休日は明け、月曜日がやってきた。今日から俺はIS学園に行くことになる。実家からはお別れだがIS学園は第2の故郷とそれなりに近かった。中学校になったら~~とか言っていた事もすっかり忘れてしまっていたな。
IS学園の白い制服に身を包みコートを被せ、家を出る。さらば愛しの学ラン生活よ。テレポートでバックレてしまうことも考えたが只の何の解決にもならない我侭な現実逃避なのでやめた。
強制的な転校の癖にこんな遠い所から通わせるなんてイカレていると思う。本当にバックレたらどうすんだよ……
まあ、これからは寮で暮らすことになるのだろうし最後の地元の風景をしっかり味わおう。
長い時間電車に揺られ漸くIS学園に付き真っ先に職員室に向かう。幸運にも他の生徒には一切会わなかった。
ノックをし扉を開けると職員室には様々な先生がいて、奥にいた織斑先生が近づき話しかけてくる。
「おはよう。お前は佐藤景斗で間違いないな?」
「はい、そうですけど…… もしかして担任の先生ですか?」
「そうだ。私の名は織斑千冬。お前が入るクラスの担任だ。よろしく頼む。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
「さて、いきなりだがもう時間でな。付いて来い、クラスに移動するぞ。」
その時、時計の針は8時37分を指していた。一般的な高校では朝のHRの直前の時間であり、それはIS学園でも変わらないようで……
廊下を歩いている最中、織斑先生から話しかけられる。幸運にもこの間も他の生徒には一切会わなかった。
「色々と転校の件はもめていたようだな。担当の連中が愚痴っていたぞ。」
「ああ、アレですか。正直避けられないとは分かっていたのですが、だからと言って"はい従います"って素直に頷くのも癪に障るので。」
「ほう、随分と捻くれているんだな。」
「ええ、15歳で反抗期なんですよ。」
「まあ良い、問題を起こして迷惑をかける様な事はするなよ。」
「了解です。」
そうしている間に1組に着く、山田先生の声が聞こえる。
「たぶん皆さんももう知っているかもしれませんが、今日は転校生がやってきます。」
「山田先生! それ本当何ですよね!?」
「とうとうこの時がきた!」
「このクラスで良かったー!」
ハードルが随分上がった気がするがこのまま騒々しいまま行ってしまえば気にならないと思う。しかし、現実はそうそう甘くは無かった。
「お前はここで待ってろ、呼んだら来い。」と織斑先生は言い捨て教室に入り怒鳴った。
「静かにしろ! 馬鹿者ども!」
教室は静まり返る。俺の目論見は早くも砕け散ったのだった。
「ありがとうございます山田先生、ここからは私が変わります。
転校生を連れてきた。あんまり騒ぐなよ。
それでは佐藤、入って来い。」
やばい、緊張で何も考えられない。勢いで何とかしようと思っていたのに。
「はい、わかりました。」
いいや、どうにでもなれ。
俺は足を進め教室に入っていく、アニメで見た光景とまったく同じ教室、同じ登場人物が見え覚悟を決める。
「転校生の佐藤景斗、男です。ISに関しては分からないことだらけですが、よろしくお願いします。」
声は震えてないだろうか、何かヘマをしていないだろうか、様々のネガティブな思考が脳内を埋め尽くす。
アドレナリンが出ていない状況では、何時だって人の目に晒されるのは辛いものだ。しかもその視線はただ1人を除いて全員女性であり、まったくの未知な体験であった。
しかし、ここで俺は急に既知感に襲われた。それはシャルロット・デュノアが男として転校して来た時の物と同じ場面と認識したのはあまりにも遅くて
「「「「「「キャアーーーーー!!」」」」」」
「イケメンキターーー!!」
「良い意味で期待を裏切ってくれた!」
「やった! IS学園サイコーー!!」
この黄色い大声に対する防衛反応を取ることがまったく出来なかった。
____
IS学園での始めてのSHRは意外と呆気なく終了した。まあ、俺が緊張しすぎただけだろう。
しかしSHRの最後に
「佐藤は放課後、すぐに職員室に来るように。」
と言われてしまった。俺に自由時間は無いらしい。
「はじめまして。名前は景斗でいいんだよな。」
と、色々考えているうちに織斑一夏に話しかけられる。チラッと見ただけだが周りの女子の視線が尋常じゃない。
「ああ、そうだよ。お前は織斑一夏君だったよね?」
「おいおい、君付けなんてしなくてもいいよ。俺のことは一夏って呼んでくれ。」
「わかったよ一夏。」
「俺たちはこの学園で何時も会うことになるんだぜ? やっぱり男同士仲良くしたいからさ。」
「そりゃそうか、なら俺のことも名前で呼んでくれ。それに佐藤って苗字はいっぱい居るから被るだろ。」
「おう景斗、これからよろしく頼むな!」
「こちらこそよろしく頼む。」
彼は話しただけでも分かる程の良い奴だった。原作ヒロインが惚れるのも有る程度は頷ける。ただしまだ俺は一夏の朴念仁っぷりを見ていない。正直どれだけ酷いか楽しみにしている節がある。
そしてここに1人の白人女子が近づいてくる。イギリス代表候補生のセシリア・オルコットだ。多分一夏との決闘の後なので一夏にデレている状態だろう。接触は避けられないとは考えていたがここまで早いとは……
「今はお時間、よろしいでしょうか?」
「ああ、大丈夫だけど……」
なんだか柔らかい印象になっている。一夏にデレた影響で価値観でも変わったか?
「はじめまして。私はイギリス代表候補生のセシリア・オルコット。ご存知かしら?」
「すまない、ISとは関わらない生活をしていたからよく分からないんだ。今の言葉から判断するとイギリスで何か肩書きを持っていたことしか分からないんだが……」
「まあ、いいでしょう。私はISに関しては他の者より詳しいのですから、色々と教えて差し上げてもいいですわよ。」
「そうなのか、その時は頼りにさせてもらうよ、セシリアさん。」
何とか穏便に済んだか? それにしてもよくもまあ俺からこんなに嘘が出るものだ。
「そうだ一夏、まだ来たばっかりだからここの設備とか分からないんだ。後で聞かせてくれ。」
「応、いいとも。取りあえず昼休みに食堂で一緒に飯を食おうぜ。」
「OK、その辺は任した。」
このタイミングで山田先生が教室へ入ってくる。1時間目の時刻になったようだ。
「おっと、もう時間だろ、席に戻ったほうがいいと思うぞ。」
「もうそんな時間か、じゃあまた後でな。」
____
近未来的な授業が終わり昼飯の時間になった。案外普通で授業はチョロかったな。
「昼だ! 食堂へ行こう!」
「案内を頼む。」
「任された。」
謎のテンションに何とかシラフを保ちつつ食堂へ向かう。しかし思った以上にコイツと居るのは心地よい。カリスマとでも言ったらいいのだろうか。それにしても相変わらず女子の視線が凄い、話しかけてくれたほうが幾分かはマシであろう。人間はこんなものにも慣れてしまうのだろうか?
「いやー助かったぜ、他にも男が居ることがこんなに安らげるなんて。」
「そういや、今までは男はお前1人だったもんな。」
「案外、妥協しかけていたよ。お前はどう感じる?」
「うーーん、まず俺が男子校だったことは知っている?」
「初耳だ。」
そう会話しているうちに食堂に着いた。
「ここが食堂だ。何でもあるぜ。」
「何でもか? お前は何食うんだ?」
「なんか今日は和食が食いたいから和食。」
「お前と同じのでいいや。」
昼には蕎麦を食べることになった。真に妥当である。
「さっきの話の続きを聞かせてくれよ。」
「えーっと、男子校からだったっけ?」
「織斑君、佐藤君、隣に座ってもいいかな?」
同じクラスの数人の女の子に話しかけられた。ここまで想定の範囲内だ。
「俺はいいけど…… 景斗はどうだ?」
「一向に構わない。」
「「「やったぁ!」」」
むさ苦しい食卓が一気に華やかになる。なんだかんだでやっぱり嬉しい。
「ねえ、何の話してたの?」
「俺が男子校から来たって言う話。みんなも初耳だったりする?」
「えーっ! そうなの? 初めて聞いたよ。」
「おーい。さっきから話が進んでないぞ。」
「すまん一夏、やっぱりあそことは雰囲気が全然違うよ。聞こえてくる声とか、匂いとかな。あそこはあんまりレベルの高い学校じゃなかったからヤニ臭かった。タバコの吸殻とか普通に落ちていたし。」
俺は吸ってないがな、第一ケムリならいくらでも出せるし。
「へぇ~、そうなのかー。」
「勉強とか行き詰ったら、教えてあげるね。」
「その時は頼む。」
セシリアを書いているとだんだん恥ずかしくなってくる