4/29 人称の統一 + 未完成のままの部分が1行あったので加筆
翌日の昼休み。クラスのみんなが食堂に向かおうとしている時、教室では一夏と景斗が会話していた。
「さあ、食堂で昨日のことについて話してもらうぞ」
「待て、……色々問題がある」
「なんだよ」
「まず人目が多すぎる。当事者以外には聞かれたくないし、まだ話すとは言っていない」
「じゃあ何時になるんだよ」
「知らんわ。今日は別の人と食べるから箒とかと行っていいよ」
「別の人って誰?」
机から立ち上がり捨て台詞の様にこう言った。
「俺の恩人」
____
「すみませーん」
「え? 何で佐藤君が4組に?」
「本当だ、本当に佐藤君だ!」
4組の前方のドアから教室を覗き込む。すぐに女の子が集まってしまい、注目が集まる。
「えーと、簪さんいます?」
俺の言葉を聴き、みんなの動きが少々硬くなる。その後、後ろをチラッと見たり、同じグループの仲間で話し始める。
「もしかして更識さんのこと?」
「やっぱり昨日のことで何かあったんだよ」
「あの子なにしたの?」
女子特有の嫌な雰囲気。嫌な汗が体から噴き出し、逃げるように教室に足を踏み入れた。彼女の場所はさっきの視線で大方分かっている。
「簪さん。何処かで一緒にご飯食べません?」
「……え? 佐藤君?」
彼女は先ほどまで机に座りながらキーボードを叩き続けていた。
「ほら、昨日また話そうって言ったじゃんか」
「……こんなに早いとは……思わない……」
「ちょっと事情が変わっちゃってね、今大丈夫?」
「大丈夫……食堂で?」
「いや、人目が多い場所は避けたい。屋上に行こう」
「……うん、とりあえず購買に行こっか……」
____
屋上。購買で買ったパンと紙パックのジュースを持ちながら周りを見回す。都合よく誰もいなかった。
「誰も……居ないね」
「そうだね、気が楽でいいや」
「どこで食べる……?」
「それなら」
あの場所、たしか小さく傷を付けておいたはず。日中であったため思いのほかすぐに見つかる。
「あった。ここに座ろう」
「……どうしてここ? あっちの方が景色が綺麗……」
地面に座り込む。彼女は立ったままだ。
「実はここ。屋上の監視カメラの死角なんだ」
「なんで……知ってるの?」
「秘密」
一回転しながら周りを見回す簪。遠心力で制服のスカートが膨れ上がり白い太ももが目に飛び込んでくる。
とたんにこの状況を意識しだしてしまった。女の子と2人きり、一夏みたいにこんなことをした経験など無い。
「そうみたいだね……そんな気がする」
「どうしたの? 場所変える?」
「……ここで良いよ」
俺は彼女が腰を下ろすと共に、パンの包装を開けた。先ほどの感情を表に出さないように平常心を保たなければならない、と心に小さく決心。今ここで感情を口にする勇気など彼には無い。
「昨日は助けてくれてありがとう」
「……こっちも、助けてもらったから……お互い様」
「ふぅ、やっと落ち着ける」
「今日は……一体何の用?」
「やー、ちょっとね。今日の放課後ミグラントの人が学園に来るんだ」
「なんで?」
「俺も分からない。多分グラインドブレードは今日で見納めかな」
「……グラインドブレード?」
彼女はグラインドブレードを誰よりも間近で見ていた人物であるが、詳しい概要までは知らない。景斗が今日、彼女とこうして昼食を食べようとした動機の1つにはグラインドブレードが大きく関わっている。
「アイツを倒すために使った武器」
「……あの……背負っていたやつ?」
「それ、OVERED WEAPONって言うISの規格外武装。詳しくはわからないけど俺のISでしか動かないらしい。その威力は……言わなくても知ってるよね」
「……うん」
「グラインドブレードを使っているところを直接見ていたのは簪さんだけだ……どんな印象を持っている?」
重々しくその言葉を口にする。彼女は5秒にも満たない時間だが、黙り込んだ。彼にはその時間はとても長く感じられて、下の学園から聞こえる声がやけに耳に入ってきて。頭の中が真っ白になったとき、彼女が口を開けた。
「……始めは、良く見えなくて……何持ってんだろ、って思ってた」
「…………」
景斗は一切口を出さず彼女の話を聞いていく。
「刃が見えて……動き始めたとき、ちょっと怖いって感じた」
びくりと景斗の体が動く。怖いという単語に無意識のうちに体が反応している。
「あの敵を壊して……とっても恐ろしいと思った」
「……やっぱり?」
たどたどしく景斗は質問する。グラインドブレードは人に恐怖を与える武装であることは景斗もわかっていたが、どうしても他の人の意見を聞いてみたかったのである。そして彼女は顔を赤くしてこう言った。
「……でも、そのときの佐藤君は……すごく、かっこよかった……」
「え?」
経緯は違えどもありふれた物語の一幕のようであった。多少美化されているのかもしれないが、彼が彼女を助けたと言う点について嘘や偽りは無い。
「もう駄目だ、ってあのとき思ってたの」
「むぅ……」
「間に合って、助けに来てくれて、あんなに強かったのに1撃で倒しちゃって……アニメのヒーローみたいだった」
「ヒ、ヒーロー?」
「うん」
「……んー……」
「……おかしかった……?」
可愛らしい女の子に想定外の言葉を告げられる。景斗には安心、照れ、驚きなどの色々な感情が産まれ、その中でも特に強く、真っ先に顔に出そうな照れの感情。景斗はそれを紛らわすためにこう言った。
「いやね、ヒーローなのに助けられた人の方が強いってのは……」
「……ふふ、これでも代表候補生だからね」
小さな笑い声。それを聞いた景斗は心の中でさらにわけのわからない感情が産まれた。誤魔化せたことにホッとしていたのか、単純に彼女の笑った顔を見れて嬉しいと思ったのか。とにかく機嫌が良くなって、間を開けずに言葉を返す。
「ごもっともですな」
「でも……君も中々厄介だったよ」
「なんと! 厄介か、俺も結構いける所までいけるのでは?」
「ふふふっ……厄介なだけだよ。まだまだ勝ちまで遠いってば」
「し、知ってるわ! 夢見たっていいじゃないですか……」
「私が最高の状態だったら……瞬殺だね」
「ああ、そう言えば未完成の機体だったっけ、更にショック」
「動けてたといえば動けていたけど……もっとパターンを覚えないと」
「やっぱり慣れですか。そうですか」
余談だが、ドアの向こうの空間ではISは展開できなかった。時間が止まっているので当然といえば当然だが。つまるところ全うなISの戦闘に関しては彼が現実でそれに消費した時間相応の実力になる。国家代表候補生との実力の差は到底埋まりそうに無い。
「……まだ初心者なんだから……しょうがない」
「もっと練習しないとね。これからの行事についていけなさそうですね、ええまったく」
「がんばってね。人事みたいに言ってるけど……」
お互い、昼食を食べ終わる。彼女のペースに合わせた景斗は後半、ジュースをチビチビ飲んででパンに手をつけない時間を作っていただけだったが……
「さて、今日は我侭に付き合ってくれてありがとね」
「別にいいよ……教室にいるよりも楽しかったから……」
「なら良かった。ところで今日のミグラントの訪問、一緒にくる?」
「遠慮しておく……機体のオーバーホールをしないといけないから……」
「そうか。じゃ、戻ろうか」
「……うん」
――今日の話を聞いて決心が付いた。今日、一夏に説明してしまおう、グラインドブレードについて――
____
放課後の教室。箒やセシリアよりも早く一夏の所へ移動し彼の制服を引っ張る。
「一夏、一緒に第二アリーナに来い。昨日のことについて話してやる」
「やっとか、待たせやかって」
「速く行くぞ、只でさえ俺たち男は目立つんだ」
「おい! ちょっと待てって、置いてくなよ」
先に足を進め、後ろから一夏が追いかけてくる。できるだけ早く周りの視線が無いところに行ってしまいたい。と、景斗は歩くペースを決して遅くすることはなかった。
「なんでもう話す気になったんだ?」
「詳細な説明をするタイムリミットまであと数時間なのと、昼休みに人に相談したから」
「お前の恩人って一体誰だよ」
「4組の専用機持ち。トーナメントでの俺の対戦相手」
「なるほど、当事者ってわけ、相談の相手にはうってつけか」
校舎を出て、アリーナへの道を歩く。周りに目をくれず、最速で校舎から出てきたので誰も居ない。だから、景斗は大胆にも昨日の話を振った。
「なあ、お前は昨日の襲撃、どうだった?」
「どうだった、って言われても」
「俺はな一夏、死を覚悟したよ。俺のせいで対戦相手の子は後一歩でシールドエネルギーがなくなるところまで追い詰められたし、結果的に倒せたけれど、どこかで少しでも間違っていたら今ここでお前と話していることはできなかった」
男性特有の低い声。だが、それは何処か哀愁を漂わせ、一夏に重圧を感じさせるには十分すぎるほどの雰囲気とその内容。景斗の独白であり救済を求めるような声。景斗が初めて見せた弱い心はあまりにも小さくて、雰囲気に飲まれ霧散してしまった。
「……俺は、入院はしたけど。俺が死ぬ何て考えられなかった。……お前は一体、何と戦ってたんだ?」
「赤い目が5つ、手が大きくて、ピンク色のレーザーを出す砲門が4つある無人機。はっきり覚えている。お前は?」
「……同じだ……なぁ、何が違うんだ? 何で俺はやられて、お前は死にそうになって、でも俺みたいに相打ちじゃなくてしっかり撃破して、どうなってんだよ」
「俺にもまだわからない。でも、俺がこれから見せるものを見れば、なんか分かるかもな」
第二アリーナに到着、更衣室に入りISスーツに着替える。この間、何も話が進むようなことは無く、そのまま2人はアリーナに出てくる。
今日、ミグラントが指定した場所はここの第二アリーナ、グラインドブレードを置いていった格納庫だ。昨日の襲撃により立ち入りが制限されていたが何故か無理が通ったようで、そこに漬け込んで一夏を連れてきた。もちろん誰も人は居ない、学園の教員も口を出せない絶対の不干渉の空間がここにはあった。
「一夏、念のため白式を展開しろ」
と言いつつ自分もグングニルを展開。お互い武装は持っていない。
「よく見てろ」
グラインドブレードを展開する。しっかりと固定された状態で展開され、景斗の佇まいは戦後、精神的に崩壊してしまった兵士に良く似ていた。
「それか、お前が抱えていたものは」
「これでアイツを倒し……いや、壊したんだよ。ぐちゃぐちゃにな」
「そうかよ」
突然一夏が雪片弐型を展開する。
「なに展開してんだよ」
「戦ってどんだけの物か確めるんだよ」
「アホかお前。死にたいのか?」
「は?」
「よく見ろよ、後ろのチェーンソー6枚を。どう感じた?」
「ISの装備にしては変だな、としか」
――そう考える奴がいてもおかしくはないが、良く考えてほしい。絶対に何かあるってことぐらい、分かるはず――
「これな、ISの装備じゃ無いんだよ。OVERED WEAPONって言うISの規格外武装。もう言いなれたよ」
「どういう事だ」
「これであの無人機を壊した、1撃でな。俺がアイツを倒せたのはほぼコイツが在ったからだ」
「なるほど、それがね」
「お前の零落白夜も似たようなものだ。どちらも威力が過剰」
「勝手に決めんなよ。手加減すれば零落白夜は平気だ」
「それは全力だったら相手が危ない、って言ってるようなもんだ」
何も言わず、ただ狼狽える一夏。重い話は景斗自身も好まない。なのでここらで切り上げることに決めた。
「とりあえず、大体こんなところだ。これを使ったおかげで助かったが、めんどくさい事になりそうだった」
「めんどくさい事?」
「競技用じゃないし、そもそもIS用じゃない。こんなもの持っているだけで厄介ごとの種だ」
「でも結局ならなかったんだろ?」
「それは結果論だ。もしかしたらを考えろって」
「……」
「まあ、これは今日でさよならだ。厄介ごとに関しては安心していい」
「良かった。友達が居なくなるなんてことにはならないのか」
「だけど、まだこれから色々避けられないことが出てくるぞ、ISに関わっている限りは」
これから学年別トーナメント、夏には軍用機との戦いがある、いずれも避けることきできない。景斗の存在が加わったことよってどう変わっていくか、アニメのうろ覚え知識もそろそろ役に立たなくなり、今の段階では予想も付かない。
「なら、強くならないと。これからのために」
不安を目の前にしている景斗に向かって、一夏は言った。その単純で前向きな言葉は今までの落ち込んだ気持ちを吹き飛ばして、つい笑いながら言ってしまった。
「違いない」
話の書き方を変えてみた。ええ、粗製ですとも
さて、シャルとラウラはどうしようかな。ヒロインになるのかな