問題児たちが異世界から来るそうですよ?―振り回される問題児―   作:gjb

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第七十九話

紫炎達が会議をしている最中、白夜叉以外のサウザンドアイズの面々は逃げ出したラプラスの小悪魔という精霊を探していた

 

碓氷は途中まで飛鳥と探していたが、紫炎達が問題を起こしたと聞いて、別行動になった

 

女性店員は一人で探し、白夜叉は主催者として壇上に上がっていた

 

そこで彼女はヒッポカンプの騎手のゲームの際は女性は全員水着を着用するようにと宣言した

 

黒ウサギも女性店員もいない彼女が暴走するのは仕方ないだろう

 

そして紫龍は・・・

 

「おっちゃん、もう一杯」

 

「五年前と同じ位呑むね。年考えなよ?」

 

「まだまだいけるぜ。一樽はいける自信があるぜ」

 

精霊も探さずに酒を飲んでいた

 

「しかし赤羽、なんか用があったんじゃないか?」

 

「別に俺がいなくても大丈夫だよ。他が上手くやってくれるさ」

 

店主の言葉に紫炎が酒を飲みながら答える

 

「なにをしてるんですか?紫龍さん」

 

すると、紫龍の後ろから女性店員が黒いオーラを出しながら話しかける

 

「おう、もう見つかったのかい?」

 

しかし紫龍はいつもと変わらない態度で話しかける

 

「ええ、何とか。それよりまさかとは思いますが、ずっと飲んでたんじゃありませんよね?」

 

女性店員が殺気を込めて聞くと、紫龍は普通に首を縦に振る

 

すると、女性店員は紫龍に向かって薙刀を振り下ろすが、軽く止められてしまう

 

「危ないじゃないか」

 

「このダメ男!少しは手伝いなさい!!」

 

「そんなに怒ってると、可愛い顔が台無しだぜ」

 

紫龍がそう言うと、女性店員の首筋に息を吹きかけると、ひゃあ、と可愛い声をあげる

 

「こ、この変態!!」

 

女性店員が本気で怒り、紫龍に薙刀を持って追いかける

 

紫龍は店主に金を払って即座に逃げるのであった

 

――――――――――――――――――――――

 

夜になって紫炎は目を覚ますと、布団で簀巻きにされ、逆さづりにされていた

 

(やっぱ胸の事言ったから怒ったのかな?)

 

紫炎は自信なさげにそう思うと、ベッドで寝ている耀に視線を向ける

 

すると、耀はこっちに背中を向けて寝転んでいた

 

(自覚がなかったとはいえ、耀を傷つけちまったもんな。このまま寝るか)

 

紫炎が諦めのため息をつく

 

「・・・起きたの?」

 

すると、耀の声が聞こえてきた

 

「起こしちまったか。その・・・色々悪かった」

 

「反省してるの?」

 

紫炎に近づきながら耀が問うと、紫炎は首を縦に振る

 

「それじゃあ、何で私が怒ってるかわかる?」

 

目の据わった耀が紫炎に聞くと、紫炎は恐る恐る口を開いた

 

「その、胸の事を言ったから?」

 

「うん。そうだよ」

 

淡々という耀に恐怖を覚える紫炎

 

「本当に悪い。そんなに気にしてるとは思わなかった」

 

紫炎がそう言うと、耀は紫炎の頬を掴み、思いっきり引っ張る

 

「当たり前だよ。周りがあんなに大きいのに意識しないわけないじゃん」

 

(まあ、確かに)

 

紫炎が耀の言葉を聞いて、飛鳥と黒ウサギを思い浮かべると、耀の力が一層こもった

 

「痛たたたたた」

 

「何考えてるの?」

 

「ごめんなふぁいごめんなふぁいごめんなふぁい」

 

紫炎が勢いよく謝るが、耀の込める力は一層強くなる

 

「な・にかんがえてたの?」

 

耀はわざわざ“なに”を区切って言い、紫炎はさらなる恐怖に見舞われる

 

「あの・・・飛鳥と黒ウサギが一瞬、頭に浮かびました」

 

それを言った瞬間、紫炎は顔を思いっきり蹴られた

 

「もう知らない!!」

 

耀はそういって布団にもぐりこんだ

 

「悪かった、耀。許して・・・もらえないよな」

 

「・・・・・・・・」

 

紫炎が不安そうに告げるが、耀は全然反応しない

 

「寝てて聞いてないかもしれないが、言わせてくれ。もし許せないなら・・・」

 

「許さない」

 

紫炎の言葉を耀が遮って口を開く

 

そしてしゃがみこんで紫炎と同じ目線になる

 

「一生許さない。だから、一生私のそばにいて機嫌を取ってよね」

 

耀はそういって紫炎にキスをする

 

「ああ、わかった。一生傍にいるよ」

 

紫炎がそう言うと、耀は満足そうな顔をする

 

「絶対だよ。それじゃあ、お休み」

 

「え・・・。まさかこのまままで?」

 

「朝起きたら解いてあげる」

 

やはり根に持ってる耀は制裁をきちんとするのであった

 

―――――――――――――――――――

 

一方、食堂での蛟魔王の話が終わり、蛟魔王は一人、大樹の天辺で感慨にふけっていた

 

(昔話なんていつぶりやろか?)

 

閻魔大王の元へ七人の義兄妹と戦いを挑みに行った事、東海龍王の元へ神珍鉄の恩恵を掻っ攫って行った事

 

そして七人の義兄妹の中心人物である美猴王“斉天大聖”の事

 

(兵どもが夢のあとか)

 

昔の事を思い出した蛟魔王は手に持った杯を眺めていると、後ろから近づく気配があった

 

誰か確かめようとすると、紗蘭、と鈴の音が聞こえ、蛟魔王は心底意外そうな顔をする

 

「なんや、随分懐かしい御方の登場やね」

 

「うむ、おんしと会うのは本当に久しいな、蛟劉。何世紀ぶりだ?」

 

「前々から思ってたんだけど、白っていくつなんだ?」

 

白夜叉が紫龍をロープで縛って現れた

 

「しかし、よく僕がここにおるってわかったね。紫龍君からでも聞いたん?」

 

蛟劉がそういうと、白夜叉は紫龍を睨む

 

「龍よ。おんし、蛟劉の居場所を知っておったのか?」

 

「いや、五年前にここで会ったけど、もういないと思うじゃん」

 

白夜叉が殺気を込めて睨むと、紫龍は言い訳がましく口を開く

 

「あれ?その時に僕『当分は此処から離れるつもりはない』って言わんかったけ?」

 

「お前らと人間の時の感覚の違いを分かれ!」

 

紫龍が二人にツッコミを入れると、二人は高らかに笑う

 

「いやはや、紫龍君は相変わらず反応が面白いな」

 

「うるせー、蛟劉」

 

蛟劉の言葉に紫龍がぶっきらぼうに返すと、蛟劉は懐から手紙を出した

 

「これは長兄からや。今回の魔王騒動の主犯格らの情報らしいですわ」

 

それを聞き、二人はとても驚くが、蛟劉はのんびりとした口調で続けた

 

「百年ぶりに呼び出したと思ったら、お使いを頼むなんて人使い荒い義兄ですわ」

 

「それはお前の実力を信じてだろ。内容によるが、いつ魔王に襲われるかわからないからな」

 

紫龍がそう言うと、白夜叉が口を開いた

 

「なあ、蛟劉よ。おんしに一つ頼みたいことがあるのだが・・・」

 

「面倒事は御免や。そっちの紫龍君に頼んだらどうや?」

 

白夜叉の言葉に蛟劉はすぐに否定し、迦陵と同じく紫龍を推す

 

「はあ、おんしもか。まあ、無理強いをさせるわけにはいかんな。帰るぞ、龍」

 

白夜叉がそういって立ったので、紫龍も立ち上がると、蛟劉の脇腹に傷跡のようなものが見えた

 

「おい、蛟劉。それどうした?」

 

「あ、これ?喧嘩止める時に一撃貰ってしもうたんや。しかし、凄い女の子やったな。気を失ってるはずなのに一撃入れられたんや」

 

すると、白夜叉は驚きの表情を浮かべる

 

彼女には蛟劉に一撃入れれる女の子と言ったら一人しか思い浮かばないからだ

 

「まさか、黒ウサギに手を上げたわけではあるまいな!?」

 

「は?違う違う。僕が喧嘩を止めたんはグリフィスの小僧とショートカットの女の子や。確か春日部って娘やったかな?」

 

それを聞いて二人はとても驚く

 

二人の知ってる彼女の実力では蛟劉に手傷を負わせられるほどの実力を持ってるとは思わないからだ

 

「それと、そこに赤髪の男の子がおったんやけど、君の子やろ。名前は紫炎」

 

蛟劉が紫龍を指さしながら言うと、紫龍は頷く

 

「やっぱりか。結構似てたからすぐにわかったわ」

 

それを聞いて紫龍は疑問符を浮かべる

 

「そうか?レティシアやサラは気づいてなかったみたいだが」

 

「それは君を君としてしか見てないからや。僕は性格、というより本質が似てると思ったんや」

 

紫龍はそれを聞いてさらに頭をひねらせ、白夜叉はそれを聞いて納得したようだ

 

「しかし、あの女の子もやけど、君の息子は強そうやったわ。昔、君を最初に見かけた時のような感覚に襲われたわ」

 

そう言った蛟劉の目には何か秘めているようなものだった

 

紫龍には何か分からなかったが、同じ魔王だった白夜叉には少しわかるのだろうか、少しニヤリとする

 

(いくら強くても自分には勝たせない、という魔王の自尊心。枯れ木の流木に火をつけるとはな)

 

そして、白夜叉は蛟劉に向き直り、ニヤリと笑みを浮かべる

 

「おんしに一つは話がある」

 

「面倒事はお断りやで」

 

白夜叉の言葉に蛟劉は飄々とした態度で答えたが、白夜叉はその言葉を無視して次の言葉を紡いだ

 

「“斉天大聖”に会いたくないか?」




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