武器を展開する、ランポードとカラサワだ。高機動機と言っていたので念のため距離をとる。近づかれてからでは遅すぎるからだ。
相手が展開しているのはレッドパレット2丁。高機動の射撃機、セシリアと同じタイプか。
「当たれ!」
レッドパレットの弾幕を避けながらランポードを連射、それと同時にカラサワのチャージを開始する。
チャージ時間は約7秒。ISの機動力ならすぐに距離を追い詰めることができる時間だ。打鉄弐式は元の打鉄の代名詞である装甲をスラスターに変えているので気を抜いているとすぐに距離を詰められかねない。
お互いに撃ちつつ避けつつの戦闘。シールドエネルギーはどちらもほぼ同じ程度だ。
カラサワのチャージが完了し標準を定め、トリガーを離す。
いままでのライフルとは比べ物にならないほどの速度と威力のレーザーが彼女に命中。シールドエネルギーを大幅に削り取る。
「っ……なんて威力」
「まだまだぁ!」
ランポードのトリガーを引き続け、再度カラサワのチャージを開始。多少レッドパレットに被弾するもたいした威力ではない、一夏とセシリアの攻撃の方がもっと痛かった。
「火力が足りないなら……」
自分と同じ右肩の位置にミサイルポットが展開され、グングニルから警告音。――ロックオンされた
ミサイルの発射を自分の目で認識。タイミングをずらし、連続して放たれているので3次元機動でも全弾回避は至難の業だ。
数々の選択肢から迎撃を選択した景斗は放たれたミサイルの進行方向と一直線になるように後退する。丁度自分とミサイルの相対速度が0になるように。
簪が両手のレッドパレットを連射、単純な機動をしている彼はあの時の一夏のように当て放題だ。
じわじわとシールドエネルギーが削られていく中、彼は前方と後方に意識を集中させている。
――アリーナの限界まで
――目の前のミサイルがすべて重なるまで
壁にぶつかる一歩手前。速度を落とし、カラサワを構える。ダメージは結構食らったがコレを全部食らうより――
瞬間、青白いレーザーがミサイルを全て貫き、それを追いかけるように爆発。
爆音と共に一本の光の帯がアリーナに産まれる。
観客席からの声には感嘆の感情が伺えた。
近くでレッドパレットを撃っていた簪から距離を取りつつ引き撃ちに転ずる。近距離で彼女の腕ならばレッドパレットでも十分なダメージソースになり得る、このままだと危険だ。
今度は俺の番、ランポードとカラサワで弾幕を張り、意趣返しとばかりにミサイルをロックオン、発射。
「お返しだ」
ミサイルを半分、間隔を開けて継続的に発射する。一夏と違い、迎撃手段を持つ簪はミサイルに向かって発砲する。
近接信管ミサイルだということがばれているのか、一切回避する素振りを見せなかった。
「くっ、だがお前はもうミサイルはないだろう!」
全弾迎撃され負け惜しみが彼の口から漏れる。弾幕もそれほどのダメージにはならなかった。
「ミサイルは……ただの副兵装……」
レッドパレットを両方とも量子変換。
……まずい、こいつは打鉄の後継機だった。射撃機ではなく格闘機。レッドパレットはあくまでオマケ。
出てきた装備は"夢現" 超高速で振動し物体を切断する薙刀。
とっさにミサイルを全段発射。装備をオックスアイとランポードに切り替える。
ミサイルは横へのイグニッション・ブーストで避けられ大した時間稼ぎにならないまま、彼女の接近を許してしまう。
オックスアイですぐさま至近距離からの迎撃。命中しランポードで追撃する。
「なんて、厄介な武装……」
「それは褒め言葉だ」
ランポードをヒートパイルに切り替え、接近戦に備える。あの速度からは逃げ切れないからこのヒートパイルで……!
牽制に一発オックスアイを放ち、向かってくる簪にヒートパイルを振りかぶり、カウンターの用意。
銃弾を避け薙刀と交差する、正にその直前。
文字通り空が割れた。
____
ピンク色のレーザーがアリーナを覆う遮断シールドを突き破り、生の空が見える。
響き渡る爆音は二つ、おそらく一夏の方にも同じ出来事が起こっているのだろう。
「なっ!?」
「え……」
既の所でお互いに動きを停止させ、もうもうと立ち上る黒煙の発生源を凝視する。
このISのことをすっかり忘れていた。断片的な記憶しか残ってないが、コイツはヤバイ。
「一体……何が……!」
「畜生! なんでだよ!」
口にした言葉はこの所属不明機への言葉か、忘れていた自分へ言った言葉か、彼も分かっていない。
「くそっ!」
ロックオン警報。この装備では……!
所属不明機にすぐさま残りのミサイルを全て放つ。その後すぐにオックスアイとカラサワを展開、チャージを開始する。
『試合、中止だ! 速く避難しろ!』
アリーナの観客席を金属のシールドが覆う。
黒い所属不明機がビームを連射、無論、狙いは俺たちだ。
煙が晴れ、初撃によって作られたクレーターの中心で所属不明機の全貌が確認できた。
――間違いない。無人機だ。
頭部に5つ付けられた、むき出しの赤いセンサー。腕が異常に長く、人間ではありえないほどの大きさをした手。
「おい! ボーっとすんな! 逃げるぞ!」
「……あ……」
「本当にヤバイって! あれは無人機だ!」
フルチャージしたカラサワを撃ち、脚部のシールドを展開。彼女の前に割り込みレーザーを防ぐ。
怯えて動けない彼女を抱え、回避行動をとる。すぐさまそこに数十発のレーザーが走った。
おい、なんでこんなに攻撃的なんだよ! 一夏が苦戦していた記憶は無いぞ!
「動けるか!?」
「もう大丈夫、動けるから……」
腕から離し、二手に分かれる。これで攻撃の密度は半分づつだ。
「どうだ、この状況で無事に逃げ切れそうか?」
「背中を向けたら……多分一瞬」
攻撃を必死にかわしつつ、通信をする。絶望的だ。
「出力も攻撃力も……競技用とは桁が違う……」
「戦うしか、無いのか?」
「先生を待つしか……」
被弾しシールドエネルギーが勢い良く減る。
「ああ! これじゃ先生が来るまで耐えられないぞ!」
軍用の威力ってこんなにも桁違いなのかよ!
「君のレーザーライフルなら……通じるかもしれない……」
そのとき思い出す、リミッターの設定を。
100%の出力ならば、数発で――
「ちょっと黙ってろ!」
怒号と共にオックスアイを撃つ。アレでも動きは止められるらしい。
「戦うのか?」
「倒さないと……先生も間に合わないかも……」
「ならば、俺も一緒に」
急いでカラサワの設定を変更しようと操作する。リミッターを解除し――
――いや、違う。
ここでヤツを倒すに当たっての、自分ができる最良の手段をひらめく。そうだ、ここは第2アリーナ、あいつはヒトじゃない。ならば――
「たしかその機体リヴァイヴのデータが使われてたよな」
「そうだけど……」
「なら、俺のハンドガンも使えるな?」
「たぶん……使えると思う……」
よし、これでピースは揃った。
「一撃必殺の手があるぞ」
「本当……?」
「ただ、お前にかなり負担が掛かる。決定はお前がしてくれ」
「具体的には……なにをすれば……」
「少しだけでいいから時間を稼いでくれ」
「……でも……武装が……」
「そのためのハンドガンだ。ヤツでも当たれば動けない」
「……わかった、引き受ける」
「ありがとう! 今合流するよ」
もう一丁のオックスアイを展開、アンロックする。
「弾数は満タンの20発づつ、合計40発だ」
「十分……」
「格納庫にコンテナにまだ誰にも見せてない物があるんだ。それを使う」
攻撃をよけながら話を続ける。これ位ならできる。
「じゃあ、行ってくる。俺の後ろは任せた!」
目指すはあの格納庫。使ったことは無いが、やるしかないんだ。
カタパルトの奥は壁で封じられていた。くそっ、時間を掛けている場合じゃないのに。
「おい、誰かいるか!? いたら開けてくれ!」
「景斗君か? すまない、しばらくここは開けられないんだ!」
あの先生の声、なら多少はやり易い。
「どうしても行かないといけないんだ! 穴開けるぞ!」
ヒートパイルを展開。即座に殴りつける。だが表面が少し融解しただけでビクともしない。
「無理だ! 1日やそこらじゃこれは壊せない!」
「ああ、畜生!」
右腕の装甲を解除。今は緊急時だ、仕方ない。
壁に手をつけ、魔法を使う。5メートル四方の穴を開ける程度に溶かしてしまおう。
表面がドロドロと溶け、中央部分に穴が開く。
「嘘、何をしたらこんなに……」
「危ないぞ! 下がって!」
右手の装甲を展開、最後に足のシールド部分で蹴りつけ、穴を開通させた。
奥のコンテナまで真っ先に移動する。
「先生も手伝ってくれ!」
「お、おう! 分かった」
グングニルでコンテナに触れ、ロックを解除。高い電子音が鳴り響き、6枚の巨大なチェーンソーが姿を現す。
OVERED WEAPON、ISの規格を無視して製造された兵装であり、今目にしている兵器の名前は、対IS規格外六連超振動突撃剣。通称グラインドブレード。
「なに、これ」
「装着します。後ろに背負うためのパーツがあるはずです」
「そこに取りつけるだけか?」
「そうです」
マニピュレータを使い、ISに"背負わせる"
規格外の武器なため運搬は原始的な方法しか手段はない。
「OKです、こいつが認識しました」
「本当に使えるのか?」
「はい。では彼女が頑張っているので、助けに行ってきます!」
カタパルトは動かない。イグニッション・ブーストで急いでアリーナに飛び出した。
____
黒い無人機に執拗に追われ、オックスアイで硬直させて距離をとる。先ほどから絶え間なくそれが繰り返されていた。
(速く来て……もうあまり後が無い……)
無人機故に射撃時の予測と動作にブレがなく、完璧な射撃を放っていた。その射撃と威力の高さ、連射数の多さに簪は苦戦を強いられていた。
オックスアイの衝撃によって攻撃の足並みは崩せてはいるが、形勢が変動することは無く時間稼ぎにしかならなかった。
(もう……弾が……)
突如、スラスターを大きく使い接近戦を仕掛けてくる無人機。大きな拳が簪に降りかかる。避けられない、と直感した彼女はオックスアイを撃つ。
1発は外し、咄嗟のもう1撃。拳に命中し、防ぐことに成功するが、もう片方の拳を振りかぶっているのを見る。もう、打つ手は無い。
(……生きて……いられるかな……)
自分の命の危機を感じ、諦めが彼女の思考を埋め尽くして――
――イグニッション・ブーストを使い、速度、質量、共に増えた景斗が無人機を蹴り飛ばした。
もう目の前には脅威は存在せず。
「耐えてくれて、ありがとう。後は俺が片付けるから」
その横顔はとても頼もしく見えた。
____
無人機は錐揉み状に吹き飛び、地面に激突。二人との距離を大きく突き放した。
そこに近づく景斗、武装は何も無くて右肩の横に大きなチェーンソーが見えるだけ。
「これで、終わりにする」
項目"unknown unit"を選択、起動。
背中に接続の衝撃を感じ
『不明なユニットが接続されました』
自分の視界にノイズが走る。
エネルギー残量、レーダー、機体情報、FCS、ブースターなど、表示されているありとあらゆる情報に"ERROR"の表示
稼動、右腕に6つのチェーンソーが固定され、固まっていた刃が広がる
『システムに深刻な障害が発生しています。直ちに使用を停止してください』
メインシステムにハッキングを仕掛け、エネルギー出力系のリミッターを解除。起動に必要とする莫大なエネルギーを無理矢理配給させ、機体に大きな負荷が掛かる。
コアの意思に反して機体から警告が入り、背中のブースターが大きな炎を上げた。
チャージを開始。6枚のチェーンソーが円形に並びドリルのように回転を始める。炎を纏い、自分自身にもダメージを与えている。
巨大なエネルギーを探知した無人機は迷う素振りを全く見せず、逃亡しようと背中を見せブースターに点火する。
浮かび上がったその瞬間、2つの銃弾によって叩き落される。――更識簪の放ったオックスアイによって。
「まだ私も……戦える」
「ナイスだ! 簪!」
グラインドブレード、チャージ完了。地面から起き上がる無人機。
「――もう遅い! 俺たちの勝ちだ!」
イグニッション・ブーストなんて比べ物にならないほどの推力が発生。グラインドブレードを突き出し、突撃。
その全てを焼き尽くす暴力で無人機を抉り、貫き、――破壊した。
残されたのは、地上に二筋の炎の軌跡と、胸元を中心が消し飛び破壊され、四肢が飛び散った無人機の残骸。血の赤色は一滴たりとも出てこない。
この2人の戦闘は一夏達とは異なり、紛れも無く戦争の一部分に該当する戦闘だった。
ちょっと納得のいかない出来になった
書きたいこと書けたからいいかな?