問題児たちが異世界から来るそうですよ?―振り回される問題児―   作:gjb

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第七十五話

箱庭第四ケタ外門、六二四三外門

 

そこに白夜叉たちが降り立った

 

「ふははは、ここに来るのも久しぶりじゃのう。何年ぶりくらいじゃったか?」

 

姿だけ見れば美女の白夜叉なのだが、雰囲気が何故か婆臭い

 

「白夜叉様が平天大聖のコミュニティを訪れるのは約五十年ぶりだと聞き及んでます」

 

「俺が生まれるより前か。というかそれを知ってるという事は・・・」

 

紫龍がそういって女性店員を見ると、女性店員は鋭い目で紫龍を睨む

 

「聞き及んだ、と言ったでしょう。次、そんなことを言ったらどうなるか知りませんよ」

 

「はーい」

 

聞いてるのかどうか分からないような返事をする紫龍を女性店員はとても冷めた目で見ていた

 

「しかし、連絡しておいたのに迎えもなしとは何事じゃ」

 

二人のやり取りを無視して白夜叉が喋ると、黒ウサギは恐る恐る口を開いた

 

「あの、それは当然じゃないでしょうか。彼らの仏門嫌いはとても有名な話。帝釈天の眷属である黒ウサギはもちろんの事、白夜叉様も・・・」

 

「違うぞ、黒ウサギ。今の私は仏門に神格を返上しておる。腹を割って話すには今しか無いのじゃ」

 

真剣な表情で返す白夜叉を見て黒ウサギは覚悟を決める

 

「それより、白。俺らを連れてきた理由を教えろ」

 

紫龍が少しだけ怒ったように聞くと、白夜叉は表情を変えずに言葉を紡ぐ

 

「お主らには少し手伝ってほしいことがあるのだ」

 

この言葉を聞いて紫龍は嫌そうな、黒ウサギは気合の表情を表す

 

「分かりました。それで私は何をすればよろしいのでしょうか?」

 

「うむ、ではこれを着てもらおう」

 

白夜叉がそういって柏手を打つと、宙から今以上に面積が小さく卑猥な服が出てきた

 

「し、白夜叉様。何かの冗談ですよね?」

 

「何を言っておる。ちょうど審判衣装の更新時期も近づいておるからな。これを着て牛魔王を籠絡させるのだ。という訳でまずはこの前着てもらえなかったシースルーのビッチェスカー」

 

「トは穿かないと言ってるでしょうが、このお馬鹿様!!!」

 

スパーーーン!!と良い音を立てて白夜叉をハリセンで叩く黒ウサギ

 

「凄い音がしたな。白が何かしたのか?」

 

「そうなのですよ!こんなのを着ろとおっしゃるんですよ!!」

 

そういって黒ウサギは先ほど白夜叉が出した服を指さした

 

「ふむ。なるほど」

 

「こんなもの用意するなんてなにをか・・・」

 

「俺はこれが良いと思うぞ」

 

そう言った紫龍が手にしたのはシースルーのビッチェスカートを取った

 

「何で同じのを選ぶんですか、このお馬鹿様!!!」

 

スパーーーーーーーーーン!!と、先ほど以上の音を立てて紫龍に黒ウサギのハリセンがヒットした

 

「まったく、良い音させるのう。しかし、やはり紫龍もそれを選ぶか」

 

「当たり前だろ?黒ウサギちゃんのあの初心な感じに似合わず、ここまで大胆な衣装はとても扇情的。しかし、着ている黒ウサギちゃんの恥ずかしがってる表情とのミスマッチがまたこちらの背徳神をそそられる」

 

「その通りだ。おんし、中々わかっておるではないか」

 

二人はそういって固い握手を交わす

 

黒ウサギは少し離れた場所でため息をつき、女性店員は懐にしまっているギフトカードに手をかけた

 

(いくら白夜叉様が仏門に神格を返上したとはいえ、彼らの仏門嫌いは相当なものと聞く。それに紫龍や白夜叉様がなにかするかもしれない。私がしっかりせぬば)

 

女性店員がそう思うと、白夜叉は呑気な口調で口を開いた

 

「しかし、ここまで徹底的に人払いをしなくてもよいのに」

 

「そうだな。・・・ん?」

 

紫龍が白夜叉の言葉に応えると急に日差しが強くなる

 

最初は暖かな陽光のようだったが、徐々に日差しが強くなり肌が焦げるような熱線へと変わった

 

「こ、これは一体・・・」

 

「白夜叉様下がってください!」

 

黒ウサギは何が何だか分からない様だが、女性店員は誰かの攻撃だと思い、白夜叉の前に立つ

 

当の白夜叉は腰に手を当てて警戒もせずに、襲撃者がいるであろう場所を見ている

 

紫龍もそちらの方を見て襲撃者の姿を確認すると、頭を抱えた

 

すると、金色の羽が一枚、二枚と、ひらひらと舞い落ちる

 

「おんしに来訪の書簡を届けた覚えはないのだが、鵬魔王よ」

 

「来客があなた一人なら私もこんなことはしていないわ」

 

女性の声が響いたかと思うと、舞い落ちていた羽が白夜叉たちの周りを囲み、金色の炎のかべとなった

 

そして、空から金翅をはばたかせて襲撃者が降り立った

 

彼女は肩から背にかけて大胆に開いた雅な柄の衣服を着こみ、背からは金翅を顕現させていた

 

「人の姿に金翅のはね。・・・まさか大鵬金翅鳥!?」

 

「護法十二天にも匹敵する神鳥が魔王に落ちたと!!?」

 

黒ウサギと女性店員の二人は襲撃者の鵬魔王をみて驚く

 

しかし、白夜叉はそんな二人を気にせずに言葉を紡ぐ

 

「確かにあやつは金翅鳥だが、純血というわけではない。あれは家出中の姫君でしかない」

 

「家出中の・・・姫?」

 

白夜叉の言葉に二人はぽかんとする

 

「それに・・・のう?」

 

白夜叉がそう言うと、紫龍を見る

 

「なんだよ」

 

「いやなんにもないぞ」

 

紫龍が白夜叉の言葉にイラつきの言葉で返すと、白夜叉は笑いを隠しながら返事をした

 

「姫なんて気の抜ける呼び名はやめろ、白夜王」

 

「それならばそちもその呼び名を止めろ。止めぬというなら・・・そうだな、千年前と同じく迦陵ちゃんと・・・」

 

白夜叉がそこまで言うと、周りの炎が白夜叉を襲うが、炎は手のひらに収束され、陽炎すら残さない

 

(今の内に逃げとこう)

 

炎の壁が開くなったので紫龍は鵬魔王に見つかる前に逃げようとするが、白夜叉に見つかり、全身をロープでまかれた

 

「いつみても化け物ね。それよりそれは何?」

 

「後のお楽しみじゃ」

 

ロープの塊にしか見えない紫龍を見て鵬魔王が疑問符を浮かべるが、白夜叉はただ笑うだけだった

 

「そう。それより長兄に何の用?」

 

「それは奥で話すから玉座の間に通してもらえるか?」

 

「それはそこの帝釈天の畜生を連れてか?」

 

「む」

 

鵬魔王に畜生呼ばれされ、流石に怒った黒ウサギ

 

“箱庭の貴族”として誇りを持つ彼女だが、普段は権威を振るおうとはしないが、侮蔑された今回は違う

 

一歩前に出て、睨み・・・

 

「ほう、やるのか?」

 

・・・返されて、ウサ耳をへにょりとしおらせて数歩下がる

 

それを見て三人(紫龍はロープにくるまれて見えないが)は冷めた目で黒ウサギを見る

 

「黒ウサギ、流石にさっきのは格好悪いぞ」

 

「そんなのだから“箱庭の貴族(恥)”と仲間たちから言われるんですよ」

 

「い、今の後退は種族的な相性というものがありまして、ってなんでその呼び名を知ってるんですか!?紫龍さんから聞いたんですか!!?」

 

黒ウサギの言葉を聞いて女性店員は呆気にとられた表情を、鵬魔王は何か考え込む表情をする

 

「え?まさか本当に言われてるんですか?」

 

女性店員が純粋に驚いていると、紫龍は首を横に振った

 

それを見た黒ウサギは女性店員が紫龍から聞いていないと悟る

 

「う、うわあああああああああああ」

 

知らなかったからこそ黒ウサギの自尊心は深く傷つき、もはやよく分からない奇声をあげながら来た道を走り去っていった

 

それを見て、珍しくおろおろとしている女性店員を見て白夜叉が声をかけた

 

「私は良いから黒ウサギをを追ってやれ」

 

「は、はい」

 

「それじゃあ」

 

白夜叉の言葉に女性店員と紫龍が返事をして黒ウサギを追おうとする

 

「おんしはこっちじゃ」

 

しかし、紫龍は白夜叉にもう一度捕まってしまった

 

「それより、迦陵ちゃん。牛魔王に会わせてくれんか?」

 

「長兄は不在よ。鬼姫連盟の救援に向かってから一度も帰って来てないわ」

 

「なんじゃと!!」

 

鵬魔王の言った真実に白夜叉は目を見開く

 

「言伝があるなら伝えておくけど?」

 

「いや、これは本人に直接伝えなければならばいし、不在ならばほかの候補者を探しに行かなければならん」

 

「候補者?」

 

何のことかわからない鵬魔王の表情を見て、白夜叉が口を開いた

 

「おお、言い忘れとった。今回の一件でわしは階層支配者を下りることになってのう。そのかわりに魔王との戦いの経験豊富な牛魔王に頼もうかと思ったんじゃが・・・」

 

どうしたものか、と言った表情をする白夜叉を見て鵬魔王が口を開いた

 

「ねえ、白夜叉。そこの男、赤羽紫龍でいいのよね」

 

「・・・ああ」

 

「ちょ、言うな、白」

 

紫龍のフルネームを知っていたことに少し驚いたがすぐに答える

 

「それならそいつに任せればいいじゃない。紫龍もそれなりの実力があるんだから」

 

「だあー、迦陵もそんなこと言うな!」

 

鵬魔王の言葉に紫龍が怒り気味で叫ぶ

 

「ふむ、少しは聞いていたがやはり知り合いか」

 

「ええ、ちょっとね」

 

鵬魔王が白夜叉の言葉を聞いて少し顔を逸らす

 

「それで、龍。ここまで迦陵ちゃんがおんしを買ってる理由は何だ?」

 

「さ、さあ?」

 

白夜叉が紫龍を睨みながら言うと、紫龍はわざとらしく目を逸らす

 

「・・・まあ、よい。それよりも一度聞くが」

 

「階層支配者はやらんぞ」

 

白夜叉の言葉を最後まで聞かずに紫龍が言うと、鵬魔王が呆れたものを見るような眼で紫龍を見る

 

「紫龍、あんた少しは考えて結論を出しなさいよ」

 

「考えてるよ。人間はお前らと違って二十年もしたら大分衰えるんだよ」

 

紫龍が鵬魔王の言葉に頭を掻きながらだるそうに答える

 

しかし、鵬魔王はそんな事は関係ないといった表情で続けた

 

「そんなの私か白夜王から神格を渡せばいいじゃない」

 

「そうしたとしてもまだまだ役不足だよ。七匹揃ってたら別だがな」

 

紫龍が右手を見ながら寂しそうにつぶやく

 

「そうなの。今、何匹いるの?」

 

「今のとこ一匹。憤怒な」

 

それを聞いた鵬魔王は少し考え込む表情をする

 

「それならばしかたない。これ以上黙っておくのも義理に欠けるな」

 

そういって一枚の書簡を白夜叉に渡した

 

「これは?」

 

「宰相から伝言。『その手紙は牛魔王陛下が助勢に立つ前に残したものです』だそうよ」

 

その言葉を聞き、白夜叉が驚きの表情をする

 

(私の来訪を予期していたのか?)

 

そうして白夜叉が書簡を開く

 

『南の大樹にて後継の目あり。心躍らせて参加されたし』と、書かれていた

 

「ククク。助かったぞ、迦陵ちゃん。後でお礼の品を送っておくぞ」

 

「感謝してると思うならその呼び方を止めてほしいわ」

 

白夜叉の言葉に鵬魔王は肩を落とす

 

「それではかえって黒ウサギでも弄るぞ、龍」

 

「へー」

 

「待ちなさい、紫龍」

 

白夜叉の言葉に紫龍が覇気なく答える前に、鵬魔王が紫龍を呼び止めた

 

「ん?どうした、迦陵」

 

「アンタは少し残ってなさい。少し話したいこともあるし」

 

紫龍がそれを聞くと、すごく嫌そうな顔をする

 

「なんで?」

 

「少し話したいことがあるの」

 

紫龍がそれを聞き、白夜叉を見ると首を縦に振る

 

「それじゃあ、残るわ」

 

「そう、ありがとう」

 

紫龍の言葉を聞いて白夜叉は帰って行った

 

「それで話ってのはなんだ?」

 

「神格の事よ。前みたいに渡そうかと思うの」

 

鵬魔王のその言葉を聞き、少し寂しそうな顔をする

 

「さっき言っただろ?いくら神格を貰ってもお前に『強いんだな。その・・・」

 

「わああああ!やめろ!それ以上言うな」

 

紫龍の言葉を遮り、鵬魔王が顔を赤くし、叫ぶ

 

「まあ、あの頃の強さはもう戻らないよ」

 

「そんなことは分かってるわよ。けどね、曲がりなりにも一度、私たちに一度勝ってる人間がここまで弱くなってるのは見てられないのよ」

 

顔の赤さが引いた鵬魔王は真剣な目で紫龍を見ながら口を開く

 

「・・・そこまで言われたら受け取らないわけにはいかないな」

 

少し目を閉じて考え事をしていた紫龍だったが、覚悟を決めた

 

「それじゃあ、目を閉じなさい」

 

言われるがまま、紫龍は目を閉じる

 

少しすると、鵬魔王の声が聞こえた

 

「目を開けなさい」

 

「おう、終わったか」

 

「ええ」

 

紫龍がそれを聞くと、腕や足を動かして感触を確かめる

 

「確かに少しは軽くなった気がするような・・・」

 

「ふん、何言ってるのよ。神格を持ったあんたの真骨頂はギフトを使ったときでしょ?」

 

「まあな。けど、少しはこのままの状態で力が入んなきゃ意味がねえ」

 

紫龍が一通り動作を確認すると、伸びをする

 

「さて、それじゃあ俺も帰るわ。色々とありがとうな、迦陵」

 

「別に礼なんていいわよ。けど、偶には顔くらいは見せに来なさいよね」

 

紫龍の言葉に鵬魔王が顔を軽く逸らしながら喋る

 

「そうだな。気が向いたら来るよ」

 

紫龍はそう言い残して白夜叉たちの方へと向かった

 

 


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