問題児たちが異世界から来るそうですよ?―振り回される問題児―   作:gjb

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第七十三話

問題児たち四人と碓氷がババ抜きをやっていた

 

「こっちだ」

 

最後まで残った碓氷が紫炎の残り二枚のうち、左の方を取った

 

「よっしゃー!」

 

「またか」

 

紫炎の手にジョーカーが残り、紫炎の負けが決定した

 

「弱いな、紫炎」

 

「そうよね、一度も勝ってないんじゃないかしら?」

 

「うん。確か十五連敗」

 

十六夜、飛鳥、耀の順番で言っていくと、紫炎は倒れこんだ

 

「何で勝てないんだ」

 

「「「運が無いから無理(だろ)」」」

 

三人の重なった声が紫炎を貫き倒れ伏した

 

「けど、本当に弱いな、紫炎。俺も結構弱い方なんだけどな」

 

十五戦した結果

 

十六夜 一位六回 二位五回 三位三回 四位一回

 

飛鳥  一位四回 二位四回 三位四回 四位三回

 

耀   一位四回 二位三回 三位六回 四位二回

 

碓氷  一位一回 二位三回 三位二回 四位九回

 

紫炎  最下位十五回

 

「一位とは言わない、せめて四位は取りたかった」

 

紫炎が切実にそんなことを言ってると、十六夜が話しかけてきた

 

「紫炎、黄昏てるとこ悪いが、約束覚えてるだろうな?」

 

「覚えてるよ。最下位の奴が一位の言う事を聞くんだろ。一個ずつ」

 

十六夜の言葉に紫炎が苦々しく言うと、耀は少し嬉しそうにする

 

(何聞いてもらおうかな?)

 

そんな耀とは裏腹に、十六夜は少し苦い表情をしながら紫炎に小声で話しかける

 

「おい、これは飛鳥と碓氷の本音を語らせるためにやったゲームだぞ。何お前が全部負けてんだよ」

 

「め、面目ない」

 

まったく、と言った表情で十六夜が見ると、紫炎は居たたまれなくなってきた

 

「四回何聞いてもらおうかしら?」

 

「あんまり無茶なのはやめてくれよ」

 

目を輝かせてる飛鳥に紫炎が言うが、全然聞いていない様子だ

 

「今日のところはもう寝ようぜ」

 

「だな。それじゃあ、お休み」

 

そう言って紫炎と耀は同じ部屋へ、碓氷は飛鳥を部屋に送った後、自室に戻った

 

十六夜はというと、

 

「あの、十六夜さん。終わりましたか?」

 

「おうよ。それじゃあ、行くか」

 

「はい」

 

今まで静観していたジンを連れて図書室へと向かった

 

―――――――――――――――――――――

 

碓氷は自分の部屋に戻った後、寝もせずに外を眺めていた

 

「楽しかったな。あんな風に同年代の奴と楽しく過ごしたのはいつぶりだっけな」

 

そんなことを呟いていると、ドアをノックする音が聞こえた

 

「あ、どうぞ」

 

碓氷が促すと、サラが入ってきた

 

「夜分に失礼する」

 

「別にいいですよ。何の用ですか?」

 

碓氷がいつも通りの笑顔で問いかけると、サラが少し照れくさそうに問いかける

 

「その、紫龍殿はいつ来られるのだ?」

 

「いや、僕はプライベートで来てるんで紫龍さんが来るかどうかわかりませんよ?」

 

「そ、そうなのか」

 

碓氷の言葉を聞き、サラは残念そうな表情をする

 

「どうしたんですか?」

 

「い、いや、なんでもない。忘れてくれ」

 

サラはそう言うと、外に出て行った

 

「なんだったんでしょう?」

 

何が何だか分からないといった表情でサラを見送った

 

―――――――――――――――――

 

その夜、俺は夢を見た

 

そこでは俺は誰かを探しているみたいだ

 

ある部屋の前に着くと、俺はその前で止まった

 

いる、確かにそう感じた

 

俺は『俺』が誰を探してるのかは分からない

 

でもなぜかここにいるという事はわかる

 

俺がその扉を開けると、そこには肩より少し長い茶髪の女性がいた

 

俺は見たこともない『俺』の探していたこの女性に近づく

 

俺に気づいた彼女は、俺の方に向いた

 

後ろからでは分からなかったが、彼女は妊娠しているようだ

 

すると、『俺』がその女性のお腹に手を当てて嬉しそうに微笑むと、女性もそれを見て笑う

 

そんな『俺』を見て女性は唇に指を当てて、『俺』の方を見ている

 

『俺』はそれを見ると、女性の顎を持ってあげる

 

そして、『俺』と女性の唇が触れ合いそうになった瞬間、俺の意識が覚醒していった

 

意識が覚醒してく中、俺は先ほどの夢を思い出した

 

あの女性、見たことがない容姿だったが、何故か誰かわかった気がした

 

――――――――――――――――――――

 

私は夢を見た

 

その中で『私』は妊婦のようだ

 

なんとなくだけど、『私』は誰かを待ってる気がする

 

そして、お腹の子の父親はその待ってる人だ

 

そして、『私』はその人に会うのをとても楽しみにしていて、その人の事を本当に好きでいる

 

少しすると、『私』が待っていた彼が来た

 

そこには赤い髪を長く伸ばし、後ろで一つにまとめている大人しそうな雰囲気の男性だ

 

少し、息を切らしてる

 

彼は本当に『私』の事が好きなんだろう

 

そんなことを考えてると、彼は『私』のお腹に手を当てて幸せそうに微笑んでる

 

それを見ると私は自然と笑ってしまう

 

すると、彼と目が合う

 

『私』が唇に指を当てると、彼は私の顎を持ち上げ、唇を近づけてくる

 

唇が触れる瞬間、私の意識が覚醒してきた

 

夢の中だったけどわかる

 

彼は『彼』なんだと、直感的に感じた

 

―――――――――――――――――

 

朝になると、紫炎と耀は同時に目を覚ました

 

二人は目を合わせた瞬間、布団から飛び出した

 

「お、おはよう、耀」

 

「う、うん。おはよう、紫炎」

 

((あんな夢見た後じゃ顔を合わせずらい))

 

二人が同時にそんなことを思ってると、指輪をしたまま寝ていたことに気づいた

 

いつもは指輪を外して寝てるのだが、昨日は外し忘れたらしい

 

(指輪してたからあんな夢を見たのかな?って、考え過ぎかな)

 

紫炎がそんなことを考えてると、耀が背中を向けたまま話しかけていた

 

「私ね、夢を見たの。多分だけど未来の夢」

 

紫炎は耀の言葉を聞き、まさかと思う

 

「そこで私はある人の子供を身籠っていた。そのある人、わかるよね」

 

そう言うと、耀は紫炎に抱きついた

 

「耀。俺もな、夢を見たんだ。そこで俺はある人を探してたんだ。そしてその人は妊娠してたんだ」

 

紫炎はそう言いながら耀を抱きしめ返した

 

「耀、多分なんだけど俺らの夢はリンクしてたんじゃないか?」

 

「どうしてそう思うの?」

 

「お前の話を聞いてみると、俺の夢と一緒だったからな」

 

一緒という言葉を聞いて耀が顔を赤くしながら紫炎に問いかけた

 

「一緒ってことは、じゃあ・・・」

 

耀がそう言うと、唇に指を当てた

 

紫炎はそれの意味を理解し、顔を真っ赤にする

 

「な・・・。その、いいのか?」

 

「バカ、好きな人ならいつでもいいもん」

 

紫炎の言葉に耀が頬を膨らませながら反論する

 

紫炎は耀の言葉を聞き、耀の顎を持ち、軽く上げる

 

「いいか?耀」

 

「うん、紫炎」

 

そうして二人の唇が重なった


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