問題児たちが異世界から来るそうですよ?―振り回される問題児―   作:gjb

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第七十一話

次の日、紫炎とジャックは一度東を経由して北に到着した

 

「ヤホホホ。ようやくつきましたね、紫炎君」

 

「ああ。それじゃあ、ウィル・オ・ウィスプの本拠に行こうか」

 

紫炎とジャックが軽く話をしながら本拠に向かっていると、ある小物屋の前で紫炎の足が止まった

 

「どうしました?」

 

「悪い、ちょっと寄っていいか?」

 

「まあ、別に構いませんが、彼女へのプレゼントを買うんですか?」

 

「ああ、ちょっといい髪飾りがあったからな」

 

紫炎はジャックの許可を得て、店に入った

 

「すいません。誰かいませんか?」

 

「はーい」

 

中に入ると、誰もいなかったので呼んでみると、奥から十二、三歳くらいの女の子が出てきた

 

「すいません。この髪飾りいくらですか?」

 

「えっと、銀貨二枚分です」

 

「二枚分・・・」

 

金額を聞いた紫炎は自分の財布の中身を見る

 

(ぎ、ぎりぎり足りない)

 

帰りの分の路銀を計算すると、銀貨一枚分が限度だった

 

「すいません。銀貨一枚に値引きしてもらえませんか?」

 

「うーん、すいません。これがぎりぎりの値段なんですよ」

 

店員が少し悩むが、はっきりと断った

 

紫炎はそれを聞き、外に出てジャックに相談を持ちかけた

 

「なあ、ジャック。銀貨一枚貸してくれないか ?」

 

「足りないのなら諦めたらよいのでは?」

 

「耀にどうしても買ってやりたいんだ。東に寄った時に絶対に返すから、頼む」

 

「分かりました。それではどうぞ」

 

紫炎の熱意に負けジャックが紫炎に銀貨を貸す

 

「サンキュー、ジャック。絶対後で返すから」

 

銀貨を貸してもらった紫炎はすぐに店に戻って行った

 

「本当に耀さんの事が好きなんですね」

 

――――――――――――――――――――

 

「紫龍さん、もうこれで仕事終わりましたよね?」

 

碓氷が紫龍に何かの書類を渡しながら、嬉しそうに問いかける

 

「うん、そうだな。これで今月分の仕事は終わりだな。しかし、何でそんなに急いでるんだ?」

 

「べ、別にいいじゃないですか。それと明日からアンダーウッドの復興作業の手伝いに行ってきますので」

 

紫龍の問いに碓氷は咄嗟にごまかす

 

「ふむ、ちょっと待ってろ」

 

碓氷の言葉を聞いた紫龍が店の方に消えたかと思うと、臙脂色を基調にして白で模様が描かれてるリボンを持って出てきた

 

「それは?」

 

「やるよ。気になるいつもリボンをつけてる娘にでもあげればいい雰囲気になれるんじゃないか?」

 

「なっ!飛鳥さんとはそう言う関係では・・・」

 

碓氷が紫龍の発した言葉に顔を赤くしながら答えると、紫龍の目が光る

 

「誰も飛鳥ちゃんの名前は言ってないぜ」

 

「ぐっ!」

 

紫龍の言葉に碓氷はさらに顔を真っ赤にする

 

「今日はもう境界門の開門の時間も終わったし、さっさと寝とけ」

 

「わかりました。おやすみなさい」

 

碓氷は恥ずかしさをごまかす耀に大声で返すと、自室へと戻って行った

 

「いやー、子供ってのは勝手に育っていくもんだね」

 

「なに、おっさんくさいこと言ってるのだ、龍」

 

紫龍がしみじみとしていると、白夜叉が入ってきた

 

「白か。どうしたんだ?」

 

「お前に客が来とるぞ」

 

白夜叉がそう言うと、後ろからレティシアが出てきた

 

「レティシア。三年ぶりだな」

 

「そうだな。しかし、本当に狼の姿なんだな」

 

レティシアはそう言いながら紫龍に近付き、毛を触る

 

「確かにここにいるって手紙を出したが、こんなに早く来るとは思わなかったぞ」

 

「なに、少し気分転換もかねてだ」

 

紫龍がレティシアの言葉を聞くと、肉球をレティシアの頭の上に置く

 

「それじゃあ、散歩にでも行くか?」

 

「いや、お前に会えただけで大丈夫だ。ありがとな」

 

レティシアは少し暗い表情をしながら部屋から出ようとする

 

「待て、レティシア。今日はもう遅い。紫龍に送ってもらえ」

 

今まで空気だった白夜叉がそんなことを言うと、レティシアの顔が少し赤くなる

 

「まあ、そうだな。それじゃあよろしくな、レティシア」

 

「い、いや、別にいいぞ。一人で帰れる」

 

「いいじゃないか。ほら行こうぜ」

 

紫龍はそういってレティシアの背中を押しながら外に出た

 

――――――――――――――

 

「すいません、お待たせしました。紫炎君」

 

ジャックがそう言いながら入口からウィラを連れてやってきた

 

「ああ。まさかウィラを起こしてくるって言って三時間も待たされるとは思わなかったよ」

 

紫炎は少しキレ気味で言うと、ジャックがウィラに話しかける

 

「ほら、ウィラ。同盟の話し合いですよ」

 

「まだ眠い。ジャックがやってくれたらいい」

 

「それは駄目です。私が最終的に決めるにしてもコミュニティのリーダーが意見を聞くのが大事なのです」

 

ジャックがウィラを諭すと、ウィラは頬を膨らませる

 

すると、紫炎がしびれを切らせて口を開いた

 

「とりあえず話を進めてもいいか?」

 

「あ、はい。ウィラ、とりあえず座りなさい」

 

ジャックに言われ、ウィラは渋々従う

 

紫炎はウィラが座るのを見ると、怒りを抑え、真剣な表情をする

 

「我らジン=ラッセル率いるノーネームとウィル・オ・ウィスプとの同盟の件についてお話させていただきます」

 

突然の紫炎の態度にウィラどころかジャックの表情も変わった

 

「それでは先日言っていた我々へのメリットというものを教えてもらいますか?」

 

「分かりました。まず一つ目に、連盟権限において私たちは魔王とのゲームの介入を確約します」

 

紫炎の言葉を聞き、ジャックは少し驚いた表情をする

 

「確約、でよろしいのですね」

 

「ええ。それともう一つのメリットについてはこちらを確認してください」

 

紫炎がそう言うと、一枚の羊皮紙をジャックとウィラに渡すと、ジャックはさらに驚きの表情をする

 

「こ、金剛鉄の鉱脈。それにこの量、本当にあり得るのですか?」

 

「みたいですね。って口調戻していいですか?」

 

「うん、お願い。気持ち悪い」

 

そろそろ限界の近かった紫炎のことばにウィラが思っていたことをそのまま告げる

 

「貯蔵量については俺はそこに書かれてあることしか分からない。だから、それを信じてもらうしかない」

 

それを聞き、ジャックが顎っぽいところに手を当てて考えるしぐさを見せるが、ウィラが先に口を開いた

 

「わかった。同盟を承諾する」

 

あっさり承諾するウィラにジャックがため息をつく

 

「それじゃあ、金剛鉄が取れたら精錬頼むぜ」

 

「ええ、任しておいてください」

 

こうして紫炎はウィル・オ・ウィスプとの同盟の話をつけた

 

――――――――――――――――――――

 

紫龍とレティシアはノーネーム本拠に向かっていた

 

「しかし、メイド服似合ってるな」

 

「そうか、そう言ってもらうと嬉しい」

 

紫龍の言葉を聞いたレティシアの顔が赤くなる

 

「やっぱり、元が可愛いと何でも似合うんだな」

 

「な、何をいきなり・・・」

 

「本当の事を言ったまでだが?」

 

真顔で言った紫龍の言葉にレティシアはさらに顔を赤くし、俯く

 

少し歩いて、レティシアが口を開いた

 

「なあ、紫龍。一つ聞いていいか?」

 

「なんだ?俺に答えれることがあれば答えるぞ」

 

「朔良のこと、まだ思ってるのか?」

 

朔良の名前が出た瞬間、紫龍があからさまに反応する

 

「ああ、そうだが」

 

「そうか、まだなのか」

 

紫龍の言葉を聞いたレティシアが少し残念そうな表情をする

 

「どうした?」

 

「なんでもない。お前が昔から変わってないなと思っただけだ」

 

「フェイス・レスにもそんな事言われたな。結構変わったと思うんだが」

 

「そういうところだ。もう一人で帰れる。送ってくれてありがとうな」

 

レティシアはそういって、一人でノーネームに戻って行った

 

「ま、もう近いしいいか」

 

紫龍もレティシアの後ろ姿が見えなくなったのを確認して、サウザンドアイズに戻った


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