問題児たちが異世界から来るそうですよ?―振り回される問題児―   作:gjb

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降臨、蒼海の覇者
第七十四話


巨龍との戦いから二週間ほどたった

 

「あー、疲れた」

 

人間の姿に戻った紫龍が夕食を作っていた

 

「いい匂いがするな、龍よ」

 

「白か。お前も食べるか?」

 

「もちろんだ。おんしの料理は美味いからのう」

 

「嬉しいこと言ってくれるね」

 

紫龍はそう言いながら白夜叉に作った夕食を渡した

 

「おお。やはり美味そうだのう」

 

「それ全部食べていいぞ。俺これ食べるから」

 

紫龍がそう言って出したのは・・・

 

「ドッグフード?」

 

「狼の時に食べてて美味かったんだ」

 

紫龍がドッグフードを食べながら言ってると、白夜叉は深くため息をつく

 

「龍よ、人間に戻ったのだから人間の食べ物を食べたらどうだ?」

 

「飽きたらやめるよ」

 

紫龍のこの言葉に白夜叉はさらに大きなため息をつく

 

すると、扉が開いて女性店員が入ってきた

 

「オーナー、もうそろそろお時間です」

 

「そうか。その前に龍、もう一度聞かせてもらう。わしの代わりに階層支配者をやらないか?」

 

白夜叉の真剣な頼みに紫龍は・・・

 

「無理」

 

即答で断った

 

「二日前もそうだが、少しは考えんのか?」

 

「考えるまでもないだろ。全盛期ならまだしも、今の力だったら絶対に無理」

 

紫龍のこの言葉を聞いた白夜叉は残念そうにため息をついた

 

「しょうがない。それなら予定通り、黒ウサギを今から捕まえてあそこに行くか」

 

「どこ行くか知らんがいってらっしゃい」

 

「何言っておる。おんしも来るんだぞ」

 

白夜叉がさも当たり前そうに言うので紫龍は少し嫌な予感がした

 

「どこに行くんだ?そこに・・・」

 

「コミュニティ“平天大聖”じゃ」

 

紫龍の言葉を遮り、白夜叉が行き先を告げた

 

すると、紫龍が逃げようとしたので、白夜叉が何処からか出したロープで紫龍を縛って捕まえた

 

「白、マジでやめてくれ。俺の昔話聞いただろ?」

 

「さて、次は黒ウサギを捕まえに行くぞ」

 

紫龍が涙目になりながら口を開くも、白夜叉は意にも介さない

 

「おい、白。逃げていい?」

 

「ダメに決まってるだろう」

 

「だよねー。ところで俺の行く意味ってあるのか?」

 

「さて、黒ウサギはちゃんとコミュニティにいるかの?」

 

「おい、答えろ、白!ないなら連れてくんじゃねー!!」

 

自分の問いにはまったくと言っていいほど答えない白夜叉に紫龍が怒り気味で叫ぶ

 

「うるさい」

 

「ぐふっ」

 

白夜叉は紫龍を物理的に黙らせると、肩で担いだ

 

「さて、それでは行くか」

 

「はい、これも予定の内です」

 

白夜叉の言葉に冷静に女性店員が返すと、二人とお荷物一人はノーネームの本拠に向かった

 

―――――――――――――――――――――――

 

南では、前回のリベンジという名目で問題児四人と碓氷に加え、アーシャとクリスもくわえてババ抜きをやっていた

 

勝負は終盤に入り、紫炎とクリスが残っていた

 

「・・・こっちだ。・・・よっしゃー!!」

 

「ま、また負けた」

 

合計に二十回目のババ抜きが終了した

 

結果   一位 二位 三位 四位 五位 六位  最下位

 

十六夜  八回 四回 三回 四回 一回 なし  なし

 

飛鳥   四回 四回 四回 四回 四回 なし  なし

 

耀    五回 三回 四回 六回 二回 なし  なし

 

碓氷   二回 三回 二回 一回 四回 八回  なし

 

アーシャ 一回 五回 六回 四回 四回 なし  なし

 

クリス  なし 一回 一回 一回 五回 十二回 なし

 

紫炎   なし なし なし なし なし なし  二十回

 

 

「流石に二十回は疲れるな」

 

「そうね。これも何度も再戦を要求してきた紫炎君のせいね」

 

「けど、一度も勝てなかったね」

 

「前回と合わせて三十五回最下位ですね」

 

「え!そんなに!?」

 

「良かった。最後はぎりぎりだった」

 

「・・・」

 

紫炎以外の参加者が各々紫炎に向かって意見を言うが、紫炎は机に倒れこんでいた

 

「さてと、俺は自分の部屋に戻らせてもらうぜ」

 

「私もそうするわ。紫炎君が起きてもう一度、って言いかねないもの」

 

「ですね。それじゃあ、失礼します」

 

そういって、十六夜、飛鳥、碓氷が部屋から出て行った

 

「それにしても紫炎、本当に弱いな」

 

「そうだな。クリスも結構弱いのにな」

 

「なんだと!アーシャ!」

 

「・・・」

 

クリスとアーシャが言い争うが紫炎はいまだに顔をあげる様子がない

 

「二人とも、喧嘩するなら自分の部屋でして」

 

「「は、はい」」

 

耀が怒気を込めて言うと、二人は逃げるように自分の部屋に戻って行った

 

「ほら、紫炎」

 

「・・・zzz」

 

落ち込んでると思い、耀が紫炎の肩を優しく揺らすと、いびきが聞こえた

 

耀は怒って紫炎の頭を机に叩きつけた

 

「いったー。何が起きたんだ?」

 

「もう、何寝てるの」

 

「わ、悪い。疲れと最下位のショックで。ところでほかのみんなは?」

 

「もうみんな帰ったよ」

 

耀はそういうと、紫炎にもたれかかる

 

「二人っきりだよ」

 

耀はそう言いながら、唇に指を当てながら、紫炎を見る

 

これは合図だ

 

前回のババ抜きの時のいう事を聞かせる権利で耀が決めたことだ

 

「じゃあ、いいか?」

 

「うん」

 

紫炎の言葉に耀が頷くと、紫炎が耀の肩を持って口づけを交わした

 

「えへへへ」

 

唇を離すと、耀が幸せそうに微笑む

 

(“二人っきりになった時に合図を出したらキスをしてくれ”ってのを権利で使われてから十日くらいか、二人っきりになると必ずせがんでくるな)

 

紫炎が顔を赤くしながら頭を掻いていると、耀がずっとこちらを見ていた

 

「どうした?耀」

 

「えへへへ、なんでもない」

 

耀はそう言うと、紫炎の腕に抱きついた

 

「大好き、紫炎」

 

すると、耀が紫炎の頬にキスをした

 

「・・・へ?」

 

一瞬の事で紫炎は何が何だか分からないという表情をする

 

「そういえば私からしたのって初めてだっけ」

 

耀が悪戯っぽく微笑みながら言うと、紫炎は顔を真っ赤になったのを隠すように顔を逸らす

 

「そ、そうだな。それじゃあ、部屋に戻るぞ」

 

「うん、そうだね。ところで顔、何で逸らすの?」

 

「な、なんでもない」

 

「へえー、本当に?」

 

耀は紫炎の顔を何とか覗き込もうとする

 

「だぁ、もう」

 

紫炎はやくそ気味に叫ぶと、耀を顔が見えないように自分の胸に抱き寄せる

 

「はふ・・・」

 

(いい匂い・・・)

 

すると、耀はそのまま紫炎の胸で眠りについた

 

「・・・寝たか?よし戻るか」

 

紫炎はそういって耀をお姫様抱っこをして自分の部屋へと戻って行った

 

――――――――――――――――――――――――

 

黒ウサギはノーネーム本拠の周りを見回っていた

 

「よし、異常なしなのですよ」

 

そういうと黒ウサギは自室に戻ろうと、本拠のロビーに差し掛かると、聞き覚えのある声が聞こえた

 

「お疲れ、黒ウサギ」

 

「レ、レティシア様!先に寝たんじゃ・・・」

 

「そのつもりだったのだが、客が来てな」

 

「客?」

 

黒ウサギはレティシアの言葉を聞いて向かい側を見ると、縄を巻かれた紫龍が座っていた

 

「今頃気づくなんて酷いな、黒ウサギちゃん」

 

「し、紫龍さん!?なんで縄が、・・・それよりなんでここに!?」

 

少しパニック気味の黒ウサギがレティシアを紫龍から離しながらまくし立てる

 

「それを答える前に何でレティシアとの距離を取らせるのかな?」

 

「当たり前です!貴男様のような変態にレティシア様を近づけさせるわけにはいきません!!」

 

黒ウサギが紫龍を指さして堂々と言い放った

 

「俺のどこが変態か言ってみてくれないかい?黒ウサギちゃん。こんなダンディな・・・」

 

「そういう発言と現在の姿を見て言ってるのです!」

 

ド直球な発言に紫龍は少し項垂れる

 

「お、おい、黒ウサギ。少し言い過ぎだぞ」

 

「ですが・・・」

 

「別にいいよ、レティシア」

 

レティシアの言葉に反論しようとした黒ウサギの言葉を遮って紫龍が声を出した

 

「いつもの発言の事は効いたが、この状態が変態というならお前もそうなるぜ」

 

「なにを・・・。は!」

 

紫龍の言葉を聞いた瞬間、不吉な予感にかられた黒ウサギは後ろを向いた

 

そこにはロープを持った白夜叉が立っていた

 

「し、白夜叉様。いたんですね」

 

「うむ。後ろからこっそりとな」

 

白夜叉はそう言いながらじりじりと近寄っていくが、黒ウサギも離れる

 

「何の用でしょうか?」

 

「ちょっと来てもらいたい場所があってな」

 

「それはど・・・」

 

こでしょうか?、という前に背中に壁を背負ってしまい、白夜叉の餌食になってしまった

 

「よし、捕まえた。行くぞ!」

 

「はいはい。はあ、面倒臭い」

 

口では文句を言いながら、紫龍はちゃんと白夜叉について行こうとする

 

「待て、紫龍」

 

しかし、レティシアに袖を掴まれて阻まれてしまう

 

「ん?どうし・・・」

 

理由を聞こうとした紫龍の口はレティシアの唇によって遮られた

 

「これが私の気持ちだ」

 

レティシアはそう言うと顔を赤くしたまま去っていった

 

「ったく、どうして諦めてくれないかねぇ。俺はもう・・・」

 

紫龍は暗い表情を抑えて白夜叉たちの後を追った


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