・食堂・
提督が叢雲に引きづられるようにして食堂に入ると、
全員が此方の方を向き、整列した。
「コホン、……ちょっと遅れてしまったが改めて自己紹介をする、俺がこの鎮守府の提督だ! まだまだ至らないところがあると思うが、皆の力を借りて立派な提督になれるように、精進する! ……あっ、声をかけるときは気軽に声をかけてくれ。」
そう言うと提督は叢雲に目で合図した。
「と、いうことで提督の自己紹介が終わったから歓迎会を始めるわ!」
「今日はじゃんじゃん食べて、飲んでくれ、乾杯ー!」
提督の掛け声で歓迎会が始まった。
皆がコミュニケーションを始める中、提督はさっそく港で見た工作艦明石について、
明石に尋ねる。
「明石、あの船は一体なんなんだ?」
「あの船はですね、この鎮守府に新しく設置される、工廠なんですよ、提督。中には工場が配備されており全力で稼働すれば一日に50人くらい艦娘が作成できます。装備の改修設備や艦娘の近代化改修だってあの中でできるんです、すごいでしょう?」
聞かれた明石は、得意げに話してくれた。
「でももし仮に、鎮守府に攻め込まれたら真っ先に狙われてしまわないか? 大丈夫なのか?」
「提督、あれはただの置物じゃないんですよ? 鎮守府に攻め込まれる前に船で脱出ができますし、中で艦娘の修理が最大20人はできる、動く要塞みたいなものです。修理しながら逃げればいいんですよ」
提督はすごいなと呟き、明石は上機嫌でお酒を提督のコップに注ぐ。
「すごいですね、明石さん」
と、いつの間にか白雪が近くに座って明石と話をはじめたので、
提督は酒を飲み干すと、また後でなと言ってから妙高達の方に移動した。
妙高の方に行くと、妙高が叢雲に前の提督について話をしていた。
「……前の提督は立派な人で、高貴な女王みたいな人だったよ」
「へえー、うちの司令官とは大違いね。うちのは庶民のオーラが滲みでているわ。
どうしてそんな人がこの鎮守府に支援してくれたのかしら。謎だわ」
そう言って叢雲は料理に手を伸ばす。
「どうも庶民オーラが滲み出てる提督です。
一度会って、直接礼を言いたいな、その提督に」
席に座りながら会話に割り込み、叢雲の頭を撫でつつ会話に参加する。
撫でている手が抓られるが、俺はその程度の攻撃でなでるのはやめんぞ叢雲!
……脛は蹴らないで下さい。
「妙高は重巡だよな、一体どんなことが得意なんだ?
初めての重巡洋艦なんで説明してくれると助かるんだが」
「アンタ、提督に配られる資料、ちゃんと読んでないの?」
頭を撫でられながら叢雲が聞いてくる。
「資料は読んだけど、やっぱり本人の口から何が得意で、何ができないのか聞いておきたいんだ。 もしかしたら資料には書いてないことがあるかもしれないし」
妙高はフム、と一度考えてから口を開く。
「重巡洋艦の特徴は、戦艦には劣るが砲撃の火力が高い所や、他に魚雷、偵察機が飛ばせるなど、ある程度器用にこなせるオールマイティなところだな。まあ私自身の特徴といえば遠距離でも確実にあてられるのと……実は潜水艦も攻撃できるところか」
「なるほど、どんな状況でも対応できるオールラウンダーか……こりゃ妙高達の提督から期待されてんのかー、俺?」
「もしそうなら、これまで以上にガンバンなさいよ」
手が疲れてきたので叢雲を撫でるのをやめ、
妙高に礼を言ってから足柄のほうに向かう。
足柄はテーブルの料理を一人黙々と食べており、空の皿が積んであった。
とゆうか肉しか食ってねえなこいつ。
サラダを足柄の皿に入れてやると此方に視線が向く。
「足柄、少しは野菜を食え、野菜を。
確かに白雪の作る料理が上手いのは分かるが、バランスよく食べんとダメだぞ」
「これ白雪がつくったの? おいしいね!
……サラダかぁ、まあ提督が言うなら食べますかー。」
そう言うと、足柄はサラダを食べだす。野菜が嫌いとかそうゆうのではないのか……。
「足柄、さっき妙高にも同じような質問をしたんだが、
足柄自身が重巡として得意なことはあるのか?」
目の前のサラダを食べつつ、考える足柄。
「砲雷撃戦は得意だよ私! 後は……うーん接近戦とか?」
接近戦とかってお前は相手に何を仕掛けるつもりなんだ。
まあ、雷撃が得意と言ってたし魚雷のことかな。
「足柄、明日は性能を見る為に正面海域でテストするから頑張ってくれ。
期待しとくぞ。」
「オッケー、明日はミョウコウ型の力を見せてあげる! 楽しみにしといてね」
そう言うと、彼女の意識は目の前の食事に戻った。
この後、歓迎会は明日の業務のため8時ごろに切り上げさせ、
妙高達と明石の部屋を割り当てたり、入渠施設に案内したりと楽しい一日は終わった。
明日の性能テストが楽しみだ。
・翌朝・鎮守府港・
朝の朝食を食べた後、明石以外の全員が艤装を装備し整列する。
「今日から4人で海に出るが、くれぐれも油断しないよう注意してほしい。
それじゃ旗艦は叢雲、たのんだぞ」
「まかしときなさい、第一艦隊出撃するわ!」
そう言うと叢雲率いる第一艦隊は出向していった。
背中が見えなくなってから横に視線をやる。
隣には明石がおり、ノートパソコンでなにやらデータを計測している。
提督の仕事は海にでて戦う彼女たちのサポートであり、
戦闘に関してはなにもしてやれない。
作戦をたて、艦隊を編成し、補給などをすることしかできないが、
それでも提督と慕ってくれる彼女たちに報いるため、頑張らなくちゃな……。
「そういえば提督ー、提督の適性はどのぐらいなんですか?」
提督適性、それは艦娘達の提督になる時に重要な数値だ。
提督適性が高くなるほど提督の艦娘達は強くなるのが早くなり、建造する時に強い艦娘ができやすくなったりと、高ければ高いほど有利になる、そんな不思議な適性だ。
この適性が高い提督の特徴としては妖精、と呼ばれる艦娘の建造、装備の開発を担う不思議な生物?達に好かれやすいことしかが分かっていない。
「俺の適性はそうだな、中の上ぐらいかな」
「アバウトですね、でも平均より高いならいいじゃないですか」
「まあ中の上でも今現在30人いるかいないくらいだからな。
適性のおかげで提督になれた身としては有り難いが」
「あっ、そろそろ会敵するみたいですよ提督、ほら」
そう言ってノートパソコンの画面を見やすいように向けてくる明石に礼をしつつ、
覗き込むと、画面には叢雲の頭の上からの視点が映しだされていた。
・鎮守府近海・
叢雲達、第一艦隊が出撃してから、20分が過ぎようとしたところで
ミョウコウから敵艦の発見報告が叢雲に伝えられる。
「叢雲旗艦、右側の方向に敵がいるぞ」
「本当?……たしかにいるわね、全艦、単縦陣でいくわよ!」
ミョウコウが発見した深海棲艦は、
軽巡ホ級を旗艦とし駆逐艦イ級が4体の艦隊であった。
段々と敵に近づくうちに叢雲は、妙高が昨日言っていたことを思い出す。
「妙高、アンタ遠距離でも当てられるとか言ってたわよね、
どのくらいの距離から当てられるの?」
「もう射程圏内だ、旗艦殿……撃ってみようか?」
そう言うと、ミョウコウは射撃体勢にうつる。
今日の作戦の目的を果たすため、射撃許可をだす叢雲。
「アンタの腕前、ここで見せてもらうわ! 撃ちなさい!」
叢雲の許可が出た瞬間、ミョウコウの艤装が火を噴く!
放たれた砲弾は瞬く間に軽巡ホ級の頭を吹き飛ばした。
「よく当てたわね今の、すごいじゃない!」
「なに、これくらいの事は当然だ。次はどうする、旗艦殿?」
ミョウコウは涼しい顔で次の指示を待つ。
「敵はどこから撃ってきたのかまだ気づいてないみたいだし、
このまま最大船速で横っ腹から砲雷撃戦をしかけるわ!
足柄、次はアンタの出番よ」
やる気満々の顔で返事をするアシガラ。
「まかしといてよ叢雲! 全艦撃沈してやるから!」
「アシガラ、弾を撃ちすぎるなよ、よく狙え」
「分かってるってミョウコウ姉」
「私も主砲で弾幕を張って援護します、これで決めてしまいましょう」
「そうね……砲雷撃戦開始!」
叢雲の号令で敵に砲弾の嵐が襲い掛かる。
アシガラは宣言どうり駆逐艦イ級を瞬く間に葬り去ると、
ガッツポーズを決め勝利宣言をした。
「どうだ! これがあたしの実力だ!」
「よし、これで今日の作戦は終わりよ! 対潜警戒をしつつ、帰るわよ」
目的も果たし鎮守府に戻る一行、今日の戦闘は完全勝利であった。
「これから妙高さん達と一緒に戦えるとなると心強いです!」
「これで海域の解放も楽になるわね。これからも頼むわ、妙高、足柄」
「こちらこそよろしく頼むぞ、叢雲、白雪」
「二人とも、よろしくねー」
こうして初めての実戦は勝利で終わったのであった。
アシガラの口調が難しい。