タイトル未定 ISの転生モノ   作:S字フック

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一夏の使いやすさは異常


20 新装備

 無人機の襲撃から1週間たった日の午後4時半を過ぎたあたり。俺は第一アリーナ更衣室でISスーツに身を包んでいる最中だ。

 やっと調査が終了したようで今日からアリーナの開放され、一夏の異様なほどに熱烈な訓練のお誘いを断りきれなかったが事情により少し遅れてしまい、今こうして着替えている。

 

 遅れたのにはまたまたミグラント関係の用事があったから。といっても事の発端は先日俺が要求した武装で、それを受け取った際まるで麻薬の密売人のごとく周囲を警戒し、量子変換も俺本人にも見せず隠れて行ったことで多少時間が掛かり、学園にこの武装の所持を知らせていないので弾薬の支給を受けることができない。そこで余ったバススロットに限界まで弾薬を詰め込んでさらに時間を消費。

 

 ちなみにその最中に「レギュレーション違反の武装だから見られたらややこしいことになる、使いどころは考えるように」と釘を刺された。

 

 量子変換と平行してグングニルから何かデータの吸い出しもしていた。彼が言うには2ヶ月に1回、こうしてデータを直接取りにくる必要があり、この前訪れた際にも行っていたらしい。何故もう1回データ取りをしているのかというとチーフからの命令で、少し気になる部分があるからだと。

 

 例の武装と弾薬の量子変換が終了したところでまた作業が発生した。この武装についてデータを隠しておかなければならないのでグングニルのデータを改竄することだ。彼は空中にコンソールを投影しすばやくデータの書き換えを行う。多数のディスプレイとキーボードを同時に操る姿に感動し、俺は咄嗟に感激の感情を言葉にした。

 

 返ってきたのは謙遜と、普段の職場ではこの量の倍近い量を使うと言った自慢。つまりこの時目の当たりにしていた動作は彼に言わせるとどうと言うこともない作業で、俺と受け答えしながら作業を進める姿に憧れの感情が芽生えた、カッコイイと思ったのだ。

 

 そこから話が発展してメンテナンスやプログラムについて簡単に話を聞いた。プログラムに関してはインターフェースなどの問題もあり整備課などで学ばなければとっつきにくい言われたが、メンテナンスに関しては豊富なドキュメントがあり、幾つか入門にピッタリなものを教えてもらったので直ぐにでも試してみようと決心し、そのまま別れた。合計で1時間半ほど掛かり、訓練の時間が少なくなってしまった。

 

 

 授業でもISは座学がほとんどで実際に動かすことになるのはまだまだ先になる。つまりこの1週間の間ISを動かしていないのだ。もちろん他のアリーナも使用できないことも無かったが、元々第一、第二を使用していた同級生や上級生の人で大変賑わっていて、実質的にほとんど入るスペースはなかったと言えた。

 

 そのため今回の訓練では素人目で見てウォーミングアップ、それか以前の感覚を取り戻すものになるかと言ったところ。だがブランクで腕が衰える次元にまで至っていないし戦闘も未だに探り探り、しかも武装の追加で戦術も大きく幅が増えたことによってもう自分の思考の限界は超えていた。

 

 しかし1つ1つ着実に手を付けている間に何だかんだでそんな悩みは無くなっていて、いつの間にか全ての課題が解決していることもみんなより長く生きているので分かっている。だが今感じているこの何とも言えない気だるさだけは拭いきれずにいる。

 

 着替えが終了し、更衣室を後にする。扉を開けたとたん耳に入ってきたのは一夏の悲鳴。それに続けてセシリアの笑い声と箒と鈴の怒鳴り声。みるみるとやる気が削がれたが、それでも俺は足を止めることは無かった。

 

 アリーナに入ると同時にグングニルを瞬時に展開、ハイパーセンサーを通さなくても分かるぐらい単純な光景を目の当たりにし、同情だかなんだか分からない感情を発生源に、声を漏らす。

 

「うわぁ……」

 

 そこに広がっていたのは集団リンチの現場、俺はこの光景を見たことを少し後悔した。足を止め、帰って座学に励めば良かった。要約すると関わりたくなかった、無関係のままで居たかった。

 

 しかしこれを見てしまった手前、引き返すと言った選択肢は個人的には選べない、罪悪感が後に引くのは気分がよろしくない。けどここに突っ込むのも気分がよろしくない。つまりは軽いジレンマ。

 

 俺は5秒ほど考えた後にアリーナに飛び立つ、引かなかったのはどう考えても訓練をしたほうが合理的だと思ったから。

 

 展開するはオックスアイとショットガン、男1人と女3人に向かって一気に距離を詰める。幸い全員が熱中していたため気付かれることは無かった。

 

 中距離からイグニッション・ブーストを使用、同時にオックスアイのトリガーを引く。イグニッション・ブーストの加速を弾速に上乗せされた加速撃ち、狙いはセシリア。

 

 そのまま3つの格闘機に接近。箒にはオックスアイ、鈴にはショットガンのダブルトリガー。遠距離で射撃に徹していたセシリアの可愛らしい悲鳴が聞こえたことを銃声で上書きするように、俺は引き金を引く。

 

「「きゃあ!」」

 

 手っ取り早く制圧完了。何故こうなったかはあらかた予想が付いているので話は聞かなかった。

 

「け、景斗。助けてくれた――」

 

 一夏の明るく悪びれの無い笑顔。その笑顔になんだか無性に腹が立って、言葉を聞いている最中に一夏に向かって引き金を引いた。

 

「ぎゃぁ! な、何すんだ!」

「うるせぇ! どうせお前が原因なんだろ!?」

 

 は? と言わんばかりの顔をする一夏。そして俺の攻撃を受けた女の子3人が集まり

 

「何をするんだ!」

「何をするんですの!」

「何をするよ!」

 

 非難轟々。とてもややこしい状況の出来上がり。織斑先生の気持ちが少しだけ分かった気がする。

 

____

 

 

 今の状況を一旦整理してみよう。

 

 まず、一夏が俺を含めた4人を訓練に誘う、しかし俺は著事情によって遅れた。そこで集まっていた4人だけで訓練を開始する。ここまでは俺の想定の範囲内だ。

 

 ところが一夏の不用意な発言により彼女ら3人が激昂、集団リンチに発展し逃げ惑う一夏。そこに俺が到着し、乱入し、鎮圧、八つ当たり。そして現在に至る。

 

「だから言ってんだろ。あんな現場は見過ごすわけには行かなかったって」

「それでもいきなり攻撃するだなんて、いい根性してるじゃない」

「それはもう謝っただろうに」

 

 鈴と口論に発展していた。鎮圧の際、彼女にだけショットガンを使用したことが恨みを買ったらしい。よくよく考えればオックスアイ2丁でも良かったとは思うので謝罪はした、女性にはどうやっても口論で勝てるとは思ってはいない。

 

「なあ、鈴。もう景斗を許してやってくれよ」

 

 空気を読まない一夏の割り込み。俺も青筋を立てながら鈴の頭に青筋が立ったのを確認。そして

 

「「一夏は黙ってろ!」」

 

 一語一句、タイミングさえも同じ怒号を浴びせた。そもそもコイツが全ての元凶だ。

 

「す、すみません……」

 

 もう誰が悪いのか誰にも分からない。全てがごちゃごちゃになった挙句、全ての元凶の一夏は俺らに怒鳴られていじけているし、箒とセシリアはさっきから一言も喋っていない。

 

 ちなみに一夏の発言については聞かなかった、目の前にある爆弾の信管を叩く趣味は無い。爆発してしまったら一夏は確実に俺に助けを求めてくるだろうし、そうなった挙句彼女らに追い回されるのはゴメンだ。

 

 

____

 

 

 彼女ら全員が一夏に惚れているこの空間、すばらしく居心地が悪い。それを感じさせる素振りが一切無くても辛いものは辛いのだ。

 

「景斗ー、さっさと始めようぜー」

「ん、ああ。そうだな」

 

 そんなことを考えているうちに一夏から声を掛けられる。一夏からの強い要望で訓練の相手をすることになった、みんなのヘイトが溜まっていっている気がする。

 

「今回は新装備のテストも兼ねます」

「へぇ、いつの間に」

「たぶん5日前」

 

 6日前だった気がするがどうでもいいや

 

 まずはスタンダードにランポードとストレコーザを展開。

 

「そのでかいのか」

「いえす。ちょっと10発ぐらい撃たせて」

「いいぜ」

 

 片手での試し撃ち。生身ではハンドガンでもほとんど有り得ない運用方法だが、グングニルが使う武装のほとんどが片手で使うものであって、両手に一丁づづ装備するのが俺に推奨された戦闘スタイル。

 

 余談だが本来、現代の軍人による戦闘では銃を2丁構える事などありえないと断言できるが、ISのパワーアシストやハイパーセンサーによって命中率は上昇し、量子変換された大量の弾薬もあることで、銃の2丁同時運用を可能にしている。

 

 ISの突出した防御性能により機銃の1撃などによって戦闘不能になる機会など早々無く、むしろ被弾を前提とした戦闘スタイルが確立されている。一定のダメージを蓄積させる必要があるIS同士の戦闘では、総合的な火力の上昇を求めるため銃の2丁同時運用という方法を実用していた。無論、これは1対多数の場合ではその限りではなく、またその他にもセシリアのように一丁のライフルを両手で使うパイロットもいる。

 

 単発、3点バースト、垂れ流し。10発で試したのはこんなところだ。印象としては発射速度と弾速はどこをどうとってもランポートの下位互換だ。ただし僅かに感じる反動と弾の1発1発の大きさから、威力の面ではランポードの上にあると判断した。

 

「よっしゃ、10発終わり」

「ならいいな、始め!」

 

 大きくブースターを吹かして突っ込んでくる一夏。俺は反射的に引き打ちに転じた。

 

 2丁の銃が出す一定の間隔を持った銃声が交互に二人の耳に入っていく。規則的ながらもどこか不規則に感じてしまうその銃声に加えて、響くもう一つの音は一夏が弾に接触する音。

 

「てめぇ、逃げんな!」

「おう、何言ってんだ、一夏」

 

 一方的に攻撃を放つ景斗、今回は比較的冷静に戦闘状況を判断することができていた。

 

「おらっ!」

 

 イグニッション・ブーストを使用し一気に距離を詰め、そのまま景斗に雪片弐型で斬りこむ。一直線に切り込んだため被弾は避けられず、ランポードとストレコーザの異なる2種類の弾が一夏のシールドエネルギーを削り取る。

 

「くそっ、今のでずいぶん持ってかれたっ」

「ざまぁないぜ!」

 

 すれ違うように距離を取りクイックターンで再び銃口を一夏に向ける。ストレコーザの使用している弾頭は成形炸薬弾頭、着弾の際には爆発し、ダメージも比較的大きい。今しがた行った攻防ではっきり目視することができた。

 

 そのダメージ効率のよさにちょっとした快感を覚え、再びトリガーを引き絞る。

 

 ストレコーザを20発撃ったところである疑問が俺の頭に浮かび上がり、発射しながら観察をしていた。そして都合50発撃ったところでその疑問は確信に変わった。

 

 ――コイツは弾を見てから避けている――

 

 たしかにストレコーザはランポードに比べて弾速が低くて弾のサイズが大きい、だからと言ってそうそう避けられるものではない。大方動体視力が良いと考えるのが妥当だろう。生まれ持ってきた一夏の才能だ。

 

 俺の未熟さ、一夏の戦闘における才能。それが相まってこの状況が引き起こされているのだとしたら、現段階では一気に状況が覆されてもなんら不思議な話ではない。

 

 射撃のレベルをもっと上げる必要がある、セシリアのように。教科書に載っていることを実践するのは思ったほど容易ではない、テレビゲームのコントローラーならまだしも、俺たちが動かしているのは自分の肉体。一朝一夕の努力やアドバイスで上達するものではない。

 

「一夏」

「なんだ」

 

 戦闘中に俺から話しかける、トリガーを引き絞りながら。それでも俺の口から出た言葉のトーンはとても穏やで。

 

「勝負はお預けって、クラス代表戦の前の特訓でいってたろ?」

「ああ、そう言えばなっ!」

 

 一夏の飛び込み、だが3次元的な機動でたやすく避けられてしまう。

 

「今、俺さ。まだまだだって思っちゃってさ」

「おまえがか?」

「いんや、どっちもだ」

 

 客観的に見た俺の意見は、チャンバラごっこの延長線。言ってしまえば美しくない泥仕合。熱くなれると言い換えられなくも無いが、それがこの先通用するとは思えない。

 

 動き回る一夏。狙いを付けるに当たってISのアシストだけでなく、今までの経験や、観察して知っていることを総動員する。つまりは"なんとなく"で狙いを付ける。これ以上信頼できる要素を俺は知らない。

 

 そして命中。人間の脳の処理能力と感覚は連動しているため、一度感覚を覚えてしまえば意識を集中させなくてもできるレベルにまで上げることは容易だ。とどのつまり、コツを掴むのである。

 

「シールドエネルギー、もう後が無いだろ」

「ちょっと食らいすぎだな」

「補給行ってこい、まだまだ続けるぞ」




一旦ここまで
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