問題児たちが異世界から来るそうですよ?―振り回される問題児―   作:gjb

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第八十話

次の日、紫炎と耀はヒッポグリフの騎手の契約書類を見に行くと、女性参加者は水着着用とあったので耀の水着を探しに来ていた

 

「ねえねえ、どれがいいかな?」

 

そういって耀が紫炎に見せてきたのはセパレートタイプの水着と、ビキニタイプの水着、そしてスク水(旧タイプ)だった

 

「そうだな。まず、スク水は除外してもいいと思うぞ?というより、何でそれをチョイスしたんだ?」

 

「だって、男の人はこれが好きだって聞いたから」

 

「誰から聞いた!」

 

偏った知識を植え込まれた耀に紫炎が魂のツッコミを入れる

 

「誰って・・・白夜叉」

 

紫炎はそれを聞き、がっくりと肩を落とす

 

「耀、とりあえずそれはやめてくれ」

 

「・・・わかった」

 

紫炎の言葉を聞いて耀は迷ったが、言う事を聞いてくれた

 

(まあ、似合わないわけじゃあないんだけどなぁ)

 

紫炎が耀のスク水姿を妄想していると、耀に思いっきり頬を引っ張られた

 

「ねえ、話聞いてた?」

 

「ふいまふぇん。ひいてまへんでした」

 

紫炎が正直に言うと、耀は深くため息をつく

 

「とりあえず一回試着してみようと思うから感想を聞きたいって言ったの。それじゃあこれに着替えてくるから」

 

そういって耀はセパレートタイプの水着に着替える為に試着室に入って行った

 

少しすると、耀は恥ずかしそうにしながら出てきた

 

「どう、かな?」

 

「あ、ああ。とっても似合ってる」

 

紫炎がそう言うと、耀はとても嬉しそうに微笑む

 

「そ、そう?それじゃあこれにしようかな」

 

「いいと思うぜ」

 

すると、耀が紫炎の腕に抱きつく

 

いくら小さいとはいっても、布一枚しか纏っていないので感触が腕に伝わってくる

 

「よ、耀?」

 

「折角水着に着替えたから、ヒッポグリフを選びに行かない?今なら濡れてもいいから」

 

小さいとはいえ胸を押し当てられて上目遣いで彼女が頼んで来たら断れる男がいるのだろうか、いやいないだろう

 

「そうだな。けど、この上着を着てくれ」

 

(他の奴に出来るだけ見せたくない)

 

紫炎はそういって上着を渡すと、耀は素直に着る

 

「それじゃあ、行こうか。これで私の水着姿を見られにくくなったし」

 

それを聞いて紫炎は自分の独占欲を見透かされて、恥ずかしくなる

 

「もう行くぞ!」

 

紫炎はそういって耀を抱きしめて、ヒッポグリフの貸し出し場まで飛んで行った

 

―――――――――――――――――――――

 

紫炎達が水着を選んでいる時、飛鳥は碓氷と一緒に水着を選んでいた

 

(み、南の水着ってこんなに面積が少ないの!?)

 

飛鳥が驚いている水着は、水着としては普通なのだが、昭和女子の彼女にとっては大胆なものだった

 

「あら?これは露出が少ないわね」

 

そういって飛鳥がとったのはスク水だった

 

「あ、飛鳥さん。それはちょっと・・・」

 

「そ、そう?」

 

そういって飛鳥はスク水を戻す

 

(そりゃあ、似合うかもしんないけど・・・)

 

碓氷がそう考えると、スク水を着た飛鳥を思い浮かべてしまう

 

頭を振ってその妄想を消し去ると、飛鳥がその行動を不信に思い、声をかける

 

「どうしたの?」

 

「い、いえ、なんでもないです。それより、良いのはありましたか?」

 

「ちょっと露出が多いものばかりだから、決めにくいわ」

 

少し悩んでいる飛鳥を見ていると、視界の端に黒ウサギが映った

 

「黒ウサギさんがいたんですけど、ちょっと意見を聞きに行きませんか?」

 

「・・・そうね、そうしましょうか」

 

一瞬暗い顔になった飛鳥だったが、すぐに元の表情に戻る

 

(二人っきりがよかったんだけど、しょうがないか)

 

そう思いながら、黒ウサギのところに行く

 

「あら?お二人ともどうしたんですか?一緒に水着を選んでいたのでは?」

 

「いえ、僕はどんなのが良いか分からないので黒ウサギさんに選んでもらおうかと思いまして」

 

それを聞いた黒ウサギの目が少し光った気がした

 

「分かりました。ちょうどいいのがありましたからどうぞ来てみてください」

 

「あ、ちょ」

 

飛鳥の言葉を待たずに黒ウサギは、水着を持って飛鳥と一緒に試着室に入って行った

 

少しすると、黒ウサギが満足そうに出てきた

 

「モチーフは『箱入りお嬢様の初めての水遊び』です。どうぞ」

 

黒ウサギがそう言うと、試着室のカーテンを開ける

 

するとそこにはパレオのついた赤いビキニの水着を着て、恥らいながら立っていた

 

それを見た碓氷は見惚れて言葉を失っていた

 

「く、黒ウサギ。やっぱりこれは大胆じゃないかしら?碓氷君も唖然としてるし」

 

「い、いや」

 

「飛鳥ちゃんの可愛さに見惚れてただけだよな」

 

碓氷が飛鳥の言葉を否定しようとすると、いつの間にか紫龍が現れて碓氷の気持ちを代弁していた

 

「し、紫龍さん!?」

 

「碓氷、若いんだから言いたいことはちゃんと言っとかないと後悔するぞ?」

 

「茶化さないでください」

 

紫龍の言葉に碓氷が顔を赤くしながら言い返すが、飛鳥は照れのあまり顔を赤くしたまま固まっていた

 

「それじゃあ、碓氷の本音を飛鳥ちゃんに伝えたことだし、黒ウサギちゃんに本題を伝えるよ」

 

「私にですか?」

 

紫龍の言葉に黒ウサギが警戒しながら聞き返す

 

「白から『私が水着を選んでやるから安心せい』だって。それじゃあ伝えたからな」

 

「え!?ちょ、ちょっと!」

 

紫龍は言う事だけ言うと、その場から消えた

 

「・・・ねえ、碓氷君。あの人はいったい何者なの?」

 

紫龍のギフトを見慣れていない飛鳥がいきなり消えたことに驚きながら聞く

 

「僕にもよくわかりません。あの人、昔のことを全然話したがらないので」

 

「そうなの。それじゃあ、着替えて春日部さん達と合流しようかしら」

 

「YES!そうするのですよ。・・・ん?」

 

黒ウサギが飛鳥の言葉を返すと、リリが水着を選んでいるのが見えた

 

「リリ、何してるんですか?」

 

「ひゃあ!く、黒ウサギのお姉ちゃん」

 

黒ウサギが声をかけると、リリが驚いてしまった

 

「リリ、どうして水着を選んでるんですか?」

 

「えっと、お手伝いの時に水着を着るように頼まれたんです」

 

「なっ!誰ですか、そんなことを頼んだのは!?」

 

黒ウサギが怒ってると、着替えた飛鳥と碓氷がやってきた

 

「どうしたの?黒ウサギ」

 

「そんな大きな声を出すと周りに迷惑ですよ?」

 

「飛鳥さん、碓氷さん。これが大きな声を出さずにはいられないのですよ!」

 

そういって黒ウサギはリリから先ほど聞いたことを言う

 

それを聞いて碓氷は苦笑するが、飛鳥はそうではなかった

 

「あら?それなら私はペストとレティシアの水着を選ぶわ」

 

「止めてください!」

 

ノリノリの飛鳥に黒ウサギが突っ込みを入れる

 

「頼まれたらしょうがないじゃない。心配ならあなたも一緒に選んだら?」

 

「・・・分かりました」

 

黒ウサギはこれ以上いっても無駄だと判断したので、しょうがないといった表情をする

 

「それじゃあ、僕はちょっと席を外しますね」

 

碓氷がそう言うと、飛鳥が少し寂しそうに聞く

 

「どうしてかしら?もう仕事は全部終わったって聞いたけど?」

 

「水着選びを手伝えるならついて行ってもいいんですけど、お二人が選ぶなら僕は別にいいかな、って思って」

 

碓氷がすまなさそうに言うが、飛鳥は碓氷の手を握る

 

「別に選ばなくてもいいから一緒にいてほしいの」

 

「え?」

 

「あ!」

 

飛鳥の言葉に碓氷は顔を赤くし、飛鳥も自分の言った言葉の意味を理解して顔を赤くする

 

「あれ?お二人ともどうしたんですか?」

 

何にも気づいていない黒ウサギが呑気に聞く

 

「い、いえ。何でもないです」

 

「そ、そうね。それじゃあ、碓氷君。一緒に他のところを見に行きましょう」

 

そう言って飛鳥は碓氷の手を握って他の場所へ走って行った

 

「本当にどうしたんでしょう?」

 

「さ、さあ?」

 

本当にわかってない様子の黒ウサギを見て、リリは苦笑するのであった

 


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