タイトル未定 ISの転生モノ   作:S字フック

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最近妄想がよく捗るので


23 三人目

 教室の一角にはクラスのほとんどの生徒が集結していた。ほんの少し前の場面はにぎやかと括れるものであったが、男子2人が加わってからは、より一層激しいものに変わっていた。

 

「この情報はどこで仕入れたの?」

「先生たちが話しているのを偶然聞いちゃってさー」

「こんな時期に来る転校生だよ。怪しいと思って頑張って調べたら、ね」

 

 彼女は「マジで頑張った」と付け足し、周囲に気持ちのよい笑顔を見せびらかす。

 

「山田先生に知っているような素振りを見せないでね! 真っ先に私が疑われるから」

「最近、やたら山田先生に質問しに行ってると思ったら……でかした友よ!」

 

 隣では男子2人に、その反応を見ようと集まったクラスメート。こちらも相当な騒がしさだ。

 

「えーっと、カルロス? 逆さでうまく読めん……」

「チャールズだろ。マリオの声優も同じ名前だった」

 

 『Charles Dunois』と書かれた一冊のノートを挟み込むように景斗と一夏が向かい合う。「俺にもよく見せろ」と景斗がノートの方向を変えた。

 

「うーん……チャールズか。苗字にいたっては全くわからん」

「お前も読めないのか」

「それフランス語だよ」

 

 クラスメートの1人が彼らに告げるが、あまりはっきりした反応は返ってはこなかった。彼らにとってフランス語は未知の言語である。

 

「フランスかー。読み方は?」

「シャルル・デュノア。なんと世界で三人目の男性操縦者だよ!」

「えぇ!」

 

 隣で行われているやり取りを見つつ、景斗は考える。謎の転校生が来たわけではないのか、もうそんな季節か、と。

 

「どうした、景斗。なに黙り込んでいるのだ?」

「あれー? 結構驚くかと思ったのになー」

 

 箒と鷹月静寐が彼に問いかける。

 

「えーっと、男性操縦者探しって海外ではまだ続けていたのかって考えててさ」

 

 もちろん出任せの嘘であった。しかし、それなりに出来の良い嘘だと彼は心の中で思った。

 

 2週間前に日本の中の男性操縦者探しが終了、結果は彼1人だけとなったらしい。テレビニュースでもは報道されなかったが、インターネットニュースに記事が上げられ、大型匿名掲示板にニュース速報のスレが立っていたのが、彼にとって印象深い出来事だ。

 

 彼は期待はしていなかったといえば嘘になる。やはり残念に感じた。

 

 唯一発見された自分といえば――ミグラントからの結果報告では他の女性操縦者と全く変わらない、極一般的なデータしか取れていない。

 

 しかし、彼が学園でISを扱う際に生じたニーズに応えるべく、新製品を生み出し、着実に利益を生み出しているため、食いっぱぐれることはないとも、チーフは話している。

 

「あの頃はみんなそわそわしてて落ち着きが無かったのに、そんなこといつの間にか忘れちゃってたなー」

「そんな感じはしなかったよ。転校したての頃は緊張しててあんまり何やってたか覚えてないけど」

 

 景斗は視線を机に落とす。シャルロットが転校してくるに当たって、自分がどのように動けばよいかを考えなければならない。既に自分の存在により変えてしまった部分もかなり存在する。それがどのような展開になるかを予想しなければならないのだ。

 

「おい景斗、転校生だぞ、男の! 聞いてたか!?」

「疑う余地の無いぐらい近くで聞いてたよ」

 

 景斗の無関心とも取れるほどの落ち着き対して、一夏は異様なほど舞い上がっている。男仲間が増えるのがとてつもなく嬉しいのだ。

 

(あーー。坊主頭の野球部でも転校してこないかなー)

 

 こちらは共に馬鹿をやれる友達を切実に所望している。中学時代にはクラス中の女子から冷ややかな目で見られたことは、彼と彼の友人のいい思い出である。

 

 無論、仮に転校してきたとしても、学園の99%の人間を一斉に敵にしかねないので、そんな事をする気は彼には無いが……

 

「それにしてもフランス人。フランスのイメージが食い物と観光地しか無いぜ」

 

 咄嗟に思い出せる人物にしても歴史上の人物か、首相の名前。どちらにしろ彼の引き出しには教科書関連の知識しか入ってはいなかった。

 

「たしか三組にフランスから来た子がいたよ」

「へぇ。部活にも入ってないと、人脈が狭くてときたま困る」

 

 雑談を繰り返しているうちに廊下より山田先生が教室に入る。心なしか疲れているような印象を景斗は感じた。

 

「ヤバイ、山田先生だ。席に戻らなければ」

「みなさーん。席についてくださーい」

 

 まばらに俺を含めたクラスメート十数人が席に戻り始める。その後、織斑先生が確認されると全員が一斉に静まった。

 

(……山田先生だけだと学級崩壊が起こりそうだな)

 

 彼がその現場を想像しているうちに織斑先生が連絡事項を伝え終わる。クラス中が来るであろう転校生のことを気にかけているのか、どことなく浮き足立っていた。そして発言権は山田先生へと移り変わる。

 

「今日は、転校生を2人紹介します!」

「「「「え!!」」」」

 

 女子の声に入り混じる2人の男声。誰もが驚きを隠しきれない。

 

 睨み付けるように山田先生に視線を送っていた、転校生の情報を仕入れていた彼女も驚いている。つい先ほどの活気が再び沸き起こり、皆が周囲の友達と話し出す。「4人目ワンチャンあるで!」と誰かが叫んだ。

 

 入ってきた転校生は金色と銀色の女子だった。

 

 

「はじめまして。フランスからやってきました、シャルル・デュノアです。これからよろしくお願いします」

 

 男装した彼女は笑顔を作りながらそう言った。景斗には高い声の男性は取れなくて、当たり前ではあるが、女性の声にしか聞こえない。なまじソプラノじみた高い音域ではないため、根の女声が余計に目立つ。

 

 このような声質の男性は存在しないわけではないが、やはり目の前の存在は異質であった。

 

 あらかじめ構えておいたことによっって衝撃は思ったよりも少ない。周囲の女子が騒いでいるが、彼はテンションを上げてはいない。問題はもう一人の転校生だ。

 

「…………」

 

 先ほどから沈黙を貫き通している銀髪の少女、ラウラ・ボーデヴィッヒの存在だ。景斗は原作とアニメの変更点を知らない。

 

 景斗は視線を横にスライドさせる。気が付けば既にシャルルは言葉を言い終わっていたようで、周囲はお構い無しに騒ぎ立てている。

 

「美形! 守ってあげたくなるタイプの美形!」

「可愛いーーー!!!」

「ヘッヘヘヘ……これで3人目だぜ……」

「よし! 年内にもう1人! もう1人いこうか!」

 

 もはやなりふり構わず、といったところか。

 

「黙れお前達。静かにしろ」

 

 この声で静かになるあたり、彼女らはノリが良いだけなのだろうと、痛感する彼。そして、織斑先生の指示により、ラウラが口を開ける。

 

「はい教官」

「その呼び方はやめろ。ここでは織斑先生と呼べ」

 

 このやり取りに口を挟む者は存在しない。ラウラが入ってきたときに、男子じゃないのかと言わんばかりに舌打ちが聞こえたが、既に軽率な行動ができる雰囲気ではなくなっている。

 

 この雰囲気を彼は退屈と感じた。

 

(えーっと、スパイだっけ。シャルルが学園にやってきたのは)

 

 視線をラウラに向けたまま、思考をめぐらせる。

 

(俺のデータには価値が無い。が、取られても良いわけではないよな。お給料貰っちゃってるし、信用に関わる)

 

 いつも首からぶら下げているドックタグを彼は意識する。動くと金属音が出るこれを彼女より守らなければならない。その他もろもろのデータの方が貴重で実用性が高いだろう。最近はデータ取りの仕事も増えてきた。

 

(なんだかミグラントもデュノア社の経営危機の一役を担っている気がする……)

 

 もしも自分があのときにデュノア社を選んでいたらと想像を開始する。大方男性操縦者ばかりの研究に囚われて、どんどん迷走を続け、底なし沼に足を踏み入れてしまいそうな気がしてならない。

 

(そうなっていたらシャルルは学園にはやってこないだろうな)

 

 男性操縦者のデータを手に入れるためにスパイとして送り込まれるのだから、男性操縦者が手に入ればその必要も無くなる。わざわざリスクを犯してまで学園にやってくる必要は一切無い。

 

 そう考えている最中にも時間は進み、拍手にも似た破裂音が響く。一夏がビンタされた。

 

「これでHRは終了する。今日は二組と合同の訓練だ。すぐに第2グラウンドに集まるように」

 

 ビンタに意も解さず進める織斑先生。先生も攻撃を加える人間なのだから当たり前といえば当たり前なのかもしれない。

 

「織斑、佐藤。デュノアの面倒を見てやれ。同じ男子だろう」

 

 指示が下され、彼は机がら立ち上がった。一夏とシャルルはなにやら話しているようだ。一夏と目が合った。

 

「景斗! 移動だ、行くぞ!」

「うーい」

 

 一夏は当然のようにシャルルの手をとり、近づいてくる。

 

「落ち着けるのは移動後だから、とりあえず移動」

「じゃ、行きますか」

 

 一夏は景斗の手を握る。景斗はその手ほ振りほどこうとする気配は見せない。既に日常の一面と化しているためだ。3人は廊下に出る。

 

「これは久し振りだ……今日は凄いぞ」

「ああ、うじゃうじゃいる」

「え、何? どうしたの2人とも?」

「どっちから行く? 景斗、決めてくれ」

「逆側から降りよう。多少遠回りになるけど、今日に限ってはこっちのルートが早い」

「オーケー」

 

 早歩きで動き出す。シャルルが先ほどからうろたえているが、構っていられるほど状況は甘くない。

 

「佐藤景斗君だよね? はじめ――」

「曲がるぞっ! あの中は通れない」

 

 前方にいる女子の集団を避け、彼らは進む。

 

「見た!? 写真とった!?」

「全員で手繋いでた!」

「金髪の子だった! ちっちゃーい!」

 

 校舎を飛び出す。景斗が後ろを見ると、廊下を駆け回る女子を目撃し、心の中でガッツポーズをした。

 

「よっしゃ、してやったぜ」

「今日は運が良いな、全然出会わなかったし」

「す、凄い熱気だった……」

 

 一夏の手を離す。薄っすらとかいた汗を拭き取りながら、更衣室に足を運んだ。

 

 

「あっちゃー。気張りすぎた。速すぎ」

「千冬姉の脅威は過ぎ去ったと考えるんだ」

 

 更衣室の時計を見る限り、10分弱は余裕があるようだ。

 

「えーと、改めて、織斑一夏だ。一夏って呼んでくれ」

「佐藤景斗だ。呼び方は何でもいいよ。よろしく」

 

 一夏が右手を差し出し、それにあわせて景斗は左手を差し出した。シャルルは両手で握手に応える。

 

「2人ともよろしく。僕のことはシャルルってよんでね」

「さて。それじゃあのんびり着替え始めますか」

 

 握手を済ますと、一夏は着替えを始め、シャツを脱ぎ始める。シャルが顔を背けた。

 

 一方、景斗は着替え始めることを躊躇していた。初対面の女子の前でISスーツを着るのは、それなりに覚悟が必要だった。

 

「ちょっとだけでいいから……あっち向いてね」

「ふぅ……さっさと済ましてしまおうか……」

「ん? 二人ともどうした?」

 

 パンツに手をかけながら一夏が問いかける。

 

「ほら、俺ってシャイじゃん?」

「シャイな性格だったら絶対にそんなこと自分から言わないって」

 

 景斗はのんびり、だけども手は休まず、1枚1枚脱いでいった。

 

「着替えるの早いな。コツでもあるのか?」

「い、いや。別にこれと言って……」

「早っ」

「これ、いちいち全部脱がないと着れないんだよな、しかも引っかかるし。なあ景斗」

「……そ、そうだな」

 

 首からドックタグを外しながら応答する。セクハラトーク一歩手前であった。

 

「景斗もなんだかんだで着替えるの早いし、苦戦してるのって俺だけ?」

 

 景斗はISスーツに着替える際、魔法を使用している。

 

 ISスーツを気が付かない程度に大きくし、自分を気が付かない程度に小さくする。最後に解除して完成だ。

 

(素晴らしいな。モブが使っていた魔法よ)

 

 更衣室には監視カメラはないので問題は無い。この空間はさすがにプライバシーの問題に関わってくる。

 

 

 彼が着替えている間に一夏とシャルルは会話をしていた。デュノア社や織斑千冬など、身内の話題になっているようだ。

 

「なあ景斗。お前の家族の話って聞いたこと無いな」

「そりぁなあ。家に遊びにでも来ない限り、知る機会なんて無いからな」

「いつか遊びに行っていいか?」

「は!? 毎日一緒に過ごしてんじゃねぇか」

 

 最近では他の専用機持ちも一緒になって男子部屋に集まることが多い。中でも鈴は頻繁に遊んでいる。

 

「景斗の両親が受けたインタビュー記事、見させてもらったよ」

「なに!?」

 

 シャルルの言った、その記事の存在を彼は知らない。マスコミに関しては触れないで、と彼は両親と約束をしていたはずだったが……

 

「たしか日本語ではおしどり夫婦っていうんだっけ?」

「マジかぁぁ……」

 

 うなだれる。彼の両親はそんなもので括れるような性質ではないから。

 

「そうなのか景斗。言ってしまえ、楽になる」

「自殺行為だよ!」

「だから、楽になる」

 

 一夏の目は爛々と輝いている。このまま証明を落としたら猫の瞳のように光り輝きそうだ、と景斗は感じた。

 

「あんなんおしどり夫婦じゃねぇ、バカップルだ」

「へぇ、羨ましいね」

「もっと詳細な情報をよこせ景斗」

 

 いつになく一夏はしつこかった。このしつこさは、延々と引きずる。だから、景斗は嫌々話した。

 

「誕生日とか結婚記念日には必ずケーキを焼いて食べてて、いや、おいしいからいいけどね。問題は時間がたつに比例して仲が良くなっているんだ。あいつらおかしい」

 

 俯きながら彼は話す。そんな両親だが、彼に兄弟はいない。一人っ子。

 

「なんだ、いい両親じゃないか」

「そうだよ」

 

 テレビでよくある熱愛報道を、彼は苦手としている。あのレポーターの冷ややかな目を両親の周囲でよく見かけるからだ。

 

「んなこたどーでもいーんだよ。さっさといくぞ」

 

 投げやりな様子で更衣室から出る。すぐ後からついてくる2人から、すぐにでも離れたいと思っているほど恥ずかしがっていた。彼の外見相応の反応が垣間見えた場面である。

 

 景斗が弱点となる両親とは、曰く金婚式・銀婚式は確定事項。倦怠期は訪れないと自負し、来世で会おうと約束を交わしている人物である。

 




授業のシーンはカット
特に盛り上がる展開がないから
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