「それは逆に凄いな。コミュニティ同士の利害を関係なしで知り合えたという事だろ?」

 

白夜叉が店で買ったラーメンを食べながら喋る

 

「しかし、なんでまたあのコミュニティと関わりがあるかどうか聞いてきたんだ?」

 

「ちょっとな。しかし、おんしが今食べているそれ、美味いのか?」

 

「案外いけるぞ。食うか?」

 

そう言って紫龍が差し出したのはドッグフードだった

 

「わしはいい。まだ尊厳を保っていたいからな」

 

「まあ、俺もそう思ってたんだが・・・。この姿だとこれが普通だろ?」

 

「まあ、確かにそうだが・・・。一応、おんしは人間だという事を忘れてないか?」

 

白夜叉がため息をつきながら紫龍に言う

 

「大丈夫大丈夫。まだぎりぎり覚えてるぞ」

 

「龍・・・。おんし、さっさと人間に戻った方がよいぞ」

 

さすがに白夜叉も呆れたようだ

 

「戻れたら戻りたいよ。元に戻ろうと思うなら二週間ってところか」

 

「そうなのか。・・・ふむ、ならあそこに行くのはそれくらいでもよいか」

 

紫龍は白夜叉の最後の言葉は聞こえなかったが、何か嫌な予感だけは感じ取った

 

―――――――――――――――――――

 

箱庭のとある場所、そこにはアンダーウッドを襲った面々が集まっていた

 

「失敗するにしてもここまでこっちの状況が悪くなるとはな」

 

「ええ。グー爺は負傷、魔眼も割れて手駒の魔王も奪い返されちゃうし」

 

「ああ。だが悪いことばかりじゃない。だろ?リン」

 

白髪の子供がニヤリと笑いながらリンに話しかける

 

「そうですね。紫龍さんには断られましたけど、その代わりにいいものを貰っちゃいましたしね。そういう殿下も何かあるんでしょ?」

 

「お!良く分かったな。一人になった時に面白そうな奴がいたから仲間にした」

 

殿下と呼ばれた少年がそう言うと、奥の方からフードを深く被った人間が現れた

 

「へー。でも、どれくらいの強さなんですか?」

 

「そうだぜ、殿下。ボンクラ連れて来ても上への点数にはならないぜ?」

 

ジョーカーがそういってフードの人間に突っかかる

 

「それじゃあ、お前のその身に直接教えてやろうか?」

 

「ケッ!人間如きが調子に乗りやがって。いいぜ、教えてもらおうじゃないか」

 

フードの人間はジョーカーの言葉がカンに触ったのか、挑発すると、ジョーカーも食って掛かった

 

「おい、ジョーカー。これでお前の方が死んだら被害を被るのは俺たちの方なんだぞ」

 

「その点についてはご心配なく。先ほどのジョーカーの言葉はこのマクスウェルが聞いたのでジョーカーが死のうとも殿下には何の被害もございません」

 

殿下の言葉に突然現れたマクスウェルが続ける

 

しかし、全員それに驚きもせずに普通の態度だった

 

「だがよ、殿下。俺がこいつを殺しちまったらテメーらは人を見る目が無いってことでマイナス評価だぜ」

 

ジョーカーが殿下とリンを睨みつけると、リンはフードの人間が到底勝てるはずないと思い、殿下の袖を掴む

 

「ああ、いいぜ」

 

殿下は笑顔で確信を持って答える

 

「後悔すんじゃねーぞ、クソガキ」

 

ジョーカーが言葉を発した瞬間、フードの人間に飛びかかる

 

雷を纏わせた手がフードに当たる瞬間、フードの人間が一瞬でジョーカーの後ろに移動していた

 

「弱いな」

 

「なん・・・」

 

フードの言葉にジョーカーが反応して後ろを振り返ると、自分の身体にフードの腕が突き刺さっていた

 

「終わりだ」

 

フードがそういうと、ジョーカーはフードの腕に吸い込まれるように消え、黒い仮面だけが残った

 

「ほう、中々の腕前の奴を拾ってきたな、殿下」

 

「当たり前だ。俺の人を見る目は確かだぜ」

 

マクスウェルの言葉に殿下はニヤリと笑い返す

 

「凄いですね。えーと・・・」

 

「そういえば、お前の名前は何だ?」

 

殿下が思い出したように聞くと、フードは落ちていた仮面を手に取り、自分の顔に付ける

 

「こいつと同じ名でいい」

 

フードはそう言うと、どこかに消えた

 

「変な人」

 

「だが強いだろ?それと、リン。あいつから貰ったと言っていたギフト、奴に渡しといてくれ」

 

リンはそれを聞き、少し困った顔をしたが、殿下の性格をわかっているので文句も言わずに探しに行った

 

「さて、旧ジョーカーもいなくなったことですし、代わりと言っては何だが私がお前たちについて行こう」

 

マクスウェルのその言葉に全員が顔をしかめる

 

しかし、ここで何を言っても変わらない上、下手をすれば今までの苦労が無駄になってしまうと感じた殿下は渋々了承をした


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