タイトル未定 ISの転生モノ   作:S字フック

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適当なこと書きすぎた。


27 刃物

 訓練している場所は学園の中ではなく、ミグラントが所有する建造物だ。武装の切り替えは自由に行えた。もちろんISバトルのレギュレーションは守りつつ、リミッターもかけつつ。

 

 好き勝手に動き回る彼の姿は学園の姿とは少し変わっている。機体構成も一時的に変えることになったのだ。その姿の印象を一言で表せば「細い」。両手持つ武器も銃火器ではない。ミサイルもオミットされていた。噴出すブースター炎も大きなもので、どうやら操る機体は軽量機のようであった。

 形態移行を見据えるとあまり好ましい行為ではないのだが、利点は数え切れないほど存在している。特定の機体に対してメタゲームを展開できる点はあまりにも大きい利点だ。

 

 彼は仕事をしている真っ最中で、新たに渡されたテストパーツはムラクモとULB-13/H、どちらもブレードだ。それらは一癖も二癖もある代物である。

 右のムラクモはブレードだが、学園の打鉄が使う刀のような近接ブレードではなく、腕に刃を取り付ける形になっている。収納状態であるそれの切っ先は拳と同じ方向を向いており、刃は親指側に裏刃は小指側にあるのが大きな特徴だ。収納時はシールドのような装甲版にアーミーナイフの如く閉じられるようになっている。

 左のULB-13/Hはレーザーやプラズマを剣状に収束させるものではなく、実体がある刀身を有している。ジャマダハルのように拳の先に刀身が来る様になっているが、その形状の利点である突きでの使用は想定されておらず、また打ち合うようにも想定されてはいない。

 

「なんでこんな形にしたんですか?」

「僕に言われても……」

 

 失礼だが疑問を投げずにはいられなかった。チーフも困った顔をしている。ISごしの会話で、テストをしながら彼らは話を進めた。

 

「北欧の連中が作ったものだ、これらは。色々信じられない」

「そこまで言いますか」

「使う人間は女性だというのに、完全に開発側の趣味だよ」

 

 既存の兵器の型に当てはまらない外観のそれは、高い技術力によって生み出された異形の兵器。発想自体が既におかしいので当然といえよう。製品化までこじつけたのには技術者としての執念が何処かに存在している。

 

「それね、単純な構造でも一部のパーツが繊細で壊れやすかったんだけど、どこかの誰かが改良して、扱いが多少乱暴でも確実に動作するようにしてさ」

「これでブレードを受け止めても問題ないと?」

「そう。前に見せたヤツじゃできないからね」

 

 他にもメリケンサックのような形のブレードも開発されていた。それも起動時にはジャマダハルのように刀身が形成される。あれなら信頼性は低くても構わないが、相手からの攻撃にまったく対処できない。ただし、その必要があるかどうかは別として。

 

「刀身を伸ばしたおかげで範囲も広くなって、威力も上々。弱いってことはない」

「これでも抑えてあるんですよね。威力」

 

 白い光を纏うアイドル状態のブレードを起動し、振るう。赤く巨大なエネルギーが高熱の刃を形成し、辺りをなぎ払った。周囲の温度の上昇をハイパーセンサーがとらえ、エネルギーの低下の警告がISより促される。周囲を埋め尽くしていた赤は既に霧散していた。

 これもまた実戦を想定して作られており、喰らえば確実に致命傷ないし撃墜だ。数秒のみ現れる刀身にISのエネルギーを際限なく注ぎ込んでしまえばそうもなろう。競技で使うにはリミッターをかけなければならない。

 

「うん、適当に振って当てていけば勝てるよ。こんな剣の流派なんてないから我流になるけど」

「剣道もチャンバラもろくにやったことがないので構いませんよ」

「間合いさえ分かっていればそれでいい」

 

 起動後の数秒のみ現れる高熱の刃は純粋なエネルギーの塊だ、防ぎようがない。その特性上、レンジに入れば猛威をふるう。ガードできず、当たればただでは済まない。元々相手の攻撃に対処する予定はなかった。相手を落とせさえすればそれでいいのだから。

 

「おかげでパワーアシストもほとんど必要ない。ホントに信じられない」

 

 小さく軽いので拡張領域も圧迫しない、機体に掛かる負荷は高いがそれを補うほどのポテンシャルを秘めている。結果として、近接武装としてはかなり優秀な部類に含まれる。零落白夜にも引けを取らない初見殺しだろう。

 

「じゃ次いってみようか」

 

 次と指定された武器は右手のムラクモだ。事前の説明で概要は頭に入れてはあるが、彼は自分自身の目で見るまで飲み込もうとはしていない。冗談であるといって欲しい願望が存在していた。

 

 腕を曲げ、捻り、色々な角度から機構を確認する。刀身の後方に存在している部分を確認し、抱いていた儚い希望を失った。どうやら主任が少し前に言っていたことは真実らしい。彼は落胆を隠せなかった。彼は初め、刀身の取り付けを誤って逆にしてしまったのだと思っていたが、これが正当な姿。開発者の発想は一般的な発想のかなり上空をアクロバットをしながら飛行している。

 刀身をそのまま前へ出せばいいものを、何故こうおかしな発想に繋がるかが彼には分からない。理解の進み具合はほんの上辺のみだ。

 

「早速起動してみてくれ。稼動範囲には気をつけて、危険だよ」

「了解です」

 

 彼は肘を鍵型に曲げた状態で前方に突き出し、稼動が見やすい体制をとる。視線の先は肘の先を見つめていた。

 起動のトリガーと共に轟音が響き渡り、刀身の付け根を回転軸にして刀身が肘の先(・・・)に展開される。

 

「これは……どう使ったらいいんだ」

「初めは誰だってそう思う。まともじゃないよね、それ」

 

 戸惑うが故に彼には答えが浮かんでこなかった。使い方は単純に肘の先に出たブレードを当てるだけ、ならば動きも限られてくるだろう。冷静に考えれば答えは即座に思い浮かぶ、内容は常軌を逸したものではあるが。

 肘打ちの要領で刀身を当てるのが主な扱い方。ただし、刀身が展開している時間は先のレーザーブレードと同じで数秒のみ、連撃は困難だ。

 

「ためしにその装甲版を斬ってくれ」

 

 地面が開き、ISの装甲版が出現する、試し切りの対象物は畳表でも動物の死体でもなくそれらしい。それは複合装甲で軽量ながら防護力は高い、シールドエネルギーは纏ってはいないが生半可なことでは壊せない。現代版の兜割りである。

 

 数週間前の訓練の最中で、彼はマスブレードをこれに向かって使用したことがある、彼が後から聞いた話では研究者たちから提案があったらしい。人目を気にせず使えるので拒む必要はなかったのと、彼にも若干の好奇心があった。

 結果は凄まじく、スパイク部分が当たった場所は散弾のように砕け散り、アリーナの壁を蜂の巣にした。残りの装甲も遅れて吹き飛び、割れた破片は散乱、地面と繋がっていた部分も撥ね起こされ、平らだった原型など残されてはいなかった。

 

 あの威力で粉々になることには疑問は覚えない、当然の結果だといえる。ただ、彼は不安の念を抱いていた。刀身は分厚く重厚な存在感であるが、外観からは何か工夫があるようには思えない。ぶつかって装甲に一文字の引っかき傷を残すか、刃をこぼし勢いのままに叩き割るか。最悪ただの肘打ちになることも彼は考える。

 助走のために彼は距離をとる。壁を背に最大限の距離をとった。誰からの指摘はなにも無い。

 

 片手を天井に置き、足を壁に付け、水泳の蹴伸びの要領で壁を蹴りつける。同時にブースターを最大限に稼動させ、加速を開始する。速度の上昇に重力も併用、後方の視界は青白いブースト炎でいやに狭い。この程度のスピードには慣れていた。

 距離は縮まる。腕を曲げ、体幹を捻る。自然と拳を強く握り締めていた。接触まで残りは僅か。

 イグニッションブースト起動。開始直後の数瞬、最もスピードが上昇するタイミングを計らい、ムラクモを起動。そのまま腕を振りぬいた。

 

 接触と衝撃。一般に物と物がぶつかった時にでる音では無く、彼の耳に届いたのは爆音。接触で爆ぜ砕け散ったと不安に思い、彼は右手を確認する。そこには刀身を格納しているムラクモが以前と何一つ変わらぬ姿で存在していた。刃こぼれも無く、曲がってもいない。

 切り裂いかれた装甲版は上下に真っ二つに別れ、切り離された上部は元の位置とそう遠くは無い場所に位置している。残った下半分を見れば、切断面は磨かれたように滑らかであり、ふちなど触ったら手が傷つきそうなほど鋭利だ。地面を見ても何か衝撃が伝わったような形跡も大して見られず、自分の機動で巻き上げられた砂埃が一番目に付いた。この状況に彼は少し言葉を失う。

 

「すさまじい切れ味だろう」

 

 通信が入る。唯一思っていたことを肯定され、返す言葉が浮かばない彼。

 

「そこはちょっと狭いからね。速度を乗せて振るえばもっと威力は上がる。強度も最高、下手なことでは折れることはないし、刃こぼれもしない」

「……凄いですね。まだ威力が上がるんですか」

「うん、速度が乗れば乗るほど上昇する。簡単な物理だ」

 

 金属でできた装甲をも切り裂くブレードに目が釘付けになる。想像以上の威力とスペックに思考固定していた彼であったが、だんだんと頭が回転を始める。この性能に、おかしな形状からくる扱いづらさが宝の持ち腐れのようなもったいなさを覚えて――

 

「形を変えたほうがいい。と思っただろう」

 

 思考を見事に読まれてしまった。

 

「もはや思考操作のレベルだよ。誰だってそう思う、僕だって思った」

 

 この材質使って一般的な形状をしたブレードを作れば強そうだと彼は思った。打鉄の近接ブレードと間近で見た感想ではそう大差は無いように思えるが、間違いなくこちら側が優れていると彼は直感で思う。実際もそうであって、真正面から衝突したのならあちらが曲がる。

 

「そんなことをしたら内部抗争に発展しかねないよ。あちらの面子も立てなければならない」

 

 開発時のコンセプトとして、格闘機以外でも運用できる近接武装というものがある。どちらも腕部への負荷を減らす使い方となっており、正式なバトルにおいても格闘機に似た運用ができる武装であって、純粋な格闘を目的としてはいない。

 そしてヒートパイルと違い、無限に振れる。回数制限が無いことにより、戦術の幅も広がる。奇襲などではなく、長期のタイマンも張ることが可能になる武装である。

 

「君は近接ブレードには見向きもしなかったね」

 

 話題が変わる。内容は仕事といえば仕事のうちに含まれるが、完全に私情が入りこんでいた。

 

「見て触る分にはいいですけど戦闘では使いたくありませんから」

「実に建設的な意見だ。僕も同感するよ」

「銃で撃ったほうが楽で戦いやすいですし、使うのなら刀より鉄パイプとかハンマーですかね」

 

 彼は格闘戦をあまり好まない。できない訳ではないが、やるからには完璧に仕上げたいという思いを秘めている。ただ、めんどくさいという気持ちのほうが上回っているのが現状で、その結果、彼は射撃のスタイルを選んだ。

 

「戦闘データを見ると蹴りを多用していたね」

「喧嘩の延長みたいなものです」

 

 実生活ではヒロインズのように暴れたりはしないが、戦闘ではISバトルという口実のもとに暴力をふるう。多少性格のタガが外れ気性が荒くなっているが、周囲を気にして押さえているほうであった。

 

「腕部のパワーアシストは非力だが、脚部のアシストは強めにしてある。人体とほぼ同じく4倍ぐらいかな」

「へえ。そうなんですか。気がつきませんでした」

 

 足技の多用は無意識のうちである。

 

「そういえば、柔道の技とか関節技ってISではどうなんです? 操縦者への直接ダメージはまずいですか」

「確かアリだったと思うな、できるかどうかは別として」

「OKなんですか」

「パワードスーツの競技なんだ、やっていけない訳がない」

 

 空中での高速射撃戦が一般的なISバトルでは、肌が触れ合うほど超至近距離の組み合いに縺れ込むことの難易度は非常に高い。肉薄を仕掛けてくる人間は一部を除いて格闘戦に腕に覚えがあるパイロットばかりで、万能機が立ち向かえるほどやわな攻め方にはなり得ない。その点についても彼は解ってはいる。所詮お遊びのバトルにパっとでの思いつきを試してみようと思いついたのみであった。

 

 勝ってばかりではつまらない、だからといって負けっぱなしもつまらない。これで勝ってしまうのも呆気ないが、一発ネタの隠し芸としては面白いかもしれない。彼が戦いを続ける理由の大半に堅苦しいものは含まれてはいないのだ。

 

「……本当にやるのかい?」

「やる相手は1人だけですよ。女の子に組み付いたら色々問題があるでしょう」

「それもそうだ」

 

 そして、戦いの相手は決まって一夏である。女子と戦うのはどちらも気が進まない。

 

「やるなら別のを参考にしたほうがいいと思うよ、レスリングとか総合格闘技とか。ISには服も無いし地面も無い」

「参考になります」

 

 否定は無し。むしろ助言を頂き、彼は少し驚く。その後、自然とため息が漏れた。人なんて見かけではわからないものであると改めて思い返す。

 

 彼はテストを進める。気分は若干落ち込んだが、仕事には影響を及ぼさなかった。




vd超楽しい、傭兵しかやってないけど
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